微妙に役立つ宝具でリリカル入り   作:フロッピーディスク

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懐かしきプロローグ

 かの世界一有名な名探偵は言った。

 

「失敗するのは人の常だが、失敗を悟りて挽回できる者が偉大なのだ」

 

 っと。

 

 けれど誰も彼もがかの者のように自身が起こした失敗を受け入れ、悟りが出来る訳も無く、その失敗を気にし続ける者もいた。まぁ、率直に言うと俺だね。

 

「ハァ、今日は失敗しちまったぁ……」

 

 仕事が終わり帰宅した直後、1人っきりになった安心感がそうさせたのか俺はそう胸の内をついつい吐露しちまう。仕事において鼻で笑えるほどの些細なミス。そんなミス、気にしないのが一番なんだろうがこれまでミスをする事が無かった俺はどうしてもそれが気になって仕方がない。

 

「あ"ぁ〜疲れたぁ」

 

 労働による疲労感と闘いながら何とか靴を脱いで部屋に入ると、冷蔵庫から缶ビールを取り出して座椅子へと腰掛ける。手元のリモコンを操作し、テレビのモニターを点灯させると缶ビールを開けた。プシュっとガスの抜ける音と共にほんのりアルコールの匂いが漂い始めると口にする。

 

 正直なところアルコールの苦味は甘党な俺からしたら好きでは無い。けど、仕事終わりに飲まなきゃやってられないって感じるのは大人になってしまった相かね……

 なんて考えがら何か面白そうな番組がないかチャンネルを切り替え、番組表の一覧を映すが時刻が時刻な為にやっているのは興味のない内容を報道するニュースやゴシップ、あとはつまらないドラマぐらいだ。だからだろうか、それが目に止まったのは。

 

「リリカルなのは……ね。まどマギのご先祖かな?」

 

 魔法少女リリカル☆なのは1stシーズン一挙放送。時間が無いことから全く見なくなり、興味も薄れつつあったアニメ。学生時代には腐るほど沢山のアニメを見ていて最近のを除く、大体のアニメを網羅していると自負していた俺は見た事のないタイトルに興味が湧いた俺は今夜の酒のつまみにと思いそれを視聴するのだった。

 そして全13話の一挙放送が終わり、流れゆくエンドロールを見ながら一言。

 

「何というか、ある意味懐かしくなるアニメだったな」

 

 俺も若かりし頃に持っていたと思う青春と結局今に至るまで不器用な俺が作る事の出来なかった強く、深い友情。誰しもが思い浮かばせる親友と言う2文字を今の俺は羨ましく思えた。

 確かにこのアニメは古い作品だ。その為に現代の視点から見れば寂れ、使い古された展開やストーリーばかりなのだが誰もこれもが俺が学生時代、それも小学性と言う幼少期に見ていた思い入れ深い作品と酷似している。だからか、この作品は俺の中で何かあったかいモノを呼び起こす。繰り返す日常生活によって薄れつつあった熱意って奴を。

 アルコールの効果もあってか良い気分のまま俺は酒盛りの跡を片付け、就寝の準備を整えると灯りを消して床に就く。あったかい布団は気持ちのいいモノ、気分も良いし今夜はぐっすり寝れそうだ。

 

「リリカルマジカル、良い夢が見れますように……」

 

 そして俺は、目を瞑った。

 

 

 

 

※※※

 

 目の前にはチェス板。真っ黒な空間に俺はポツンと座り、目の前の机に広がる初期状態のチェス板と二つの砂時計。そしてそのチェス板を挟んで存在する真っ黒にノイズだらけの自分は語り出す。

 

「初めまして自己紹介が必要かな? 私は探偵だ。突然だが、君には私の代わりに大きな謎を解いてほしい。私が直接解き明かす事が出来ないのは残念と言う他ないが、私の推測では君は私の次に理想的な人物になり得る才能を秘めているようだ。だからこそ、私は君に託そうと思う」

 

 サラサラと砂時計の砂は落下する、そして時が経過し、リミットが迫る。

 

「切り札は既に用意した。このカードを有効的に使って是非この謎を解き明かしてくれ」

 

 自陣のチェス達が真っ白に変わる。俺はその一つへ手を伸ばし、動かすと砂時計をひっくり返した。

 

※※※

 

 ジリジリと目覚ましの音が頭に響く。煩いそれを寝惚けた頭を動かし、止める事を思いついた途端、それを止めようと動くが愛用のスマホが何処にもない。ゴソゴソと音の発信源を手探りで探り当てるとやけに大きい事がわかる……目的のスマホよりも何倍もの大きな事が。

 

「……ぬぁ?」

 

 不思議に思った俺は寝ぼけながらも目を擦り、霞む視界をクリアにさせた。そして目に入った光景に言葉を失う事となる。

 寝起きで眼前に広がるのは見慣れた天井。だが、その天井は大人になって働き出してから1人、移り住んでいたアパートの天井では無く俺が幼少期を過ごした実家の天井のそれであった。

 

「……俺ってばいつの間に実家に里帰りしてたっけ?」

 

 不思議に思いながらも未だにジリジリと鳴り続ける手に持つ物体、実家で使っていた目覚まし時計を停止させる。しっかしおかしいな、俺ってばスマホを買ってからは実家に帰ってもオンボロなコイツを使って無かった筈なのに……寝ぼけて使ったかな? 

 

「あ、仕事行かなきゃ」

 

 目覚まし時計を見ると針は朝の6時を指し示しており、あと2時間もしたら朝礼が始まってしまう。そう考えた俺は行動に移した。

 実家から仕事場までは車で1時間の距離。今から急いで着替え、支度しなければ間に合わない。スーツへと袖を通す為いつもスーツを掛けていた衣装ケースを探すが無く、そこにあるのはハンガーに吊るされた明らかに男児用と思われる白い制服のみ。

 

「?」

 

 おかしいな。何て考えながらベッドから降りるが……視界がやけに低い。足元を見下げるとそこには若々しい手足がある。

 まさかと思い小物入れとして使っていた引き出しから手鏡を取り出し、俺は俺自身の顔を見た……見てしまった。

 

「ま、マジかよ」

 

 さっと血の気の引いた感覚が全身に広がる。手鏡に写るはやはり俺の顔。だがその顔は酷く歪んでおり、顔色は悪く青を通り越して白くなっている。だってそこに写るは労働で疲れ切った顔では無く若々しく、希望に溢れていた時だった小学生の頃の顔だったのだから────

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