初恋の相手を探してポケモントレーナーになった男のはなし 作:姉醤油
ついに最新作スカーレット・バイオレットの発売が近づいてきましたが、皆さんはどちらをプレイしますか?
筆者はソウブレイズに心をやられたのでバイオレットを購入する予定です。
それではSV発売前になんとか書き溜めておきたいジム関連のお話です。
「うん、いいよ。バトルやろう!」
ポケモンセンターに宿泊しているトレーナーに声をかけて回っていると、すぐに相手は見つかった。
向こうも俺と同じ初心者トレーナーだという。
ポケモンセンターに隣接する、対戦用に整備されたバトルコートで俺たちは向き合った。
「行け、ヘラクロス!」
「初陣だ、出てこいヒノアラシ!」
相手のポケモンはヘラクロス。強いポケモンだが、タイプ相性ではヒノアラシが有利だ。
「ヘラクロス、つのでつく攻撃!」
「かわせ!」
角を向けてこちらに走ってくるヘラクロスを、ヒノアラシはひょいとかわして見せた。
ロケット団の騒動の時も思ったけど、やっぱりこいつはかなりすばしっこい。
「ひのこ!」
回避しながら器用に繰り出したひのこは、ヘラクロスの背中を綺麗に捉えた。
「クロッ……!」
クリーンヒット! むしタイプのヘラクロスにほのおタイプのひのこは効果バツグンだ。
「えんまくだ!」
ヒノアラシが吐いた炭はヘラクロスの顔面に纏わり付き、視界を遮った。
「あっ……まずい、かわらわり!」
相手は咄嗟に技を使うよう命じたが、闇雲に振り回した手刀がヒノアラシの身体に命中することはない。
「今だ、かえんぐるま!」
狙いを定める余裕を得たヒノアラシは勢いよく回転し、炎を纏いながらヘラクレスの腹部めがけて突っ込んだ。
「クロー!!」
決まった! 戦闘不能、ヒノアラシの勝利だ!
「よーしっ!! よくやったぞヒノアラシ!」
「ヒノヤァ〜!」」
あいつも超得意げに両手を腰に当ててドヤ顔をかましている。
「ありがとうヘラクロス、ゆっくり休んでくれ」
倒れたヘラクロスをボールに戻し、対戦相手–––––ブンタが声をかけてきた。
「……バトルしてくれてありがとう! 君のヒノアラシ、強いんだね。ヘラクロスが翻弄されたよ」
「ああ、こいつすごくすばしっこいんだ。やったな、初めてのバトル勝利だ!」
「ノーッピ!」
「うんうん、いいバトルだった!」
審判を務めたイチカさんも労いの言葉をくれた。
「この調子ならジムにも行けるかもね!」
実際にジムバッジを八つ取った人のお墨付きだ、偽りはないだろう。
「アサギジムに行くのかい? 僕も以前挑戦したんだけど、負けちゃったんだ。ミカンさんは強いから気を付けてね」
「あぁ、ありがとう」
「それじゃ僕は失礼するよ、ヘラクロスも元気にしなきゃいけないし。勝負してくれてありがとう!」
「うん、こちらこそ!」
「ほい、じゃあおさらい。君はポケモンリーグに行って四天王とチャンピオンに挑戦したいのね?」
「はい」
「でもリーグに直接行ってもいきなりバトルはできない。その前にやんなきゃならないことがある」
「ジムバッジですね」
「そ! ジョウトの各地にあるポケモンジムにいるジムリーダーに勝って、ジムバッジを集めなきゃいけないのだ!」
「それで、そのジムの一つがこのアサギシティにあると」
「そう、アタシがジョウトを旅してた時は無かったんだけどね。ここのジムリーダーはアタシたちが昨日会ったミカンちゃん。はがねタイプの使い手だよ」
「はがねタイプ……ならこいつが有利ですね」
隣にちょこんと座る相棒の頭をポンポン撫でた。
「そう、そこはラッキーな点だね……ただし!」
「ただし……?」
「ジムリーダーはいわばそのタイプのエキスパート。決まったタイプ一本で戦える腕と知識があるのよ。……ってことは?」
「不利なタイプ相手の戦い方も熟知してる……?」
「そ! 不利なタイプに対して弱点を突ける技を覚えさせたり、ポケモンのとくせいを利用して不利な状況を逆手に取ったり。……まあ色々あるけど、要は弱点を突くだけじゃ足りないってわけ」
……まぁそれはそうだろう。簡単に勝たせてもらえる相手じゃないのは、初心者の自分も分かっているつもりだ。
「じゃあ、他にも何か作戦立てなきゃですね」
「その通り! そこで注目したいのがミカンちゃんが使う“はがねタイプ”の特徴なんだよね」
「はがねタイプって言うと……防御力が高い、とかですか?」
「そう。単純に防御力が高い上に、防御面のタイプ相性でたくさんのタイプを効果いまひとつにできちゃうの」
「でも俺の手持ちはヒノアラシとコイルですし、タイプ相性ではだいぶ有利じゃないですか?」
「そう、だからその点を利用する。そうだなぁ……例えばふたりとも……」
アサギジム戦に向けた作戦立ては、順調に進んでいった。
「そういえばずっと聞きたかったんですけど」
「ん?」
「イチカさんはどうして俺にここまで協力してくれるんですか? バトルの事とか教えてくれたり、旅の面倒も見てもらったりしちゃって」
「あぁ、そゆコト。簡単な話よ、君がアタシの若い頃に似てるから」
「いや、若い頃って……」
今も若いのでは? と思ったが口にするのはやめた。下手にこういうのに触れるのはまずい。
「まぁいいじゃん、理由は何でもさ。それより君の話も聞かしてよ。ほら、昨日言ってた『トレーナーを志したきっかけ』ってヤツ」
「はい。俺が昔ジョウトに住んでた頃にお世話になった人なんですけど、その人のバトルを観て、バトルがしてみたいって思うようになって。ポケモンの事とかも、昔その人に色々教わったんです」
「ほぉ〜ん、で? 綺麗な女の人だったん?」
「えっ、どうして女性って分かったんですか?」
「いや〜、なんか鼻の下が伸びてたからサ」
……そういうことか。これはマズい。うちのママみたいな感じだ……。
イチカさん、なんかニマニマしてるし。
「で? で? それが初恋なん? ん〜?」
腹立つゥ〜……。思春期男子にコガネのおばちゃんみたいなウザ絡みしてくるタイプの人だって分かってたらこの話絶対しなかったぞ……!
「すみません、ジムの挑戦に来ました!」
ユウイチくんがジムの受付に元気よく声をかけると、手慣れた様子でジムのバトルフィールドに案内してもらった。
「ジムへの挑戦ですね、お受けします。……あら、あなたは昨日の……?」
「はい、ユウイチって言います。まさかあなたがジムリーダーだったなんて。今日はジムの挑戦に来ました!」
「そうですか、わかりました。挑戦をお受けします! バッジはいくつお持ちですか?」
「まだ持ってません。ここが初めてです!」
「それじゃあ初めてのジムですね、うちを選んでいただいてありがとうございます。でも簡単にジムバッジは渡しませんよ」
にこりと微笑むと、彼女はバトルフィールドの向こう側、つまりユウイチくんの反対側の位置についた。
「それじゃ改めて……あたしはミカン、このアサギジムのジムリーダーです。使うポケモンはシャキーン!! …………は、はがねタイプです……!」
((自分で言ったのに恥ずかしがるのか……))
勝負の判定をする審判が確認のためルールを宣言した。
「それではこれより、ジムリーダー……ミカンとチャレンジャー……ユウイチのバトルを始めます! 使用ポケモンはジムリーダーは一体、チャレンジャーは手持ち全てを使用可能です! 交代はチャレンジャーのみ認められます!」
「一体!?」
「はぁ!? 一体!?」
6話を読んでくださってありがとうございました。
本当はいきなりジム戦から入るつもりでしたが、新米トレーナーの初戦がいきなりジムというのはどうだろうと思って最初にワンクッション置いてみました。
ブンタくんもいずれ素晴らしいトレーナーになることと思います。
最後に今回のポケモン紹介コーナーです。前回ヒノアラシのとくせいを書き忘れてましたが、「もうか」です。(向こうも改訂してとくせいを追記しました)
⚫︎ユウイチのコイル
技:ソニックブーム、でんきショック、でんじは、マグネットボム
とくせい:じりょく