ル・ブリアス講和会議、講和条件大筋合意
帝國政府も状況を歓迎する声明を発表
(写真:講和会議終了後に記者団を前にして握手するマオス・ロウリア首席全権と徳川外相。後方左より、ベルシュ、マイヤーハイム、パタジン(以上、ロウリア全権)、ユグモンテ・アルタラス外務局長。マオス、徳川を挟み、ルミエス・アルタラス王国王女殿下、リンスイ・クワ・トイネ首席全権、メッサル・クイラ首席全権、森山外相・)
6月28日の休戦協定締結を期に7月6日より中立国アルタラス王国首都ル・ブリアスにおいて開催されてきた平成27年戦役(政府呼称:平成27年事件)の講和会議は、昨7日、当事国の全権団によって講和条件の大筋合意が為されたことがアルタラス外務局の発表によって明らかになった。(3面外交欄に関連記事)
帝國全権を始めとする同盟国全権団が、ロウリア王国に提示した講和条件は題目としては領土割譲、損害賠償、軍縮、国体明徴、保障占領の5項目からなる。このうち領土割譲以外の項目について、ロウリア側との間に舌戦が展開された。
領土割譲の項目に関しては、既に同盟国の聯合軍が占領しているマインゲン市をクワ・トイネ公国に割譲することが要求され、ロウリア側も異議なく受諾した。
損害賠償の項目は、戦後に極度に落ち込みが予想されるロウリア経済に配慮して、国債の発行を以て扱うことが決定された。国債の発行額は損害賠償の総額とも関係ある為、国際賠償委員会の賠償総額の決定を受けてから起債することとなる。
軍縮の規定は、陸上兵員の定員上限を設け、軍船の保有上限数量を定めるなどロウリア軍隊の数的規模に規制を掛けることとなった。
国体明徴の規定は、今後のロデニウス大陸の情勢を占う重大な規定であった。ロウリア王国上層部をして、無分別な戦争に駆り立てた蒙昧なる思想は、この規定の下完全に公の場からつ追放されることとなる。しかしながら、君権の志尊は奉らなければならないことは、我が国においても同様である。これが本規定の肝である。ロウリア王の志尊なる国家統治の大権をもまた、我等同盟国においても尊重すべきことが確認されたのである。
保障占領の規定は、これまでの規定をロウリア王国政府が遵守するか否かを監視するため、同盟国の連合軍を数か所の拠点に駐屯させ、圧力を認識させることが主眼である。ここで、捕らえ間違いをしてはならないのは、圧力をかける先は、ロウリア王国「政府」であって、ロウリア王国「国王」ではないということである。現実問題として、ロウリア王が圧迫を感じることは否定できないが、我等は断じて他国の王権に介入してはならない。占領の規定は、抑制的な諸々の政府間協定を結ぶ必要があることを条約要綱は規定している。
以上の如き、講和条約の要綱は、講和会議の場に於て決した。これを以て講和会議は大筋で合意がなされたのである。これを祝して、講和会議の全権団と講和仲介国アルタラス王国の上席者は、記者団の前に現れ、その旨を発表した。この大役を担ったのは若干17歳のルミエス王女殿下であった。彼女は、日満を中心とする大勢の記者団の前に気後れすることなく堂々と現れ、本日5カ国の講和が大筋で合意したこと、ロデニウス大陸の平和と安定が訪れようとしていること、この講和は今後の文明圏外国家が共に発展していくという指針になり得ることを朗々とした声量で伝えた。
講和会議の今後の予定は、条文の調製と調印式となり、翌9日夕刻には、アルタラス王主催の慰労会が開かれる見通しとなっている。
この報は、アルタラス当局の発表と同時に我が国など数カ国で速報として報道された。政府は、荒池書記官長による記者会見に於て、大筋合意を歓迎する旨述べた。
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<政治コラム 諸事雑感>
一般に戦勝国から敗戦国に対して要求される講和条件は厳しいものが予想される。しかしながら、ひとたび干戈を交えたといっても、相手国の国民を根こそぎ死滅してしまうかの如きカルタゴの平和は、文明国の国家として、決して採用してはならないのは言うまでもないことである。また、講和に際しては爾後の善隣関係を増進していくためにもロウリア王国の体制を保護し、体面にも十分な注意を払わなければならない。
対外関係を念頭に置けば、国家にとって最も重要な点は国の主権を確立することにある。君主制国家にとっては君主の志尊の大権に該当する。他の国から君主が軽んじられることは、国の存立にかかわる重要な問題である。今回の講和条約における我が国の対応について、外務省も数度の会見で発表していることであるが、ロウリア王国が敗戦国であるとしても、君主を軽んじてはいけないことは、まさにここにあるのだ。ロウリア王国が今後国際社会に復帰し、クワ・トイネ公国及びクイラ王国と善隣関係を築いていくためには、決してロウリア王国の君主権が軽んじられてはいけないのである。
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民政党総務会、衆院建議による条約批准手続きの要望申し入れを決定
吉崎民政党幹事長「総務会の要望は執行部として慎重に検討」
昨7日に開催された立憲民政党総務会は、対ロウリア講和条約の批准手続きに於て、衆議院建議を枢密院に提議する議院法第52條の7の規定を適用するよう政府及び衆議院議院運営委員会に申し入れすることを決定した。広瀬渉総務会長代行は、昨日夕刻、この条約は国民の歓心も高く、貴衆両院それぞれにおいて十分な審議を行い、枢密院による審議の協力を行いたいと述べ、このためには衆議院建議を採択すべきと発言した。
条約の審議に当たっては、枢密院の条約審議委員会が顧問官数名と貴衆両院の外交委員会と当該条約に関連する委員会の委員長及び筆頭理事を招集し、各院で決議された建議も参考にして、審査報告書を作成する。審査報告書はその後本会議に回付され、枢密院本会議が貴衆両院議長も参加した上で採択され、枢密院議長より御批准案の上奏が行われるのが、常例となっている。
今回の対朗講和条約の審議に当たっては、征夷大将軍徳川大公閣下より枢密院に対して迅速な条約審議を望むという御扱が図られているという情報がある。この情報が意図するところとしては、帝國議会は両院協議会を組織して、一度に建議案を作成すべしというところだ。
本来両院協議会は、甲議院で成立した議案を乙議院が修正して議決した後に甲議院がこれに同意しなかった場合など議会内の各議院で議決の不一致が起こった際に開かれるものである。さらに言えば、この議院建議は各議院が単独で可決して、個別に政府に提出するものであって、両院で一致した議決をする必要はない。そういう意味では、両院協議会に於て一致した議決を行う必要はないと言える。
しかし、両院協議会という方式を取れば、議事日程は両院協議会に参加する各議院の議員で決めることとなり、各議院の議院規則に縛られることは無い。つまり、各議院に於ける委員会審査を経て本会議に掛けるという手順を必要としないのである。しかも、この条約に関する建議の場合では、各議院それぞれの意思も存在しないため、両院協議会はたとえ一日であっても議案を議決することが可能となる。
徳川公方の御扱の意図するところは、枢密院での早期の審査報告書の作成にあることは間違いないだろう。審査報告書の作成には、帝國議会の建議の内容を盛り込むこととなっている。そのため、条約の枢密院への諮詢は、各議院建議が成立してからとなっている。
民政党総務会の要望は、この早期成立の流れに水を差すことにもなりかねないため、民政党執行部は党としてどのように動くのかはいまだ決定していないと述べている。
近年の歴史で、この両院協議会方式での建議が作られたのは、平成9年12月の国際連盟気候変動枠組み条約の締約国会議で採択されたいわゆる京都議定書をめぐる問題である。この議定書を巡っては国内外の財界からも異論が多く、運用細目を決める手続きも難航が予想された。批准手続きの混乱が予想されたことから、平成14年にこの議定書への批准を行う際には両院協議会方式の建議提出が政府より図られた。
<用語 帝國議会の条約締結関与>
条約の批准は、帝國憲法第13條に定める天皇大権の一つである。天皇大権の行使には、内閣の輔弼あるいは枢密院への諮詢を必要とする。条約の締結の締結の際には、枢密院官制に基づき、天皇陛下より枢密院に諮詢が行われ、枢密院が条約締結の当否を採択し、その結果を上奏する。
かつては、この枢密院の審議の手続きに帝國議会は関わることがなかった。しかし、時代の流れと共に帝國臣民の政治参加の機会が増えるにしたがって、帝國議会も条約の締結に際して意見を表明する機会を増やしていった。
帝国議会が、条約問題にかかわることになった嚆矢は、明治28年の日清講和条約御批准慶祝決議であろう。この決議は、条約の締結に際しては、帝國議会は特に介入していないが。条約の批准後に貴衆両院がそれぞれの院議を以て講和条約に賛成する意思を表明した決議であった。
次いで状況に変化が見られたのが、欧州大戦後の講和条約についてであった。この際には、講和会議が開かれているパリからの外電で様々な情報が日本国内に入ってきており、衆議院は特別委員会を設けてこの条約に関する問題を討議した。この結果、当時の衆議院は本会議で、対独講和条約等に賛成する衆議院決議、国際連盟憲章に賛成する衆議院決議を採択した。この決議は衆議院の意思を表示したにすぎず、条約締結の手続きに衆議院として介入するものではなかった。しかし、この衆議院決議によって帝國議会が条約締結に関与する姿勢を見せ始めた。
西太平洋戦争の講和条約であるベルリン講和条約の批准に際しては、貴衆両院の議長が枢密院本会議に列席することになった。この際の出席の資格は、あくまでオブザーバーとしての参加であり、評決権は与えられていない。
満華戦争後に発足した東亜の安定を図ることを目的とした大東亜共栄圏と其の常設機構の設立を規定した大東亜共栄憲章をめぐっては、帝國議会は貴衆両院で条約についての議論が行われ、初めて院議を以て政府に対して条約の内容についての要望を建議として採択した。このい建議が枢密院に回付され、枢密院の事前審査である審査報告書を検討する際に会議の検討材料とされたことで、現在の条約審査体制の基礎が確立されたのである。
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満洲魔導理学学会、魔力嵐の自然現象の可能性に言及
満洲魔導理学学会の特任研究員イリネイ・シェコチヒン(前職:マオ王国宮廷魔導師)は、先月24日から25日に発生したフェン王国及び満洲国南西部における大規模な通信障害の原因について魔力嵐の可能性があることを言及した。
シェコチヒン特任研究員は満洲国南西部の熱河省を中心に現地調査を実施し、魔力嵐の痕跡が見つかったことを述べた。魔力嵐というのは、大地の魔力が不安定になり、高濃度になったり、あるいは極端な低濃度になったりする現象であるという。電子機器が魔力に左右されるという事実については、現時点では、追従実験などでの確認はなされておらず、あくまでも可能性があるにすぎないということではある。
この魔導理学学会の報告に基づいて、満洲電信電話公社は、フェン王国国内に高出力の無線機器を設置するか否かの検討を行うことを発表した。検討には、シェコチヒン氏の更なる調査結果も随時参照され、遅くとも今年度中には結論を出す方針としている。公社が決定を出すまでの間、再び無線が使用不可になった際は、満洲国海軍の船舶無線を使用して電波を中継する案を満洲国国務院交通部が検討している。