大日本帝國召喚   作:もなもろ

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「手記」持ち主:外務局職員ヤゴウ (1)

2月1日

 外務局次長より呼び出しを受けると、今話題になっている日本への視察を命じられた。しかも出発は二日後、荷物は最低限でよく、日本滞在中の食事、移動、宿泊等の全費用は日本側が負担するという話だ。着替えに関しても日本国内で準備すればよいとのことで、その費用も日本側が負担するという。いたれりつくせり、話がうますぎると考えてしまうのは、職業柄だろうか。

 だが、日本国については、数日前に行われた会談の結果、高度な魔導文明を持ち、かなり裕福な国家なのだろうという推測がなされている。会談の席に出席した同僚のオランゲとナタダが昨日の昼食の際に話してくれたが、鉄でできた船を持ち、鉄でできた箱を空に飛ばせる魔法を持っているらしい。オランゲもこの視察団の一員に加えられたが、なんでも日本側は国交樹立と貿易を急ぎたい理由があるらしい。彼は日本出張を楽しみにしていたので、会談でつかんだ情報にはあまり狂いはないだろうとみている。

 荷造りはすでに済ませた。筆記具とペンとインク壺。それに数日分の下着と上着だ。防寒具を準備するようにと言われたが、我が国は温暖な気候だ。「寒い」ということを知ったのは、トーパ王国の大使が交代する際に応援で出張したときのことだ。そのときはトーパに赴任したことがある外務局の先輩に貸していただいたが、今回もそのようにするしかないだろう。

 明日も業務の引継ぎと旅の準備で忙しくなるだろう。

 

2月2日

 防寒具は、先輩に貸していただいたので、これで準備は完成だ。だが、下着は大目に準備しておくこととした。なんでも、外務局次長の話では、日本側は我々使節団一行に複数人の案内役を準備させるとの話をしたそうだ。原則として使節団としての団体行動をとってもらうが、日本側の案内人を同行させるのであれば少数人のそれなりの自由行動は差し支えないそうだ。だが、その担当者は日本国の外務局の正規の職員だといい、側使えのようなものではないという。正規の職員に洗濯や雑用をさせるわけにもいかない。こちらから洗濯夫や掃除夫を随行させるのかと問うてみたが、次長曰くその必要はないといわれたらしい。なんでも、洗濯夫や掃除夫という職業はないが、洗濯は機械でするらしいとのことだ。洗濯を機械でするという言葉の意味を聞いてみたが、局次長も要領を得ていないようだ。道中の不安を解消するためにも、下着は余分にあった方がいいだろう。筆記具も向こうで準備するといわれたが、やはり使い慣れたものがいいだろう。

 明日は、太陽が昇りきる前にマイハーク港に到着しておかなければならない。本来ならば、1日には出立し、今日一日をかけてマイハークまで移動しなければならない。それでもぎりぎりの到着だろう。しかし、日本側が移動手段を手配しているという。なんでもマイハークまでの道のりは明日の朝普段より早くに外務局に出向かなければならないが、時間までには到着できるという。どういう手段を使うというのだろうか。

 使節団の団員も知らされた。団長はマキスイ=ハンキ将軍で、マイハーク市からの求めに応じて軍事顧問をしている方らしい。軍務局から外務局に一時出向という形をとるらしい。私は、ハンキ将軍の部下という形を取り、外交上のサポートに回る役目だ。オランゲは、財務局のホント氏と組んで徴税収穫物の量を参考にして日本側と貿易ができる農作物の量についての検討を行うためのスタッフだ。オランゲの話では多量な農作物の貿易を日本側は希望しているらしい。徴税に回されていない農作物のうち農民の口に入る食料分と家畜が食べている量を差し引いた量が日本側に回せることのできる農作物となるだろうが、農作物を移動させるのには、どうしても馬車が欠かせない。国内にある馬車のうち転用可能な馬車はどれくらいあるのだろうか。どの程度の余剰農作物を回せるのか、この調査には多大な時間がかかる。とても出発までには調査結果が間に合わないと上には伝えたが、魔信を使って本国との連絡は随時取るとのことであったため、交渉に不都合はない。

 

〇日本国視察にあたっての要注意事項

貿易問題

・余剰農作物の総量の把握。←本国の調査待ち。各公国直轄領・貴族領に使者は出したが、間に合うのか?

・運搬をどうするのか。←日本への輸出は我が国の船を使うのか。相手の船か。船団の規模は?

・保存をどうするのか。←風向き・天候によっては、出入港できない。腐った場合の責任。

・相手国から何を購入するのか。←裕福な国だそうだが、我が国から一方的に買うだけでは、将来性が無い。

・我が国が欲しいものがあるのか。←高度な文明を持つとの話。期待はできるか?

国交問題

・ロウリア王国のような亜人排斥を求めていないのか?外務局長の話では求めていないだろうとのことだが、最重要のチェック項目

・我が国への領土的野心。←政府要人と会見できるか?それを見抜けるのか、使節団全員でチェックしあう必要がある。

・日本国民感情の観察←このようなことを知るには酒場が一番だが、日本側の随行員がつくとのことで調査自体は可能か?やはり下男を同行させるべきであったかもしれない。

・軍備の調査←ハンキ将軍の目で軍事力を図ってもらう。

政治体制の観察

・君主国との情報だが、君主が我が国をどう見ているのか。現在の外交担当は友好的だが、君主の一存でわが国への態度を変えられる可能性はあるのか?君主がどれだけの権力を持っているのか要確認。

・現在の政府要人に敵対する者の存在。日本にも貴族がいると聞いているが、現在の政治を主導する貴族に敵対する派閥の存在を確かめる。その存在を知ることができるのか。

・議会の存在。我が国のそれと同様に直轄領や貴族領からなる議会があると聞く。議員の我が国への印象を調査する。

経済体制の観察

・日本国の人口は2億8千万人との情報がある。正直過大な印象はぬぐえないが、それだけの人間がどのような生活をしているのか。農民の人口が少ないと聞くが、そうなると残りは町の工業人口や貴族となるだろうが、貴族と農民の比率がおかしい。実態の調査が必要。

 

 視察に差し当たっての観察項目を挙げるとこのような形となるが、使節団員で様々な角度からの検討が必要となるだろう。日本側には、調査のため少人数での視察を提案する必要があるだろう。

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