【正直】某騎士団の副団長なんだが親友のイケメン金髪騎士団長が女の子と入れ替わって俺に泣きついてきた【ドチャクソ好み】 作:ディム
今のぼく「おのれ……おのれ残業……おのれ納期……おのれバグを出すだけ出してさっさと盆休みに入る同僚……!!」
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……(゚Д゚)!?
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オリアスの部屋の外に立たされること一時間。手持ち無沙汰ゆえ、諸々の思惑も兼ねて俺と我が友……ウィオラとなったオリアスの着用していた衣服の類を全て洗濯用の魔法に突っ込んだところで、ようやく入室の許可が降りた。ウィオラが落ち着いたらしい。
ウィオラの恐怖を再発させてはならぬ、と、オリアスとウィオラ、二人だけで行われた事情聴取。聞くところによると、ウィオラ本人にもこうなった原因は分からないらしい。
……ウィオラ。姓はない、孤児の生まれ。帝都からほど離れた、教国との境近くに位置して『いた』村で、シスターとして暮らしていたらしい。
つまるところ……連中との戦争で焼け出され、奴隷に身をやつした人間。このご時世、あってはならないが……しかし、よくある身の上のひとつだった。
彼女は教国ではなく帝国の奴隷商に身柄を抑えられたらしい。彼女にとっては幸か不幸か、彼女は見目が――顔だけでなく髪も身体も、極めて、非常に、この上なく――整っており、おまけに『魔力を感じやすい』体質でもあったそうだ。お陰で他の奴隷と比べても高く……そして良い環境に売られるだろう、と馬車で七昼夜もかけてここ、帝都まで運ばれてきた。
「……聴く限りによると、確かに何も知らぬようだな」
そして、七日七晩ずっと奴隷として売りにも出されず、捕まえられたままだと言うのならば錯乱するのも理解出来なくはない。だからと言って、オリアスに――俺の認める無二の友に成り代わろうとするのは無茶が過ぎるが。
「うん。魔法の行使どころか知識自体ないみたいだ。魔力の感受性、というのは……この、肌がぞわぞわとくすぐったかったり、身体が熱くなったりする『これ』かい?」
「ええと、はい。それのせいで、私は自分の身体の内外の魔力に区別がつけられなくて……」
入れ替わる前は魔法が使えなかったらしい。が、その辺りはどうにもよく分からん。あとで教本を読むとしよう。
「……アッシュ? 君、その程度の知識しか無いのに、あの魔法院の脱走者相手に自信満々で戦いに行ったのかい?」
「む? ああ、『魔人』のことか。そうだ、奴の魔法は難敵ではあったが、斬れない程ではなかった。お前もそうだろう――むぐっ」
「そんな訳ないに決まってるだろう! 全く、君は……」
俺が床に座っているのを良いことに、オリアスが俺の頭をぺちん、と叩く。解せぬ、が、こう……。今の澄み渡る鐘の音のような声を乱して叫ぶオリアスの声も顔も最高――げふん、違う、違う。最高ではない。コイツをそんな目では見ない。
それはともかく、『魔人』のことだ。魔法院の元次席で、ある分野においては首席をすら凌ぐと噂された女……だった。
帝国に齎す恩恵も大きなものだったが……魔法院を離脱し、己の欲のままに非道を重ね始めた故に、我々騎士団にに討伐の任が与えられた。それが、ちょうどオリアスが『ウィオラ』になる直前に起こった出来事。
となれば……。
「ふむ、『魔人』のことだが。奴の塔から押収した魔具が原因、ということはないか?」
「……なるほど、確かに。むしろ、一番にそれれを疑わなかったのが……いけないな、僕も動揺しているらしい」
それはそうだろう。口には出さないがそう思う。俺の部屋でシャツの裾を押さえて腰から下を隠しながら赤面していた奴が正気の筈はない。……魔法映像に残しておくことが出来れば――なんでもない。
「それで? 押収物は?」
「昨日、教会へ運んで封印を施して貰ったよ。……なるほどな、その道中で何かあったのならば……彼女の身体は魔力に反応する性質だとするならば……」
ぶつぶつと思索を巡らせ始めたオリアスと、その横で昨日何があったかを必死に思い出そうとするウィオラを尻目に、俺は執務机に載せてある書類を手に取った。
ここは騎士団で、頭の出来より腕っぷしに才能を振り分けたような連中が――俺も含めて――多いが……それでも歴とした組織である。組織である以上、活動の記録は細かく残されている。何の月のどの日にどこへ向かい、何をし、どのような相手を討伐し、何を押収したか。押収物の管理や始末はどうなっているか。
故に、資料を突き合わせれば――
「……む」
「ん? どうしたんだい、アッシュ」
「……オリアス。お前らしくもない」
俺はオリアスに二枚の書類を突きつける。一つは押収物の持ち出し……教会にて封印してもらうために、何を隊舎から運び出したかの記録。
もう一つは――教会が、何をどれだけ封印したかの記録。それらのリストに記載された魔具は、殆どが一致している。
そう、『殆ど』だ。完全に一致していなければならないにも関わらず。そして、その内のただ一つの差異は。
「これだ」
差分を指差して突きつける。俺でもわかる程に魔力に満ちていた魔水晶の結晶が、封印記録には……ただの灰結晶として記されている。
「そんな筈は……いや、参ったな。アッシュ、僕の記憶には、それが魔水晶であった記憶がない。どういうことか、分かるだろう?」
「なるほど……つまり?」
がくり、と肩を落とすオリアス。本当に君は、などと言ってはいるが、そんなことを言われても困る。俺が切った張ったしか出来ないのは良く知っているだろうに。
「……つまりだ。十中八九これが原因だろうが、それが僕の記憶にない。つまり、僕の記憶は改変されている……と、思われる。ついでに、彼女の記憶もね」
「は……はい。昨日、何か変わったことは無かったか思い返してみましたけど、なにも……」
オリアスはいつものように、腕を組んで頷……こうとする。頷こうとして、もにゅんっ、と、その豊かな双丘を、自分の腕で持ち上げ強調させた。
「……ぅっ」
そして、赤面して手を解き、背中に回した。
……それは非常に大きく、そして柔らかそうで、なによりも美しい形をしていた。俺の目には、彼……彼女……オリアスが騎士服ではなく、俺の布の服を着ていた時の情景も、当然焼き付いている。
焼き付いているからこそ、『それ』がどの程度のモノであるのかは、理解できる。
考え込むフリをして、目を瞑ったのは間違いではなかったようだ。
「……どうした、オリアス。顔が赤いが」
「し、しらばっくれても分かってるよ。全く君は……そりゃあまあ、分からなくは無いけど……僕なんだよ?」
間違いだったようだ。
だが、だからといって素直に頷いては……語るに落ちた、という感じがする。何より、俺は親友をそんな目で見ないと誓ったのだ。だったら、やはりそんな目で見ていないことになる。完璧な理論だ。一分の隙もない。
「何の話だ。……それで? その水晶が原因なのか?」
水晶とオリアスの胸部のどちらが大き――流石にダメだろうこれは。復唱する。彼女は俺の親友オリアスで、俺は彼女をそういう目で見ない。……よし。
「ほぼ確実に、ね。今回は僕と彼女が入れ替わったわけで、証拠品と資料を残していたからどうにかなったけど……そうでなかったら、おそらく入れ替わった原因は、誰にも分からなかった筈だ」
「……? だからどうなるのだ、オリアス」
「あの、こういうことでしょうか、オリアスさん。原因が分からないという事は、解決の方法も分からない……ということ。これで、仮に水晶が紛失していたりしたなら……」
なるほど。ようやく、オリアスの言いたいことが理解できた気がする。そして、俺より先に彼女……彼? ウィオラが理解しているのは何故なのか。
「つまり、お前はこう言いたい訳か。もしも『魔人』が水晶を使っていたならば、何の証拠も無しに別の誰かに成り代わっていただろう、と」
「ああ。水晶が使われていないところを見るに、奴が健在である危険は無いようだが。……僕と彼女の例を見るに、魔法適性は肉体に据え置きのようだし、試作品だったのかも知れないね」
オリアスは、団員や俺に物事を説明する時の、いつものポーズ……腰に手を当てて、人差し指をぴん、と伸ばす格好で説明を続ける。
……いちいち破壊力が高いな、我が親友よ。分かっているか、お前は説明をする時、少しばかり得意げな声音になるのだ。今の声でそんな風にされると。非常に困る。胸の奥がグッ、となるのだよ。
そんな俺の心境を知らず、我が友は説明を終える。
「……と、いうわけで。効力を失っていると思われる以上、真っ先に行うべきは魔法院主席殿への面会だね。そうでなければ、再使用も検討したんだけど」
「それから、事情を伝える相手は最小限に……ですね。確かに、『身体を入れ替える』なんて魔法、知られれば何に使われるか……」
俺が高尚な思索に耽っている間に、ウィオラもかなり落ち着いたようだ。
しかし、この……俺の親友の姿をしている彼女、ウィオラであるが。口振りの端々から、その知性の高さ、思考の早さが伝わってくる。元いた村ではシスターを務めていた、と言っていたが、であれば説法をすることも、教典を読み、誦んじることもあっただろう。それ故の聡明さなのだろうか。
「とにかく、まずは魔法院。その方針だな? オリアス」
「ああ、うん。それで行こう……押収した資料一式は渡してあるし、後は……院の開く午後まで待って、向かうだけだね。遣いのものは一人、派遣しておく必要があるけど」
うむ、と頷き……はた、と見る。見るのは、ウィオラという美少女の肉体となった我が友オリアスの姿。
我が友はいま、騎士団の隊服を身につけている。似合っているかいないか、という話ならば似合っていることに間違いはない。だが、それは目を惹くということと同義であり……そして、注目されるのは、あまりよろしくはない。
何せ、この騎士団には女性の団員は一人として存在しない。それは皆にも知れ渡っており、故に今のオリアスが目撃されれば、それは噂となることだろう。これだけ可愛いのだから尚のことだ。
つまり。
「なあ、オリアス」
「ん? 何かな、アッシュ」
「その格好で往来を歩くのは不味い。人目を惹くぞ」
す、とオリアスが表情を変える。ああ、異なる顔と身体であっても、この顔つきは間違いなく我が親友に相違ないだろう。
「それは……その通りだ。そして、避けたい。だね?」
「ああ。俺その服装で往来を歩いている『女』は噂になる。それはよろしくない。ましてや、『俺』と『お前』が並んでいると尚のこと、だ」
我等が騎士団に、家事手伝いなどを除いて女の団員は存在しない。それは、性別による差別を行なっている……という訳ではない。
この帝国には、我等が皇帝の剣たる騎士団がいくつもある。その筆頭たる我等に求められているものは、『最強』であること。小細工、調略、策謀、あるいは絡め手に奇襲――そして、単純な正面戦闘力。
何のことはない――ただ純粋に、実力だけで選んだら、男しか採用できなかった、ということだ。
実力のある女性もいない訳ではない。魔法を駆使し、身体能力を底上げし、技を磨き、才を駆使する強い女性騎士候補もいた。女ゆえの柔らかさやしなやかさを武器にしようとした者もいた。
だが。此処に集う馬鹿どもが……彼女らに出来ることが出来ない道理はなかった。
年齢問わず。男女問わず。生まれの貴賤を問わず。自らにない武を貪欲に吸収し、むくつけき男でありながら女の振るう剣をすら収める馬鹿ども。
そして、そうして比較したならば……単純に、『敵を殺す生き物』としては、素の腕力と、頑強さに優れた男しか残らなかった、というわけだ。
そして、その差を見せつけられてなお剣を握り続ける女性騎士たちは第二から第十騎士団にて剣を摂っている。
だからこそ。この制服に袖を通す『女』は、嫌でも噂になることだろう。
「……そう、だね。けど参ったな……」
「? 何がだ」
「君が言ったことだろう、アッシュ。まさかずっと外套を頭から被っている訳にもいかないし、あの襤褸を着続けるのも……荷馬車に隠してもらって、か……? いや、ウチの馬車は出払っているし、新しく借りるには時間が……」
はて。何を言っているのだろう我が親友は。
「そこの御用服屋で女性服を買えばいいだろう」
「えっ?」
「えっ?」
ぽかん、と呆けた顔のオリアス。いや可愛いな――違う、そうじゃない。キュートだ……これも違う!!
ごほん、と咳払いをして、
「いや……確かに、御用商人の店は近いけど……! そこまで行くのにも見られる危険性はあるだろう!? ほら、君の部屋着でも――」
「必要なことだ。いずれは用立てねばなるまい。ずっと俺や、お前の部屋着を使い続けるつもりか? それに部屋着は全て洗濯したからな」
「全て!?」
「全て」
顔を真っ赤に染めて、ああ、うう、と可愛らしい声を漏らす我が友。ふふ、お前は確かに優秀だが、これは戦だ。そして戦であれば俺が敗ける道理はない。
「直ぐに元の身体に戻れるのだとしても、『ウィオラ』は俺が買った奴隷だ……外向けには、だが。どちらにせよ、衣類は用意せねばなるまい。……ああ、そうだな。であれば、お前も同行し、似合う服を選べば良い」
オリアスの顔でぽかん、と呆けているウィオラに話を向ける。さあ我が友よ、俺の勝ちだ。観念して、ちょっと胸部が強調されたスカート丈の短い太腿のちらりと覗く感じの可愛らしい服を身に着けるがいい――
「あの。騎士の方は居なくても、給仕の方になら女性は居るんですよね? なら、其方にであれば私の身体にも合うサイズの制服があるのでは……?」
「……」
「……」
数時間後。俺と、『オリアス』……ウィオラと。
給仕服を着て、あたかも従者のような顔をした『ウィオラ』……ほんのり頬を染めたオリアスは、並んで隊舎を出た。
つまるところ、敗戦である。おのれ。
Tips:ヴァインナイト
『黒の腕』アッシュの異名のひとつ。
魔法の付与された黒いガントレットを常に身に着け、いかなる戦場に於いても崩れず、敵を打ち砕くアッシュに帝国が下賜した、アッシュのための
守護系統の魔法の最上級、
言うまでもなく、ボインナイト呼ばわりを外部のものに聞かれたが故の嘘である。
称号を与えられた翌日、団員と団長オリアスくんは立てなくなるまでボコボコにされた。