大日本帝國召喚   作:もなもろ

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さて、ロウリア編が終わりましたが、原作のようにロウリアの名前が今後基本的に出てくることがなくなるということはございません。ちょくちょく出てきますし、ロウリア主体の話も書いていきます。


三宅幸之前掲書あとがきより / 大日本帝國東京都麴町区霞が関外務省 2675(平成27・2015)年9月2日(水)

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 3月22日の日満2+2で採択された外交行動指針は、兵力使用よりも外交を重視した点で、地球時期の外交姿勢に引きずられたと評する向きがあるが、筆者はこの方向性の論評に与しない。戦争によって得られる利益は、それによって生じた経費や負債を差し引いて、その差額を利益とするが、外交活動によって得られる利益には、このような経費や負債の量は甚だ少ないのが常であるため、純利益はむしろ大きくなる。・・・

 ・・・今次戦役の外交活動に対する評価は寧ろ大であると筆者は主張する。それは、精強無比なる帝國陸海軍の軍事力を大東洋諸国とその周辺国家に知らしめたことよりも大きい。すなわち、帝國政府は最後の最後まで強固なる和平の意思を以て相手と対話する姿勢を持っていることを大東洋諸国とその周辺国家に知らしめたことで、帝國の平和追及の意思を世界に発信したことは今後の外交活動にとって大きな意味を発揮すると信ずるのだ。・・・

 ・・・講和条約批准に関して、諸外国と多少の軋轢が生じたことを帝國政府の失策とする論評があることは私も承知している。確かに、出版された講和会議の議事録の内容によれば、ロウリア王国の全権委員が当該字句について字義を質していることが記録されている。「協議でもなく指示でもなく連絡である」という実に玉虫色の解釈が分かれる内容の文言であることは全権委員全員が認識した上で成立した条文であることが読み取れる。

 しかし、このようにあえて条約上の文言を曖昧にした上で条約そのものを成立させるという方法は地球世界ではかなりの例があることを指摘しなければならない。これは、条約の内容について意見が分かれ、条約そのものが成立しないという交渉決裂という結果よりも、条約そのものを成立させたほうが、世界の為によいと判断されたときに行われる外交上の技術である。個別の解釈宣言を各国政府がだすことで、条約にある程度の弾力性を持たせる。これは、国際連盟理事国という列強国が存在した地球世界では、列強国が分裂することで生じた、欧州大戦という悲劇を防止するためにも重要な外交手法であった。

 当時帝國政府が発した解釈宣言に対しては、そのような外交上の意図があったというつもりはない。当時の議事録を読めば、これは明らかに交渉期限が迫っていたがために、詳細な検討を行う暇がなかったということを差しているに過ぎない。この軋轢がその後の外交上の展開に停滞をもたらしたという意見もあるが、外交とは一国のみで行われるものではない。各国の外交上の動きを観察して判断するべきであろう。・・・

 

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大日本帝國東京都麴町区霞が関 外務省庁舎外務省幹部会議室

 

 外務省には、大臣、次官、政務次官、審議官、参与官、各局長の幹部職員が会同して行われる会議のための部屋が大臣のいる階に設けられている。但し、部屋の中にはこれらの職員すべてが入って座るだけ椅子があるわけではない。これらすべての職員が全て集合したとあっては業務に支障が出るがために、会議の議題に応じて必要な職員が集まることになっている。

 この日は、昨日発効した講和条約批准を巡って発生した問題に対処するための会議が行われていた。この会議には、徳川外務大臣、松平外務次官、三條外務政務次官、池田欧州局長(ミリシアル、パーパルディア担当)、小川北米局長(ムー、アルタラス、パンドーラ担当)、細江大東亜局長(クワ・トイネ、マオ、フェン、ガハラ、マール担当)、秀島中東アフリカ局長(クイラ、ロウリア、シオス、アワン、トーパ担当)、渡良瀬国際情報局長の8名が参加している。その出席者の一人、小川北米局長が新聞紙を片手に説明を始めた。

 

「東西新聞の社説によればですが、アルタラスの高官筋の言い分として、「他の国に比べて日本国は批准書の寄託が一番遅かった。それだけではなく、このような自分達だけは他の国とは違う解釈をするというような政府宣言をわざわざ付け足してくるとはどういうつもりなのだろうか。せっかく各国がまとまって一つの条約に合意したというのにケチがついたようで協調性に欠けるのではないかと遺憾の意を申し上げたいくらいだ。」というような発言があったようです。」

「その高官筋というのは、誰か分かっているのか?」

 

 三條外務政務次官が問いかけた。貴族院侯爵議員でもある三條実好は、これまでの例にもれず、三條侯爵家の推定家督相続人時代には、外務省で勤務していた。最終的な地位は、駐オランダ公使。父実弘が脳出血を発症し、一命はとりとめたが、歩行障害が残った。このため政治活動に支障があるということで、隠居することとなったため、実好は急遽帰国し、侯爵位を継いだ。次の人事ではどこかの特命全権大使か公使かと言うところであったため、無念にも外交使節長とはならなった。その代わりと、襲爵した後は政治活動に邁進して、政務次官の政府のポストを得るに至った。推定家督相続人であった長男は駐イタリア大使館に勤務しており、転移の際に連絡途絶。男子は長男のみであっため、養子を採るべきか悩んでいる。

 

「その点については、ラングレー駐日アルタラス公使や駐アルタラスの大垣公使へ確認を行っている最中です。」

「東西新聞には確かめなかったのかね?」

 

 三條政務次官の更なる追及に小川局長は目を丸くした。

 

「新聞社にとって情報源の秘匿は最も守らねばならないことは、政務次官も御存じのことと存じますが。」

「そんなことは分かっとる。それでも、この件は国益に関する重要事だ。誰が話したのかを突きとめ、懐柔するように動かねばならないだろう。どうか頼むとか、この場だけの話だとか何か手はないのかね?」

 

 政務次官の問い掛けは非常識なものであった感は否めない。情報源の秘匿が守られなければ、アルタラスの外務局高官は今後は何も話さなくなるだろう。そのような提案を新聞社が受け入れらるはずもない。

 

「まあまあ、政務次官。それはなかなか難しいことですよ。彼らの今後の取材活動にも大いに影響を与えます。期待しない方がよろしいでしょう。」

「松平さん。貴方はそういうが、この問題こじれれば厄介ですぞ。」

「それは私も同じ思いです。ですから、駐日公使や駐アルタラスの大垣公使の調べを待ちましょう。焦ってはいかんと思います。」

 

 松平頼信。紀州徳川家の御連枝であった伊予西条藩の家系の者で現役の伯爵である。貴族院に議席を持たないが、三葵会には入会している。推定家督相続人の長男は外務省に奉公して、欧州局墺国課課員であり、次男は愛媛県会議員を務めている。

 

「それにしても、大臣。山上総理は、外交の専門家である我々の判断に重きを置かず、衆議院の野党勢力に阿りました。外務省としては、抗議しなければなりますまい。」

 

 政務次官の問いかけに徳川大臣は苦虫をかみつぶしたような顔をして答えた。

 

「山上さんには十分に説明して、理解は得られたんだがね、どうしても閣議で異論が相次いでね。私も閣議では充分に説明をしたんだが、与野党協調をということで押し切られてしまった。これ以上私が我を張ると閣内不一致ということにもなりかねない。外務省のせいで倒閣ということは避けたい。三條さん、政治とは妥協の産物ですよ。」

「ルミエス王女の動向について、国民は強い関心を示しています。アルタラスの問題で、現政権の外交当局とこれ以上の軋轢は避けたいのです。ここで抗議などして、アルタラス問題で政府内部で更にもめては、問題の対象が王女の問題にも移りかねません。政務次官、ここは抑えて。」

 

 大臣と次官が同じ意見なら、私からこれ以上お話しすべきとは思いませんと三條政務次官は意見をひっこめた。アルタラス政府から見て、日本政府と外務省との意見が食い違いを見せているようだと、更なる不信感を招きかねない。王女の問題に関しても、内政干渉に当るということで政府としては何のアクションを見せるつもりはないことがはっきりしている。だが、ここで政府と外務省とが内紛ということなれば、王女問題でも違った方針が出かねないとアルタラス側が判断するようなことになっては問題だ。

 政府・外務省ともにアルタラス外務局における権力闘争は、ルミエス王女の自滅で決着がついたと判断している。あえて火中の栗を拾うような真似はすべきではない、というのが政府と外務省の共通認識である。

 

「政府宣言については他の国々での評判は芳しくないと在外公館から報告が挙がっております。」

「クワ・トイネ側からは、せめて共同宣言という対応は取れなかったのかという話が挙がっております。」

「クイラ側からは、特に反応は得られておりません。」

「条約締結後に条約の一部であったとしても拘束されないというようなやり方を是とするのであれば、国交の問題は慎重に検討したいと駐アルタラスのミリシアル大使から書簡が入ったそうです。ムー側も条件の細目はしっかりと詰めたいと・・・」

「駐アルタラスのロウリア大使から、これ以降条約に関して更なる政府宣言を発表する予定はあるのかという問い合わせがきたようです。」

「駐アルタラスのレイフォル大使から、国交樹立についての話は当分の間凍結とするとの通告がありました。」

「駐トーパの公使がトーパの外務局から、北洋漁業の漁獲取り決めの協定をもう少し精緻なものに改定したいとの申し出が・・・」

「マオとアワンの駐日公使から我々と結んだ条約は一方的に変更される可能性があるのかという問い合わせが・・・。勿論、批准後の条約に対して一方的な変更は行うつもりはないし、行うことはできないと答えましたが・・・」

 

 その後も各局長から頭の痛くなるような問い合わせがあったことの報告が続いた。これらの状況の検討を行っているさなか、細江大東亜局長の携帯が鳴った。細江局長は一礼して部屋の隅で通話に出る。

 

『局長、先日のフェン王国のニシノミヤコ付近の森林火災で新たな動きがありました。池田局長と共に大東亜局まで至急お戻りを。』

 




そうだね。KENZENだね。 29 / 53%
ウソダドンドコドーン。 9 / 16%
何故ここで止めた??? 17 / 31%
何が言いたいのかわからないこのアンケートもそろそろ締め切ります。次回投稿時を以て締め切りです。
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