ありふれたデスゲームの生き残りが世界最強 作:香織雫推し
人狼ゲームを終え館を出ると俺の服は血まみれだったものから新品みたいに綺麗になっていた。それどころかアタッシュケースは一つだけだがそこに通帳がついており、自分の名義になっている。
番号も自然と頭のなかに入っている。
ここの運営は本当に不思議だ。なんの力か分からないが魔法みたいなことが起こる。
もう突っ込む気力はないけど。
家に帰ると家が家具が数種類消えていた。
いや、実際は違う。親父や先生たちに関連していたものは全て消えていたのだ。残ったのは母の仏壇のみ。
まるで元からいなかったように。
写真も確認したが卒アルなどからその当時の担任の写真も、親父の写真も、…由佳の写真も消えていた。
どれくらいの時間そうしてたのだろうか。俺は時間感覚も分からずただアルバムを見ていたのだが。
……腹減ったな。
もう何時間も食べていない。どれだけ空虚でも生理現象は発生する。
学校にもいかないと疑われるだろうし、元々友達はいないので適当に暮らしてもいいだろう。
アルバムしかない部屋で俺は立ち上がり部屋を出る。
あんなDV男でも自分の父親だと思うことがあるなんて思いもしてなかった。
一人っきりの部屋で俺は小さく息を吐く。一応死んでもらったら困ったのからか少ない小遣いは置いていたし。
一人って寂しいもんだな。
外に行ったら殺人鬼になるのだろうか?でもいないはずの人を殺したってことになるのか分からない。
ただ、それでも殺した時手に伝わった肉の感触、そして血の鉄臭さは忘れてはいない。
そういや、料理もできないのにどうして腹を満たせばいいんだろうか?
惣菜ばっかりでもいいのだろうか。
いくつか思考で時間が経ち、でも正直面倒臭いという気持ちがある。
……まぁどうでもいいか。腹さえ満たせれば。
アタッシュケースから札束を一つ取り出す。面倒だしまとめて買ってしまえばいいだろう。
そういや、日付はどうなっているんだ?
家の中には何もない。時計やテレビさえも
元々俺の家は何も自分のものはない。
物押で寝て、図書館で勉強をすることくらいしかない今までの学生生活でもあるので友達はいたことすらない。
だから俺のことなんて誰も気づかないだろう。
そうか。そういえばそうだった。
あの館は由佳がいたから、気づいてなかった。
俺は元から一人だったんだと。
何曜日なのかも分からないが学生服が見える。どうやら今日は平日であることは確かだろう。
いつも通っていたスーパーを目指し歩く。スーパーを着き買い物かごをとった時だった。
「あのなぁ、これヴァンテージものなの?レアものなの。謝ってすむ問題じゃないんだよ。分かる?そこのところ分かってますか?」
「本当にすいません。クリーニング代お出ししますので。」
「だ〜から、そういう問題じゃないって言ってんだろ!!」
するとヤケに騒がしい声が聞こえてくる。ヤケにイライラしてついそっちを見てしまう。
そこには泣いている少年と謝っている婆さん、そして年上の男性が怒っている。
その男性の足元にはたこ焼きが落ちていてズボンにはソースが付いている。
「くっだらねぇ。」
「は?」
俺がボソッと呟くとどうやら聞こえていたらしい。
男性が俺の方に詰め寄ってくる。本当に面倒臭い。
「あっ?てめぇなんて言った。」
「所詮服だろ?小さい子を恐喝して泣かせ謝っている婆さんを責めるのは違うだろ。こんな道中で怒鳴ってよそ様の迷惑とか考えないのか?」
「所詮服だと?」
「あぁ。クリーニングができないほど高級な服かもしれない。でもな。俺からみたら所詮服だ。子供を泣かせて婆さんを恫喝する。そこまでのものだとは見えないけどな。」
……あれ?どうしてこんな状況になった?まぁ、思っていることが全部ぶっちゃけているからかもしれないけど。
熱がこもりいつのまにか喧嘩腰になっている。
「いい加減頭冷やせば。あんたにとったらその服は価値のあるかもしれないけど今の状況は周囲からしたらただの恫喝でしかない。本当にその服に価値があるのかも分からないしな。」
「それならてめぇが代わりに払えるのかよ。弁償代100万。」
「……はぁ。」
本当に頭が血が登っているらしく周囲の冷ややかな視線がその男に向けられる。
「払えないくせに関係ない奴が」
「ほれ。」
俺は持ってきた札の束を渡す。どうせ10億あるから100万なんてはした金だ。
「これでいい?多分あるはずだけど。」
するとざわざわと声が上がり始める。するとその男性は金の厚みに気付く。
今の状況に気づいたのかその男性は冷や汗が垂れている。
「ねぇ聞いているんだけど?これでいいか?」
「あ、あぁ。払ってくれるならこれで。」
「あぁ、ちょっと待て。おい坊主。」
「えっ?」
泣いている少年は許してもらえるのかと思ったのか少し泣き止むのをやめていた。
でもそっちにも責任があるわけなので。
「お兄さんに謝ったか?」
俺の言葉にその少年がキョトンとする。
「元はといえば坊主が前を見てなかったのか状況は分からないけどお兄さんにぶつかったんだろ?俺にはそのズボンに価値があるかどうかは分からないけど。お兄さんにとったら価値のあるものなんだろう。坊主も自分のおもちゃを誰かに取られたりしたら嫌だろ?」
すると一度頷く少年。俺はそれに続く。
「悪いことをしたらどうすればいいんだ?」
「……ごめんなさい。」
「俺にじゃないだろ?」
「…ごめんなさい。」
「お、おう。こちらこそ怒鳴って悪かった。」
どうやら冷静になったのか男性も謝る。
それと同時になんでこんなに熱くなったのか少しだけ分かってしまう。
「……婆さんもちゃんと目の届くところに見てあげて叱ってやれ。孫を甘やかすことだってできるけど叱ることも俺たちにはできない。元々はこの男性が言った通りそっちの責任だろ?……ちゃんと叱れる時にしかってやれ、自分でも分かっているとは思うけどずっと一緒にいられるわけではないんだから。」
するとそのお婆さんはその言葉に少し眉を潜める。なんでイライラしたのか?ここまで熱くなったのか。
ただ羨ましかったのだ。少年のことを守ろうと身を張って守っている婆さんが。俺の家族とは違ってちゃんと家族をしていたから。
「…とりあえずこれでいいな。それと、そこのお兄さん。それはあげるから。もしやりすぎたと思うなら、……それで家族に恩返しでもしてあげて欲しいかな。僕はもうできないから。」
「っ!……坊主の金じゃなくてちゃんと働いてやるから余計なお世話だ。」
「そう。じゃあこれでおしまい。商売上がったりになるからとっとと散った。」
「お兄ちゃん。」
「ん?」
「ありがとう。」
「……おう。家族は大切にな。」
俺は笑えているのか分からないが笑みを向けている。婆さんも頭を下げていたし、少しばかりは助けられたように感じる。
……俺みたいにならないで欲しい
いつしかスッキリとした感情に戻り俺は今までの面倒臭さは消え、お金を取りに家に戻るのだった。