魔術王と魔神と魔法科   作:モヘンジョダロ

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24話:魔術王と魔法科

『降り立つ風には壁を』

 

あり得ない。あり得ない。あり得てはならない。こんな馬鹿な事があるものか。

 

ロマニ・アーキマンがソロモンだったと?あの女医があの哀れなソロモン王だったと?

 

『四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』

 

だとすれば我らは、ソロモンを殺そうとしていたという事か?ソロモンを疎ましいと思っていたという事か?

 

詠唱が止まらない。英霊召喚が可能なのはソロモン王の関係者のみ、そしてあの姿は紛れもなくソロモンだ。

 

『閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)』

 

いや、彼女は確か時計塔に在籍していた筈だ。其処でブリシサンに英霊召喚の方法に教えて貰ったに違いない。

 

正気に戻れ、フラウロス。目の前の敵の脅威を見誤るな。詠唱をしている内に奴を殺害するぞ。

 

ボクもグシオンに同調しよう。正面戦闘になれば太刀打ちは難しいのだから速攻で決着させなければ。

 

『繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する』

 

『その詠唱を止めろォォ!!』

 

知らぬし関係ない。一刻も早くこの贋作を、この偽者を駆逐しなければならない。

 

全力で身体を駆動させる。回復し切っていない身体を強引に動かして突撃する。

 

跳躍する。音速を超えるスピードでソロモンを騙る者に肉薄しようとするが、真下から突き出された朱槍に上へと吹き飛ばされる。

 

姿勢を無理矢理整えさせる。狂乱しているフラウロスの代わりにオレが肉体の主導権を掌握する。

 

『ランサーか。小癪な』

 

「随分と切り替えが速ぇじゃねぇかドブネズミ」

 

暴れようとするフラウロスを二柱で押さえ付ける。我々の勝利条件は英霊召喚の阻止。ランサーの勝利条件はオレ達の殺害。

 

ランサーと向き合いながら背後にも警戒をする。西城レオンハルト、千葉エリカ、司波深雪、アンジェリーナ=クドウ=シールズ、ピクシーが未だに控えている現状ではランサーのみに集中する事は不可能。

 

司波達也は攻撃をしていなかった事からオレの能力がしっかりと効いている筈だ。無用なリソースは注げない。

 

『───告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に』

 

仕掛ける。音速を超える牙(触手)がランサーの蒼衣へと突き立てようとする。

 

三本がランサーの振るう槍によって消し飛ばされる。霊核を狙った攻撃は阻止されたが腕と脚を貫く事はできた。

 

そのままランサーを八つ裂きにしようと触手を動かそうとして突き刺さっていた触手が全て切断される。

 

司波深雪が構えたCADを腕ごと魔力照射で即座に焼却する。今の状況で「コキュートス」を撃たれたら洒落にならない。事前に阻止しておくにこした事はないだろう。

 

同時にオレの能力を使って司波達也の殺意を反転させる。司波達也の行動を更に制限できる上に「コキュートス」も阻止する事ができる。

 

これが一石二鳥という奴か。

 

そんな考えをしながらランサーと何とか格闘する。スペック的には此方が少しだけ有利だが技量の差で劣勢に追い込まれている。

 

『聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』

 

力を籠めて全速力で腕を振るう。押し出された空気が地を裂くがランサーには命中しない。

 

アンジェリーナ=クドウ=シールズが放った銃弾がオレに向かって飛来する。触手の五本を硬度を強化した上でウヴァルに対処を任せる。

 

殴って蹴って突く。悉くが回避され、逆に刻まれ潰され突かれる。ランサーとの肉弾戦を断念する。

 

『誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者』

 

「その心臓貰い受ける!」

 

真名解放の前兆を感知する。回避は不可能、出遅れてしまったが故に反撃もまた不可能。魔力を防御に回す。

 

ボクが銃弾を弾いていた三本の触手と西城レオンハルトと千葉エリカの両名と打ち合っていた二本の触手を心臓の防御に移行させる。

 

「『突き穿つ死刺の槍(ゲイ・ボルク)』!」

 

心臓部を貫いた槍が棘のように分裂して体内を蹂躙し尽くす。だがギリギリ即死には至らない。

 

槍を深く身体の中に突き刺す。苦悶の声など漏らす筈がない。痛みに喘ぐような感性も持ち合わせていないのだから。

 

オレはかなり消耗しているが、ランサーもまた得物を失っている。時間経過で時間神殿からの魔力供給で此方が回復可能な分、此方の方が有利だろう。

 

だがそれはボロボロの状態のままこの状況下で生き延び続ける必要がある。ボクが崩壊寸前の触手で背後からの刃を弾き飛ばす。

 

『我は常世総ての悪を敷く者』

 

『贋作がァ!』

 

殺す、殺す、何としても殺さなければならない。私が、この手であの偽者に報いを味わわせなければならない。

 

霊基の崩壊など知った事か。限界出力の制限を解除。貴様らの力も貸してくれ、グシオン、ウヴァル。

 

待てフラウロス!早まるんじゃない!マテリアル・バーストを使用すらさせていないのだぞ!オレは絶対に反対だ!

 

ボクもグシオンと同意見だ。この肉体が崩壊すればエルサレムの神杯のせいで現実世界への干渉が困難に…

 

『汝三大の言霊を纏う七天』

 

『死ねェ!!』

 

十、百、千。視界を埋め尽くす程の触手がソロモン王を串刺しにしようと殺到する。

 

自壊さえも顧みない物量攻撃。その前にランサーが立ちはだかる。己の役割に殉じようと無手のまま殺到する触手を処理する。

 

手、腕、脚、腹、眼、口、脳、心臓。ランサーのあらゆる部位が触手に貫かれる。

 

それでもランサーは、クー・フーリンは斃れない。全身が貫かれようとも耐え続け、時間を稼ぎ切る。

 

『抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!』

 

『砕け散れェ!』

 

何とか殺害しようと投擲の為に魔法式を組み上げる。そして出来る限りの最大速度で剣を投影しようとして、

 

0.001秒以下の時間で組み上げられる筈だった剣が分解される。音速を超える速度を発揮させる為の移動系魔法が対象を失って不発に終わる。

 

淀みなく行使される筈だった必殺の投擲が阻止される。

 

『達也ァァァ!!!!』

 

放たれた分解魔法が魔人の一撃を阻止していた。

 

レオやエリカ、司波深雪が私を攻撃したのも理解不能であったが達也が私を攻撃できるなど更に理解不能だ。

 

殺意を反転させた事で完全に無力化出来ていた筈だ。私を攻撃できる余地など皆無であった筈だ。

 

だが現実としてオレ達はソロモンの殺害を阻止された。英霊召喚も完了している、時間神殿へ撤退すべきだろう。

 

「遮那王流離譚───『自在天眼・六韜看破』!」

 

声が響いた途端、周囲の風景が一変する。空は夜から昼に代わり、場所も一面の焼け野原へと変貌する。

 

自在天眼・六韜看破。それは英霊・牛若丸の宝具である。強制転移によって自軍にとって圧倒的有利な地へと転移する。

 

この宝具を使う為に、或いはこの地に辿り着く為にスコープ・ライノールと敵対する必要があった。

 

敵対する相手がいてこその宝具であり、その前提条件を満たす為にスコープ・ライノールと完全に敵対しなくてはならなかった。

 

空間転移という大魔術はソロモンでも簡単には使えない。更にその空間転移で大陸を横断せよなどと言われれば大人しく飛行機という人類の叡智に頼りたくなるくらいだ。

 

だが宝具ならば条件付きとはいえ空間転移よりもずっと安上がりに転移できる。

 

そして空間転移に混乱する魔人へと爪が振るわれる。

 

鈍い音が響き、頭部を失った魔人が地面に倒れ伏す。その状況下で司波達也が辺りを見回す。

 

遠くには醜悪な肉柱、以前接敵した際に魔人が召喚した存在が何柱も屹立している。

 

そして絶えず上から爆弾だのミサイルだのが飛来して来ているは爆発して地形を削っている。

 

とても心当たりがある場所だ。

 

そんな風に思っていると何者かが両手を広げて笑顔で近付いてくる。その後ろには先程魔人の首を吹き飛ばした狼のような人のような存在が控えている。

 

「我の名はブリシサン。時計塔の院長と言った方が伝わりやすいかな?」

 

 

■

 

 

「それで、此処はエジプトと言いたいのか?」

 

『肯定しよう司波達也。そしてあの黒い筒こそが統括局ゲーティアを討滅する為の切り札だ』

 

少なくとも此処までの情報は口に出して共有する必要がある。

 

私(・)は到着してから最初に彼らには魔神柱の監視がある事を伝えている。

 

当然聡明な彼らの事だ。口に出せない事柄も存在していると理解しているであろう。

 

勝利の為の最終目標がブラックバレルの命中だと伝えた所でブラックバレルは元から魔神柱に警戒されている。支障はない。

 

『決戦に連れて行くのは司波兄妹とアンジェリーナだ』

 

「私達を信用してないの?」

 

千葉エリカが凄まじい剣幕のまま静かに問い掛けてくる。まあ彼女と西城レオンハルトとピクシーまで連れて来てしまったのは少し想定外であった。

 

『ブリシサン、説得しろ』

 

「弟子使いが荒いですねぇ」

 

取り敢えずブリシサンに任せておく。こういった交渉事は私よりもブリシサンの方が向いているだろう。

 

外交なら王として何度もした事があったが国対国のやり取りが基本だ。個人と交渉する経験なんて殆どなかった。

 

ロマニ・アーキマンとしてなら経験した事はあったが、ブリシサンの方が経験豊富だろう。

 

「我らとて信用していない訳ではないのだよ。えーと、アリカ君。」

 

「エリカよ。」

 

「すまない、余り興味がなくてね。取り敢えず知っておいて欲しいのは君達の攻撃が有効打にならないという事だね。」

 

「有効打にならないって具体的にどういう事なんだ?」

 

「城塞君、簡単に言うと視界の端にいるあの肉柱が無数にいるって事なんだ。」

 

「…剣ではあれを殺せないって言いたい訳?」

 

「殺せるさ。でも秒殺は出来ない。」

 

「秒殺って、そんな事をする必要があるんですか?」

 

「良い質問だ城塞君。結論から言えば必須なんだよね。」

 

正直着いて来ても来なくてもやる事はあんまり変わらないんだがね。だが死なれるのは目醒めが悪い。

 

かつてならどうでも良いと言い切ったかもしれないが私も少しは成長したのかもしれないな。

 

『話は聞いただろう。用は範囲攻撃が重要なのだ。君達には着き次第全力で出来る限り威力の高い魔法を全力で放って貰いたい』

 

「何故その必要が?」

 

アンジェリーナ君が聞いてくる。好ましい姿勢だ。未だ警戒を解かない司波兄妹を尻目に私はバラしても問題ない程度に話す。

 

どうせゲーティアは指環を使ってくるだろうが、同じ対象に干渉するなら拮抗して問題なく発動させられる筈だ。

 

逆に私にその力を向けられると速攻で退去させられるから私が退去させられるより先に彼らの魔法を発動させたい。

 

最初にゲーティアに敢えて彼らの魔法を警戒するように仕向けておけば問題なく発動させて時間神殿にダメージを与えられる。

 

仮に私が最初に退去させられてもその時間で発動させれば時間神殿にダメージは与えられる。

 

別に私の役割はゲーティア討滅の補助であるからして必ずしも最後まで残らなければならない訳ではない。

 

『魔神柱はとにかく数が多くて大きい。しかも復活する。広い範囲を殲滅しなければ延々と妨害して来るぞ』

 

「……どういう仕組みで復活が行われているんだ?そもそも何故貴女が其れを知っているんだ?」

 

司波達也が私に問い掛けてくる。これは答えても問題ないだろう。特に作戦には関係ないが信用して貰う為にも答えておこう。

 

『魔神柱は七十二柱いるという概念によって常に七十二柱の状態で保たれるのだ。そして私が知っているのは私が魔神柱を作ったからだ』

 

「貴女が原因なんじゃないですか?」

 

司波深雪が刺々しい口調で言い返してくる。いきなりエジプトに誘拐されていきなり戦わせられる羽目になったのだから仕方ない。

 

そして何も言い返せない。確かに魔神柱を組み上げたのも私だし彼らが獣に堕ちたのも私が原因だろう。

 

だが逆転の発想だ。言い返せないのならば言い返さずに適当に誤魔化しておけば良い。

 

『部分的にはそうだ。とにかくブリシサンの準備が終わり次第時間神殿に突入する、先に準備を終わらせておいてくれ』

 

「所で主殿、私は何をすればいいのですか?」

 

あ、今思い出した。しまった、牛若丸の事は転移要員にしか思ってなかったツケを此処にきて払う羽目になるとは。

 

キラキラした瞳で見つめられるとちょっと心が痛む、ような気がする。確か彼女の宝具には魔性を払う宝具があった筈だ。

 

吼丸・蜘蛛殺だったか?それを用いて魔神柱を倒して貰おう。しかし個人としての戦力は少し不安が残るな。クー・フーリンも死んだしまったしどうしたものか。

 

『………強化魔術と対霊魔術を掛けておこう。魔法の攻撃が終わった後に魔神柱を掃討してくれ』

 

ステータスを底上げするレベルで強化魔術を掛ける。魔神柱も一回殺した程度では死なないだろうし彼女には継続して魔神柱を倒し続けて貰おう。

 

「わかりました、主殿!」

 

やめろ、そんな目で見ないでくれ。私はマスター失格だ、サーヴァントの事を忘れるマスターが何処にいるというのだ。

 

「マテリアル・バーストを使うなら専用のCADが欲しいのだが」

 

私の能力では道具作成は並なのだからこの場で作る事はできないのだが…。

 

「無論君達は素晴らしい才能を持っている。それを有効活用して行って欲しい。」

 

『ブリシサン、CAD持ってるか?』

 

「ある訳ないだろうロマニ。」

 

「あるよ。」

 

ウッドワスが凄い顔で振り返った。愕然としててちょっと面白いかもしれない。

 

「あるのですか我が主!?」

 

「ほれ、我が自作した魔術礼装だ。」

 

ブリシサンが虚数空間から骨で作られた禍々しい雰囲気を漂わせる礼装を取り出して司波達也に取り出した。

 

「…………使わせて貰おう。」

 

『では奴らの本拠地に突入しよう』

 

第二宝具を起動させる。時間神殿は私の魔術回路を基盤にして作られた小宇宙である故に突入は出来る。

 

本当に突入出来るだけだが。魔神柱に改造されたせいで私の支配から逸脱しているから自壊させられたりは出来ないんだよね。

 

ブラックバレルならばゲーティアを倒す事は可能であろう。魔法や魔術はゲーティアに無効化されてしまうし、私の能力もゲーティアには効かないからウッドワスには前衛として頑張って貰う。

 

ブラックバレルも魔法も照準を合わせる必要がある以上時間神殿に着いてからでないと使えない。

 

では、時間神殿に突入するとするか!

 

 

 

 

 

私は未だ、答えを出せずにいる

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