「負けたくない、俺はまだ戦えるんだ!」
汗を滲ませ、拭き取る余裕も無く一点を見据える。その瞳に薄く光る希望を見て、刻一刻と迫る終わりに抗う。
「まだだ! まだ俺は死なねぇぞぉぉぉ!!」
命が尽きていく。勝てないと心が折れそうだ。死にたくないと勝利だけを見てきた結果がこれか……。
「それでも! 諦めるってのは、嫌いなんだぁぁァァァ!!!!」
両手が勇気に反応して輝く。絶望に心が折れようと、覆しようの無い未来に瞳を閉じようと彼は立つ。だって勇者なのだから。
勇気在る者。自らを奮い立たせ、周りを励まし、希望と成る存在。
戦士としての心が折れようと、勇者として失格でも、それでも己の矜持にだけは素直に生きたい。そう願い生まれたスキル。
【不屈】
「うおおおおおおお!!!!!!」
両手を包む光は腕を伝い、体へと伝播する。勇気が体を動かすならば、まだ戦える!
思考ではなく、理性ではなく、ただ勝ちたいと願う一心で駆け抜ける。
だが
それでも、何時だって現実は変えられない。
不死身ではないのだ。誰もが勇者の様に戦えない。仲間は倒れて遂には一人になった。
「まだ、まだだ……俺、はぁ!!」
「諦めろ、友よ。もはやこれまでだ」
「何故、何故止めるのだぁ! 友よ!?」
雄々しく立ち向かって行った勇者の顔には涙が滲み、汗や鼻水を流してみっともなく泣くただの男の子の姿があった。
そしてその後ろに何時だって勇者を支えた戦友の姿が。肉体を激しい戦いで失くし、だが心だけはと勇者に託して散っていった友の姿。
「お前がそれでもと叫ぶからだ」
「だけど。……だって、だって!」
「ゲームに勝てないんだもん゛ッッッ!?!?」
「その度に【まだだ】とか、【それでも】とか叫ぶのやめな~? お前のその勇気の発露はもっと重要な所でやってくれよ。あともう課金やめよ? まだシナリオクリア後のガチャがあるのにコンテニューに石使うのはやめよ? ねぇマジで」
友の顔にはこいつホントにどうしよもない奴だと書いてありますが、辛くも勇者のびしゃびしゃの泣き顔によって届きません。
「あと勝てないからってゲームに当たるの止めな? 初見プレイで行きたいからって物に当たるの勇者じゃないよ?」
「……金ならあるもん」
「それ勇者時代の金ェ……」
いそいそと勇者は顔の液体を拭いを前を向きます。
そうです。ゲーム画面です。
「え? お前マジで?」
「……もう俺は、迷わないし逃げない。不甲斐ない俺とは決別する! うおおおおおおおお!!」
チャリンチャリンと課金が行われました。今月だけでガチャと周回用の石で12万円に突入です。ヒェェェっ。恐ろしい恐ろしい。くわばらくわばら。
「ああああああああ!?!?」
「ああああああああ!?!?」
勇者と友は叫びました。もう見ていられません。憐れ過ぎます。
無事、コンテニューからの地獄ガチャに突撃です。
チャリン、チャリン、チャリン、チャリン
嗚呼、(スマホ)が震える。心も体も震えるている。
「(最新シナリオは)強敵だった。嘗て無い強さ。勇者でなければ耐えられなかった」
「ああ、(他人事じゃなかったら)致命傷で済んだ。見ていて心が折れそうだ」
「だが、これでやっと」
「……そうだな。ここまで来たら最新シナリオキャラ限定ピックアップ召喚。行こうか」
「ああああああああああ!?!?!?!?」
「ああああああああああ!?!?!?!?」
百連の最低保証という地獄帯を抜けて
「……ヒュー、ヒュー」
「 」
魂が抜ける程の恒常だぶりすり抜けに精神を磨り減らし
「……ガハッ」
「愚かな。悟りを開かねばガチャは回せませぬぞ。さあ、死になさい」
血反吐を吐き、仏ではなく閻魔の慈悲を迎え入れ。
そしてたどり着く未だに見ぬ頂上へと。
「……」
「……」
「やって、られるかぁいッッッッ!!!!!!!」
「……全てが遅いよ……勇者」