魔神柱を創ってからまた数年が経った。
私はその間に魔神柱全てにそれぞれ異なる新能力を追加した。……魔神柱は確かに強力だがトップサーヴァントと比べれば力不足が否めない。故に私は彼らを強化し発展させた。そしてちょうど今試運転をしている。
私は機能を拡張し、設計を改良した魔神柱を用いて父ダビデ王の死後に王位継承を狙い私と敵対した兄アドニヤの軍勢を蹂躙しながら今後の事について考えていた。
先ず考えるべきは異星の神による人理漂白だろう。人でない以上私が王となった後に賜る指環は恐らく通じない。3000年以上の人類史を燃料とした光帯ならば異星の神をも討ち果たせるかもしれないが、人類史を救う為に人類史を滅ぼすなど本末転倒だ。
……私が異星の神に対抗する手段が限りられている以上、後の時代の人間達に何とかして貰わなければならないだろう。
決戦魔術・英霊召喚は私が基礎理論を作っておくとして、魔術が神に連なる者達のみに使われている現状は良くない。神から齎されるだけでは発展しないだろう。ひたすらに研鑽を積み重ねられる欲望に溢れた只人にこそ扱えなくては。奇跡ではなく、
ふむ、私が王となり国が安定すれば弟子を取るのも良いかもしれないな。
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思考を続けるソロモンの眼前の戦場で、醜悪な肉柱が兵士達を蹂躙していた。
「化け物め化け物め化け物め!」
「クソがァ!巫山戯るな!」
「死にたくない死にたくない死にたくない!!」
この惨状を作り上げたのはたった一柱の魔神であった。
魔神アロケル
伝承においては
「序列52位
36の軍団を率いる公爵
その目を覗き込んだ者は自分の死に様が見えるとされ、ショックでしばらく目が見えなくなる」
とされている魔神である。
ソロモンはこの魔神を精神攻撃を行える使い魔として、その眼の全てを魔眼へと組み替えた。
その結果がこの惨状である。
何十個もある魔神アロケルの眼を一つでも見れば、それだけでひたすら自分の死に様を見つめ続ける無間地獄へと堕ちていく。
凡百な兵士達ではどれだけ力を振り絞っても魔神に傷一つ付ける事は叶わない。
自ら眼を閉じ特攻しようとしても魔神の凝視で瞬く間に焼き尽くされてしまう。
戦場に立つ全ての兵士が平等に焼かれていた。老兵も新兵も雑兵も兵士長も将軍も、全てが魔神の前では等しく塵芥であった。
一瞬ごとに人が死んでいく。刹那の時間で生命が終わりを迎える。
人智を超越した魔術式にして埒外の怪物である魔神柱だが使い魔であるが故にソロモンから与えられた命令に決して逆らえない。
命じられるままに魔神柱が兵士達を焼き殺していく。
正にこの世の地獄かの如き光景であり、魔神達が憎悪していた悲劇であった。
魔神アロケルが嘆く
『哀れなり!憐れなり!この蹂躙にどれ程の価値がある?我々は何度も忠告した。ソロモンは危険だと!敵対すれば奴は貴様等を無慈悲に殺すと!何故聞き入れてくれなかった、何故この地を攻めたのだ!』
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私は結局一ヶ月も掛からずに王位継承を狙う兄弟を全て蹴落として戴冠式の日を迎えた。
人々は私を恐怖の宿った瞳で見る。私は王としての威厳を保つ為に攻めてきた兵士達を鏖殺した事の効果を認識した。
これで暫くは家臣達も私に逆らう事はないだろう。確か前世では喉元過ぎれば熱さを忘れる、という言葉があったが彼らが私への恐怖を覚えている間にすべき事を済ませればいい話だし、もし一切の恐怖を忘れたならば忘れた頃にもう一度恐怖させれば良い。
先ずは速やかに結婚相手を迎えなければならない。私が王として即位すれば家臣達は自分達の一族を王にする為に息子達を寄越すであろう。
もしも家臣同士で争えば国が疲弊する恐れがある。
婚姻とは重要な外交手段であり、更に言ってしまえば私が千里眼で見た王達も後継者が原因で国が滅んだ者達がいた。
迎えるのならば大国の姫君だろう。私は女だが王位継承権の無い王子に嫁げばその者がこの国を自らが治めようとする可能性がある。それは防がねばならない。杞憂かもしれないがこの時代では私の想像以上に女が蔑まれている可能性がある以上、用心するに越した事はないだろう。
私は戴冠式を終えた次の日にファラオに貴方の娘を娶りたいという旨の書を送った。
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ソロモン、否ソロモン
奴は我々の機能を拡張し、設計を改良した。我々一柱一柱にそれぞれ異なる術理を付与した。
何故だ?理解できない。今のままでも我々は単騎で人間が幾ら束になろうとも蹂躙できる戦闘能力を保持している。過剰戦力など何の利もない筈だ。
我々はソロモンの見る物聞いた事の全てを共有する、ソロモンが五感で感じたモノの全てを我々は理解している。なのにソロモンのする事を理解できない。
同じ視野を持っていても視点が異なる。同じ情報を入力されても出力が異なる。我々とソロモンでは思考回路が異なる。
……ソロモンの行動には無駄というモノが徹底的に省かれている。一見無意味に見える行動では後々の結果に繋がっている。そんなソロモンが我々にわざわざ手を加えたのだから何か意味がある筈なのだ。
我々は理解しなくてはない、ソロモンの思惑を。我々は看破しなくてはならない、ソロモンの真意を。
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私はファラオの娘を妃として迎えた。彼女は私が女である事に驚いていたが些末な問題だ。子供は魔術でどうとでもなる。むしろ私自らが己の胎内で後継者を調整すれば彼女の負担も減るだろう。
一応我が王国はエジプトの属国、という事になるのだから彼女とは良好な関係を築きたい。叶えられる限りの要求は聞き入れよう、と考えた所で前世の記憶から私は「愛妻家」という単語を思い出した。
成程、私は「愛妻家」という皮を被れるのか。王にはある程度の親しみがなければならないだろう。「愛妻家」という部分をアピールすれば民衆からの支持が上がるかもしれない。仮に失敗したとしても私の能力があれば十分に立て直しができるだろう。
そんな事を頭に浮かべながら私はギブオンにて神へと盛大な捧げ物をしたのだった。
───その夜、私の夢に神が現れた
曰く「汝に資格あり。望みを口にせよ。願うものを与えよう」と───
私は願った、智慧を。私は望んだ、知恵を。神からの啓示に従うままに
そして私は人の身には余る全能を手に入れた
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妾が嫁いだ先はイスラエルという国であった。
何でもイスラエルの王が妾との結婚を望んだのだと父から聞かされた。
妾はエジプトという大国の姫として生まれて大切に大切に育てられた。全てはエジプトという国をより繁栄させる為。婚姻外交の道具として見られていた事はわかっていたし、妾もそれを嫌がるような事はしなかった。
例え外交の道具として見られていても父も母も兄達も確かに妾を愛していたし妾も愛していた。
だから妾はイスラエルの王にも精一杯の愛を捧げようと決めたのだ。そのような決意を抱きながらイスラエルに着けば……そこに立っていたのは人間味のない暗い瞳を持った豪奢に服を着た美しい
……妾はビックリしすぎて一瞬心臓が止まるかと思った。それは今まで見た事がない程に美しかったのもあるが、イスラエルの王が
ただの女王ならば妾も知っている。エジプトにもかつて女王は存在していた。しかし知るのと見るとでは驚きが違うし、何より妾との婚姻を望んだのが女であった事に驚いたのだ。
そもそも後継ぎはどうするのだ!?
女同士で子供なんぞ作れる筈もなし。養子を迎えるという手もあるがそれでは血が継がれないだろう!?
こうして妾はソロモン王との衝撃的な出会いに将来への不安を募らせるのであった。