俺は今海原のど真ん中、小舟の上に居た。船にはオールこそ付いているものの、俺は簡素な服を身に着けているくらいで他に荷物らしい荷物も持っていない。傍から見れば絶賛遭難中である。
「なんでこうなったんだろうなあ……」
そう言って溜息をつく俺に答えてくれる者は誰もいなかった。何故俺が小舟に乗って漂流しているのか、気がついたらこうなっていたとしか言いようがない。そして気がついた直後、俺の手には一冊のメモ帳があった。そのメモ帳にはこんなことが書かれていた。
『前置きなしで言っておきますが、貴方は転生しました。様々な世界で同時に死んだ複数の魂がまぜまぜされて生まれ変わったのが今の貴方です』
「転生だと?」
俺は鼻で笑いたかったが、自分の過去に思いを巡らしてみると明らかに別々の人生を歩んでいたとしか思えない記憶があった。死んだのも、寿命だったり事故死だったり人では無い何かとの戦いの末に死んだり色々だった。
「どうしろってんだ……」
色々考えたいことはあったが、取り敢えずメモの続きを読むことにした。
『抽選の結果、fateの世界の古代に生まれ変わることになりました。それにあたり転生特典を色々用意しておきました。この特典を生かすか殺すかは貴方次第です』
fateの世界だって!?そりゃつまりかなり物騒な世界じゃないか。幸先が悪いな……どうせなら日常が平和な世界に産まれたかったな……そんな事を考えながら読み進めると次のページに説明文らしきものが書いてあった。
『特典の説明に入ります。まず、貴方の肉体は不老です。寿命で死ぬことは無く、若者のままです。更に有限ですが、外的要因で死んでも近い安全な場所でリスポーンします。復活可能な回数ですか?それは……秘密です』
「不老不死じゃなくて良かったよ」
思わず呟く。復活可能回数が不明なのは気になるが、死のうと思えば死ねる身体らしい。
『次はメインの特典になりますが……貴方は、仮面ライダーに変身できます』
ほう、仮面ライダーだと?俺の記憶の中には特撮オタクだった者の記憶もある。この世界で何処まで通用するか分からないが、自分が憧れていた仮面ライダーになれるのはいいかもしれない。
『ただし、変身できるのは全てのライダーでは無く、量産された仮面ライダー達です。変身に必要な特別な条件や、デメリットは無くしてあります』
りょ、量産されたライダー!?それって戦闘員に毛が生えたくらいの強さしかない頼りないイメージがあるんだが……どうしよう、一気に不安になって来たぞ……その後もメモを読み進め、最後のページに到達すると、
『では、新たな人生を頑張ってください』
と書かれていて、メモ帳は独りでに閉じると空に溶けるように消えた。これが転生した直後の出来事である。
「さて、これからどうするかな……」
そう言った瞬間、雨がぽつぽつと降ってきた。
「まさか、嵐が来るのか?」
その予想は当たった。雨が強くなる共に風も強くなり海が荒れた。小舟が大きく揺れる。
「うわっ!こいつぁヤバい!」
慌ててオールを手に取ると必死に漕ぎ始める。しかし、波は大きく小舟を揺らし続ける。
「ああもう!何でこんな目に遭わないと行けないんだよ!!」
叫び声を上げると同時に俺の意識は途絶えた。
目が覚めるとそこは砂浜だった。周囲には誰もいない。
「ここはどこだ?」
俺は起き上がると周囲を見渡したが、周りには誰もおらず、ただ波の音だけが響いていた。
「おーい!誰か居ませんかー!!助けてくれー!!」
大声で叫ぶが返事はない。仕方ないので浜から移動することにした。
◇ ◇ ◇
暫く歩くと、朽ちた遺跡のような場所にたどり着いた。なんとなくギリシャっぽい。fateでギリシャっぽい遺跡……なんか嫌な予感がする……!その時である。
「お尋ねしたいことがあります。貴方がこの島に来た目的はなんですか?」
振り返ると、そこには紫色の長髪でバイザーで目を隠した美女が居た。第一村人発見。……どうみてもstay nightのライダーさんことメドゥーサだ。どうやら、ここはメドゥーサが語っていた生前の家である島のようだ。
「えっと……」
返答につまる俺にメドゥーサは言葉を続ける。
「旅の途中で癒しを求めに来たのなら、ささやかながら歓待いたしましょう。しかし、もし姉様達を害しに来たというならば……」
メドゥーサから軽く殺気が放たれる。ああ、そういえば姉を守る為に戦ってたんだったか……もし俺が害しに来たと答えたならば確実に殺されてしまうだろう。俺は正直に答えることにした。
「ど、どっちでもない!俺は遭難してここに来たんだ」
「……嘘ではないようですね。分かりました。歓迎しますよ、我が家へ案内しましょう」
どうやら俺の言葉を信じてくれたらしい。良かった。助かったぜ……。
その後、彼女の後についていくと、島の中心部に到着した。メドゥーサは
「姉様方、勇士……では無く遭難者の方です」
と言うと遺跡の柱の陰から、メドゥーサと同じ髪色でツインテのほぼ同じ容姿の美少女が姿を現した。メドゥーサの姉であるステンノとエウリュアレだ。
「あら、人間じゃない」
エウリュアレがこちらを興味深げに見つめている。ステンノは
「あら、勇者では無く哀れな遭難者なのね、じゃあ女神としてどうするべきかしら?」
と首を傾げる。すると、メドゥーサが
「それは勿論……」
と言いかけたところで、
「皆まで言わなくても大丈夫ですよ。私が決めます」
「まあまあ、ここは私に任せなさいな」
とステンノとエウリュアレに遮られる。そして二人は顔を合わせると、ニヤリと笑った。
「「じゃあ決まりね(だわ)」」
「……なんです?」
そう尋ねると、ステンノが
「外敵でもなければ勇者でもないなら貴方を歓待するには条件があります」
と言い、エウリュアレが
「貴方が、先に私達を楽しませなさい」
と言った。
「楽しませる?」
「貴方、勇者に見えないけど、普通の人間でもないみたいだから。その力を使って芸を見せてくれないかしら」
「そう、私達ここでの暮らしは気に入っているけど、最近おも…勇者が来なくて退屈していたの」
「ちなみに俺に拒否権は?」
と尋ねると、メドゥーサは
「残念ながら、ありません……」
と言った。
「私達を楽しませるなんて光栄なこと断る方が失礼よね私?」
とステンノ。
「まったくね、私。そういえば、貴方の名前はなんていうのだっけ?」
とエウリュアレ。そういえば、名前を名乗っていなかったな。そうだな……前世の名前のどれかを名乗るのも良いが、ここは敢えて。
「ライダーメン(乗り手達)……いや、単純にメンと呼んでくれ」
「じゃあメン。さっさと私達を楽しませなさい」
「さもないと殺すわよ……メドゥーサが」
「ね、姉様方……」
なんかだんだん口悪くなって来てない?まあ特典を試すついでにやってみるか。俺が念じると俺の腰にベルトが装着された。
シャバドゥビタッチヘーンシーン!
「変身!」
チェンジ!ナウ
そして俺はベルトにリングを読み取らせると。俺の身体を魔法陣が通過し、俺の姿は仮面ライダーウィザードに登場する仮面ライダーメイジへと姿を変えていた。それを見ていた3人は俺が変身したことに少し驚いたようだ。そして俺はあるリングをベルトに読み取らせる。
フラワー!ナウ
すると、俺達の周囲に花が咲き誇る。
「「わあ……!」」
「この島、植物が殆ど見当たらなかったから生やしてみた。どうかな?」
「いいわね。もっと見せて頂戴」
「綺麗だわ……期待以上じゃない…」
「そういえば、花を見るのは久しぶりな気がします」
どうやら、好評のようだ。それから俺は色々な花を咲かせたり、踊ったり、歌ったりしてみせた。それを見たステンノとエウリュアレは大層喜んでくれたようだ。そして、大体終わった後、ステンノとエウリュアレは
「良かったわ。これは、お礼をしなければいけないわよねえ、私」
「そうね、久しぶりの貢物。それ相応の歓待をしなくてわね、私」
「「メドゥーサ」」
「はい。歓待の準備をします。素晴らしかったですよメン」
とメドゥーサは俺を称えると歓待の準備に行くのだった。
◇ ◇ ◇
こうしてゴルゴーン三姉妹に歓待されることになったは俺は、ご馳走を頂いた。場所が場所だけに魚介類ばっかりだったが、美味しかった。宴の最中、メドゥーサにこれからどうするのか聞かれた。俺は
「実は特に何処に行くかとか決まってないんだよな」
と言うと、メドゥーサは
「では、ここに滞在するのは如何ですか?」
と言ってきた。
「いいのか?迷惑にならないかな?」
「構いませんよ。それに、姉様方もきっと喜びます」
とメドゥーサは微笑むのであった。
そして、次の日からメンはゴルゴーン三姉妹の奴隷として滞在することになった。
この形のない島でやることはというと。ステンノとエウリュアレの身の回りの世話。メドゥーサとの戦闘訓練。時折上陸する魔物や『怪物』を討伐しに来た人間たちと戦うことである。どれも重労働だ。我儘なステンノとエウリュアレには振り回されるし、戦闘訓練はライダーの動かし方とか分かるのはいいけど。流石に元女神相手だと普通にキツイな。それに比べれば島に上陸してくる人間どもはライオトルーパーやライドプレイヤーの状態でもまあ行けてきた。
ここで特典の仕様の一端を紹介しよう。もしオールライダー物でもあったら十把一絡げにされるであろう量産型ライダーだが、使い分けてみてみると、格付け的なものが存在する。例えば、ショッカーライダー・メイジといった主役級の仮面ライダーに匹敵する力を持っている量産型は変身していると魔力とかのエネルギー消費が早い気がする。逆にライオトルーパーやライドプレイヤーみたいなまともな必殺技も持っていない、正真正銘戦闘員に毛が生えたレベルのライダーだとそのまま長時間行動できる。
あのメモ帳によると、スペックの高いライダーは消費が激しいが、訓練を重ねたりすることで、燃費をよくしたりできる。或いはサーヴァントのスキルシステムによる、スキルを誰かに師事したりすることで習得し、ライダーの使える技の1つとすることができるそうだ。ちなみに俺はメドゥーサに師事してそこそこの騎乗スキルをゲットし、ライダーマシンの操縦に生かしている。え?この時点ではメドゥーサは騎英の手綱持ってないって?うん。メドゥーサの腰使いで残機が1つ減るかと思いました♡話を戻すが、メドゥーサとの訓練や人間や魔物の襲撃は確実に俺をレベルアップさせていってると思う。この間はショッカーライダーの状態でメドゥーサから1本取ってるし、今なら量産型マッハの状態でも勝てそうな気がする。まあ油断したら瞬殺されるだろうけど。
そして今日もまたメドゥーサと戦闘訓練を行う。そして終わったらステンノとエウリュアレへのマッサージだ。最近慣れてきて、だいぶ上手くなったんじゃないか?と思っている。
「んっ……中々上手になったじゃない……」
「はあぁ〜気持ち良いわあ……そこよそこ」
と満足してくれるのは嬉しいが、こいつらの肌に触れる度に俺のSAN値がゴリゴリ削られる。
そんな現在の神代での日常はこんなものである。しかし、俺はこの世界の運命が残酷な物だとはまだ思い知って居なかった。
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