第一回同盟国会議事務レベル折衝討議内容報告書
外交部大臣
外交部次官
外交部審議官
外交部大臣官房長
外交部大臣官房文書科長
国際法司長
報告者:外交部国際法司条約科長 崔玄文
報告日:興信27年6月3日
6月2日、クワ・トイネ公国スピアウオータ市マルメディア宮殿において行われた第一回同盟国会議事務レベル折衝における討議内容について報告いたします。
〇参加者
我が国の事務レベル会合参加者
外交部国際法司条約科長 崔玄文
外交部大東洋司ロデニウス科長 田代文親
外交部総合外交司国際平和協力室長 レオニーダ・コスチコヴァ
軍政部大臣官房公文書管理官 宋白文
他参加国事務レベル会合参加者
大日本帝国
外務省条約局条約課長 石黒敦
外務省欧州局英国課長 朝田泰司
外務省国際情報局情報課長 山本紀美
兵部省軍務局軍事課書記官 松平一平
クワ・トイネ公国
外務局員 ツールレイ・ヤゴウ
外務局員 ハンク・コッタパン
軍務局員 ボフミル・パセカ
軍務局顧問兼外務局出仕 日本帝国陸軍退役少将 大野陽介
海軍局員 アンドラ・アスベル
海軍局顧問兼外務局出仕 日本帝国海軍退役大佐 羽沢史郎
クイラ王国
外務省条約局長 ニザール・ハーンジー
外務省文明圏外局長 ハードラ・ハウドール
軍務省国防局長 ザーフィル・バイダス
〇討議内容概略
マインゲン一帯のクワ・トイネ公国割譲を講和要求とすることで折衝に成功
他の事項については、調整が難しいことがあり、外相会談での決着を必要とする可能性あり。
〇討議内容詳細
会議議長として出席者中一番職位及び年齢の高いクイラ王国ハーンジー条約局長を推挙。我が国他他の参加者も同意し、ハーンジー局長も之を了承した。
議長は、議事進行については、議長一任としてよいかの提案あり。各国これを了承する。
議長より、各国随行員より一名をそれぞれ選出し、書記の任務を開始するよう指示あり。各国これを了承した。以後、日本語、協和語、第三文明圏共通言語による議事録が作成されるとともに会議内容の音声録音が開始される。
議長提案により、議事録作成の要領についての規則制定提案あり。
各国議事録の内容に相違があった場合には、第一に録音内容を精査し、第二に日本語の議事録の記載を同盟国会議議事録の正文とすることについて提案あり。各国これを了承する。
会議議事録は、少なくとも翌日までには三か国語で調製され、議事録末尾に各国につき2名の会議参加者の署名を行うことの提案あり。各国これを了承する。
議事録には各提案に付き、賛成反対の評決を行い、それぞれの国名を記録することについて提案あり、各国これに同意する。
議事録への記載抹消要求については、日本国の要求に付き、これに対する全面的了承の権限を与え、それ以外の場合には評決に依ることについて各国了承あり。
議事録の訂正要求については前項の場合以外のみ評決によることについて各国了承あり。
(以下、会議の正規の議事録に記載されていない内容も含む。)
対ロウリア講和条約問題について討議
日本国石黒委員より、転移前世界における欧州大戦後の講和条約についての説明あり。「穏当なる講和条約」についての提案あり。
クワ・トイネ国アスベル委員より、クワ・トイネ公国は50年前の戦争以来ロウリア王国の拡張主義的政策に悩まされてきた。ロウリアの亜人蔑視の風潮により迫害されてクワ・トイネ公国に逃れてきた亜人もいる。穏当な講和ではクワ・トイネ諸侯の賛同を得られない。
クイラ国ハウドール委員より、近年のロウリアの版図の膨張はこの敗戦にてその速度は鈍化するはず。それは、クワ・トイネにとっても歓迎すべきこと。総論に関する討論よりも各論を先に進めるべきという議事進行動議あり。
議長職権により、クイラ国提案についての賛否評決。各国これを了承する。
領土割譲提案に付き、クワ・トイネ国コッタパン委員。同パセカ委員より、ロウリア国の領土をクワ・トイネ国に編入するよう講和要求項目を挿入することについて提議あり。
第一、聯合軍占領地マインゲン市一体をクワ・トイネ国に編入することについての要求あり。各国これを了承す。
第二、マース川以西の土地について、クワ・トイネ本国は、クワ・トイネ中央騎士団を西部に展開し、攻勢を計画中である。今後中央騎士団の占領地を領土として編入することについての要求あり。
日本国朝田委員。同盟国共同宣言にてロウリア政府に対して降伏要求を行う段階であり、休戦協定もこの会議の議題となっている。これ以上の攻勢は必要性を認められず。聯合軍としての合意はとれているのか。
クワ・トイネ国パセカ委員。聯合軍としての軍事行動にあらず。クワ・トイネ国陸軍による単独作戦なり。
クワ・トイネ本国大野委員。本作戦は、中央騎士団長ノウ将軍による中央政府への嘆願によりて実施を計画中なり。聯合軍は実質日満両国軍による行動なれば、クワ・トイネ国独自の戦果を得るべきとの考えなり。攻められたのはクワ・トイネ国なれば、クワ・トイネ国が独自の勝利を遂ぐることは、この戦争においてクワ・トイネ軍人の切望するところなり。
満洲国田代委員。感情的な問題としては理解できるが、もはや戦争は終結目前なり。積極的な軍事行動の必要性は見当たらずというべきではないか。早期の戦争終結こそ、重要なり。
満洲国コスチコヴァ委員。戦線を拡大して泥沼の事態となることは考えられぬか。そうなれば、早期の停戦は困難となる。クワ・トイネ国は単独作戦を行うことを満日両国に通知しているのか。
クワ・トイネ国パセカ委員。これは、クワ・トイネ国の国家主権に基き、その独自の権限に基づいて・・・(声聞き取れず)。
日本国朝田委員。我等は同盟国としてロウリアとして交戦をしている。然るに、独自に軍事行動を計画することは同盟国としての紐帯を損なうものではないのか。軍務局員ではなく、外務局員はどう考えているのか回答を願う。
クワ・トイネ国ヤゴウ委員。本件は、軍務局にて現在計画中の案件にてクワ・トイネ国として決定されたものではなく・・・(声聞き取れず)、
クワ・トイネ国羽沢委員。日本国はクワ・トイネ国が主権国家たることを否定する所存なりや。クワ・トイネ国が主権の行使として、独自に権限を行使することを否定するつもりか。
日本国朝田委員。然らず。同盟国として連帯して事に当たるべきときにあることを強調しているのみ。
日本国石黒委員。本年4月のゴレスバード宣言に於て我等は同盟国として協調して事に当たることを規定した。この宣言は、軍事行動においても協調することを求めたることを当然に含意せるものと日本政府は考えている。クワ・トイネ国独自の軍事行動についての留保はあると解せられるにしても、同盟国に対して何らの通告もせずに軍事行動を起こすことについては、我等は許容できず。
クイラ国ハウドール委員。クワ・トイネ国は先に軍事行動について同盟国の同意を求めるのが先ではないか。占領地の領土編入について、我等の同意を得るより先にそちらが先では。
クワ・トイネ国パセカ委員。では、休戦協定締結に至る迄に占領したる土地は割譲対象範囲とするとの合意を求める。
日本国朝田委員。現時点では、クワ・トイネ国提案は議事録に留める必要性を認めず。マインゲンをクワ・トイネ国に割譲するとの合意のみ記載すべきである。
クワ・トイネ国大野委員。割譲対象についてはマインゲン周囲に限定したるものではないとの議事録記載をを求める。
日本国朝田委員。同意せず。マース川以西をクワ・トイネ国に割譲する。本日の会議議事録にはこれ以外の記載は必要性を認められない。後日に領土割譲問題に関して、何らかの審議の可能性は排除するつもりはないが、議事録に記載する必要性は認められない。
議長職権により、議事録の記載は、マース以西をクワ・トイネ国に割譲するという点のみとなる。
賠償要求につき議長職権により翌日の会議への日程変更。ロウリア国王の王権問題に対する審議を先議とした。
日本国石黒委員より、ロウリア国王のハーク・ロウリア陛下に対して不敬となる直接的な要求は避けたいとの提案あり。
クイラ国ハウドール委員。この戦争がロウリア国王ハーク・ロウリア34世によって引き起こされたものであることはロデニウス各国に周知された事実である。国王の責を問わぬという日本国委員の提案については正直に言えば同意しかねる。
クワ・トイネ国パセカ委員。ハーク・ロウリア34世は亜人排撃を唱える過激思想の持ち主であり、彼を玉座に留めおくのは将来に対する瑕瑾となりかねない。そのあたりについての提案国の認識は如何に。
日本国石黒委員。将来についての危惧感は我々も了承している。しかし、講和条約の条項としてロウリア国王陛下に対して直接に退位を要求するが如き文言は控えたいと考えている。
クワ・トイネ国羽沢委員。日本国政府は、クワ・トイネ国民がこれまでにロウリアから受けた苦衷を軽視しているのではないか。クワ・トイネ国は同盟国である。ロウリアは敵国ではないか。同盟国民の感情よりもロウリアへの心証を優先しているようにしか見えないが。
クワ・トイネ国ヤゴウ委員。しばらく。しばらく。日本国委員の認識として、立憲君主としての天皇陛下の如き存在として、ロウリア国王を観念されているように見受けられます。日満の国家学憲法学上の概念でいえば、ハーク・ロウリア34世は、立憲君主ではなく、専制君主にあたります。貴国の天皇陛下、そして満洲国の皇帝陛下と同列に論ずる必要性は薄いように見受けられます。そのあたりを考慮に入れていただくわけにはいきませんか。
満洲国コスチコヴァ委員。ヤゴウ委員の意見は我々も十分に認識しております。そのうえでいかがでしょうか。ロウリア国王の国家統治の権限については、これを保障するという文言と、ハーク・ロウリア34世陛下に対しては、条約の要求条項として退位を要求するのではなく、講和会議の席上で言及するにとどめるというのは。
クイラ国バイダス委員。日満の要求するところについては理解に苦しむが、ハーク・ロウリア34世が退位しなかったときはどうされるおつもりか。
日本国石黒委員。保障占領の継続、賠償要求の増額などで、ロウリア国王ではなく、ロウリア政府に対して圧力をかけることによってこれを実現すべきであると考えております。
クワ・トイネ国アスベル委員。どうも説明に理解に苦しむが、我々同盟国、特にクワ・トイネ国民は、ハーク・ロウリア34世を憎んでいる。特に私のような亜人種は、かの国ではいわれのない差別を受けてきた。その感情を今少し考慮してはくださらぬか。
クワ・トイネ国ヤゴウ委員。しばらく。しばらく。日満両国にとって君主に対する敬愛の念は、私どもが想像するよりも深いのです。そのあたりを理解せよと言っても、クワ・トイネ国やクイラ国の人たちには難しいことと思います。いかがでしょう。この問題は継続審議として、あるいは、外相会談での決着を図るとしては。
クイラ国ハウドール委員。ヤゴウ委員の提案は一理あるが、継続審議としたい。明日以降の日程で再度議論をしたいと思う。
議長裁決により、本案件は別日の継続審議の対象となる。
議長により、本日の会議はこれにして散開し、明日賠償問題、軍備制限について討議することについて提案あり、各国同意する。