正直言って影の国での修行は地獄のようだった。具体的のどのようなものだったのかは割愛するが、古き悪しき体育会系を煮詰めたような感じだった。クー・フーリンはフェルディアと言う友達もできて楽しかったようだが、俺は毎日逃げ出したかった。しかし尋常ではない修行の効果はあったようで、最近伸び悩んでいた量産型ライダーへの変身時間はどんどん伸びていった。
「よし、今日はこれくらいにしておこう」
とスカサハが言うのを聞いて俺はホッとした。影の国はいつも薄暗くて分かりにくいがもうすぐ日が暮れる時間だ。
「いやー、疲れたわ」
と俺が言うとクー・フーリンが
「ははっ、結構だらしねえなメン!俺を圧倒したりスカサハ師匠に食い下がったのはまぐれか?」
と言ってきた。
「うるせえ」
と返すと、スカサハが
「ははは、メンとセタンタは仲が良いな」
と言った。
「そう見えますか?」
「うむ。だが喧嘩するほどなんとやらとも聞くぞ」
「いや、普通だろ」
「そして、気が変わった。ノルマを増やすぞ」
「「何ぃっ!?」」
これである。スカサハ師匠は気まぐれで修行時間を伸ばしたりする。マジで勘弁して欲しい。これだけではない。偶にスカサハ師匠の妹にしてライバルのアイフェが軍を連れて襲撃にくるのだ。スカサハ師匠は実戦訓練としているが姉妹喧嘩に巻き込まないで欲しい……まあアイフェはクー・フーリンに返り討ちにされて愛人となってからは比較的大人しくはなったが。代わりに師匠に修行のノルマを倍に増やされていた。
そんなこんなで俺達は最終試験にまで到達し、二十数人がかりで師匠に挑んだがボロボロにされた。しかし、合格は貰ったのだった。
「おい、フェルディアしっかりしろ!傷は浅いぞ!」
とクー・フーリンは魂が抜けてそうなフェルディアに呼びかける。俺も満身創痍だった。
「よし、ギリギリ及第点といった所だが合格だ。皆良く試練を耐えきった!」
とスカサハ師匠。俺達は正座させられていた。
「特にセタンタ、いやクー・フーリン。お前は私の今までの弟子の中でももっとも優秀だった!褒美としてゲイ・ボルクを与えよう」
とスカサハ師匠は朱色の魔槍、ゲイ・ボルクをクー・フーリンに授けた。これでクランの猛犬のトレードマークができたという訳だ。
「あんがと師匠。俺は此処での事は忘れられないだろうな」
とクー・フーリン。俺も同感だった。この地獄のような修行を乗り越えれば何かが得られる気がした。
「では早速、ゲイ・ボルグを使いこなせるようになる為にも一戦交えるとするか」
「げっ……」
とクー・フーリンは嫌そうにする。俺も正直戦いたくない。しかし、ここで逃げてもどうにもならない。
「行くぜメン!」
「来いよクー・フーリン!」
と俺達二人は戦闘態勢に入る。スカサハが開始の合図をする。
「始め!!」
俺はプロトメガウルオウダーにダークネクロムゴースト眼魂をセットした。
『スタンバイ!』
『ローディング!ネクロム!』
俺は仮面ライダーダークネクロムRに変身する。そして棒状の武器ガンガンハンドを取り出し、クー・フーリンの攻撃に備える。
「いくぜ!」
とクー・フーリンは飛びかかって来た。俺も迎撃すべくガンガンハンドを構える。
「はぁっ!」
「ふん!」
と俺の一撃とクー・フーリンの一撃がぶつかり合う。俺は続けて攻撃しようとするが、
「甘いな!」
とクー・フーリンは素早い連続攻撃を仕掛けてくる。何とか防ぐもののダメージは大きい。しかし、このままでは押し切られてしまう。俺は一旦距離を取る。そして必殺技を発動する。
『ダイカイガン!オメガシュート!』
「はああっ!」
俺はエネルギー弾を放つ。しかしあっさり避けられてしまった。
「どこを狙ってんだ?」
と余裕を見せるクー・フーリン。しかし次の瞬間、彼の背後から光る矢が飛んできた。
「何!?」
クー・フーリンは咄嵯に避けるも、右肩にかすってしまった。
「くそ、誰だ邪魔したのは」
矢の飛んできた方向を見ると、アイフェとその配下たちが居た。
「何だアイフェか。水を差すんじゃねえよ」
とクー・フーリン。成り行きとはいえ折角の俺との戦いを邪魔されたのには中々イラついているようだ。
「クー・フーリン……影の国を発つそうだな。私の事を捨てていく気か?」
とアイフェ。
「そういう訳じゃ無いが、俺達の道は違うってだけだ」
「そんな事は分かっている。だから私は自分の気持ちを抑えていたのだぞ。しかし、スカサハがゲイ・ボルクを与えると言うなら話は別だ。エメルという本命が居るのは聞いていたがスカサハとも通じているとは……許せん!」
とアイフェは殺気を放つ。アイフェはスカサハやクー・フーリン程ではないにせよかなりの実力を持っている。厄介なことになってきた。
「悪いが、お前は此処で死んでもらう!」
とアイフェは襲いかかってきた。
「ちっ、しょうがねぇな!」
とクー・フーリンも戦う構えを見せた。
「俺も戦うぞ」
『ローディング!』
と俺はビリーザキッド魂にチェンジする。ちなみに俺の所持している眼魂はダークネクロム眼魂とアレキサンダー眼魂の他に劇中でダークネクロム達が使用していた眼魂だけだ。そしてアイフェ達との戦いだったが、直前で消耗していたこともあってかなり苦戦したがなんとか勝つことができた。こうして俺達はスカサハ師匠や兄弟弟子達に別れを告げ、影の国を発った。
俺はこの時点でケルト腹八分目だったが、クー・フーリンの伝説を間近で見てみたかったのでもうしばらくアイルランドに滞在することにする。影の国から帰ったクー・フーリンがまずしたことは、アイルランドの領主の1人フォルガルの娘であるエメルに求婚することだった。なんでも前にも一度求婚に行ったのだが、フォルガルに武功の無さを理由に断られ、それが影の国に行くきっかけになったそうだ。
「しかし、影の国の修行を終えたってことだけでフォルガルは納得するのかな?まあ、修行内容を知れば俺なら生きて帰れただけで合格点あげるけど」
という俺に、
「そいつはまあ、行ってみないと分からねえだろうな。しかし、俺はエメル姫と結婚することに関しては妥協する気はねえ」
というクー・フーリン。
「本気でそのエメルって人に惚れてるんだな。あっあの城がフォルガルの家か?」
という俺。俺達の眼の先に城が見えて来た。
「ああそうだ」
とクー・フーリン。俺達は門番にクー・フーリンとその友だという事情を話し、フォルガルの城に入るのだった。城の謁見の間にて、俺とクー・フーリンはフォルガルと対面した。
「久しいなクー・フーリン殿」
「ごぶさたしております。此度は急にお訪ねして申し訳ありません」
「いや良い。貴公が来てくれたと言うことは、エメルとの婚姻の件だな?」
「はい、この通り持参金を持って参りました」
と言って袋を渡すクー・フーリン。
「ふむ確かに受け取った」
と受け取るフォルガル。そして次に彼は言った。
「では早速だが、貴公たちには死んでもらおう」
すると兵士達が現れ俺達を取り囲んだ。
「何!?どういうことだ!」
とクー・フーリンは叫ぶ。
「決まっている。エメルは我が娘。結婚など認める訳にはいかない」
「ふざけるな!こっちだって命懸けで戦ったんだ!ただで殺されるわけにはいかねえぞ!」
とクー・フーリン。フォルガルは
「最初の時点で完全に諦めるべきだったなクー・フーリンよ。やれ」
と言い、兵士達は武器を構えてこちらに近づいていく。俺は咄嗟に仮面ライダーG3マイルドに変身していた。俺も焦っていたのか態々G3よりも性能の低いマイルドになってしまった。そしてクー・フーリンは、歯をむき出し嗤うと、
「フォルガル。あんた馬鹿だぜ」
と言った。それからは一方的な展開だった。一時間と経たない内にフォルガルの城の兵は全滅した。俺も多少やったが、大多数はクー・フーリンが倒した。そして俺達は逃亡しようとしたフォルガルを追い詰めていた。
「まさかこんなことになるとはな……」
と呆然と呟くフォルガル。
「今更後悔しても遅いんだよ!」
とクー・フーリンが言うと、フォルガルは
「おのれ、クー・フーリンとメンに呪いあれ!」
と言うと、身を投げてしまった。
「ふん、最後まで下衆な奴だ」
とクー・フーリン。こうしてクー・フーリンは無事、エメル姫を娶った。エメル姫は気丈な女性で父親が死んだにも拘わらず、あまり気にした様子は無かった。まあ人格的にもクー・フーリンとお似合いの女性と言えよう。その帰り道に襲ってきた野盗を2人は戦車に乗って虐殺していったのにはちょっと引いたが。
そんなこんなでその後クー・フーリンはアルスターの赤枝騎士団に所属し、隣国コノートのメイヴの軍を撃退したりしてアイルランドで知らぬ者のいない英雄になっていった。俺はというと、腕を買われて赤枝騎士団の補欠として参加していた。さてアルスターはクーリーの牛争いとも呼ばれるコノートとの戦争中でアルスターの戦士達は女神の呪いを食らって成人済みの者は戦える状態に無かった。そういう訳で年齢的に呪いに引っかかっらなかったクー・フーリンと呪いの外にいた俺がコノートの軍勢を相手していた。クー・フーリンは相手に一騎打ちの申し出をし、相手側にもプライドがあったのかこれが了承され、アルスター側は何とかコノートの攻勢をしのいでいた。俺達は交代交代で戦っていて、クー・フーリンが3回戦ったら、俺が1回戦うといったサイクルを繰り返していた。
コノートの戦士達も弱くはなかったが、修羅場をかいくぐってきた俺にとって勝てない相手では無かった。ヘラクレスやギルガメッシュ王やスカサハ師匠に比べりゃモブだし負けてられない。そしてとうとうクー・フーリンは兄弟弟子にして親友、フェルディアと戦うことになった。フェルディアは元々コノートの出身であり、当然の様にメイヴの軍に所属していた。俺はクー・フーリンに
「フェルディアは俺が相手しようか?やっぱやりづらいんじゃないか?」
と問うと。クー・フーリンは
「いや、あいつは強いからな。俺がやる」
と答えた。クー・フーリンとフェルディアの戦いは壮絶を極めた。二人ともかなりの使い手だったので決着に数日要した。俺は二人の戦いを見物しながら、同じく隣で見物していた元赤枝騎士団の戦士にして今はコノートの将、フェルグス・マック・ロイに話しかけた。
「フェルグスさん、久しぶりですね」
「おう、メンか。お前はこの戦い、どっちが勝つと思うか?」
と尋ねてくるフェルグス。俺は少し考えて
「贔屓は入りますが多分、クー・フーリンでしょうね。でも、フェルグスさんの方はどうなんですか?」
と尋ねた。すると彼はニヤリと笑って言った。
「俺も同じ考えだ。クー・フーリンはアルスターの英雄の中でも屈指の猛者だからな。それにクー・フーリンはゲイ・ボルクを持っているのだろう?この差はデカいな」
そういう話をして数時間だろうか、遂にフェルディアはクー・フーリンのゲイ・ボルクの一撃で心臓を貫かれ斃された。そしてクー・フーリンはフェルディアの死体の前で涙を流していた。そして、その死体は丁重に葬られた。その後アルスターの戦士も次々と戦線に復帰し、アルスターはコノートに勝利した。クー・フーリンはコノート軍のトップである女王メイヴを捕えたが、クー・フーリンは相手が女であるという理由でメイヴを解放した。メイヴは
「覚えてなさいよクー・フーリンに仮面ライダー!いつか必ずこの仕返しはするんだから!!私を生かしたことを後悔させてあげる!」
と言い残しコノートに去っていった。俺は
「本当にこれで良かったのか?彼女、復讐する気満々だぞ」
とクー・フーリンに言った。クー・フーリンは
「ああ、構わないさ。奴は確かに恐ろしい敵だが、その時はその時だ。それが例えどんな結末になろうともな」
と言った。
「まあ、いいや。取り敢えずお疲れ様」
と俺が言うとクー・フーリンは
「おう」
とだけ答えた。
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