大日本帝國召喚   作:もなもろ

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カイオスの決断はパーパルディア皇国をどう導くのか!!


パーパルディア皇国皇都エストシラント 第三外務局 中央暦1639年9月3日(木)

パーパルディア皇国皇都エストシラント 第三外務局

 ― パーパルディア皇国第三外務局長 クラウス・フォン・カイオス

 

 面会の時間が来るまでは少しでも情報の分析に努めることとした。今は少しの時間でも惜しい。書類が多少は溜まってきたが、決済は後回しだ。

 アルタラス外務局が出版した『ル・ブリアス講和会議議事録』を読む。付属の資料も併せれば400ページにはなるだろう。内容を読み進めていくに従い、困惑感が増してくる。

 たとえば、軍縮要求だ。各国それぞれで検討された当初の要求原案は、陸上兵力の削減について、日本国が10万迄削減を、満洲国とクイラが相応の人数へ削減を、クワ・トイネに至っては1万迄削減をという要求をそれぞれの政府が原案として用意していた。これが、同盟国として話し合い、一つにまとめた要求案になると15万迄削減をと増加した。なぜ、もともとの要求より緩和されたのか。この点については、講和会議で話し合われた内容ではないので、詳細は記載されていない。そして、講和会議でにおいてロウリア側から軍縮要求の緩和について修正嘆願があったところ、これが20万と増えた。

 元々、同盟国であるクワ・トイネは1万人に兵力を削減せよと要求していた。いや、ロウリア全土の広さを考えると1万人はさすがに少ない。おそらく要求が修正されることを目して初めから低い量を申し出たに過ぎないだろう。それにしたとしても、同盟各国の当初案よりも多い数が要求案となり、更には講和会議の場で浚いそれが、あろうことか敵国からの要請に依り増えた。

 クワ・トイネの当局はこれをどう感じているのだろうか。同盟国の自分達よりも敵国の側が優遇されているとは考えないのであろうか。同盟国とはいえ、もともとクワ・トイネとクイラは吹けば飛ぶような弱小国であった。それが原因か。それがために軽く扱っても構わないということか?いや、そうであったとしても、同盟国と敵国を比べて敵国に配慮するというのは馬鹿げている。つまり、クワ・トイネとクイラを切り捨てて、ロウリアと組もうということなのか。うーむ。まだ、考えるだけの材料が足りない。

 我が外務局の下僚で信頼できる者の調査報告によれば、日本国と満洲国は強大な国のようだ。これらの国と相対するのは、皇国の全力を以てしても厳しい戦いになるというのが、その者の報告書にあった。もともと、ロウリアの国力は、クワ・トイネとクイラ二国を併せたそれよりも強大だ。成り行きでクワ・トイネとクイラの味方をしたが、これからはロウリアとよしみを通じようとしている。それが為のロウリア厚遇とみるべきか。

 

コンコンッ

 

 ふと部屋の外からドアをノックする音が聞こえた。入れというと、秘書官が面会者が到着してきたことを知らせてきた。私は、自分の机から席を立ち、応接用の椅子に向かっていった。

 

 ―――――

 ― 第三外務局出向皇国監察軍東洋艦隊司令官 マクシミリアン・ヨーゼフ・ポクトアール

 

 秘書官の案内で局長室に入室すると、カイオス局長がソファーの前に立っていた。

 

「よく来てくれたポクトアール提督。さ、おかけください。」

 

 カイオス局長はそういうと、わしを座らせて、秘書官にお茶を用意させた。

 

「御足労頂き感謝する。まずは、のどを潤されたい。」

「はい、頂戴いたします。」

 

 やはり皇帝陛下直轄の外務局の局長の用意されたお茶だ。美味い。カイオス局長もお茶を一口飲むと、秘書官に対して話しかけた。

 

「これから提督と機密を含む話を行う。部課長級でも通してはならない。それ以上の者が来た場合は、部屋の魔信を鳴らしてくれ。」

「かしこまりました。」

 

 秘書官はそう言って、局長室から出ていった。さて、なにか格別な話があるようだ。

 

「ポクトアール提督は、先月30日にフェン王国の西部都市ニシノミヤコの近くで山火事が起こったことは御存じか。」

「いえ、私は把握しておりませんが。」

 

 ふむ。フェンの山火事?それが私とどうかかわるというのだろうか。

 

「そうか。ではまずその話をさせてもらおう。先月8月30日の昼過ぎのことだが、フェン王国のニシノミヤコからみて南東にある山林で火事が起きた。火の手は辺り一帯を焼き、消火には2日かかったと報告されている。」

「ニシノミヤコの南東ですか!局長!南東にはレミール殿下の名を冠した、我が国が主導で造った町があるはずですが。」

 

 わしが驚いて問うと、カイオス局長は手のひらをこちらに向けて左右に振った。

 

「案ずるには及ばぬ。確かに火の手はレミールの町の方向にも向かってきたそうではあるが、パーパルディア人の入植者のなかで水魔法が使える者達が山に雨を降らせて鎮火をさせた。」

「おお、それはようございましたな。」

「うむ、そして、これからが提督を呼んだ話に関わる。そして、これからが重要な話であるのだ。あの町の建設は、国家戦略局が主導して立案し、フェン王国側との交渉も彼らが行った。そうして、造られた町なのだ。」

 

 驚きだ。国家戦略局とは、何をしているのかよくわからない組織であったが、そのようなことを行っていたのか。

 

「私はその話は初めて聞きました。てっきり第三外務局が主導して行われたものとばかり思っておりました。」

「無理もないことだ。この話は公表されていない。基本的に知る者は帝前会議に出席している者に限られる。」

 

 なんと。そのような政府上層部のみしか知らない情報を私に話すとは驚きだ。

 

「いやはや、なんというか。私のような地方艦隊司令官にそのような国家機密をお話になるとは。これはどうしたものか。」

「言うまでもないことだが、口外はしないようにお願いする。」

「勿論です。それで、そのお話をお聞きした私は何をすればよいというのでしょうか。」

 

 カイオス局長がテーブルの上に置いてあったお茶を一口飲んだ。つられて私も一口飲む。

 

「先ほど山火事の鎮火を我が入植者の魔法で対応したと言った。そこで、町から駐フェンの我が大使館に陳情があってな。そもそも、国家戦略局がフェン王国側とかわした合意の中には、町が自衛の為の多少の武装が許可されておった。しかし斯くの如き山火事のような災害は想定されておらなんだ。」

「それは、そうでしょうな。もともとフェン人が徒党を組んで我がパーパルディアの造った町を襲撃するようなことは想定してなかったでしょう。あったとしても、それは野盗の類のもので、その程度ならば多少の武装で充分でしょう。フェン人は魔法を使えません。最低クラスの攻撃魔法でもそれらに放てば、簡単に勝敗は決しましょう。」

 

 私の言葉にカイオス局長は首を縦に振って首肯した。

 

「提督のおっしゃるとおりだ。フェンの国軍と戦争となれば、流石に少数の入植者では対処は厳しかろう。だが、フェン王国政府が我がパーパルディアに戦争を仕掛けるというような無謀なことはいくらなんでも考えにくい。故に「多少の武装」でその時はよかったのだ。」

 

 なるほど。当初の予定では問題がなかったが、自然災害ということであれば、現状の兵力では厳しいということはよくわかる。しかし、まだわからない。なぜ東洋艦隊が呼ばれたのだ。

 

「しかし、カイオス殿。これまでご説明いただいたことを踏まえてもなお私がこの場に呼ばれた理由がわからんのですが。」

「うむ。確かにそうだろうな。先ほど触れた町の者達の陳情なのだが、兵力の増強を依頼したらしい。魔法も使えるものということで、軍の駐屯を嘆願されたようだ。」

「なるほど。武装を増強したいということではなくて、軍の駐屯を。つまりは、我が東洋艦隊でその駐屯軍を運べということですな。しかし、軍の駐留となると、フェン側の反応が好ましくないと思うのですが、それは問題ないのですか。」

 

 カイオス局長は椅子の背にもたれかかり、腕を胸の前で組んだ。そして、眉をひそめて話し出した。

 

「正直に言えばそこが問題だ。フェン側の態度は硬化するだろう。だが、既にフェン駐箚の我が大使がフェン側に我が国の意思として通告した。」

 

 既に通告済みだと?それでは、ひょっとして断ってきたので懲罰の軍を出すということか?

 

「提督の懸念は無用だ。フェン側としても我が国人の魔法によって山火事が鎮火されたということで魔法の有効性を認めているということらしい。といっても、あまり大部隊の駐留は望ましくないだろう。監察軍から1個中隊を駐屯させて周辺警備にあたらせてほしい。」

 

 これはどうしたものか。監察軍は皇軍とは違って二線級の部隊だ。練度も高い方ではないし、部隊の規律もよくはない。返ってフェン側を刺激することにならないだろうか。

 

「お話の向きはようやく得心がいきました。しかし、その身内の恥をさらすようでなんですが、我が監察軍は二線級の部隊です。それに、我が国人は基本的に文明圏外国家を見下しております。彼らのふるまいに依って我が国とフェンの関係が悪化しないか心配なのですが。」

「だからこそ、ポクトアール提督に来てもらったのだ。」

 

 はてわしに?

 

「ポクトアール提督は軍の中でも人格者であらせられる。皇国軍から外3に出向していただき、監察軍の指揮官として勤めていただけることに感謝しておる。提督の力を以て、是非とも平和理にフェン王国に進駐していただきたいのだ。」

 

 なるほど。乱暴狼藉は東洋艦隊司令官であるわしの命によって止めろということか。しかし難しいことだのう。

 

「なるほど・・・。お話の向きは分かりました。ただ、駐屯軍は陸軍。東洋艦隊は海軍ですので、別系統となります。そのあたりのことを考えますと、絶対に大丈夫とは申し上げられないのですが。」

 

 この話は陸軍の跳ね返りを押さえつけるということであるから、絶対の自信があるとはいえぬ。そのあたりだけは筋を通しておかねばならぬと思い話してみると、カイオス局長はぐいっと身を乗り出してきた。

 

「案ずるには及ばぬ提督。提督には新たな辞令が下される。監察軍に新たな職が作られる。その名も東方根拠地隊司令官。フェン王国の我が国の入植地ショーンレミールの防衛を目的とした部隊だ。流石に出身だけはどうしようもないが、国家戦略局に出向していた軍人や監察軍の海軍軍港守備隊の人間も混成させたうえで新たに作られる部隊だ。提督には、その軍の司令官に就任してもらう。陸では根拠地隊、海では東洋艦隊。二足の草鞋を履かせることになり、またその任務上、フェン王国に長期駐在してもらう形となる。多少不自由なことになるのは確かだろうが、バックアップはさせてもらう。もちろん、この話は単なる口約束ではない。既に辞令は皇帝陛下の御裁可を得ている。数日中には発令される。だからだ、何としてもだ、提督にはこの進駐を成功させてもらいたいのだ。」

 

 なんという破格の待遇か。海軍の私が陸軍の軍人を指揮下に置くということになるとは。しかしこれは。陸軍の人間からのやっかみもあるぞこれは。どう返答したものかと悩んでいると、カイオス局長は頭を下げて更に話をつづけた。

 

「頼む。ポクトアール提督ほど頼りにできるものが監察軍にはおらぬのだ。この進駐は失敗するわけにはいかぬのだ。」

「・・・なぜここまで気を配るのでしょうか。これまでの外3であれば、フェンに無礼な対応があれば、懲罰の軍を出していたはずでは。」

 

 とにもかくにも、カイオス局長がこれまでの外3の行動と違って、徹底的に武力による衝突を拒んでいるところが気になった。下手をすれば、文明外国に下手に出たと上から叱責を買うことになるではないかと思うのだが。

 

「提督も気になられている以上、腹を割ってお話ししよう。提督は、日本国という存在をご存じか。」

 

 日本国?はて、ときどき酒場で話に上る国だな。それなりの国力を有していると聞く。ああ、そういえば、先のロデニウス大陸における戦争で活躍したとも聞いているな。東洋艦隊司令部や皇国海軍といった職場で聞いたような話ではないな。そのことを話すと、カイオス局長は、提督でもそのあたりのところしか抑えられておられないのか、と溜息を吐くようにつぶやいた。日本国になにかあるのか。

 

「提督。軍のほうでは意図的に情報操作が行われておられるようだが、日本国という存在は、同じように話に上る満洲国という存在と共に、我が国の上層部では注視しているのだ。その存在について噂は数多くある。一番の信憑性のある噂として、ムー国の傀儡国家と言うところだ。」

「ムー国の傀儡国家ですか?」

「そうだ。第二文明圏の雄が第三文明圏の裏庭の文明外国に触手を伸ばした。我等の庭先に足を延ばし始めたという話だ。実験的な兵器を実戦で使用し、そのデータを取る。それによって、列強の中での地位を高めようとしているというのがこの噂だ。」

 

 我が国の遠い西にあるムー国が我が国の裏庭に来ている!?これはただごとではない。

 

「提督に平和裡に進駐をというのもここからきている。フェン王国と駐兵に際していざこざが起きたときに彼らがどうでるか・・・。ムーの実験国家である彼らはフェンのすぐそばにあるのだ。」

「バカな!あの海域にそのような国家が存在す」

「声が大きい提督!」

 

 いかん。つい興奮してしまった。

 

「驚かれるのも無理はない。だが、この話は各省庁幹部職員までで止めている話なのだ。何と言っても影響が大きい。」

「カイオス殿。カイオス殿はこの話どう見ておられるのです?」

 

 カイオス局長は再び腕を組んで話し出した。

 

「正直に言えばだ。ムーの傀儡国家が我が国の側にあるというのは眉唾だと思っている。外1のマリンドラッヘ局長がムー国においてある我が国の大使館に対して調査を行った。すると、これまでムー国内でそのような動きがあるとは聞いていないということであった。これまで、日本国のにの字も聞いたことがないというのがムー国大使館員の言葉だそうだ。仮に傀儡国家があるとすれば、やはり何らかの動きが、そう人や物、カネの動きがあるはずだということだ。それが全く見られない。痕跡を消すと言っても完璧に消すことなどできんだろう。そう考えると、この噂というのはあてにはならん。」

「なるほど。」

「そういうわけでこの噂は皇国の上層部では信じられていない。上層部よりちょっと下の幹部級に出回っている話だ。いずれ提督の耳にも入るかもしれんが、適当に話を合わせておいてくれたまえ。」

「わかりました。」

 

 カイオス局長は、ぬるくなったお茶に手を付けた。ぬるいな、と一言いうと一気に飲み干した。

 

「日本国の存在。これは今後の我が国のかじ取りを行う上で慎重にことに当らねばならない案件だ。日本国との間で何か問題が起こったとき、我が国も相当な痛手を食らうだろう。私はそう考えている。」

「なんと。それほどの相手ですか。」

「うむ、そしてこれまで私が調査し分析をした結果、この進駐が平和裡に終われば、日本国はフェンと我が国の問題に介入してこない。私はそうみている。だが、こじれるとどうなるかわからん。だからこそ、この問題を提督にお願いしたいのだ。」

 

 強い口調で私の目を見据えて話してきた。これは・・・厳しい任務であるが、力を尽くすより他にないな。わしは、深く頭を下げて了承した。




最終回答結果
そうだね。KENZENだね。 29 / 51%
ウソダドンドコドーン。 10 / 18%
何故ここで止めた??? 18 / 32%

それではもうちょっとだけ。攻めてみようず。
でも、R18ってどれくらいなんやろ。
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