もしもG・IのNPCになったなら   作:Σ18

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第3話

「知らない天井だ」

 

 ロココ調というのだろうか。薄ピンクの背景に白いバラ模様の天井を眺め、異世界人に最もよく使われているであろうセリフを呟いた。

 

 夢オチにはならなかったか。

 

 期待していなかったと言えば嘘になる……が、ここは間違いなく最後に寝落ちしたであろう見慣れた机と椅子の上ではなく、死んだように沈み込んだ見慣れぬソファの上だ。

 

 緩慢な動きで起き上がると、床に積み上げられた本の山を崩してしまった。昨日はじっくり見ることが出来なかったが、女の子の部屋にしては案外汚い。気にはなるが、今は他に考えるべきことがある。そう思考を巡らすと、腹の中から地の底より湧き上がってきたかのような鈍い音が響いた。

 

 ……この異常事態をどう乗り越えるべきなのか。考えるべきことは多々あるものの、最優先事項は腹の虫への賄賂に他ならない。腹が減っては戦はできないのである。幸いにして冷蔵庫にはある程度食料が入っていたし、部屋には米はないが食パンならあった。

 トースターでこんがり焼いた食パンにマーガリンを塗り付ける。

 

「まぁまぁいけるな」

 

 今の自分は念獣のはずだが、腹はすく模様。妙なところで人間臭くて安心する。生きていると実感できる。

 NPCは人間らしい営みができなければ死んでしまう……もしかしたらそういう制約なのかもしれない。だとしたらよくできたシステムだ。制約が逆にNPCの人間らしさを助長していることになるのだから。

 

 つらつらとそんなことを考えながら、外に出て街路樹から葉っぱを1枚頂戴する。何の因果かこの世界に来たのなら、念を使えると分かったならば、やる事は決まっている。水見式のお時間だ。

 

 原作でも念獣の召喚自体は創造主によるものでも、念能力の行使自体は念獣自身の意思であるかのような描写はあった。天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)はその最たるものだろう。本人は占い結果を知ることすらないのだから。

 オレが訓練なしでいきなり念を発動できたのもそういうカラクリなのだろう。加えて、念獣のレベルは創造主のレベルに依存しているのではないだろうか? いくら念獣の身とはいえ、あまりにも念の発動が容易過ぎた。

 

 これなら練もできるだろう。

 

 グラスに水を注ぎ、先ほど取ってきた葉っぱを乗せる。……よし、やるか。

 

「練!」

 

 ………………。

 

 数舜待ってみるが、変化なし。見た目(・・・)には。

 

「そもそも練ができてないってことじゃないよな……?」

 

 恐る恐る指を水に浸し、流れ落ちる水滴を舐め取ると、

 

「!」

 

 苦い。コーヒー風味だ。どうやらオレは変化形らしい。どうせなら甘くなってほしかったな。そしたらジュース替わりに飲めたのに。

 そうこぼしながらも興奮している自分がいるわけで。何だかんだ言って現実世界にはない摩訶不思議な力は楽しみだったのだ。自然と笑みが込み上げると、それと同時に身体が引っ張られる感覚が訪れた。

 

 ……おっと。強制連行(ドナドナ)が始まったか。少しは慣れてきたもんだ。一晩よく寝て気力、体力共に充実しているオレにスキはない。

 

 

 

 

 

 

「――ラピスちゃん!! ミスコンに出るんだ! 優勝して、アイツらをギャフンと言わせてやろう!!」

 

 こっちくんな。

 

「ムリだよ! 私なんて、地味だし……」

 

「そんなことない! ラピスちゃんは可愛い!!」

 

 手を握るな。

 

「オレが、ラピスちゃんをプロデュースする! ……舞台役者になるのが夢なんだろう?」

 

 顔面ドアップきっつ。

 

「……私、変われるかな……?」

 

「もちろんさ!」

 

 ウゲェエエエエエエエエ‼

 

 近い近い近い! 鼻息かかってる!

 

 このメガネっ娘『ラピス』のシナリオは、内気な彼女とは対極に位置する舞台役者(スター)に憧れを抱いていることを知ったプレイヤーが、その夢を応援し、励まし、時にアドバイスを出し、やがて2人の距離も近付いて……というコッテコテなラブ&サクセスストーリーなのだ。

 ちなみにイベントの途中にはメガネをコンタクトに変えるというこれまたお約束な展開も用意されている。

 

 そんなこんなで、毎日のように砂糖と共にゲロを吐きそうになりながら、あっという間に1ヶ月が過ぎていた。

 

 

 

◆Side:???

 

 

 

「こんなことになるとはな……」

 

 やはり、選ばれし存在だったのか。

 

 異世界転生。それは神々に見出されし者のヴィクトリーロード。思えば漫研でのグリードアイランド制作は……全ては運命(デスティニー)によるものか。

 

「ククククク……薄々気付いてたんだ。自分が(モブ)とは違うってコトをなァ!」

 

 『グリードアイランドを作っていたら本物のグリードアイランドに転生していた件 ~転生チートで無双してたらマチやポンズに惚れられて~』……タイトルはこんなところか。

 これから起こるであろう輝かしい英雄譚。そしてマチやポンズ(オレ様のオンナ)が待っている……とはいえ、

 

「恋愛都市アイアイに来たからには愉しまなきゃオトコが廃るぜ」

 

 ハーレムの予行演習といこうじゃないか。まずはあのそばかすの推定ボクッ娘からだな! 服装は男物だが、ギャルゲー歴10年のオレ様の目は誤魔化せねェ!

 

「ヒャッハー! カワイ子ちゃん! オレ様と大人の恋しない⁉」

 

「……まさか、自分からやって来てくれるとは。いい心掛けです」

 

 そう言うと、カワイ子ちゃんは穏やかに微笑んだ。これは脈ありの呼吸……! カワイ子ちゃんもノリノリだ。楽勝だぜ!

 

「バグは、修正しないといけません」

 

「? なんだそりゃ?」

 

 RULER ONLY……? ってマジか! カワイ子ちゃんが取り出したカードには見覚えがある、見覚えがあり過ぎる!

 

 コイツ……よく見たら、

 

「『白紙(イニシャライズ)使用(オン)

 

 その一言を最後に、オレ様の意識は遠のいた。

 

「フフフ、ジンではありませんが、ハンターの血が騒ぎますねェ……」




主人公の名前、ここに来てようやく登場です

初の感想を頂きました。ヒャッハー!
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