皆さんの意見を聴取したいと思います。拙作の作中には、これまでいろいろな人物が登場してきましたが、この人の「視点」が読みたいという意見がありましたら、感想欄までお寄せください。採用するかは別ですが、参考にさせてください。
中央暦1639年6月度定例御前会議議事録(6月25日)
1.出席者
国王
アンクワール・ナースィル・アル=クイラ陛下
王太子
アルイート・アンクワール・アル=クイラ殿下
王族代表
マルワーン・ナースィル・アル=スラーン=クイラ殿下
内閣総理大臣
アスアド・フラート・アル=バータジー侯爵
内務大臣兼諸侯会議統裁官
ハムダーン・フワイリド・アル=ハーンジー伯爵
大蔵大臣
ハールーン・モサメッド・ベルディエルート大公殿下
外務大臣
アイーラ・メッサル伯爵
陸軍大臣
サムハド・フサイン子爵
海軍大臣
イルマリ・リウハラ子爵
司法大臣
ヴィクトール・ベダレフ伯爵
商工大臣
シャーリー・テルハーン・アル=バダウィー公爵殿下
文部大臣
フレードリク・ルンドブラード前辺境伯
農務大臣
ミシェル・ティンベルヘン子爵
鉄道大臣
エジンバラ・ハイヤート公爵殿下
内閣書記官長(書記)
ジェイミー・キャクストン(クイラ王国御雇外国人・英国籍)
2.議題及び討議内容
2-1.外務大臣提出
1.対ロウリア講和会議派遣全権案 ― 可決
全権として3名の派遣を予定している。
外務大臣 アイーラ・メッサル伯爵
諸侯会議議官 シャフリヤール・ヘルミッシュ辺境伯
外務省出仕 オルドワール・ハーモニック・カスペル子爵
日本及び満洲が野党第一党の衆議院議員を全権に加えるという点を鑑み、政府外貴族の代表としてヘルミッシュ辺境伯を全権に推戴。
カスペル子爵については、この機会にクイラ王国はアルタラス王国と国交樹立を図るつもりであり、アルタラス派遣公使として現地滞在を継続していく所存である。
2.日本公使館一等書記官ハスハイト・バルビールを対ロ強硬派との折衝に継続対応する案 ― 可決
日本国内の対ロ強硬派ともいうべき集団に対しては、引き続き公使が対応するのではなく、一等書記官に対応を継続させることで、クイラ政府として日本政府に、彼らと一定の距離を開けるという暗黙のメッセージを送る。
(質疑)
バルビール一等書記官に対応させるにあたって、彼に何か肩書を得した方がよいのではないか。クワ・トイネとクイラで温度差が見えるような形がでるのはよろしくないのではないか。
(回答)
対朗戦争貫徹国民決起集会にクワ・トイネ公使が出席し、クイラ公使が出席していなかったのは偶然であるという建前を維持すべきであり、あからさまな格の差をつけるべきではない。今後、同様の事態が生じる事態が予想されるが、強硬派に我々の意図を知られるような言動は避けるべきである。
3.ムー国派遣公使に関する案 ― 可決
これまで、我が国はムー国との間に国交を有しているとはいいながら、クイラからは常駐の外交官を派遣していなかった。日満両国のムー国への接触を契機として、クイラとしても派遣公使を送るべく、駐クイラ大使と折衝を図る。この際、日満基準ともいうべきウィーン条約に合致した公使格を相互に派遣しあうように調整したいが、これについてはムー国側の見解を待つ。
2-2.内務大臣提出
1.王都域内拡張案 ― 可決
バルラート宮殿を中心部とする市街地は日満との国交樹立後手狭になりつつある。この際、城壁の一部を取り壊し、市街地を拡張する工事を執り行うべきである。
内務省は日本企業の住友建設と仮契約を行い、王都拡張計画案を策定した。
油田地帯に繋がる街道がある西門は取り壊して、全面的に拡張が可能なようにする。西門付近には、現在の王都内部にある貴族の邸宅を移し、将来的には諸侯会議の議事堂建設予定地を確保する。また、将来的に王立大学を建設するにあたっては、この地に建設を予定したい。
王都の正門については、王都の象徴として、城門と城壁の一部を残す。東側も南側と同じように城門と一部の城壁を残す。城壁の跡沿いに街道と線路敷設予定地を確保し、南門付近に王都中央駅を建設予定地を確保する。新街道は東門を通過した先にある港町バッスラーと接続し、鉄道を併設する予定である。鉄道は、バッスラーからバルラートを経て港町ジワーグラッサに至るルートを計画中である。
なお、東門周辺には、日本企業の支社を誘致したい。
(付帯報告)
王弟殿下より、三井高義氏との間に王都競馬場の建設についての仮合意ができたことの報告あり。王都南東部の一角を競馬場建設予定地にあてるとのこと。
2.バッスラー特別行政区区域拡大提案 ― 可決
日満両国に土地の一部を提供しているバッスラー特別行政区は、日満との間に締結した、杭日経済文化振興協定、杭満経済地位協定暫定特例において、当該区域内において日満両国に特別な地位を保障したものであるが、今回この区域を拡張し、港湾施設の拡充を強化すべきであるとの認識を内務省は必要としている。具体的には、区域を2倍程度拡張し、大型船舶の停泊可能数を増やすべきである。更に、大型船舶の修理を可能とするドックの建設を依頼すべきである。当該ドックの建設運用を基礎にして、自前のドック建設につなげていきたい。
2-3.大蔵大臣提出
1.クイラ新貨幣製造案 ― 可決
クイラ王国で流通している貨幣供給量を増やすべく、新貨幣の鋳造を日本大蔵省造幣局に依頼したい。日満との国交樹立を経て、不毛地帯であった油田地帯が金の成る木に化け、王家から各貴族に下賜できる金銭増加している。更にはバッスラー特別行政区の発展とともに貨幣経済の浸透が王都を中心に広まりつつある。貨幣供給量が追い付かなくなってくる前に、新貨幣を鋳造し、現行貨幣と交換すべきであると進言する。ドワーフ族の一品ものの金属加工品と比較すれば、日本貨幣の精巧さは同程度の品質を持つと言わねばならぬが、重要視すべきは、日本貨幣は大量生産が可能というべきであり、またドワーフ族の制作物は一品ものであることから同じ模様のものを大量に生産するのには向いていない。このことから日本側と契約を結びたい。
(質疑)
紙幣導入については如何に。
(回答)
紙幣の導入については時期尚早と判断する。我が国は、未だ信用貨幣を運用するに必要な基盤が形成されていない。
2-4.陸軍大臣提出
1.満洲帝國陸軍軍官学校留学生派遣案 ― 可決
満洲帝國陸軍から提案された陸軍士官留学生受入基準に基づき、陸軍から10名を選抜し、3年半の留学を行いたい。受け入れ開始は、9月1日からを予定している。
満洲帝國陸軍軍官学校は、本来4年間の教育年限の有する学校であり、半年程度短いが、隊附勤務の一部免除でこれを実施する。また、座学についても満洲国史などの学科の一部を別途の科目に振り替えて対応する予定であるとのこと。
2.クイラ王国陸軍に階級制度を導入する案 ― 可決
1.に関連するが、クイラ王国陸軍が今後満洲国大日本帝国と協調していくためには、彼らの制度に応じた軍規定を導入する必要がある。陸軍に階級制度を導入するにあたっては、諸侯軍との間とも調整を必要とするため、目下諸侯会議に於て検討を依頼しているところであるが、9月1日には開始する必要がある。
2-5.海軍大臣提出
1.日本海軍海防艦購入計画について ― 可決
クイラ王国海軍に対して日本海軍より海防艦を4隻売却する計画がある。購入に際しては、日本皇室より購入費の一部を負担するとの話もあり、海軍としては前向きに話を進めたいと考えている。運用に必要な燃料については、クイラ製の燃料で対応可能であるとの話であり、将来的には駆逐艦もしくは巡洋艦相当の艦船を購入したいと考えている。
艦艇運用に必要な乗組員の教育については、機関科以外は日本側で速成教育を実施するとのことである。機関部要員は日本人士官が対応するとのことである。
2.海軍士官錬成について ― 見送り
陸軍の士官留学に関連して、海軍留学生の受入を日本海軍に打診してみたところ、海軍士官の受入れは時期尚早ではないかとのこと。海軍士官の錬成には数学などの知識が不可欠であり、また機関部要員には高い工業力が必要であり、クイラ王国として海軍運用はまだ厳しいのではないかとのこと。満洲帝国海軍軍官学校に打診すべきかを提案したい。
(補足説明)
メッサル外務大臣より報告。駐日公使に命じて折衝に当たらせたところ、海軍軍令部側は好感触であったが、海軍兵学校を所管する兵部省側が難色を示しているとのこと。理由は定かではないが、おそらく最近起こった日本政府と海軍の抗争が背景にあるのではないかとのこと。駐満公使に満洲海軍に依頼することが可能か検討を命じたところ、海軍に関して日本海軍を差し置いて満洲海軍に何かを依頼するのは日満関係上よろしくないとのこと。時期を置くべしとのことであった。
2-6.司法大臣提出
1.クイラ王国民法典編纂完了報告
クイラ王国民法典については、日本民法典、満洲民法典を参考に編纂していたが、このほど総則・物権・債権編の編纂が完了したことを報告。ただし、日満の民法典を翻訳したのに近いため諸侯会議の意見も聞きながら、編纂作業を継続したい。
(質疑)
公布などのタイムスケジュールは。
(回答)
未だ未定である。日満側から我が国の法制度が日満の基準から相当に乖離していないように見られる必要があるが、国内諸侯の意見調整も必要である。法典編纂の目的は、日満投資を拡大することにその眼目を置いているが、国内のこれまでの慣習などを無視するわけにもいかない。
(質疑)
商法典の編纂が先ではないか。
(回答)
商法については、バッスラー特別行政区内部では日満商事法の適用がなされており、特別行政区の現時点での商慣習に問題は生じていない。ただし、我が国の内部すべてに日満の商事法を適用するわけにはいかないし、日満側も法を押し付けようとする行為は決してなさないと約束している。民法典の編纂は、日満側に我が国の法制度がそちらの基準にまで達したことを証明し、特別行政区の外にも投資をしてみようかと思わせることに狙いがある。
2.対日満領事裁判権の動向について報告
日満側と調整の上、領事裁判権を向こう10年間維持することで調整が進んでいる。日満の法思想からいえば、国家主権の行使をクイラ側にさせないというのは問題があると考えているようではあるが、我が国の刑事訴訟制度が彼らの要求水準に達するのには当分の間かかる。新たに司法省に最高法院を設置し、裁判制度の専属を行わせたが、地方ではまだ衛兵と警察の分離が進んでいない。裁判と捜査の分離だけでも今年中に行わせたい。
(補足説明)
アル=ハーンジー内務大臣より。これまで治安維持を行っていた衛兵隊を6月1日から、警察と改め、軍の所属から内務省の所属に改めた。だが、地方諸侯の中にはまだこの動きに適応できないものもいる。
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