大日本帝國召喚   作:もなもろ

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再度、ムー国の一民間人の視点です。


対ロウリア講和条約同盟国会議事務レベル折衝諒解案 / クワ・トイネ公国スピアウオータ市マルメディア宮殿 中央暦1639年6月8日(月)午後5時

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対ロウリア講和条約同盟国会議事務レベル折衝諒解案

 

一、講和条約総論

一、同盟各国とロウリア王国との外交関係は、講和条約発効の時よりアルタラス王国国内に於て各国外交使節間で当然に交渉が開始される。この際にロウリア王国政府は、国交樹立後の同盟各国との外交官の交換に際しては外交官の身体保護についてウィーン条約の規定を順守すべく保障ある事を要す。

 

二、ロデニウス大陸の平和的秩序の構築に関するロウリア王国の責任ある態度の表明ありたる時は、爾後同盟各国はロウリア王国の体制を尊重する姿勢を継続することを約す。

 

二、講和条約各論

一、ロウリア王国とクワ・トイネ公国の境界はマース河とす。ロウリア王国とクイラ王国の境界は戦前の境とす。

 

二、ロウリア王国は次の通り軍備制限を約す

二・一・一、陸軍は各領邦軍と併せて15万人を限度とす。この制限は10年間継続す。

二・一・二、陸軍の攻城兵器は10年間その所有につき同盟国監視下に置く。目録常備の上、六月に一度査察を行ふ。移動・修繕については同盟国に事前に報告すべし。

二・一・三、陸軍所属の魔導士につき目録常備の上、三月に一度同盟国に報告すべし。

二・二・一、王立海軍は次の通り所有艦船を制限す。この制限は10年間継続す。

 一 三檣型帆船  二十隻

 二 二檣型帆船  八十隻

 三 櫂船     四百隻

二・二・二、王立海軍の所有する風神の涙につき、艦船常備を許可する数は40隻とす。それ以外の所有については、陸上にて保管し、目録常備の上、三月に一度同盟国に報告すべし。

二・二・三、領邦海軍の所有については、自衛目的の武装以外は取り外すこと。

二・三・一、王国軍所属のワイバーンは領邦軍と併せて750騎を超えざること。この制限は10年間継続す。

二・三・二、国境から100キロメートルの範囲内にワイバーンを侵入させぬこと。同地帯内にあるワイバーン基地は之を移動させること。

 

三、ロウリア王国はこの戦争によって同盟国が負った損害を賠償すること。この際に同盟各国は、公正にして根拠のある賠償額の算定を行ふこととし、懲罰的な賠償請求を行はざることを約す。

 

三・一、現物賠償の要求問題については、同盟国外相会議に於て決す。

 

四、武装解除されたるロウリア軍兵士及捕虜は、所在を明らかにしたうえで、解放されるべし。

 

五、講和条約の諸規定の履行保証の為、ロウリア王国カルーネス市を同盟国の連合軍は占領す。この占領は五年を限度とし、延長を妨げない。

 

三、秘密協定

ロウリア現国王ハーク・ロウリア34世陛下の退位につき、同盟国は公式の場においては要求せざること。但し、適当な時機を見て、退位をするように秘密裏に要求すること。この要求反故あるときは、秘密協定を公開すること。

 

 

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クワ・トイネ公国スピアウオータ市マルメディア宮殿

 ―ムー国 オタハイト・タイムズ エストシラント支社バルラート分局 政治記者 マルコム・ミラー

 

 俺は、あの4月12日のゴレスバード宣言以来、ロデニウス大陸に於ける戦争を注視していた。クイラ王国政府の戦果発表では、大体のことしかわからないが、クイラとクワ・トイネは、日本国と満洲国の力を借りて、ロウリアを押し返したらしい。開戦の日、この戦争の推移について事前の予測をエストシラント支社の人間に聞いてみたところ、ロウリアの圧勝に終わるだろうということだったので、ロウリアを押し返したというのは、驚きだった。エストシラント支社の人間も驚いていた。

 クイラ王国政府の発表によれば、ロウリア東征軍を全滅に追い込んだとあるが、同盟国の損害は軽微であるとの発表も併せてあった。いくら何でも、それは誇張が過ぎると思い、支社の連中もそれに同意した。

 クイラ政府は、続けてマインゲン占領、ロウリア東征海軍半壊、カルーネス占領と次から次へと従前の予想を上回り続ける戦果を発表し続けた。支社の連中の調べたところによれば、その事実自体は間違いないらしい。我がムー国とロウリア国には直接の国交がないので、パーパルディア皇国の新聞社を通じての情報収集となっているが、まず事実自体に間違いはないとのことだ。

 となれば、あとは今後の戦局だろう。ロウリアの軍港カルーネスと首都ジン・ハークとの間の距離はそう遠く離れていない。カルーネスに戦力を集中させて、一気に首都進撃を目指すか、マインゲンから工業都市として知られているビーズルを占領して経済を締め上げるかというところだろうと思っていた。

 エストシラント支社の連中の話では、一気に首都進撃による城下の盟を強いるという方向にいくだろうという分析だった。その理由は、これまでの戦闘による損害だ。クイラ王国政府の発表によれば、いずれも損害は軽微であるという発表だったが、これは国内向けの戦意高揚の目的を持った宣伝であろうというのが、連中の見解だ。文明圏外国家では頭一つ抜き出ていたロウリア王国だ。それを撃退したのだから、日本国と満洲国はそれなりに強力な軍事力を持っていると判断していいだろう。だが、数度の戦闘で、その戦力を減らしている。故に早期の決着を果たしたいと思うはずで、それには、首都直撃以外に方法はないだろう。手間取れば、地方の諸侯軍が参戦してくる可能性がある。

 この意見については、説得力があることは確かだった。しかし、俺は全面的に同意できなかった。それは、5月24日に開かれた日本公使館と満洲公使館の落成式の取材に行ったからだ。彼らの公使館には、電気が通っていた。照明の明るさ、そしてその照明装置は私が見たこともないようなものだった。ロウリアには電気など通っていない。もしかしたら、日本国と満洲国は、我等ムー国に匹敵する生活水準を持っているのではないかと思ったのだ。これをエストシラント支社の連中に話したら、鼻で笑われた。それは魔法と見間違えたのであろうとのことだ。分局の記者には、ときどきそうやって支社や本社の気を引こうとする記者がいるらしい。気を引いて、支社や本社に戻してもらおうとする魂胆なのらしいが、納得はできなかった。

 もやもやとしているうちに、クワ・トイネ公国スピアウオータ市で同盟国会議が開かれるというので、この取材にやってきた。6月1日、この場にやってきていたのは、クワ・トイネとクイラに歴史上初めて発足したマイハーク新報とバルラート新聞の記者がそれぞれ2名。そして、日本国と満洲国の多数の新聞記者。これだけでも、日満両国の凄さがわかる気がするのだが・・・。同盟国の四か国以外では、アルタラスの新聞社の記者2名が来ていたくらいで、パーパルディア皇国の記者はいなかった。

 同盟国会議の議題については非公開だった。今後の同盟国の方針を決定する為の会議ということで、取材についてはシャットアウトだった。そうこうしているうちにアルタラスの記者は帰国した。俺もクイラに帰るかと思っていたが、日本の新聞社の記者同士が話す声が聞こえたので、それを隠れて聞いていた。なんでも、クワ・トイネと日本の間で講和方針に大きな隔たりがあるようだとの話だった。

 俺は、たまらず飛び出して、彼らに直接話掛けた。この会議は軍人が集まって今後の作戦計画を練っているのではないのかと。焦ってムー語で話しかけてしまったので、怪訝な顔をされてしまったようだ。第三文明圏公用語で自己紹介をし、はあ、ムー国の人もこの会議に注目しているんですねえと感嘆されてしまった。そのうえで、ムー国とクワ・トイネは国交があったのですかと言われたので、特別に入国を許可してもらったのだと説明した。

 その後は、この会議の内容について予想も含めて話してもらった。一言でいえば、この会議は日満鍬杭の外交当局が今後ロウリアとどのような講和を結ぶのかを議論しているという事がわかった。連合軍の作戦会議ではないのかと念を押してみたが、それは違うだろうとのことだ。私には読めない文字が書かれてあったが、日本国内で発行されている新聞で、この場所で四か国の外務大臣が集合して講和問題、降伏要求、平和的秩序の回復維持の問題についての会議が後日開かれると書かれてあるらしいのだ。

 なんということだ。エストシラント支社の連中の分析は、前提から間違っている。それは、この新聞紙からもわかる。これほど鮮やかな写真を新聞に載せることができる国だ。少なくとも我が国に匹敵する文明国だ。

 俺はすぐさまバルラートの分局を通してエストシラント支社の連中に連絡を取った。日本国と満洲国は我が国に接敵する文明国であり、彼らは同盟国会議で講和条件と降伏要求について議論している。会議は軍による作戦会議ではなく、外交官による会議である。そして、クワ・トイネ側と日本側で交渉内容の対立があるほどに彼らの戦局の見通しには余裕があるということを通信した。

 しかし、連中から戻ってきた内容は私の意に反するものであった。一国の首都は防備も強固である。つまり、彼らの意図するところとしては、連合軍の継戦能力が実は限界を迎えているということだ。ジン・ハークを打ち破るだけの力がないからブラフを用いて、開城を迫ろうとしている。だが、日本側かクワ・トイネ側かのいずれかは分からないが、どちらかは首都攻撃を続行しようとしているのだろう。考えられるとすれば、首都攻撃を唱えているのは、クワ・トイネ側だ。日本は援軍の側であり、これまでの戦闘で多大な損害を受けており、これ以上の損害は許容できないと考えているのだろう。クワ・トイネ側はもう少しで首都に攻め入ることができるため、この機会を逃したくないのだと思う。と、いうような内容だった。

 なぜだろう。エストシラント支社の連中の分析は一見すれば正しく思える。だが、それを否定する自分がいる。ともかく、最終日まで取材を続けることだ。そうすれば、何かが見えてくるかもしれない。

 

 そして、対ロウリア戦争終結に向けての同盟国会議の予備交渉が最終日になった。これまで、日本や満洲の新聞記者と会話を交わして、様々な情報を聞くことができた。この戦争の推移は、クイラ政府の発表が正しかったのだ。日満両国の介入でロウリアは一方的な大打撃を受けている。日満側の損害はほぼ皆無だ。

 日本の文字が読めないことが恨めしい。満洲の文字は日本のものとほぼ同様であったため、日本語を習得できれば、満洲の情報も容易に手に入るだろう。日本の記者に第三文明圏共通言語との辞書がないかを聞いてみたが、今編纂中らしいとのことだ。

 それにしても、なぜ祖国は日本国と国交を結ばないのだろうか。これほどの大国と国交を交わさないのは問題ではないだろうか。日本側は何か知らないかと問いかけてみたら、ムー語と日本語の書面のやり取りができるようにならなければ、国交の締結は難しいとクイラのムー国大使館でいわれたそうだ。条約は書面でかわすものなので、お互いに文字が読めるようになるまで待つべきだとの話だった。

 しかし、クワ・トイネやクイラとどうやって国交を樹立したのかと問えば、条約文書はそれぞれの言語で作成したが、条約の正本は音声録音のものを正本としたらしい。日本語と第三文明圏共通言語が同じように聞こえたためにできたことのようだ。ならば、我が国も同様の方法で国交樹立を図るべきだ。クイラに戻ったら、大使館を訪問して、意見書を出そう。

 そう思っていると、マルメディア宮殿の報道関係者用控室の扉が勢いよく開き、数人の記者が入ってきた。代表団会議室前で聞き耳を立てていた記者たちで、若手の記者ばかりだった。

 

「や、やりました。時間切れ寸前で、クワ・トイネ国委員から提出された対朗講和要求項目草案が同盟各国の賛成多数で可決です。交渉妥結。交渉妥結です。」

「すぐさま本社に速報送れ!!」

「文書は!!文書はまだか。内容どうなってるんだ!!」

「外務大臣がそろそろ到着するぞ。そっちへの取材の手配は!!急げ!!」

「クワ・トイネのそのキーマンは誰?」

「ヤゴウ委員の声かと思われます!!」

「なら、ボヤボヤせずに話取って来い!!あー、もしもし、編集局長ですか、見出し差し替えです。交渉妥結。対朗講和条約草案妥結です。」

「カメラ用意して、会議室前から撮影始めるよ。5分後本土で速報開始。」

「全民放MBCの特報切り替え。民政部への連絡急いで。」

「五色旗の機体見えました。満洲外相到着です!」

 

 すさまじい動きだ。そして、空から大きな音が聞こえる。窓から外を見てみると大きな飛行機が着陸態勢に入っていた。これは、この飛行機は我が国の飛行機とは比べ物にならない。いや、俺のこれまでの認識が間違っていた。日本国と満洲国は我が国よりも優れた技術を持つ大国だ。我が国の方が技術は劣後するだろう・・・。

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