大日本帝國召喚   作:もなもろ

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物語が交錯し始めます。


或る家族の日常 (6)

「あたしが軍祭?ってのに参加?なんで??」

 

 妹の涼子の友人であるレイラ・コッポラス嬢がいうことには、姉の彩香に軍祭なるものに参加してほしいとのことだ。だが、軍祭なる単語は初めて聞いた。よくわからない。

 

「えと、コッポラスちゃん。軍祭ってなに?」

 

 腕を組んで、首を傾げた姉貴が質問すると、コッポラス嬢があっと声をあげて恐縮した。

 

「失礼しました。順序が違いましたね。」

 

 そう言って、彼女は軍祭についての説明を行った。話を聞く限りでは、軍事演習と武道大会のようなものらしい。ますますわからなくなった。姉もそう思ったのだろう。

 

「えと、あたしは、格闘技とかやらないんだけど?」

「お姉さま。結論は急がないでくださいませ。」

 

 コッポラス嬢の話では、今年は我が国と満洲国との国交樹立を記念して少し趣向を凝らして、武道以外の競技を取り入れることとなったらしい。それも、日本国と満洲国のスポーツ競技を参考にして考案されたらしい。まずは、駅伝。これは軍隊でいうところの伝令兵に関連して、その伝達速度を競うという目的もあるらしい。次に登山。ところどろこにあるチェックポイントを通過して、行軍の速度を競うことが目的らしい。サッカーのような球技も娯楽的な協議も準備されているらしい。そして、姉貴に関わっているのが水泳競技だ。

 

「なるほどね。それなら、あたしが誘われてもおかしくないわけだね。でも、なんでコッポラスちゃんが私を直接スカウトに来たの?」

「それが、我が国と日本国は国交樹立して間もないので、いろいろなスポーツ団体の方とのツテがないそうなのです。それに、父もいろいろと調べているのですが、普通であれば、出場を希望する方が参加費や選手の登録料を支払ってそれを大会の運営に宛てるようなのです。ですが、今回はこちらが出場をお願いする形になりますし、我々の軍祭の知名度も低いわけでして、となると出場の依頼料なんかもお支払いしなくてはなりません。ですが、プロのスポーツ選手の方々にお支払いするだけのお金を我が国ではまだ準備できないのです。他にも競技場などは、野原をちょっとだけ整備したようなものですので、日本の競技場のようなしっかりとした設備が整っているわけでもないので、ご招待をするのも難しいのです。ですので、アマチュアの方々にフェン国内での滞在費用などをお世話する代わりに出てもらえないだろうかという話になりまして、それで、そのお姉さまのような有名な方に出場していただければと思って・・・」

 

 最後のほうは少し声が小さくなりながら、コッポラス嬢が話すと、姉がすっと席を立ち、コッポラス嬢の側に行き、コッポラス嬢を抱きしめた。

 

「偉い!お父さんのお仕事のお手伝いがコッポラスちゃんはできるんだね。わかった。あたしにまかせんしゃい。」

「ちょ、ちょっと待」

「なんね、真一。コッポラスちゃんが困っているお父さんの助けになろうと、こうして私をたずねてきてくれよーとよ。私じゃ力になれんことならまだしも、私で力になれることやったら力になってやらんばいかんやないね。」

「いや、親父の許可を得てからじゃないとまずいんじゃないかって話で、反対しているわけじゃ」

「それなら心配はいらん。」

 

 すっと、襖が開いて祖父が部屋に入ってきた。

 

「わしが隆史には、話をつけておく。彩香、偉いぞ。困った人の役に立とうとするその心がけは実に立派じゃ。しっかりした孫をもってわしはうれしいぞ。フェンへ行ってきんさい。」

「わぁ。おじいちゃん、ありがとう。よしっ。そうと決まればまずは、パスポートの用意がいるわね。あとは」

「いやいや待ちなさい。」

「え?」

「その前に、コッポラス嬢。その軍祭というのは、いつ行われるのじゃな?」

「あ、来月の25日が開会式の予定でして、それから5日間かけて行われます。」

「えっ!そんな、後期の授業が始まっちゃてるよ!」

 

 どうしようという顔をして姉が申し訳なさそうにしていた。流石に大学の講義を放り出していくわけにもいかないだろう。コッポラス嬢もそれをわかったのか、目じりを下げていた。

 

「ほっほっほ。案ずるには及ばぬよ。大学には公休の申請をすればよいのじゃ。レイラ駐福岡領事から大学へ国際大会への参加を打診してもらうのじゃよ。そうすれば、単位については別途の代替措置をしてもらえるだろうよ。まあ、代替措置がないとしても、一回講義を休んだからといって単位を落とすようなことはまあそうそうないじゃろうて。」

 

 はあ~。なるほどなあ。流石に領事館からお願いされたら無下にするわけにはいかんわな。

 

「それからあとは、コッポラス嬢。水泳競技はどのような形で行われるのかな。さきほどの話では、プールのような設備はなさそうじゃが。」

「あっ、ハイ。体育館のような設備がないので、残念ですが、海を使っての競技となります。水着を着た純粋に速さを競う部門とこれまた伝令の兵士に向けた着衣泳の部門の二つがあります。」

「へー、着衣泳の大会か。こちらにはない概念ね。しかし、海で泳ぐのか。波の影響なんかがあるから、なかなか難易度が高いわね。」

 

 やっぱり、屋内プールどころか屋外プールもない状況というわけか。国中を挙げて、体を鍛えることを推奨している国柄だと聞いているから、そういう点から見たら、姉貴とフェンの選手とではそう違いがあるとは思えない。だが、自然条件というのが関わってくるとなれば、姉貴にとっては不利に働くか。

 

「それでも、やるからには負けてはられないわね。うん。」

「まあ、親父の許可をおじいちゃんが取ってくれるんだったら、問題はないね。そんじゃあ、頑張ってくれ。」

「いや、何他人事みたいにいいよーと?」

「は?」

「あんたも出場するにきまっとろーもん。」

「なんで?」

 

 意味が分からん。何で俺まで?

 

「なんでって、せっかくの第一回大会なんよ。盛り上げていかないかんやろ。せっかくおじいちゃんが公欠っていう手段を見つけてくれたんよ。そんなら、私だけじゃなくて、あんたもこのやり方が適用できるっちゃないと?」

「いや、それはそうだろうけど」

「それに!!第一回大会の優勝者とかめっちゃかっこいいやないの。あんたもテレビに出られたりするかもしれんよ。」

「いや、俺は別に有名になりたいとかは」

「つべこべ言わんで、あんたも出る!!あんたの姉権限で決定!!終了!!異議申立ては聞きません!!」

 

 無茶苦茶だ。

 

「ええと、あの・・・真一お兄さま。」

「ほらほら、こんなかわいい子が困っとーよ。なんか言わんね。」

 

 いや、困っているのはあんたのせいだよ。はー。頭をガシガシと書きながら俺は言った。

 

「とりあえず、公欠の申請が本当に降りるんなら、参加させてもらうということでいいかな。」

「あ、ありがとうございます。えと、あの、何か、すみません。」

 

 ははは。しかし、初の海外が新世界の国とはね。

 

「ふふふ。姉弟で競技一位をゲットするわよ。これはテレビに出れるわ。有名人になれるチャンスが来たわ。」

「いや、そう簡単にはいかないんじゃないかな。フェンの人たちだって、別に俺らより運動能力が低いわけじゃないんだから。」

「そうね。もし、フェンの人たちがインカレ上位の選手を招待できたということなれば、なかなか厳しいかもしれないわね。でも、そこはあたしもアジア大会出場経験者よ。現代スポーツで上位層の人間として負けられないわ。」

「いや、俺は九州大会が常連なんだが。」

「あんたはもっと発奮すべきね。真一はやればできる子。姉ちゃんは信じとる。」

 

 両肩を掴まれて、目力の入った顔を近づけて、念を送ってくる。暑苦しい。

 

「さあ、そうと決まれば練習ね。とりあえず、おばあちゃんの通っとーフィットネスクラブに行ってプールを借りるわよ。」

「は?いや、俺は会員じゃないんだが。」

「おばあちゃんは家族も利用できるコースに入ってとーとよ。健康家族コースだって。おじいちゃんもときどき行っとーよ。」

 

 やる気スイッチが入ってしまった姉に連行されて、休日は終わりを告げた。昼から夕食までの間の長い時間泳がされて、疲労困憊。夕食を食べたら、風呂にも入らずに眠ってしまい、体力のなかねーと笑われてしまった。だが、姉の練習量についていける気がしない。はやく大会が終わってほしいと思う日々が始まった。

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