魔術王と魔神と魔法科   作:モヘンジョダロ

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もっと爆弾の威力を高くしたかった

車椅子ニート(レモン)様、ハグロトンボ様、誤字報告ありかとうございます。


23話:魔法科と魔神

私は野戦演習場にて九頭竜と交戦していた。

 

パラサイトが九体融合した存在。否、元々一体のパラサイトが十二に分けられたというのだから此方の方こそが原初に近いのであろう。

 

侮蔑の念が湧く。能力を持ちながらも世界を変えようとする気概がない存在。

 

ソロモン王のように自由を持たない訳でもない。自由があり、自由に振る舞う事が可能でありながら人類を救済しようとしない愚かな存在。

 

スコープ・ライノールの肉体では荷が重いだろう。魔人としての力を解放できない状態なのだから本来は太刀打ちできないだろう。

 

それを事前の準備を覆す。

 

早朝から仕掛けたおいた宝石を刻んだ術式で少しずつ回収しながら用いて、九頭竜の足止めと魔力の回復を行う。

 

高額な宝石が砕け散ってゆく。空間に揺らぎを生じさせる非物質的な爆発、僅かだが蓄えておいた魔力を取り込む。

 

強化魔術を途切れさせない。フィジカルでもって九頭竜からの干渉から逃れ続ける。同時に九頭竜の四方八方から宝石魔術を用いて絶え間なく攻撃し続ける。

 

九頭竜からすれば大したダメージではないだろうが干渉しようとした所に的確に攻撃を与えて嫌がらせをする。

 

ピクシーへのダメージを抑える為に攻撃を妨害し続けるが有効打にはならず、更に宝石に無限にある訳ではない。

 

宝石を使い果たす。攻撃を妨害する手段を失った事で直接九頭竜の攻撃の受ける。

 

私の中にボクがいるのを察知しているのだろうか?人間に向けるには過剰な火力から強化したフィジカルで逃れようとするが逃げ切れずに右腕が捕われる。

 

即座に魔法を用いて右腕を切り離す。直後に右腕は幾重にも捻じ曲げられ細長く赤黒い線状の肉塊と化した。

 

今更この程度の欠損など何の問題にもなりはしないだろう。私を仕留めきれなかった九頭竜を嘲笑う。

 

そも、私程度に拘わせられる時点で最早未来など欠片も存在しない。今更魔法を放てるようになった所で何だと云う?

 

散々妨害してやった仕返しなのか私一人に意識を向けて夥しい数の魔法を放とうとする。笑わせてくれる。

 

詰み(チェックメイト)だ。

 

「今だ、幹比古!」

 

九頭竜が拘束される。そして、司波深雪の「コキュートス」によってパラサイトは砕け散った。

 

 

■

 

 

九頭竜が砕け散り、大量のサイオンが周囲に撒き散らされる。そして達也がリーナに何かを言おうとした所で、

 

──拍手が贈られる。

 

「素晴らしい。そして死ね』

 

一瞬でスコープの姿が魔人へと切り替わる。それと同時に人類では到達不可能な速さで魔法式が組み立てられ、魔法が司波深雪目掛けて放たれる。

 

放とうとした術式解体を中断して司波達也が自らを盾として魔法を受け止め、自己修復術式によって瞬く間に肉体が再生する。

 

そして怒りに染まった顔で口を開こうとする達也の前でスコープが、否。魔人か何かのスイッチを押し終える。

 

瞬間、司波深雪の足元が爆発する。だけではなく、野戦演習場の至る所で爆発が巻き起こる。

 

司波深雪の片脚が吹き飛び、破片がその肉体に食い込む。魔神柱が造り上げた爆弾による最速の攻撃が司波深雪を傷付ける。

 

妹を傷付けられた司波達也が即座に再成魔法で妹を元に戻す。同時に爆弾による傷を自己修復術式で再成する。

 

そしてCADを魔人に突き付けて、憤怒に染まった鬼の如き表情で尋問する。

 

「いつから裏切っていたッ!」

 

何かをしようとすれば即座に殺すという殺意が籠った視線を受けながらも魔人は意にも介さず。

 

寧ろ、楽しげにクツクツと笑いながら口を開く。その姿は相手を嘲笑するような姿であり、達也の神経を逆撫でにする。

 

『三千年前からだよ』

 

巫山戯た答えを聞いて、達也は即座に分解魔法を放とうとする。元より尋問など建前でしかない。

 

達也にとって妹を傷付けた下手人を処刑する事は最初から確定事項であった。

 

かつての学友であろうとも妹に手を出したならば殺すという切り替えの早さ。だが今回はそれが裏目に出る。

 

『反転せよ』

 

本来必要もない詠唱。使おうと思った時点で既にグシオンの能力は発動している。

 

だが少し分かり易くした方が良いだろうという考えの元、適当に詠唱をする。本来必要ない詠唱を必要だと誤解してくれれば更にやり易くなる。

 

殺意を反転させられた司波達也がその動きを停止させる。極大の殺意を反転させたが故に、今の彼は魔人を決して攻撃できない。

 

『安心しろ。すぐに座標は教えてやる』

 

魔人が司波達也に近付く。無数の触手を伸ばしながらゆっくりと歩いてゆく。

 

司波深雪が組み上げようとした「コキュートス」を魔力照射で強引に吹き飛ばす。

 

一応彼女の殺意も反転させたのだがな。あの時点では殺意が薄かったのかもしれない。

 

一応もう一度司波深雪からの殺意を反転させておこう。「コキュートス」を放とうとしたのだから相応の殺意はある筈だろう。

 

背後から全身に硬化魔法を纏ったレオと刃を構えたエリカが突撃してくる。

 

『目障りだ』

 

振るわれたレオの拳を肉体を変容させる事で回避。そして空洞の中に入った右腕を再度肉体を変容させる事で切断する。

 

肉体の強度が違う。幾らホムンクルスの末裔だからと言って肉体まで人間から逸脱している訳ではない。

 

同程度の強化を施せば素の強度で勝る私に軍配が上がる。切断した右腕を体内に取り込んで霊基に吸収させる。

 

微々たる強化でしかないが利用できるのならばさせて貰おうではないか。

 

そして刃を振るおうとしたエリカに対して無数の触手の奔流で迎撃する。

 

全身を硬化させていない分レオよりもやり易い。どうせ達也が再成させるだろうし、再成せずとも特に問題はない。

 

身体中を触手で貫いて穴だらけにする。全身に空いた穴から血が勢いよく噴き出るが即死を免れたらしい。

 

防御を無駄だと瞬時に悟り、重要器官の致命傷を回避する事に専念したか。

 

すぐさま目の前の達也が再成魔法で二人の傷を修復する。私に対しての殺意のみを反転させた関係上、こうなるのも仕方ないだろう。

 

ならばレオとエリカを私と敵対しないようにすれば良いだけだ。私に対する二人の殺意を反転させる。

 

『反転せよ』

 

歪んだ表情のまま二人が私を睨み付ける。此方はもう問題ないだろう。

 

ピクシーが私の前に立ち塞がる。即座に私は触手を用いて破壊しに掛かる。

 

締め上げ、押し潰し、砕こうとする。念動力で一部が破壊されるが構わずに地面に叩き付けようとする。

 

その瞬間、背後からの銃撃によって心臓部を破壊される。撃ったのはリーナか。

 

彼女はそこまで司波深雪に感情移入していなかった筈だ。私に殺意を向ける理由が解らない。グシオンの能力が通じるかは怪しいものがある。

 

司波達也にマテリアル・バーストを行わせる上で彼女は間違いなく障害となるだろう。

 

先に始末するか。

 

音速を超える速さで心臓を貫こうとする。三柱分の魔力による強化ならば何の反応もさせずに殺害する事も可能であろう。

 

跳躍の為に踏み込もうとして、司波深雪が「コキュートス」を組み上げ始めた事を観測所から伝えられる。

 

……は?

 

不意を突かれた形で「コキュートス」をモロに喰らう。どうなっている、何故殺意を反転させられた状態で私を攻撃できるというのだ!

 

 

魔人或いは魔神には預かり知らぬ所ではあるが、司波深雪にとってはスコープは恐怖の対象である。

 

恐怖の対象に対して深い殺意など抱けよう筈もない。突破されると思い込んでいるからこそ、殺意が薄い。

 

実際に一度は発動すらさせられずに突破されている為に、殺意ではなく防衛本能の一環として「コキュートス」が放たれたのだ。

 

 

「コキュートス」が直撃し身動きが取れない間に女王メイヴが突破されたとの情報を受け取る。

 

更にレオとエリカが身動きが取れない私に追撃を放とうとして急接近して来ているという情報を観測所を通して受け取る。

 

とう無力化した筈の人間が攻撃しようとして来るという事態に反応が遅れる。

 

人間とは親しい者に裏切られたならば殺意を抱く生き物の筈だろう!

 

一度ても裏切られたと思い込めば何処までも残酷で残虐に殺意に発露して来ただろう!

 

強化が行えない私の身体に拳と刃が振るわれる。外殻によって多少吹き飛ばされる程度で済んだが、更に両名が追撃しようとする。

 

対象指定:害意、反転せよ。

 

何とかグシオンの能力を発現させる。が、攻撃の手が止まらない。殴られて斬られ殴られ殴られ斬られ殴られる。

 

強引に身体を動かして二人を突き飛ばす。無理に身体を動かしたせいか凍結していた触手が崩壊する。

 

『何故だ何故だ何故だァ!何故私の邪魔をするというのだ!』

 

「友達だからだよ。」

 

何を言っている?理解が出来ない。私が攻撃を仕掛けた時点で友人関係は解消されている筈だ。

 

仮に友人関係だからと言ってそれだけで何故オレの力を突破できる。

 

私の能力を発現させようとする。敵の全てを焼き尽くそうとするが、更に意識外からピクシーとアンジェリーナが攻撃を行なってくる。

 

弾丸が念動力によって通常よりも速いスピードで私の心臓と頭蓋を撃ち抜いて来る。

 

肉体を稼働させる上で重要な役割を果たす器官を破壊されて動きが鈍る。

 

無理矢理身体を動かすが、再度肉薄してきたレオとエリカによって滅多打ちにされる。

 

怒涛の連続攻撃によって身体が削られる。だが討滅には至らない。三柱分の魔力を用いて絶えず回復し続ける。

 

所詮奴らは時間稼ぎしか出来ない。リソース的には此方の方が上回っている。

 

時間神殿から警告が届くが私を軽視し過ぎだ。私自身の能力の発動準備は終わっている。

 

最早詰みの段階だ。十秒後には灰すらも残らない灼熱の荒野だ。私は必殺の一撃を放とうとして、

 

──懐かしい声が聞こえた。

 

『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。』

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