魔術王と魔神と魔法科   作:モヘンジョダロ

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これ生前編に入れて良いのか悩みましたが投稿
独自設定の要素があります。無理な方はブラウザバックをお願いします

車椅子ニート(レモン)様、たかの様、誤字報告誠にありがとうごさいます


【幕間】ソロモンの弟子

これは我の回想だ。

長い時を過ごした老人の思い出話に過ぎない。

 

 

 

 

ある日、いつも通りに野原で遊んでいた()に王様とか名乗る変な女がやってきて弟子にならないかと誘われたのが始まりだ。

女は言った。

『お前に魔術を教えよう』

なんか雰囲気が胡散臭かったし魔術なんて言葉を使うんだから女が変人だという事は幼かった頃の()でもわかった。

でもそんな事はどうでも良いくらいに()は魔術という言葉に胸が躍ったんだ。だから言われるままに女に付いていき……王宮に入った。

そりゃもう驚いたよ。まさか本当に王様とは思わなかったし間近で見る王宮の美しさも呼吸を忘れてしまうくらいだった。

着いた大きな部屋には()の他に二人の子供がいた。

一人は()と変わらぬ服を着た不思議な奴で異国の言葉で王様と喋っていた。

もう一人は仕立ての良い服を着ていたけど不機嫌そうな奴でずっと王様を睨んでた。

()は自分が見られていないのに腹が立って大声で自己紹介をした

()の名前はブリシサン。よろしくなァ!!」

二人が()を見た。満足した()は自己紹介を二人に迫った。

外国のあいつは「アトラシア」と名乗り()にもわかる言葉で自己紹介をしてくれた。

不機嫌そうなあいつは暫くの間こっちを睨んだまま何も言わなかったが、王様に何か言われてから舌打ちを一つしてから「サレン」とだけ名乗った。

()は初対面だがアトラシアを気に入り、サレンが少しだけ嫌いになった。

 

結局その日は自己紹介だけして魔術については明日から教えられる事になった。

 

 

 

 

「強化魔術ゥ?」

()達が王様から最初に教えられたのは強化魔術っていう魔術だった。

なんでも魔力で物体や生物を強化する魔術らしい。

自分を強化する、器物を強化する、他人を強化するの順に難しくなっていくらしい。

……()は結局器物を強化する所まで行けたけど、他の二人は()と同じように器物を強化する所まで行った上で更に進んでた。

アトラシアは魔力が少ないから大幅な強化はできないけど、代わりに自分を強化するのが得意で身体能力もそうだけど、何より頭の回転を凄まじい程に強化していた。目の前で十七桁の掛け算を即座に暗算して答えていたのを見て素直に驚いてしまった。やっぱ元から優れている物を強化した方が効率が良いんだなぁと漠然と思った。

サレンは()よりも魔力が多いから強化の幅が大きいらしく、お互いに強化した剣を打ち合ったら()が強化した剣がポッキリ折れちまった。その時のサレンのドヤ顔につい大笑いしてしまった。

 

その日の最後に王様に強化して貰った()が無双してから家に帰った。正直クソ楽しかった。

 

 

 

 

強化魔術を一週間の間教えてもらった翌週から教えられたのは投影魔術って名前の魔術だった。

王様曰く『オリジナルの鏡像を魔力で物質化させる魔術』らしい。

()はこの魔術があれば無限に金儲けできるのでは?と心の内で密かに思ったが先生が次に言った『時間を経れば投影したものは世界の修正により魔力に戻ってしまうしイメージに破綻が起きても霧散してしまう』という言葉にそんな旨い話はないかと少し気落ちした。

アトラシアは慰めてくれたがサレンには俗物と罵られた。

……ちょっとサレンは潔癖すぎないか?

その後に各々が投影魔術で創った剣を打ち合ってみた。一番頑丈だったのはアトラシアが創った剣だった。二日しか会っていないが()はアトラシアの事を尊敬し始めていた。何せ()とは比べ物にならない程に頭が良いのだから。

そんな事を思っているとサレンが強化魔術で強化した剣で()の剣を折ってきた。

「ちょおまっ、それはダメだろ!」

「知るか。油断していたお前が悪い」

たちまち喧嘩になって剣を投影しようとしたら()もサレンも頭に血が昇っていたからなのか酷く不恰好な剣を投影してしまった。

()の投影した剣は最早棒だし、サレンが投影した剣は凄く冒涜的だった。

アトラシアはそれを見て笑っていたし、王様からはイメージを常に保てと言われてしまい、かなり恥ずかしかった。

 

 

 

 

そのまた翌週には錬金術について教わった。

王様は端的に「物を造る魔術」と称していたがアトラシアを見てるととてもそれだけだとは思えなくなる。

()とサレンが鉄を金に変えようと悪戦苦闘している間にアトラシアはもう王様と一緒になんかヤバそうな『ナニカ』を作っていた。

……結局聞くのが怖くて何を造っているのか聞く事はできなかった。

サレンも聞くのが怖かったようでこの一件を通してサレンと意見が合って仲良くなった…ような気がする。

この頃になるとサレンの王様への態度は若干軟化してきたような気がした。

 

 

 

 

そして()達は一通り魔術について教えてもらった後に王様から魔術属性と魔術特性について教わった。

何でも()は五大元素と虚数属性を持つらしい。多分すごいんだろうが、王様からは「何事にも励め。向上心を忘れるな」とだけ言われた。

アトラシアやサレンは何を言われたのだろうか?

結局聞くことはなかったし知ることもなかった。

それから()達はそれぞれ弟子を取って魔術を世界に広める役目を王様から頼まれた。

()達は独立する前夜に王様も含めた皆で一つの魔術礼装を合作して、それぞれの道を歩み始めた。

 

 

 

 

───ソロモン王が崩御した。

サレンはソロモン王の奇蹟を永遠に保ち続ける為に弟子と共に過去へと消え神代を至上とした

アトラシアはソロモン王の栄光を伝え続ける為に弟子と共に地下に籠り未来の滅びを回避しようとした

そして我はソロモン王の功績を残し続ける為に弟子と共に学問として神秘を伝えようとした

 

最後に一回だけ我はアトラシアとサレンと共同作業をして合作の魔術礼装を創った。

 

 

 

 

時計塔の超深層域、霊墓アルビオンの人間が潜れる最奥部に我は訪れていた。

 

我の目の前に巨大な黒い箱がある。黒い外装はアトラシアが造った超抜級の概念礼装であり、『鍵』がなければ開ける事は絶対的に不可能である。

 

箱の目の前に立った事で我が施した自動迎撃術式が発動する。七十二層の時間加速結界によって結界の内部が外界と隔絶され内部の時間が外の時間の七十二万倍の速度で流れていくのを知覚した。

 

そして我は虚数空間から黄金の()()を取り出した。

サレンによって極限まで多重層刻印を刻み込んだ指環は三千年近くの時を経ても一切の機能を損なっていない。我はその指環に魔力を流し込んだ。

瞬間、我の魔力を識別した指環は光輝きながら黄金の『鍵』へと姿を変えた。

 

───『鍵』を黒箱の鍵穴に差し込む。三千年近くもの間封印されていた至上礼装が真体を晒す。

 

其れは黄金に輝く杯であった。三千年近くの神秘を持ち、千年以上もの間マナを吸い上げ続けた究極至高の魔道具。

 

ソロモン王が決戦魔術・英霊召喚の術理を刻み、サレンが人理定礎を決定する仕組みを搭載し、アトラシアが超膨大な魔力を溜め込められる器を創り、我がマナを吸い上げる機能を搭載した英霊召喚器(エルサレムの神杯)

 

眼を閉じれば走馬灯のように懐かしき日々が想起される。ソロモン王は死んだ、アトラシアは発狂死し、サレンは世界から消えた。今、此の世界に残っているのは我だけだ。俺だけが世界に立っている。

 

世界を救う為に創造した『コレ』を私情で用いようとしている事実に罪悪感が我を蝕む。しかしそれすらも塗り潰す程の激情が俺を突き動かしていた。システムに干渉し決戦魔術・英霊召喚の術式を限定発動させる。

眼を閉じ、遠き日に思いを馳せながら手を動かす。「冠位」ではなく通常の霊基で英霊を召喚するように術式を発動、魔力の供給元を我へと変更する。

 

……現代の人々が現代魔法を尊ぶのは理解できる。人のみの力で築き上げた正に理想系だ。我とてその価値は認める。

だが、ソロモン王の功績が風化する事だけは認められない。

故にソロモン王の奇蹟を以て奴らの愚かさを奴らに知らしめよう。

俺の名前はブリシサン。(現代)は遥かな過去と遥かな未来を繋げる()なり。

()は眼を開け詠唱を開始した

「──素に銀と鉄。」

 

 

 

 

情報局より「時計塔事件」について報告

我が国に潜む「時計塔」と呼称される非公式古式魔法師組織が不法占拠する「霊墓アルビオン」と呼称されている区域を我が国に帰属させる為に特殊魔法師部隊を派遣。

しかし時計塔の院長にして学長たる古式魔法師が召喚・使役する高位の霊的存在によって特殊魔法師部隊は全滅した。

霊的存在は魔法による攻撃を無効化する性質を持っており、音速を超える速度で行動したのを確認済み。人型で通常の人間と同程度の知能を持つ事も確認されており会話自体は可能であると推定される。

この事件で確認された被害は特殊魔法師部隊の全滅と今回の事件の立案者の殺害である。

この一件から「時計塔」と不可侵条約を締結する事を決定した。

追記:1946年より政府が「時計塔」と、「時計塔」が封印指定執行者を我が国の軍隊に特別魔法師として派遣する代わりに派遣された封印指定執行者が捕縛した敵国の魔法師を「時計塔」に引き渡す契約を締結




2095年時点での三大魔術協会
彷徨海、閉扉
アトラス院、閉鎖
時計塔、健在

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