大日本帝國召喚   作:もなもろ

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講和会議第四日目、会議は踊り続けます。


捕虜等取扱四箇国政府首脳共同声明 / アルタラス王国王都ル・ブリアス アルタラス外務局迎賓館 中央暦1639年7月20日(月)

人道的見地からロウリア人捕虜及抑留人民に対して格別の取扱を行うことに関するクイラ王国、クワ・トイネ公国、大日本帝国及び満洲帝国の政府首脳による共同声明

 

中央歴1639年即ち皇紀2675年7月19日

 

一、我等クイラ王国内閣総理大臣、クワ・トイネ公国首相、大日本帝国内閣総理大臣及満洲帝国国務総理大臣は、我等の至高の権力より命を受け又は自己の権限に因り、且我等数億の国民を代表して協議の上、ロウリア王国政府に対し、我等の政府の責任に於て拘束せらりしロウリア人捕虜及抑留人民(以下、捕虜等と記載す)を、以下に定むる手続に沿って即時に且代償を伴うことなく解放することに意見一致せり。

二、戦争状態の平和的終結に向けた講和会議が、ル・ブリアスに於て開催中である現状に鑑み、且今次戦争の終結は確定せらりし事態なることは、ロウリア王国政府が充分に認識していることを我等は確信し、其の認識を享有する。我等は、ロウリア王国政府が戦争状態の再開を一顧だに望まざる事態にあることを了知す。斯かる状況に於て我等は、本来農業工業等の一般的労働に従事する一般兵卒が、遠き異国の地にて虜囚の辱めを受け、父母妻子兄弟姉妹其の他縁者との関係を断絶せらりし苦衷は筆舌に尽くし難きことなるを認識し、又彼らに深い同情の念を抱きたることを表明す。

三、之が為、我等政府首脳は、人道的見地に立って、我等の拘束するロウリア人捕虜等を解放するに際しては、以下の条件を以てすることをロウリア王国政府に通告す。ロウリア王国政府は、自国兵士等の斯かる苦衷を深く理解し、迅速に対応せられむことを希望す。

 

 一、ロウリア人捕虜の内、即時解放の対象となるのは一般兵卒に限定せらるるものであって、職業軍人には適用せられざること。戦闘の過程で発生した抑留人民については軍との雇用関係の有無に関わらず全て対象となること。

 二、解放の対象となりたるロウリア人捕虜等については、講和条約が発効せらりし時期迄ロウリア軍の直接又は間接の軍務に復帰せざることを宣誓する者のみ即時解放の対象となりたること。

 三、ロウリア王国政府は、解放されたロウリア人捕虜等を、講和条約が発効せらりし時期迄直接又は間接の軍務に招集せざることを同盟国に対して宣誓す。宣誓の手段は、書面及び国際的に通じる魔信に於てロウリア王国政府の責任者の名前を以てその旨を発信すること。

 四、解放に際しての祖国への送還については、同盟国の責任に於てロウリア王国政府の管轄する領域内まで実施す。領域内にて受渡が終了したる後は、ロウリア王国政府の責任に於て速やかに故郷に送還すること。

 五、ロウリア王国領域内迄の捕虜等の送還に関する費用は同盟国にて負担す。領域到達後の送還の費用はロウリア王国政府にて負担す。

 六、ロウリア人捕虜等が現在着用せりし我等の貸与せる衣服は、ロウリア王国領域内到達の時期まで其の着用を認む。ロウリア王国政府は、領域到達後に捕虜等の着用する衣服を準備すること。

 七、捕虜等の受渡は、アールヌルポ城塞及びタレーラン公爵領領都シュバイツに於て実施す。

 八、前項迄の条件に於て定めの無き事項は、講和会議の全権その都度協議するものとす。捕虜等の受渡地にて発生せる軽微、些末な事項は現地軍の責任者間でその都度協定することを得。

 

四、我等は、人道的見地から発したる上記条件をロウリア王国政府が受諾の返答を速やかに国際チャンネルを使用した魔信にて発せられることを願ふ。尚、この共同宣言を以てロウリア王国政府は自己の責任を軽減するが如き態度をとることは一切認めざることを併せて通告す。

 

(クイラ王国、クワ・トイネ公国、大日本帝国及び満洲帝国の政府首脳電子署名)

 

【「興信27年7月20日(月)発行 満洲国国務院政府広報第9632号」より抜粋】

 

 

―――――

アルタラス王国王都ル・ブリアス アルタラス外務局迎賓館

 ― アルタラス王国外務卿シモン・ド・ユグモンテ

 

 講和会議は第四日目を迎えた。第三日目にロウリアのベルシュ大使より爆弾発言が飛び出し、会議は荒れに荒れた。講和会議が破談となれば、仲介の任を請け負った我等アルタラスの面目も失する。余計なことをと思ったが、日満両国首席全権がこれを収め、次回の日程も決めたうえで散会した。

 最近の私はとても忙しい。ここ最近は、この講和会議とパーパルディア皇国の国家戦略局なる部局ともやり取りをしている。講和会議は外務局全体で取り仕切っているが、国家戦略局の対応は私一人で行っている。パーパルディア大使館の連中に動向を知られたくないという、相手の意向もあるが、私もあの連中は嫌いだ。話が通じる者との協調を壊すわけにはいかぬ。

 その彼だが妙な依頼をしてきた。講和会議の議事録を見せてほしいというのだ。講和会議の議事録は、講和条約が締結された後、一定期間を経た後に公刊される手はずとなっている。日満両国がそれを望んだ。故にそれを待ってはいかがかと申し出た。仲介の任を請け負っている我等がロウリア側にも同盟国側にも内緒で見せるわけにはいかぬと。だが、彼は日満両国の情報をいち早く知りたいと申し出てきた。特に秘密裏に情報を収集したいとも申し出てきた。

 正直悩んだ。我がアルタラスから議事録の漏洩が知られるとなれば、我等の信用にかかわる。日満両国外相は、議事録は特に隠すことなく、公刊をしてもらえればよいと言っていた。議事録の公開により、同盟国の外交姿勢は、国際社会の信義と協調を重んじ、諸外国との公正な関係を規律しようと試みている、そういう姿勢が世に膾炙されることは、我等の今後の信用に繋がるというのだ。

 今後の公開を予定しているのであれば、日満両国の姿勢とやらが、いち早く他国に知られるのは、別段の問題が生じるわけではない。議事録を精査して、非公開部分を設定するというのであればともかく、そうではないというのであれば、この段階でパーパルディアの部長に見せることは、特段の不義理を果たしていることではない。わしは、そう自分に言い聞かせて、彼に私の付き人たる格好をさせたうえで、外務局に案内し、議事録を見せた。

 ついでに、日満両国のいろいろな情報を聞いてきた。まだ、パーパルディア皇国は、日満両国と満足に接していないので、位置情報すら掴んでいないらしい。私は日満両国から大体の位置を聞いていて、おおよその地図ももらっていたので、これを見せることとした。地図自体は特段、秘密にするような条件を付されたうえで贈与されたわけではないので、見せることにしたが、彼はしきりに驚いていた。満洲国の位置は、リーム王国の位置ではないかと。

 日満両国は、この世界に突然国の領土毎やってきたと説明をしていたが、この話自体なかなか懐疑的だ。そのような超大規模な転移魔法など聞いたことがない。それに膨大な魔力が必要となる。発動可能だとは思えない。

 だが、日満両国の有する技術は、正直ぽっと出の新興国には不釣り合いの品が多い。我が国の駐満公使から講和会議に際して、その準備のために様々な品が運び込まれた。これらの機械類を活用して講和会議を効率的に行うべきであり、使用に長けた人間も送るので、是非とも活用してほしいとのことであった。これらの機械を見ると、ムー国で使用されている機械類のそれを彷彿とさせる。いや、ムー国の人間がこのようなものを持っているところを見たことがない。ムー国の機械類よりも高度な印象を受ける。国家の転移。どうにも訝しいことだ。簡単に信じることはできない。だが、否定しようにもこれらの品を見せられては、どうにも判断がつかない。

 当然だが、このような品はさすがにパーパルディアの特使にも見せてはいない。欲しがられては困る。あるいは、このような品を使いこなすことができれば、我が国は更に地位を向上させることができるかもしれない。パーパルディア本国が日満両国のことを知らない今が国力増強のチャンスともいえる。渡すわけにはいかない。

 議事録について、彼は違和感を覚えていた。ロウリアは負けたと聞いていたが、それは間違いのないのかと。同盟国側とロウリア側、それぞれの敵に与えた損害や被害、ロウリア領土の被占領状態などの認識にずれはないので、ロウリア側の敗北は間違いないだろうと回答したが、彼はなかなか理解できない様子だった。無理もあるまい。

 国家戦略局との会合はスムーズに進んだ。大使館の連中とは大違いだ。8月1日を以てシルウトラス鉱山はエミール鉱山と名前を変える。そして、その連絡はミリシアルに行き、今後の魔石の発注は、その名前でなされる。我が国が世界に誇る魔石鉱山の名前が変わる。幾分の寂寥感があるが、実害が生じているわけではない。おまけに我等の国内で魔道具の製造が始まる。いずれは、我が国でも製造が許可されるとなっては、よいことずくめだ。国家戦略局との友誼は大事に育てねばなるまい。彼らがパーパルディア皇国国内での立場を強化できるよう我等も協力できることは協力しなければならないだろうな。

 

 ロウリア側、同盟国側、それぞれの全権団が会議場に入場してくる。よかった。前回のあの騒動から再度の会合が開かれるのか、心配していた。司会進行役の外務局次長が、会議の再開を宣言する。

 

「それでは、講和会議の第四日目を開催したいと思います。前回会議の議事録につきましては、本日の会議終了後に回覧しますので、全権各員閲覧点検の上、修正があれば申し出てください。修正が無ければ、末尾に首席全権は署名をお願いします。本日の議事日程は、前回会議時に決定されましたように、軍備制限事項についての討議となります。それでは、ロウリア側の修正要求につきまして、同盟国側から意見の陳述を願います。」

 

 スッと同盟国側から手が挙がる。ほう、徳川首席全権が手を挙げるとは、これはどういうことだ。

 

「会議冒頭ではありますが、議事日程に追加を望みます。昨日の午後、同盟国首脳会議の緊急会合が行われ、そこで共同声明が採択されました。全権団は各々の政府より指示を受け、講和会議に於て直ちにロウリア側に手交し、この声明に記した内容についてロウリア側に対処をさせることを望んでおります。なお、議事日程の追加により、休戦協定の期間内に講和条約の審議が終了せずと仲介国において判断されましたら、同盟国は休戦協定の延長を行うのに苦しいことは無いと予め宣言いたします。共同声明の内容につきましては、ペーパーを用意しております。仲介国及びロウリア側におきましてもお受け取り下さい。仲介国の議事録作成者の為に電子情報も準備しています。」

 

 全権団の随行員が立ち上がり、我等にペーパーを渡してくる。読みだした我等は息を呑む。読み進めるにつれて、会議場がざわつく。バカな。いったい何を考えている。

 

「徳川首席全権の申し出の通り、この内容につきましては、ロウリア全権団からロウリア本国に至急伝達を願います。この際、一時会議は休会とすることを望みます。司会の申し出にありました、前回分の議事録の確認は、同盟国側はこの時間を利用して行いたいと思います。」

 

 森山首席全権が意見を陳述すると、外務局次長がロウリア側の意見を聞いた。無論、ロウリア首席全権は会議の休会を了承した。マオス首席全権とパタジン全権、ベルシュ全権は走るようにして会議場を出ていった。マイヤーハイム全権は会議場に残ったか。おそらくは連絡要員という事か。しかし・・・。考えねばならぬ。前回の会議の次の会議、その冒頭がこれか。ベルシュ全権の発言を同盟国側はどう考えているのだ。あれは、クワ・トイネにとっては許せぬ発言のはずだが・・・。

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