帝都新聞朝刊 2675(平成27・2015)年1月29日
新世界初の外交接触 相手国の名前はクワ・トイネ公国と判明
外務省は、昨28日夕方17時より臨時会見を開き、新世界において他の文明的国家との初の接触を果たしたとの発表を行った。本件についての詳細として、竹崎季長外務省報道官は、次に記載する経緯と内容を相手国に伝えたことを説明した。
この世界における暦である中央暦1639年1月28日午前11時9分(現地時間)にクワ・トイネ公国経済都市マイハーク港沖合約60km地点で、クワ・トイネ公国所属海軍の第2艦隊所属の軍船「ピーマ」ミドリ船長以下随行員三名は帝國海軍台南鎮守府所属の一等海防艦新高に臨検目的に乗艦した。これに対して新高に乗艦していた大森泰三外務省一等書記官は、我が国の名前が大日本帝國であるということ、国交樹立を視野に入れた交渉を希望していること、外交官派遣の意思があるということ、我が国が突然この世界に現れたということ、周辺の海域哨戒中に貴国領空の侵犯の事実に対しての謝罪と敵意の不存在を伝えたとのことであった。外務省は、大森一等書記官からの報告を受け、相手国の了承を得られ次第、大泊安武外務省参事官を特使として派遣する方向で調整中であることを続けて伝えた。なお、注目すべき事実として、本会談が終始日本語で行われたことを告げ、従前の予測と異なり、言語の壁という意思疎通の壁は消滅したことは喜ばしいことであり、この新世界における意思疎通が迅速に行われる可能性が高いことが確認されたとした。
本報告は、我が国とともにこの新世界に転移した満洲帝國に対しても即日通告されたことが併せて発表され、満州帝國においても国交樹立を視野に入れた特使派遣の調整に入ったことが満洲帝國外交部から同日17時30分から行われた臨時会見にて発表された。
食料臨時統制令発布 飯尾枢相「状況の好転を見るまではやむを得ぬ措置」
帝國政府は、新世界転移以前に諸外国からの輸入に頼っていた財物の中でも国内で生産していないか、または生産していても極少数に当たる商品のなかでも国民生活に影響をあたる可能性が高いとされる食料品の売買について帝國政府の統制に置くことを発表した。新世界転移を理由として、その混乱を最小限のものとするため、帝國議会が閉会中であるための処置となる。当該内容を規定した「輸入食料品目等臨時統制令」は新世界転移の日から日を置かずして、内務省、農務省及び通商産業省の三省において速やかな検討がなされ、かつて石油危機の際に生じた狂乱物価を統制する際に用いられた統制令を参考にした本勅令案は、今月22日に閣議決定されて、同日速やかに枢密院に諮詢された。枢密院は直ちに貴衆両院の議長、副議長及び内務農務通産の常任委員長を招集し、臨時審査委員会を開会した。内閣原案では、満州帝國からの輸入が期待される品目も大幅に含まれていたが、満州帝國もこの世界に転移してきた以上該国からの輸入品は途絶されることはないと考えた一部委員がこの部分の削除を要求した。政府委員は、満州帝國側における今回の転移危機についての情報は確定されたものではないとして削除を拒否し、調整が行われた。調整の末28日に内閣原案の通りに決定とした委員会審査報告書は、同日枢密院本会議に上程され、同日修正なく可決成立し、上奏裁可を経たのち本日緊急勅令として発布された。
本勅令においては、政府が輸入比率の高い食料品の売買数量を制限することができるものとして、その品目としては、小麦、トウモロコシ、大豆、牛肉、豚肉など極めて多岐にわたる。米穀はこの制限に入っていないが、この件に関して、飯尾義道枢密院議長は、「今回の緊急勅令案に対する諮詢は国民諸君にはまことに心苦しい限りではある。だが、何の対策も取らなければ、たちまち3億国民が飢餓状態となる危機感が内閣枢府議会ともにあったことは理解してほしい。だが、米だけは大丈夫だ。米穀だけは転移前も100%の自給率を確保していた。ここはひとつ米を食って忍んでほしい。」とコメントした。
緊急勅令発布について、山上誠一内閣総理大臣は緊急記者会見を行い、「国民や在留外国人の皆様には不便な生活を強いることになって慙愧に堪えない。小麦類の制限が加えられる以上、パンやパスタも統制下に入る。多彩な食文化が存在する現代日本において、不自由な食生活は国民皆様の活力を削ぐであろうことは我々も重々承知しているが、背に腹は代えられない状況であることは理解いただきたい。政府は引き続き食料確保に向けて最大限の努力を続けることを約束する。」と述べた。
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朕茲ニ緊急ノ必要アリト認メ枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ輸入食料品目等臨時統制令ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名 御璽
平成二十七年一月二十九日
内閣総理大臣 山上誠一
内閣書記官長 荒池正十郎
外務大臣 侯爵徳川義輝
内務大臣 岡孝則
大蔵大臣 李俊太郎
兵部大臣 大田原信頼
農務大臣 朴詩織
通商産業大臣 田山宏茂
司法大臣 下田勇太郎
文部大臣 伊田信子
厚生大臣 飯島信繁
建設大臣 田中直茂
労働大臣 國枝千廣
運輸大臣 泉惣太郎
逓信大臣 王通宣
国務大臣兼環境保護院総裁 鈴木善太郎
国務大臣兼警保院総裁 大出幸司
国務大臣兼情報局総裁 殿山真二郎
勅令第二十六號
輸入食料品目等臨時統制令
第一條 新世界転移ニヨル食糧危機ヲ未然ニ防グタメ、政府又ハ東京都長官若シクハ道府県知事ハ、其ノ命令ニ依リ左記ニ定ムル品目ノ卸業者小売業者間ノ売買ニツイテハ此ノ量数ヲ制限セル命令ヲ発スルコトヲ得。第二條及ビ第三條ノ内訳品目ニツイテハ農務省令ニテ定メルモノトスル。
一 農作物
二 畜産物
第二條 前條ニ規定セル品目ノ内訳ニツキ、新世界転移以前五年間ノ農務省統計ニ依リ輸入比率ガ平均シテ八割ヲ超エル品目ニツイテハ、平成二十七年二月一日ヨリ政府又ハ東京都長官若シクハ道府県知事ノ許可ナク卸業者及ビ小売業者ハ売買契約ヲ締結スルコトヲ得ズ。
第三條 前條ニ規定セル品目ノ内訳ニツキ、新世界転移以前五年間ノ農務省統計ニ依リ輸入比率ガ平均シテ五割ヲ超エル品目ニツイテハ、平成二十七年二月一日ヨリ政府又ハ東京都長官若シクハ道府県知事ノ認可ヲ得ザル卸業者及ビ小売業者ハ売買契約ヲ締結スルコトヲ得ズ。
第四條 第二條ノ許可ニツイテハ、新世界転移以前ニ外国ニ本社ヲ置ク企業又ハ外国籍ヲ有スル個人ニツイテハ農務省ニ対シテ、国内ニ本社ヲ置ク企業又ハ日本国民ニツイテハ本社ノ所在地又ハ個人ノ住所地ノ都道府県ニ対シテ許可申請ヲ為スベシ。申請書ハ別表第一ニ掲ゲルモノトス。
以下略
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