大日本帝國召喚   作:もなもろ

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設定水増し&捏造。


『鍬途稲國風土記』(東西グラフ・平成27年5月号)

 クワ・トイネ公国は、人口およそ2000万人ほどの人口を有する国である。緑多きこの国は作物の実りもよく、大東洋屈指の農業国である。

 この国の特徴は他にもあり、新世界にしては珍しく君主のおわさぬ国である。この意味は、前世界のアメリカ合衆国のように民選の大統領が統治する共和制国家というわけではない。この国を統治しているのは、読者もご存じの通り、クワ・トイネ公国首相たる、エミサスカ・カナタ氏である。クワ・トイネ公国における彼の地位は首相である。我が国と国交を樹立するに至った修好通商航海条約においても、この条約に署名したのは、彼が任命した対日使節団団長のマキスイ・ハンキ氏であったように、彼は一国を代表する権限を有しており、そしてその代理人たる外交全権を任命するだけの統治権力を有している。

 それにもかかわらず、彼の名乗りは首相である。首相とは一般的に言えば、内閣総理大臣などの臣下たる者が呼称する官職である。臣あれば君あり。では、君主はどこにおわすのであろうか。クワ・トイネ公国はその呼称からいえば公爵が統治する国であり、その公爵は国交開設以降も一度も姿を現していない。この問題の解決には、二人の人物の言葉が必要であろう。

 一人は、我が国に足を踏み入れた初の外交使節団団長であるマキスイ・ハンキ氏である。彼は訪日最終日の前日に行われた記者会見に於て、クワ・トイネ公国の国家体制について質問した記者に対してこう答えている。クワ・トイネ公国は公国という体制であり、元首はクワ・トイネ公爵である。しかし、国政そのものはクワ・トイネ首相のカナタ閣下が差配されている、と。

 もう一人は、現駐日クワ・トイネ公使であり、初代クワ・トイネ公使でもあるライムライト・オランゲ氏だ。彼は、訪日直後、宮城に於て信任状奉呈式に臨んだ後、元麻布にあるクワ・トイネ公使館で記者会見に臨んだ。彼によれば、クワ・トイネ公国の国家体制は他国のそれと比べて複雑であり、他国に例を見ないものであるという。彼によれば、クワ・トイネ公国の歴史が自国の国家体制を複雑にして、やや不安定な印象を与えるものであるというのだ。そのクワ・トイネ公国の歴史を本稿ではまず紹介する。

 

 

〇クワ・トイネ公国の歴史

 クワ・トイネ公国は、この地における最古の国家であるという。当時のロデニウス大陸は、前世界の英王冠領オーストラリアの如く大陸全域を一つの国家が統治していた。その国の名はミズ・トイネ王国という。ミズ・トイネ王国は戦乱によって滅び、その際に10以上の国に分裂することとなった。

 大陸西方には、ロウリア王国の原型となったテールマエ公国の他アスワン侯国、シャフリダール公国、ランボール辺境伯国など人間族が主体となった国が多く建国された。南東部には、後のクイラ王国の原型であるアル=クイラ辺境伯国を中心として、テヘラン侯国、オサヌア侯国など獣人やドワーフ族が主体となった国が建国された。そして、北東部には、農耕を生活の基盤におくるエルフ族主体であり、ミズ・トイネ王国に於て宰相職にあったイネトミズ伯国、野原や海で狩猟漁獲を生活の基盤に置くダークエルフ族が主体となったヤリトミズ伯国、森林地帯において狩猟採集で生活し、ミズ・トイネ王国の王族から分家されたというハイエルフ族が主体となったモリトヤマ侯国が建国された。

 このイネトミズ伯国が現在のクワ・トイネ公国の母体となっている。クワ・トイネ公国は、かつて存在したミズ・トイネ王国の直系国家として、モリトヤマ侯国の領域内に存在する「リーン・ノウの森」と呼ばれる場所で、王国復活の誓いを建てる森林盟約宣言という文書にイネトミズ伯爵、ヤリトミズ伯爵、モリトヤマ侯爵の3エルフ族の族長が署名を行ったときを以て成立した。彼らの盟約によれば、イネトミズ家が行政をヤリトミズ家が立法を、モリトヤマ家が祭祀を司るものとされた。中央歴が始まるより7000年ほど以前の話であるといわれている。

 注目すべきはこの森林盟約宣言という文書である。この宣言は、王国の復活を目指すために3エルフ族が協力することを謳った文書であり、彼ら自身が王位を継ぐことを宣言した文書ではない。故にこの文書は建国宣言に類する文書ではない。

 これがために、クワ・トイネ公国は合同して一国を名乗ったことになっているが、旧各国がそれぞれに「主権」を保持し続けており、また中央政府が握るべき権力と各貴族領に留保されている権力との分配も不明瞭なものとなっており、地球世界でいうところの、「連邦国家」という状況にあるとは言い難い。いうなれば、「国家連合」に相当する状態にあると言っていいだろう。

 ところで、クワ・トイネ公国では、我が国の鎌倉時代のような分割相続が主流であった時代が長く続いていたようで、各侯爵領は、分割に次ぐ分割で次第に小さな領邦になってゆき、ついにはイネトミズ侯爵家とヤリトミズ侯爵家は嫡流が途絶え、集合離散が行われ、嫡男による単独相続性に移行した。

 モリトヤマ家でも同様の分割相続が行われ、中央政府の司法卿を世襲するイーセ家はモリトヤマ家の分家にあたる家とされている。だが、先の二家とは違い、嫡流は残っており、その家が現在は公爵を称している。先のハンキ氏のいうクワ・トイネ公爵とは、彼の家の者を指すのであろうが、かの家は後述するように表舞台には姿を見せないのが、クワ・トイネ公国の体制であるようだ。

 

 

〇クワ・トイネ公国の現在の政治体制

 とはいえ、クワ・トイネ公国が一国としての主権を保有し、各貴族領もクワ・トイネ公国の一員として存立しているという状況は存在している。では、かの国ではどのような政治運営が行われているのであろうか。

 先に述べた歴史では、イネトミズ家がクワ・トイネ公国の行政を担う者として擁立された。しかし、長い年月が過ぎるうちに、各エルフ族間、そして他の種族間での混血が進み、イネトミズ家の嫡流も今は存在しないことなっている。実際、現在のクワ・トイネ公国の首相であるエミサスカ・カナタ氏の先祖は父方を遡れば、イネトミズ家の庶流に該当するカナタ子爵を家の起源としているが、母方はモリトヤマ家の分家筋であるノッパラ男爵家であるという。

 このような形で混血が進んだ結果、クワ・トイネ公国の行政機構は、エルフ各族の家職の世襲制となっている。

 

首相府 ― 首相、カナタ子爵家:行政機関の統合調整。各局各部に属せざる事項。

内務局 ― 内務卿、ギック伯爵家:公国国民の戸籍、貴族個人に対する課税指導

大蔵局 ― 大蔵卿、オクレンカ伯爵家:公国直轄領の領民に対する課税・貴族領の領民に関する上訴裁判

軍務局 ― 軍務卿、コンボウ子爵家:公国直轄領から徴兵される軍の指揮権、貴族領軍の軍事指導

外務局 ― 外務卿、リンスイ伯爵家:公国対外調整。各貴族による対外接触に関する指導

海軍局 ― 海軍卿、ヘラルド男爵家:公国海軍に関する指揮権。貴族所有戦闘艦の指導。

司法局 ― 司法卿、イーセ子爵家:公国全土に布告法・貴族領内法の指導、直轄領民に対する裁判

鉄道部 ― 鉄道長官:新設。公国内敷設鉄道に関する国内調整。

文教部 ― 文教長官:新設。公国国民に対する初等教育実施に関する事項。

農務部 ― 農務長官:新設。対日食糧輸出計画の策定に関する事項。

商工部 ― 商工長官:新設。マイハーク租界に関する事項。

 

公王庁 ― クワ・トイネ公国の貴族が集まる会議。立法府に相当する。

大法官府 ― 貴族に対する裁判所。

 

国王府 ― 侍従長:「リーン・ノウの森」の付近に居住しているとされているモリトヤマ家の嫡流が代々世襲している職。なお、モリトヤマ家だけがクワ・トイネ公国の公爵位を世襲している。

 

 

〇クワ・トイネ公国の地理

 クワ・トイネ公国は先にみたように貴族の集合体であり、各貴族領が存在している。この中から主要な都市を紹介しよう。

 

中央政府直轄地

 元イネトミズ侯爵領であったが、元ヤリトミズ領やモリトミズ領の一部を吸収し、拡大した。中央政府直轄地は、中央政府各官職を世襲する世襲貴族領邦を含まない。クワ・トイネ公国の権力が及ぶとされている貴族領(言い換えれば、クワ・トイネ公国の版図)は、前述の森林盟約宣言に署名した3族から枝分かれした分家領やその3族の家臣(陪臣)の知行地が相当すると言われている。

 

公都クワ・トイネ

 クワ・トイネ公国の首都として首相府、公王庁などが設置されている都市である。人口25万人。イネトミズ侯爵領都として栄え、各国の大使館が存在する。我が国と満洲国の公使館は電力供給の問題から郊外に設置されている。そのこともあってか、現在の市街は、我が公使館の方向に拡張傾向にあり、公都中央駅の建設計画は、公都の中心部から離れた位置に建築中である。

 

西方都市ギム

 国境の街としてロウリアからの避難民を抱えて急速に成長した街であり、人口は10万人とされている。この街から西方に続く街道の先にロウリア王国があり、この街から南方に続く街道の先にクイラ王国のベルディート辺境伯領がある。

 

エジェイ

 公都とギムを繋ぐ街道の中間にある都市。5万人の人口がある。クワ・トイネ公国陸軍の宿営地。

 

スーイデン

 公都及びマイハークと直接街道がつながっている街。公都の東、マイハークの南部にある街。街の中央は城塞に囲まれていない。街の中心部は5万人程度の人口であるが、この地域は大穀倉地帯となっており、周辺部の農村人口が多い。

 

ハガマ伯爵領

 イネトミズ侯爵の分家が経済的に力をつけて、独立した領域。

マイハーク

 マイハークを統治するハガマ伯の領都であり、10万人を超す人口がある。公都と街道がつながっている。なお、日満両国のマイハーク西部進出以来、人口は増え続けていると言われている。

 

リンスイ伯爵領

 イネトミズ侯爵の家臣だったが、長い年月の末に陪臣関係が希薄化し、独立した領域。

トースイ

 リンスイ伯領領都。スーイデンの東。こちらも穀倉地帯となっている。人口5万人。

 

コンボウ子爵領

 ヤリトミズ侯爵の分家にあたる家であったが、本家の嫡流が途絶えた後にヤリトミズ家の宗主権を主張している家の領邦。領内に代々のヤリトミズ侯爵の埋葬地(ノワール大聖堂)がある。領邦内には鉄製品を扱う鍛冶が多く居住しており、クワ・トイネ公国領内では、ドワーフ族の居住数が第一。

ヒノキスギ

 コンボウ子爵領都。林業が盛んな木材の産地。スーイデンの南。クワ・トイネ公国とクイラ王国は山脈に阻まれているが、ヒノキスギからクイラ王国カンブル男爵領に続く街道がある。ここ以外からは海沿いに回るかギムから南部に行くかしなければならない。

 

オクレンカ伯爵領

 ヤリトミズ侯爵の分家にあたる家であったが、本家の嫡流が途絶えた後にヤリトミズ家の宗主権を主張している家の領邦。ヤリトミズ侯爵領の領都であったスピアウオータを領都としている。

スピアウオータ

 オクレンカ伯爵領都。ヒノキスギとトースイの東に位置する港町。クイラとの貿易におけるクワ・トイネ公国側の最後の停泊港として栄え、かつてのヤリトミズ領都。人口15万人。日系企業の進出が計画されていると言われている。

 

モリトヤマ公爵領

「リーン・ノウの森」

 公爵領都とされている地域の名称である。この地域には、公爵家の許可なく入境することができない。

 

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