大日本帝國召喚   作:もなもろ

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ロウリア宮廷はようやく降伏受諾で決しました。

またしても票差が開きました。賛否が拮抗するようなアンケートをつくりたい。

降伏勧告紙ビラ投下作戦の実施について

作戦実施 57 / 92%
作戦不実施 4 / 6%
その他(感想欄まで) 1 / 2%




満洲帝国大連市空軍基地 興信27年6月21日(日) / ロウリア王国首都ジン・ハーク ハーク城 6月21日(日)午後1時

 ― 満洲帝国奉天省大連市 満洲帝国空軍 戦略航空師団第二航空連隊基地

興信27年6月21日(日) 午前7時

 

 満洲帝国空軍には国土各地に存在する7個の航空師団の他に戦略爆撃機を運用するために設置されている戦略航空師団が一個師団存在する。この師団は新京、大連、哈爾賓の三都市に爆撃航空連隊を置き、各爆撃航空連隊には3個戦略爆撃機中隊を配備している。この日、大連に置かれている第二航空連隊から1個中隊が「特別軍事作戦」のため出撃する。

 

「連隊長訓示!!」

 

 出撃する中隊隊員が整列し、お立ち台の上に登った第二航空連隊長ルーペルト・シャイベ空軍少将に向き直る。

 

「優秀なる帝國空軍の諸君。今の今までこの戦いでは諸君たちに活躍の機会が与えられなかった。もちろん、それは本来であれば誇らしいことである。なんとならば、我が国が平和であるということの証左であるからだ。しかし、一旦緩急あれば、活躍の機会を得たいと思うのは武人としての性である。このことを口惜しく思ったこともあるだろう。あるいは、心無い声を聞いた者もいるかもしれない。だがそれも今日で終わる。しかも最高の形でだ。我々の一撃は、この戦争を終結に導く大いなる一撃となる。ロデニウス大陸を平和に導くのは我々である。我々空軍は平和の使者である。さて、事前に外交チャンネルでワイバーンを出撃させるなと通達は行ってはいるが、万一のことはあるだろう。戦地での護衛は海軍航空隊の戦闘機が行うので、心配はいらない。以上、気を付けていってこい。」

「はいっ!!」

 

 連隊長がお立ち台を降り、代わって第二航空連隊参謀長の溝田空軍大佐が壇上に上がる。

 

「すでに、各位には飛行予定は頭の中に入っていると思うが、最終確認である。本作戦を実施するのは、我が連隊の第一中隊である。中隊長搭乗の司令機と第一小隊4機は、カルーネスを経由して敵国首都ジン・ハークに紙爆弾を投下する。なお、ジン・ハークへは、日本陸軍航空隊第2戦略爆撃師団から1個小隊が同行する。この臨時混成部隊の指揮は我が軍が執る。第二小隊4機はカルーネスを経由してさらに南下し、ビーズルを目指す。ビーズル方面にも日本陸軍航空隊から中隊長搭乗司令機と一個小隊が臨時混成部隊を編成し、こちらの指揮は日本陸軍航空隊が指揮を執る。臨時混成部隊への部隊再編成は、日本空軍部隊が高雄の基地から出撃するので、そのあとで行う事。紙爆弾投下後は、ハーク城やビーズル周囲を4回旋回し、徐々に高度を落として威圧する。旋回が終わった後は、大連基地までまっすぐに帰投せよ。以上だ。では、各位搭乗最終点検実施し、中隊長機の指示にて離陸を開始せよ。」

「はいっ!」

 

 搭乗員がそれぞれの乗機へと向かっていく。漆黒の機体は空を舞う瞬間を今か今かと待っている。

 

 

―――――

ロウリア王国首都ジン・ハーク ハーク城 中央暦1639年6月21日(日)午後1時

 ― ロウリア王国宰相 フランチェスコ・マオス

 

 御前会議は隔日で今のところ開かれている。わしを筆頭とする和平派と王太子殿下を筆頭とする交戦継続派はそれぞれその主張に賛同するものを集め、御前会議で降伏するか否かを話し合っている。といっても、王太子殿下の言に真っ向から反論できるのは同じ王族の方くらいしかおらず、現在は王太子殿下とタレーラン公との間で言葉が交わされているのみである。タレーラン公は、カルーネスに対する実地調査を行い、敵軍が理性的に行動していること、占領地で暴行略奪が起こっていないこと、ロウリアの体面を充分に保護していることなどを説明し、敗戦国となっても過酷な講和にはならないであろうから、早期の戦争終結を図るべきであると主張した。それに対して王太子殿下は、敵軍がこれ以上の攻勢を強めてこないのは息切れしているからであり、早期に攻勢を仕掛ければこれを撃退できる可能性があるということ、暴行略奪がないのは占領した住民が反乱に及んだ場合、それを抑えるだけの兵力がないからであるということ、降伏を要求している現状は敵軍が苦しい状況を隠すためのブラフであり、早期の攻勢実施が重要であると主張した。

 意見を述べられないハーク・ロウリア陛下であるが、会議に差し当たって、御前会議が攻勢を取るという意見で決着するまでは敵軍に攻撃を仕掛けることは厳禁という王命を降した。このため、王太子殿下も子飼いのテールマエ騎士団をけしかけて勝手に攻撃を仕掛けるといった暴挙にまでは至っていない。

 

「いつまでこの不毛な会議を続けるつもりだ。忙しい陛下の時間を無駄に拘束し、これ以上陛下の御決断を遅らせるのは不忠の極みであるぞ。」

 

 王太子殿下が吠える。腕を組み椅子にふんぞりかえりながら、会議参加者をにらむ。

 

「タレーラン公。こうして時間を無駄にしている間にも敵は兵力を増強しておるのだ。栄えある王国陸軍が敗れるなど考えるだけでも不敬だ。いや犯罪的だ。だが、こうして時間を無為に過ごせば、我が軍の損害は増えるであろうことは諸君も理解できるだろう。だからこそ、我が軍は早期にこの会議で攻勢を取ることを妥結し、カルーネスを占拠する亜人共を駆除せねばならぬ。そうではないか、皆。」

 

 王太子派の各位が、そうだといい、手を叩きおる。このバカどもめが。

 

「殿下。我々を取り巻く状況は、殿下の考えている以上に悪いのです。既に報告書が多数届けられております。敵は、そう第二文明圏のムー国のような機械文明の国であり、列強と同等の力を持った国なのです。我々は現実を直視すべきなのです。」

「なにをバカな!!」

 

 王太子殿下が立ち上がり、会議室を見まわして叫ぶ。

 

「亜人共が列強であるムー国を味方に付けたなどありえない。なるほど、確かにクイラは、ムー国と国交があったはずだ。だが、それは、クイラ国内に在るという資源の為だ。そして、クワ・トイネはムー国とは国交を持っていなかったはずだ。国交もないクワ・トイネをどうしてムー国が助けるというのだ。ほら話も並びてるのもいい加減にしていただきたい!!」

 

 王太子殿下が会議室のテーブルを勢いよく叩く。そして、会議参加者を睨みつける。クワ・トイネとクイラに肩入れしているのはムー国そのものではないというのに・・・。ため息が出てくる。

 王太子殿下の教育は、陛下の教育と同じく、テールマエ騎士団内部で行われた。それがよくなかったのかもしれん。もっと広い視野で物事を考えられるような教育体制を構築すべきじゃった。今更じゃが悔やんでも悔やみきれぬ。

 国王陛下は王太子殿下をどう考えておられるのであろうか。じっと目をつむり、腕を組んだまま玉座に座り続けておられる。いったい何をお考えになっておられるのであろうか。

 

 ガン!ガン!ガン!

 

 突如として、会議室の外から金属を叩く大きな音が流れ出した。この音は非常時の警告の際に行われるものじゃ。何があった。

 パタジン将軍がいち早く会議室を飛び出ていく。防衛騎士団に向かったか。

 

「なんだ!!なにがあった!?」

 

 王太子殿下が左右に首を振り、周囲に尋ねる。だが、周囲のものも答えられぬ。ま、当然じゃがな。とりあえず、報告を聞かねば何も始まらぬ。声が大きいだけで胆力がないとは困ったことじゃ。それに引き換え、国王陛下は先ほどから変わらずにどっしりと構えておられる。タレーラン公もじっと我慢しておられる。

 不味いのこの光景は。うろたえる王太子殿下とじっと待つタレーラン公の御姿。役者が違いすぎる。

 会議室のドアが開き、パタジン将軍と宰相府の魔信官が入ってきた。「パタジン、何があった」と王太子殿下が怒鳴っておる。将軍と魔信官は、王太子殿下に一礼し、国王陛下の御前に膝をつく。魔信官が陛下に報告を始めた。

 

「サンデル伯より、至急の通信が入りました。海上より敵の鉄竜の10数騎がサンデル伯領上空に侵入。ワイバーンの何倍ものスピードで、領の上空を瞬く間に通過し、一隊は王都方面に、もう一隊は南に進路を取っていきました。方角からしてビーズル方面に向かった模様。なお、敵の鉄竜の速度を考慮すれば、既に王都上空へ到着してもおかしくはないとのこと。また、」

「嘘だ。ワイバーンの何倍も速いなどそんな!」

「黙れ!!今余が報告を受けている最中だ!!魔信官、早く続きを述べよ。」

 

 国王陛下が王太子殿下を一喝した。王太子殿下はビクッと体を震わせて、後ろにあとずさりした。

 

「はっ!また、先に上空を通過した鉄竜よりもさらに大きな鉄竜が王都に向かっております。おそらく新型と思われるとのこと。ただし、こちらは我がワイバーンよりも多少早いスピードだそうです。全部で18騎。9騎が王都に、9機がビーズル方面に向かったとのことです。」

「パタジン。迎撃は間に合うのか?」

「不可能です。既に到着するというのであれば、滑走路への誘導すらままなりません。」

「北東から敵の竜が!!」

 

 御前会議の部屋にはバルコニーが併設されてある。外を監視していた騎士団の誰かが叫んだ。速い。速すぎる。もうやってきたというのか。

 わしらはキーンという大音量を引っ提げてやってきた鉄竜の姿を眺め見る。確かに速い。速すぎる。

 

「ヤミレイ殿。あの鉄竜お主なら迎撃できるか。」

 

 バルコニーの隣に出てきた王宮主席魔導師に尋ねた。ヤミレイ殿は首を横に振る。

 

「とてもではないが無理じゃ。詠唱が間に合わぬし、仮に詠唱が間に合いファイヤーボールを放ったとしても、火球の進む動きとあの鉄竜の動きはスピードが違いすぎる。狙いを定めることができぬ。」

 

 やはりか・・・。ロウリア大使から話が来ていたが、迎撃など考えんでよかったわ。

 

「しかし、不思議じゃ。あの鉄竜、王城の周りを旋回するだけで、何もしてこぬ。いったい何がしたいのか・・・」

 

 すまぬの、ヤミレイ殿。あの鉄竜の狙いを知っているのは、わしとパタジン将軍のみ。パタジン将軍には、ワイバーンを迎撃に出さぬようにと説得する必要があったから話した。こんなことを不用意に話して、王太子殿下の耳に入れば、ワイバーンの迎撃態勢を取ろうなどと余計なことを考えたかもしれぬ。パタジン将軍の首筋から汗が流れるのが見えた。

 報告書では何度も見た鉄竜の存在。信じなかったわけではないが、やはり一度見ると違うの。

 あっけにとられていた王太子殿下が、はっと気づくと周りを見渡しながら吠え出した。「何を見ている。迎撃はどうした。ワイバーンはなぜ飛び上がらぬ。」と。

 無茶を言うな。あの鉄竜の動きにどうやってワイバーンが追い付くというのだ。王太子殿下の顔が紅潮している。

 

「強大鉄竜見えました。」

 

 空を見上げると、これはかなり上空を飛んでいる騎が見え始めた。うむ。これは大きいな。ワイバーンの5倍くらいの大きさはあるのではないか。その巨大鉄竜は、徐々に高度を下げつつある。

 

「なんだあれは!!誰か説明せよ!!」

 

 王太子殿下の狼狽する声が聞こえる。だが、誰も答えない。それもそのはずで、誰も知らないからだ。かくいうわしも詳しいことは知らぬのだからな。

 巨大鉄竜は高度を落とし、速度も落としたようにみえる。高速の鉄竜とは違う。腹に響くような轟音を振りまきつつ、大きな胴体の腹を開けた。何が始まるのだと見ていたら、腹から何か物が落ちてくる。何じゃあれは、あんなものを落とされては、街に被害が出る。いかぬ。愚かな。敵の言葉を信じるとは、耄碌したか。パタジン将軍がこちらを見てくる。非難する目ではない。焦ったような眼だ。すまぬ将軍。

 後悔の念を抱いていたが、敵が落とした物は、傘のようなものがついており、みるみるうちにスピードを落とし、ゆっくりと落ちてきた。安堵した。あれでは、街に被害は出ぬまいて。そう思っていたら、突如として落下物が爆発した。なんじゃとみていたら、ひらひらとした切れ端のようなものが落ちてきた。街のいたるところに、そして王城の敷地内にも。

 バルコニーにも落ちてきた。これは、なるほど。これは先ごろわしらに送り付けられた降伏要求文書か。多少の要約を行っておるのか。

 なるほど。ロウリアが降伏するように示威行動を行ってきたか。しかも、王都の市民にもロウリアの敗北がわかるように。これは、交戦の継続など無理だな。王都上空ですら敵の勢力圏内じゃ。もはやどうにもならぬ。

 王太子殿下は・・、ふう、膝から崩れ落ちたか。胆力がない・・・。

 あれから、巨大鉄竜は、一列になって王都の上空を旋回した。腹に響く大音響を待ち散らしながら、数回旋回して、そして北東の空へ消えていった。会議参加者たちは唖然とした表情のまま固まっておる。王太子殿下は膝から崩れ落ちたまま、呆然とした表情を浮かべておる。

 

 侍従から王の控えの間に来るようにと指示があった。控えの間にはタレーラン公もいた。二人とも側によれと言うので、お言葉のようにした。

 

「会議の趨勢は決した。」

 

 陛下の言葉に我等二人首を縦にした。

 

「マオスは、速やかにスピアウオータ宣言受諾の連絡をアルタラス大使に送れ。そして、魔信で、前線の我が軍に戦闘停止の宣言をさせるように取り計らえ。」

「承りました。休戦は向こうの提案の通り、武装解除を監視付きで受け入れるということでよろしいですな。」

「うむ。それでよい。そしてタレーラン公。近いうちに玉座を其方に譲る。即位の準備を始めておいてくれ。」

 

 わしとタレーラン公は驚いてお互いの顔を見る。

 

「畏れ乍ら、王太子殿下の処遇は・・・」

 

 タレーラン公が話しかけると、陛下は首を横に振った。

 

「ここ数日の王太子の言動は、既に会議出席者、すなわち国家高官の知る所。そして、さっきの敵を実際に目にしてあの無様な姿。あれを跡目とするわけにはいかぬ。」

 

 陛下は沈痛というべき表情を浮かべて言葉を紡ぎ出した。

 

「だが、あれでもわしの子だ。敗戦の責めはわしが負う。故にマオス。なんとか講和交渉で家族の助命だけでも取り付けてほしい。公にも頼む。教会に入れよというのであれば、其れでも構わぬ。だが、できれば、伯爵か子爵の地位でも与えてもらえればと思う。」

 

 陛下のお言葉にタレーラン公は真剣な顔で答えた。

 

「わたしも人の親です。陛下の御子は猶子として王宮に留めたいと思います。そして、できれば、どなたかと良縁をと思っております。」

「すまぬ・・・。」

 

 王太子殿下の廃嫡はやむを得ぬだろう。そして、国王陛下の退位もしかり。だが、助命だけは何としても取り付けねばならぬ。これからが本当の戦いよ。

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