大日本帝國召喚   作:もなもろ

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新たな表現形式。取材メモというのを試してみました。


『シャークン提督回顧録』 / マルコム・ミラー取材メモ

 あの海戦、そうあの海戦は、我々ロウリア海軍が6年にも及ぶ準備期間を経て必勝の体制を以て当たったものだったはずだ。東方征伐海軍(※)総旗艦『ロウリアス』は、ロウリア海軍の中でも当時3隻しかなかった最新鋭の軍船であった。

 あの船の特徴は、四本のマストによる高速を実現し、高出力の魔信送受信機を搭載していたことに加え、旋回する基座の上に乗せたバリスタを2基搭載していた。これにより、両舷のどちら側へも攻撃可能という効率的な武装を搭載した、まさしく最新鋭の船であった。当時列強として随一の強国であったパーパルディア皇国からの技術支援もあって造られた船であった。

 あの海戦でロウリアスは、敵の攻撃でマストを折られ、風神の涙が破壊され、敵の攻撃で爆風で片舷が焼かれた。戦闘不能に陥ったのだ。身動きができずにいるところをクワ・トイネ公国海軍に拿捕された。乗組員はマストが折られたときに見張り員が海中に投げ出されて、行方不明となった3名を除いて無事であったが、我々は捕虜となった。

 捕虜になった我々は、その後満洲帝國海軍の母港であった大連の俘虜総合収容所に送られた。

 

 

 大連俘虜収容所が閉鎖されると知ったのは、8月7日の夕食を食べているときであった。俘虜収容所では収容所長以下幹部職員からの通達が、朝昼夕の3回の食事時に行われていた。収容所副所長からの通達では、各国で収容していたロウリア人捕虜も大半が早期帰国に同意し、交渉の大筋合意もなされたため、クワ・トイネ公国のマイハーク市にあるロウリア人捕虜総合収容所に移管されることが決まったという。捕虜の解放は、講和条約の締結ではなく発効を待って行われるということらしいが、それでも解放まであとひと月もないらしい。

 

「提督、帰国まであと一歩ですね。」

 

 従卒として私についてくれている青年は通信士として、あの1639年4月26日の海戦時、東方征伐海軍総旗艦『ロウリアス』に乗艦していた。新鋭船の通信士に選ばれたのだ。優秀な魔導士であったことは想像に難くない。その彼が従卒として、捕虜の早期解放に同意せずに私に仕えてくれていた。ビーズルの南にある騎士領の出身と聞いた。魔力保有量が高かったため、騎士から王都の魔導士錬成所への推薦を受けて、魔導士になったのだという。魔導士という高給取りになったため田舎の父母に楽をさせてあげられると喜んでいたということを主計長が言っていた。わしは、彼を無事に国に返してあげられることをうれしく思った。

 

「ああ。しかし、このカレーライスも食べ納めと考えると少し残念だな。」

 

 俘虜収容所では、毎週金曜日の夕食はカレーと決まっていた。初めて見たときは、なんだこの色はと思ったものだが、食べてみればなかなかうまい。

 

「そうですね。でも、マインゲンには満日両国の大型小売店が出店をして、レトルト食品を売り出しているとか。おまけに占領中のカルーネスには満日両軍を相手に商売している満日企業もあるのだと聞いています。ということは、近い将来、祖国ロウリアでもこれは食べられるのではありませんか。」

「そうか・・・。ふむ・・・。そうかね。」

「ええ。きっと。」

 

 ああ、若いとは良いものだな。

 

 

 ・・・・・

海軍大将レジナルド・オスヴィン・シャークン『シャークン提督回顧録』(アルデバラン出版)

巻末注

(※)本書には一部時代にそぐわない表現がございますが、これは、東方戦争当時の王国政府公文書に用いられた固有名詞については、現在主流になっている表現に改めずに記述を行っていくという当社の編集方針の表れであります。本書の著者である、ロウリア王国海軍海軍大将レジナルド・シャークン閣下並びにアルデバラン出版には、差別的表現を頒布するという意図を以て書籍を出版するという意図はありません。わが社の編集方針を充分にご理解いただきますようお願い申し上げます。

 

 

―――――

オタハイト・タイムズ、ル・ブリアス特派員 マルコム・ミラー記者取材メモ

 

7/18

取材先:ロウリア首席全権マオス氏

 

・賠償要求を拒否したこと。これはどこまで本気なのか?

 

→本気か否かと問われても困る。現実問題として、我々に賠償要求原案を支払うだけの国家財政の余力・体力はない。

 

・とはいえ、戦争後の講和条約を作成する段階に於て賠償金の支払いをせずに済むということはないはず。どのあたりを落としどころと考えているのか?

 

→今はまだ落としどころを探る時期ではない。我が国の現状を理解してもらい、国が崩壊しないよう、治安が悪化しないような条件について、相手側に理解を求めるときであると思っている。

 

・しかし、今次戦争は貴国が引き起こしたはず。何の責任を負わないということはさすがにできないのでは?

 

→その意見は充分重く受け止めている。本国からも我が国の開戦責任については、充分に認識した上で発言するようにと訓示を受けている。

 

・それは、国家賠償責任についても理解しているという意味では?

 

→賠償問題と開戦責任については別問題であるというのが、我が国の立場だ。

 

(この問題では、なかなか深入りできない。取材対象と信頼を得てから再度トライすべきか。)

 

 

 ・・・・・

7/23

取材先:アルタラス外務局ジュール・サンカン氏

 

・両陣営に対する仲介について、裏方としてどのように行っているのかお聞かせください。

 

→基本的には、片一方の側の随行員から出された試案を相手側の随行員にお知らせして、その反応を探るということを行っています。つまり、その試案を見たときの相手方の顔色、口調、態度と言ったようなものをしっかりと把握し、どの程度現実味があるのかを予想したうえで、提出元の陣営に、相手方の反応お知らせすると言ったようなことをやっています。

 

・ということは、いわば伝書鳩のようなことを?

 

→うーん。そこまで、ただ横から横に流しているということでもないですね。相手側が受け入れやすくなるように多少の修正を提案したりなどしています。

 

・なるほど。具体的にはどのような修正がありましたか?

 

→いや、守秘義務にあたりますので、お答えは差し控えさせていただきます。

 

・ところで、クイラ王国との国交樹立についてはいかがですか?

 

→問題なく進んでいます。もともと、クワ・トイネを仲介してという形ではありますが、全く交流がないわけではありませんでした。そういうわけですから、講和条約の成立までには、国交樹立はかなうと考えています。

 

・外交使節の交換についてはどのような形で?

 

→誰を送り出すのかということはまだ調整中ですね。交換する使節団長は、公使の格ということになりそうです。公使館は、当面の間日本国と満洲国の公使館の一部を間借りするということでした。

 

 ・・・・・

8/3

取材先:パーパルディア皇国大使館副大使

 

(大使は、アルタラス島の西方にある大使別邸に避暑目的で長期滞在中らしく、王都不在とのことらしい。)

 

・ル・ブリアスで行われている講和会議についてどうお思いますか。

 

→興味はないな。文明圏外の蛮族どもがたむろってままごとの外交ごっこをしているに過ぎんのだろう。報告は受けている。

 

・外交ごっことは?

 

→ふむ。ムーの記者君には、理解しがたいか。まあ、文明圏ごとに常識は違うからな。講和会議は先月の上旬の終わりごろに始まったというではないか。それにもかかわらず、未だに終結していない。これほどルーズな話の進め方というものはないではないか。だらだらと会議をやって結論も出せない。なんとまあ無様な話ではないか。

 

・なるほど。もし、御国が講和会議を主宰するとしたらどのような形になるのでしょうか?

 

→ふむ。我が国では外交については皇帝陛下が主宰される。まあ、それでも実際には代理人が選定されるであろうが、講和方針そのものは皇帝陛下が定められる。あるいは、講和条件の内容そのものもお決めになられるかもしれん。方針を定められたにすぎぬ時は外交を補佐する機関である外務局にて条件が作られる。そして、講和会議の席ではそれを示す。それで終わりだよ。

 

・それで終わりと申しますと?それをたたき台として当事国が話し合うのではないのですか?

 

→なぜそのような愚かなことを我が国がさせると思われるのだ。当事国同士では決められぬので、我が国を頼ってきたのであろう。頼ってきたのにもかかわらず、我が国の出した結論を受け入れられないというのであれば、我が国を軽んじている証拠ではないか。それも、皇帝陛下が御定めになった条件を受け入れられないというのであれば、皇国に対する重大な挑発・侮辱ではないか。そのようなものの考え方は我が国は受け入れられぬし、そのような愚かな国が存在していては、かえって地方の安定を乱すというもの。我が国直々に教育してやらねばなるまい。

 

・な、なるほど。しかし、そうなりますと今回のル・ブリアス講和会議は?

 

→まあ馬鹿どもがたむろしてわちゃわちゃしているにすぎぬ。アルタラスは仲介など身の丈に合わぬことを引き受けるわ、参加国はだらだらと会議を続けるわ。まったく、会議は長くやればよいというわけではない。二流、三流のカスどもがたむろしているにすぎぬということだ。我々のような列強国がいちいち気にする話ではないというのが、第三文明圏の感覚なのだが、第二文明圏は違うというのかね。

 

(あまり有意義な話は聞けそうもない。適当に話を切り上げるとするか。)

 

 

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