大日本帝國召喚   作:もなもろ

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ディアマントはダイヤモンドのドイツ語です。経済雑誌であるダイヤモンドをもじりました。
経済関係はやりたかった記事ですが、まだまだ付け焼刃です。証券用語など怪しいところが満載ですが、御勘弁を。


週刊ディアマント・5月11日号

『週刊ディアマント・5月11日号』

 

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〇海外情勢短報

 ― 租界行政長官に福田典武氏を起用した経緯と帝國政府の読み筋

 

 クワ・トイネ公国マイハーク港西部日満共同租界は、順調に発展を遂げている。4月の末には20万トンクラスのタンカーやコンテナ船が横付け可能な第一埠頭が完成し、5月の半ばには、並行して建設していた同クラスの第二埠頭が竣工の見込みだ。

 最大で30万トンクラスのタンカーが停泊可能な第三埠頭も夏ごろの完成を目指し、5月10日に起工式が行われる。起工式には、エーリンギ・キノッコ共同租界委員長及び福田典武副委員長を始めとして、公都クワ・トイネからも内務卿、軍務卿、商務卿の政府関係者、近郊の諸侯を代表してハガマ・マイハーク伯爵などが参列する予定である。

 マイハーク港西部日満共同租界は、平成27年条約第2号「クワ・トイネ公国経済文化振興に関する日鍬協定」によって設立された、クワ・トイネ公国の主権を認めたうえで、日満両国が高度な自治を保障された租借地である。併せて条約によって設立されたクワ・トイネ公国のインフラ設備の強化拡充を検討するための検討を行う委員会はマイハーク租界におかれており、日本人委員の上席者がこの租界の行政長官を兼ねることとなっている。このため条約委員会は共同租界委員会とも呼ばれ、現共同租界副委員長の福田典武氏(三菱合資会社専務理事・三菱金曜会書記)はマイハーク共同租界行政長官に就任している。もちろん、福田氏は民間人であり、行政官としての統治能力の評価を得てのことではない。帝國政府は、別途行政官として、共同租界副長官を派遣し、実務に当たらせている。

 

 福田典武氏は、第55代、56代の内閣総理大臣であった立憲民政党総裁福田赳夫氏を伯父に持ち、群馬県高崎市に昭和21年に生まれる。県立高崎中学から、三菱財閥の岩崎家が出資した私立成蹊高等学校に進学し、昭和39年東京帝國大学経済学部に入学。同大の卒業後は三菱銀行に入行し、着実にキャリアを積み重ねていった。昭和47年、三菱財閥総帥岩崎宏弥子爵(現三菱財閥総帥、岩崎義邦伯爵の祖父)の姪である霧子女史と結婚。三菱財閥の一員となり、三菱財閥の関連企業の社長会である三菱金曜会の書記の任務を与えられる。その後、三菱銀行東京支店長、三菱商事監査役、三菱地所専務取締役、三菱銀行頭取を経て、三菱合資会社専務理事に就任した。

 このような経歴・縁戚からしてみても政府の意図するところは明白である。マイハーク開発に財閥の力を借りて、協力な開発を推し進めていくところにある。マイハーク共同租界には、他にも安田財閥の番頭として名高い新見久興氏(安田保善社専務理事・芙蓉会顧問)が委員に選ばれており、更にクイラ王国の港湾都市バスラに同様に設置されている日満共同租界においても三井高義氏(三井合名会社専務理事・二木会副幹事)、高沢浩二氏(株式会社住友本社専務取締役・白水会顧問)が委員として名を連ねており、我が国の四大財閥と呼ばれる経済団体は皆新世界の未開地の開発に乗り出している。

 財閥傘下の直下企業だけでも数百はある。二次請け、三次請けも含めれば、数千は降るまい。今、帝國日本の経済は大躍進を続けている。しかし、これにもいつかは終わりが来る。100年前の欧州大戦時も我が国は好景気に沸いたが、その後の戦後不況の余波は大きかった。景気の揺れ戻しはある。それを大不況としないためにも各企業には特需後を見据えた経済活動を念頭に置いてほしいと思う。

 

(ライター:ディアマント編集部、いしいたかひさ)

 

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〇金融市場近況

 ―終わりが見え隠れする市場の高騰に暴落回避策はあるのか

 

 転移直後に落ち込みを見せた企業の設備投資額は、現在反転して上昇傾向を顕著にしており、その動きは当然、投資家の投資マインドを左右する。

 一見すれば、内部留保を無理やりにでも吐き出しているかにも見える、建築企業を筆頭にした重工業分野の企業の攻めの姿勢である。建築業界が建築資材業界に発注したセメント・鉄筋などの資材の発注数が前年同時期の12倍という需要量の増加は、供給側にもパート・アルバイトを含めた雇用を増大させるという設備投資の好循環を招いてはいる。この好循環は投資家にとって極めて魅力的に映り、東京証券取引所、新京証券取引所の株価指数は、連日上昇をし続けており売り気配をみせない。

 さらに軍需産業の株の値動きはこの動きが顕著だ。マイハーク沖海戦が起きて以降マインゲン攻略戦が集結するまで、三菱重工業、住友重機械工業、日本製鉄、川崎重工業と言った我が陸海軍に兵器を納入している企業の株式には買い注文が殺到し、午後まで寄り付かずの状態に至ることが時々あった。午後になりようやく売りが出始めるや否やストップ高になるという異常な状況が続いたのが終了したのは、5月1日のマインゲン攻略戦の開始がきっかけであった。

 

 この日も証券市場には、大量の買い注文が殺到していた。明日は土曜日で取引所は休日となる。日頃、株式投資に興味がない層もこのころになると、必ず利益になるとのうわさを聞き、少しでも儲けようと意気込んだに相違ない。連日の取り引き者総数は右肩上がりを続けていた。

 戦争は大量の物資を消費する。大量の弾薬を消費した陸軍は、再度軍需関連企業に弾薬の納入を依頼する。そして、軍需産業は更なる利益を手にする。そういう見込みのもと始まった市場は、大量の買い注文に寄り付く売り注文はやはり少なく、明日からの土日を前にして早期の利確を欲した程度の投資家がわずかにいた程度の取引量で午前の取引を終えようとしていた。

 午前11時、大本営陸軍部は、ギム防衛陣地を守護していた我が陸軍部隊を含む四箇国聯合軍はマインゲン攻略戦を正午より開始するとの臨時ニュースを全国民に発表した。前場が終わる30分前の発表に対して市場は混乱した。

 愈々始まった我が精鋭なる陸軍部隊による敵本土への侵攻に対して、敵も頑強な抵抗を為すだろうと思った投資家たちは、更なる株式値上がりを予定し、売り注文を出さなかったようだが、売り気配に敏感になっていた投資家はストップ高手前の長高値の売り注文を大量に発生させた。もともと翌日からは土日に入り、市場は休みである。今後の実際の値動きよりも値上がり確定の段階での最高値の取引で利益を確定させたほうが無難とも思ったのかもしれない。

 前場終了までの30分間で大量の売り買いが発生し、休憩を挟んだ、後場の取引では、取引量はさらに加速し、わずか30分でのストップ高となった。

 だが、週を開けて始まった取引は鈍い。大激戦を予想し、大量の物資消費を予定していた投資家たちは、マインゲン攻略戦があっけなく終わったことで、今後軍需産業に陸海軍からの大量の物資注文がないことを察した。

 それでも、売り気配が強くなるということは無い。物資の大量消費はないが、戦争は終結しておらず、更なる攻勢が残されている可能性はある。ならば、物資の消費はあるため、各企業にある程度の注文は行われ、それを基にした経常利益の増加は見込まれるため、各企業は前年対比で増収になると判断されるためであろう。これまでとは打って変わった常識的な取引量で各企業の株式取引は推移している。

 

 とはいえ、これは軍需産業に限ったことであり、建築業界などを対象とした株式取引は高値での取引が持続している。しかし、いつかはこの特需が終了し、今は潤沢な設備投資もいつしか過剰なものとなり、企業の足を引っ張りかねなくなる時はくる。避けては通れぬこの状況に各企業の経営判断の是非が問われている。

 

(ライター:ディアマント編集部、ろせつほう)

 

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〇攻めの経営を加速する三菱

 ― 30万トン級タンカーの大量建造の是非は

 

 三菱造船は、長崎造船所を始めとする帝国各地の巨大ドックを使用して民用タンカーの大量建造に入っている。6隻を同時に建造しており、中には帝國海軍の戦艦や航空母艦が設備点検に利用しているドックも利用しての建造だ。

 海国日本の貿易体制を持続するためには転移によって失われたタンカーを補充する必要性は理解できる。だが、現実には巨大なタンカーを建造したとしても、我々の貿易相手国はこのタンカーを満載にするだけの物資を融通する態勢がない。先月終わりにやっとクイラ王国の油田の一つからパイプラインが一基完成し、バスラまでの輸送体制が整ったばかりだ。この石油を移動するだけであれば、現有のタンカーで十分に事足りる。このパイプラインが増えたとしても、帝國が保有するすべてのタンカーが足りなくなるためには、パイプラインがあと10は必要になるだろう。

 原油の輸送は、クイラのみからではなくて、満洲からの輸送という手段もある。三菱がタンカーを大量に建造する理由は何か。三菱造船の広報に対しての取材によると、転移事件によって我が国の資源安全保障の態勢に穴が開いた。突然起こった転移がまた起こらないとも限らない。三菱は今後への備えとして余剰タンカーを保有する必要があると判断したというものであった。

 だがこの理由には納得しがたいところがある。余剰のタンカーということは経済活動に結びつかない。いわば、不良資産とでもいうべきものであり、それは企業の財務を圧迫するだけのものである。経済活動を追求する利益集団である企業がそのような行為を是とするのには、それだけの理由があると思うが、国防の三菱を自認するという事だけでそれを是とするのは無理がないだろうか。本誌はこの問題を取材していきたい。

 

(ライター:ディアマント編集部、わだみつこ)

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