大日本帝國召喚   作:もなもろ

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パ皇の魔の手がフェンへと伸びる。
そして、フェンに独自設定マシマシ。



フェン王国首都アマノキ 外国奉行所 フクハラ城 中央歴1639年7月7日(火)

フェン王国首都アマノキ 外国奉行所 中央歴1639年7月7日(火) 午前10時

― フェン王国御側衆筆頭 マグレブ・サエモンノカミ・ノリタケ

 

 外国奉行所にパーパルディア皇国の特使が尋ねてきた。特使が訪ねてきた当初、奉行所の役方は、彼らのことを駐箚大使からの使いだと思い、国務取扱御定書の規定の通り、奉行所の役方で対応していた。しかし、使者の話を聞くと、本国からの特使であることが分かった。しかも、第三外務局からの使者ではなく、国際戦略局の本局の役職付の人間が尋ねてきたというではないか。

 彼らを担当していた外国奉行のオンドウルは、会談の相手の立場そして話の内容から、直ちに御城へ使いを送り、御側衆筆頭のわしに会談担当者の変更を依頼してきた。御側衆は剣王シハン陛下の側近として、国務の諸事全般を取り纏める。故に国務の全般を取り仕切る役回りがあるともいえる。だが、王国の行政事務は広範だ。その全てを取り仕切ることなど不可能。故に普段は国務取扱御定書に則って各奉行に於て処理が為される。

 相手はパーパルディア皇国。その取扱いには注意が必要だ。オンドウルが知らせをよこしてきたということは何事かの厄介が起こったとしか言えぬ。

 パーパルディアの駐箚大使は自分自身が話をする必要がある何事が重要なことがあるときは、我等フェンの人間を大使館に呼ぶ。その際も、外国奉行などの下っ端の人間ではなく、我等御側衆の人間を呼びつける。そして、単純な事務取扱を行うときは、外国奉行所の役方を大使館に呼びつける。彼らが外国奉行所に来るということはあまりない。

 彼らが外国奉行所に来るときは、皇国からの下賜品を渡すとき、それも重い荷物であるときだけだ。これも輸送の手間を省いてくれるという考えからではない。パーパルディア皇国人は魔法が使え、我等フェン人は魔法を使えない。パーパルディア皇国人は、重力操作の魔法を使い、重い荷物を軽々と運ぶ。我等にはできない手だ。そして、荷物を手分けして苦労して運ぶ我々を見てこういうのだ。

 

「これこれ、皇帝陛下からの御下賜品をそのように危なっかしく運ぶではない。傷でもつけたらなんとする。」

「おやおや、御同僚。お忘れかな。フェン人は我等のように魔法を扱えぬ。重い荷物を身の筋肉を使って運ぶことしか知らぬ土人よ。」

「おお、そうじゃったのう。力任せに物を運ぶ、さながら牛馬と同様の存在であったの。フハハハハ。」

「牛馬とはひどい。帝恩を忘れず、畏まる振る舞いは、牛馬にはできませぬぞ。フハハハ。」

 

 若い連中は皇国人の我等を蔑む言葉を耳にして涙するが、決して激してはならぬと強く戒める。皇国を怒らせては我等の負けだ。我等のせいでフェン王国を潰すわけにはいかぬ。剣王陛下も耐えておられるのだ。

 ふと、日本国の面々を思った。彼らは用があるときは自分から外国奉行所を訪ねてきた。それも特命全権公使の島田殿自らが尋ねてきたこともある。つい先日も、我が国の軍祭へ日本国軍隊を招待したいということを本国の外務省に報告した、返答についてはいましばらく待ってほしいと使者を出せば済む話を島田公使自らがわざわざ話に来てくれたとのことである。そして、今の話を上に伝えてほしいとのことであった。自分のように身分の低い人間と会って伝言を頼んでくれるとは誠に感服したとは、島田公使と話をした外国奉行所の筆頭与力の言葉だ。

 驚くのも無理もないだろう。パーパルディア大使館の連中はたとえ一言二言の言葉でも、書状を渡すという事でも、取次の人間に話を伝言したり、書状を預かるということをしないのだからな。

 

 物思いにふけながらも歩く速さは変わらず。ついに、外国奉行所の応接所の襖までやってきた。さあ、いよいよ件の御仁と会談の時。

 

 

 ―――――

― パーパルディア皇国国家戦略局南方部長 パルソ・ツー・オーエンブルグ

 

「失礼いたします。」

 

 部屋の外から声がして、引き戸が開いた。あごひげと口ひげを生やした偉丈夫が室内に入ってきた。私の面前に座ると深々と頭を下げてきた。

 

「お初にお目にかかるパーパルディア皇国の特使殿。拙者は、剣王シハン陛下の御側御用取次を務めますマグレブ・サエモンノカミ・ノリタケと申します。パーパルディア皇国と違い、我が国では姓が先に来ますので、マグレブとお呼びいただければ幸いです。」

「お初にお目にかかる。御側衆筆頭の対応を嬉しく思います。私は、パーパルディア皇国国家戦略局で南方部長を務めておりますパルソ・ツー・オーエンブルグと申す者。今回は迅速な対応痛み入る。さて、既にそこの外国奉行殿には我が国からの要請をお話ししたが、貴殿からも私にに質問しておきたいことはあるかな。」

「いささか、不明なこともありますのでまずは、事実の内容を再確認させていただきたい。まず、我が国の南部森林地帯の近くに町を築き、その町を林業の町とする。森林地帯より切り出した木をその町で製材して他国に売る。売上には、我が国の税率と同様の税を掛けることが許可される。その町の住民でパーパルディア皇国人には、わが国民と同等の庇護を与えるが、パーパルディア人には自衛の為の若干の武装が許可される。森林地帯の土地の所有権をパーパルディアは求めないが、切り出した材木の所有権は要求する。こういうことでよかったでしょうか。」

「うむ。左様だ。細かいところは、あるいは後日決めていくこともあるだろうが。大筋は今話した通りの対応で間違いない。」

 

 質問に答えたところではあるが、相手の顔が訝しがる様子がますます深まっていく。まあ無理もないことだ。これまでの我が国の要請とはまるで違っているのだからな。

 

「その、我等は今まで貴国からの人足の求めなど単純労働者の供出に応じてきました。それによりまして、我が国の独立を認めていただき、皇帝陛下の御威光という帝恩に浴してきました。今回のように我が国に直接利益があるような申し出を今まで頂いたことがなく、私としてはいささか困惑しておる次第でして。」

 

 まあ、そうだろうな。我が国への不信感が見て取れる。「奴隷の供出要求」を「人足の求め」としたのがよい例だ。このままでは、イノス企画官の計画である、皇国に心服させるという目的は達成することはできぬ。

 

「マグレブ殿が戸惑われる思いはよくわかる。皇国は、いや正確には第三外務局の連中はなのだが、皇国の近隣諸国との友誼を軽視してきた。とにもかくにも、自国の発展のために、近隣諸国を役立てようという感覚しかなく、近隣諸国と共に発展していこうという感性を持っていたなかった。しかし、皇帝陛下は最近になり、第三文明圏全体で、そしてその周辺を含めて、全人民が共により良き明日を過ごせるようにしたいという思いを持たれるに至った。今回の話はその具現化なのだ。」

 

 我ながら、なんという青臭いセリフなのだと思った。皇帝陛下が慈悲深い存在であることは確かだ。そうでなければ、私は今この場にいない。だがそれは、冷徹な統治者としての目でイノス企画官が優秀であることを見抜き、私が彼の補佐を務めていたからだ。

 

「その、今のお話を皇帝陛下もご存じなのでしょうか。」

「もちろんだ。この話は、皇国国家戦略局企画官のヘンリー・ミクリッツ・フォン・イノス閣下から皇帝陛下に上申され、皇帝陛下の裁可を経た上での話だ。故に国家戦略局南方部長である私がフェンに来ている。私の持っている固有の権限ではこのような話はできない。」

「皇帝陛下の勅許状はお持ちでしょうか。」

「この話に関しては、イノス企画官の取り纏めた文書がすべてだ。この話を公にすることはできぬ。話がつぶれる可能性があるのだ。想像はつくであろう。」

 

 マグレブは迷っているようだ。私の持ってきた話は、フェンにとっても税収増といった魅力がある話だ。今までの皇国への人足派遣という一方的な負担になる話ではない。だが、うま味があると言ってもそう簡単に飛びつくことはできまい。そう、我がパーパルディアが、とうとうフェンの直接統治に乗り出す、その下準備を始めたのだという疑いも抱いているに相違ない。

 無理もあるまい。我が国はこれまで軍事力を行使して、他国の併合を重ねてきた。皇国が他国と共存共栄の途を歩き始めたと言っても容易には信じられまい。それにだ、この政策の意図は将来的に他国を自然と皇国に従属させることなのだ。対等な共存共栄関係ではない。

 

「まあ、今すぐに全ての要求を受け入れよとは言いませぬよ。剣王陛下に報告する必要もございますでしょう。」

 

 マグレブの目が見開き、驚いた顔をしている。それはそうだろう。我が国が返答を待つというのだからな。要請には有無を言わさず、従わせてきたからな。だが、釘をさしておく必要はあるだろう。

 

「とはいえ、私も暇ではない。次の出張先に向かわねばならぬのでな。そうですな。来週の頭にはより良い返事を聞かせてもらわねばなりますまい。その間に貴国国内の調整をお願いしたい。私は、宿をナルガサッキー屋に取っています。何かあれば、そちらに人をよこしていただきたい。」

「パーパルディア大使館におられるのではないのですな。」

「その通り。それに、この話は大使館には秘密でお願いしたい。政策の転換には障害がつきもの。これまでのやり方に慣れた外務局員に知られては、この話ややこしくなりますぞ。」

「委細承知いたしました。」

 

 そう。まだ、皇国国内の調整は充分ではない。第三外務局長のカイオス子爵は優秀な方だとは思うが、残念ながら外務局員を掌握しているわけではない。第三外務局員は赴任地でやりたい放題している連中が多い。それも、外務局中央に知られずにだ。

 これには、第三外務局の体制も影響している。第一外務局の主任監察官はエミール侯爵夫人であり、汚職には敏感だ。しかし、第三外務局の監察官は主任の監察官を置いていない。監察官という身分のみを持った国内の大貴族が多数名を連ねているにすぎない。彼らは、皇国の利益というよりも自家とその係累の利益を第一に考え、赴任した国からの甘い汁を吸おうと寄子を数多く大使として派遣している。職務外の金銭、物品の要求が多いと聞いているが、監察も咎めない。カイオス子爵は皇帝陛下の信任が厚いが、彼とて国内の大貴族相手に口を出すことが難しい。

 この大貴族の手は国内にも及んでいる。内務省の外局である臣民統治機構がそれだ。臣民統治機構のそれぞれの長は国内の大貴族の寄子だ。なかなかこの連中も横の連帯だけは強くてやりづらい。当然内務尚書も臣民統治機構長も手が出せないでいる。

 今後、我が国の政策転換には、彼らが大きな障害となる。どう抑えるのか。イノス閣下もまだ答えを出せていないが、この問題も喫緊の課題だ。

 考え込みながら、駕籠と呼ばれる人力の乗り物に乗り込み、外国奉行所を後にした。

 

 ―――――

フェン王国首都アマノキ フクハラ城御座所 中央歴1639年7月7日(火)午前11時30分

― フェン王国御側衆筆頭 マグレブ・サエモンノカミ・ノリタケ

 

 パーパルディア特使との会談を終え、御城に登城する。剣王陛下に報告せねばならぬ。陛下は御座所におられるというので、御側に伺うと、陛下は縁側で書を読んでおられた。

 

「サエモンノカミただいま戻りました。」

 

 御庭の端から声を掛けると、陛下が顔を上げ、側によるようにと言われた。御側近くに侍り、先ほどの内容を報告すると、眉間にしわを寄せられ、面妖なことよと仰せられた。

 

「パーパルディアの特使の言い分を信じれば、特使の所属する派閥は強固ではなかろう。それに、新しい考えとは言うが、全く我が国の支配を考えていないとは言い切れぬ。注意が必要であろう。交渉は可能か?」

「さて、全くダメとは言い切れませぬが、よりよい返事を聞かせよと最後に言いました。最終的には要請の基本的な部分は呑まねばならぬかと。」

 

 私が答えると、陛下は庭を見ながら溜息を吐いた。そして、私の顔を見ずに話をつづけた。

 

「では、受け入れるしかないか。訝しい話ではあるが、野心を抑えた、いや野心を全く見せないやり方である以上、完全な好意でしかない。これをはねつけては、完全に皇国の顔を潰す。いや、彼ら、我等に好意的な派閥の顔を潰し、その影響力を下げるだけとあっては、我等に災いが生じるだけであろう。なんとか、植民してくる者達には、我が国の法に従うという宣誓書を我が国に出すことを条件に追加してもらうように交渉せよ。ただ、それに固執することなく、無理であれば、取り下げること。良いな。」

「御意。」

 

 指示を頂き、私も庭を見る。美しい庭園よ。御庭の池には鯉が泳ぎ、時折水面がはねる音が聞こえる。木々が揺れ、葉と葉がかすれるわずかな音。静かな時だ。

 

「武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候」

 

 ふと、陛下の声がし、お顔を見る。陛下は未だ庭を見ていた。そして、庭を見ながらおっしゃった。

 

「駐日公使から取り寄せた本に書かれてあった。日本の昔の武者が残した言葉よ。マグレブ、日本国軍隊を軍祭に招く話はいかが相なった。」

 

 すっと、姿勢を正して返答する。

 

「我が国駐在の公使から本国に軍祭招致の連絡を入れたそうです。今は本国の決定待ちです。」

 

 陛下が私の顔を見る。格別の御指示があると思った。

 

「なんとしてでも、日本国軍隊を軍祭に招待せよ。駐日公使にゲキを飛ばせ。日本国政府・日本国大本営に足を運び、軍祭への派遣を受け入れてもらうように交渉を行わせよ。王国の興廃は日本国を軍祭に招致できるか否かにかかっていると言っても過言ではない。」

「陛下、それは。」

「そうよ。パーパルディアと日本。両国の緩衝地帯として我が国を利用してもらう。両国をかみ合わせることで、一方からの我が国への侵略を防ぎ、同時に一方を牽制する。そうすることで我が国は命脈を保つ。駐日公使からの報告によれば、日本国は海外への兵力使用に消極的であるというはなしだ。30万人以上の軍を持ち、海外への展開も可能であるにもかかわらず、対ロウリア戦では少数しか出さなんだ。もちろん、その少数でもロウリアを圧倒したことは確かだ。だが、ロウリアとパーパルディアは違う。日本国でも一筋縄ではいかぬだろう。そこを引き摺り込むのだ。」

 

 陛下が話し終わるとともに、身を伏せて礼をする。そして、一言、御意と返答を発した。

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