大日本帝國召喚   作:もなもろ

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日ア関係にまた一つの懸念材料が


帝都新聞夕刊 2675(平成27・2015)年9月5日(土)

警視庁、監視対象薬物使用者を都内一斉摘発

 

 警視庁組織犯罪対策部は、管轄警察署警察官の応援も得て、昨4日20時過ぎ、都内4箇所の会員制社交倶楽部に対して強制捜査を行った。該クラブに於てはここ最近、風紀の紊乱目に余る所が多く、地域の住民より苦情が寄せられていた。

 会員制社交倶楽部とは、一般的に有料の会員権を購入することで、その倶楽部が入居している建物の一室に入室することができ、飲食、飲酒、遊技などを提供している店舗を差す。自由に出入りができ、誰がいるのかわからない店舗よりも限られた客層が入室することで安心感と富裕感を味わえることで主に高所得者向けの店舗と言える。

 だが、今回摘発を受けたクラブは、社交クラブの名を隠れ蓑として、その実態は、不特定多数の男女の情交を目的とした乱交クラブであった。

 帝国刑法は第174條に公然猥褻の罪を置く。公然とは、不特定または多数人が認識し得る状態の下を差し、かような状況下での猥褻な行為を為すことを禁じる趣旨がある。いずれの施設も男女各々10人から15人程度の人数が一部屋に集まって情交を繰り返し、その騒音が部屋の外に漏れていたことから発覚したものである。

 今回警視庁が一斉摘発に乗り出したのは、その騒音が、理性を失ったかのように聞こえたという声を多数の者が聞いたことによる。違法な薬物を使用しての情交が行われていると睨んだ警視庁捜査当局は、本件を重大事案と認識して、秘密裏に捜査本部を設置した。私服刑事を建物周囲に派遣し、約2週間に及んだ聞き込み捜査の末に何らかの薬物を使用しているとの嫌疑が十分に固まったと断定した捜査本部は、東京地方裁判所検事局に対して捜索差押令状の使用と当該室内にいる者に対する現行犯逮捕の許諾を求めた。検事局は東京地方裁判所の予審判事に対して捜索差押令状の発布を申請して、裁判所側も即日交付する運びとなり、客数が一番多い金曜日の夜に強制捜査の運びとなった。

参考:刑法第百七十四條 公然猥褻ノ行為ヲ為シタル者ハ六月以下ノ懲役若クハ五百円以下ノ罰金又ハ拘留若クハ科料ニ処ス

 

 

警視庁組織犯罪対策部午前9時発表「捜索差押状況報告:捜査対象物件について」

 

 捜査員が踏み込んだビルの一つに新宿の雑居ビルがある。このビルではその一つの階をほぼまるまる使用した形で社交クラブの営業がおこなわれていた。エレベーターを出るとすぐ左手に少人数しか入れない会員制のバーが設置されている。実はこのバーがカモフラージュ用に作られた店舗である。店舗の入り口の正面、すなわちエレベータを出て右手にこのバーで提供する種類や乾物などを貯蔵している倉庫がある。倉庫の中に入れば、確かに瓶ビールを冷やす冷蔵庫や乾きものを貯蔵する棚が置かれているが、この部屋の先に真の会員制クラブの出入り口が設置されている。業務用冷蔵庫に擬態させた扉がこのクラブが他の者に知られたくない秘密を有していることを示している。

 出入り口から入るとすぐの正面にカウンターが設置してある。そこから左右に分かれて男女別に更衣室が設置されている。更衣室にはシャワー室なども設置されていた。更衣室の奥のドアを開けると40畳ほどの広さのある部屋が現れる。間仕切りのない広い部屋であり、隅にはソファーやテーブルが設置されている。この部屋で男女複数が公然と情交を行っていた。

 この日の摘発で逮捕された者は男性45名、女性17名であった。女性の数が少ないが、これは男性の逮捕者には、施設の運営者側の人間も含むからである。それでも、客側で公然猥褻の現行犯で逮捕されたのは男性34名、女性16名と男女比が偏っている。

 この新宿のビルでの逮捕者の構成は以下の表のとおりとなっている。

 

男性 社交倶楽部経営者 1(日本1)

男性 社交倶楽部従業員 6(日本2、特別日本国籍2、クワ・トイネ1、アルタラス1)

男性 会員制バー従業員 4(日本3、満洲1)

女性 会員制バー従業員 1(アルタラス1)

男性 社交俱楽部客   34(日本26、満洲5、アルタラス1、クイラ1、クワ・トイネ1)

女性 社交倶楽部客   16(日本4、満洲2、特別日本国籍2、アルタラス5、クイラ1、シオス1、クワ・トイネ1)

 

 未だ黙秘を続けている者もおり、全容は解明されていないが、警視庁は女性客とされている者の多くは客ではなく、売春目的の従業員ではないかと考えている。売春目的ということであれば、多数の外国人を日本国内に入国させたものは誰か。捜査の対象はそちらにも波及しつつある。

 

 

河本警視総監「風紀紊乱目に余る所多し。警視庁令を以てまずは規制する意向」

道府県知事連絡会、近く臨時懇談会を開催す

 

 今回の摘発で目に付いたのが、部屋で焚かれていた香である。この香は吸入者の性的羞恥心を麻痺させ、多幸感・興奮作用を増幅させる効果が有り、中毒性もあることが疑われている。この香が理性を失った騒音に繋がっていると見た組織犯罪対策部は、直ちに科捜研に鑑定をいらしている。

 一方でこの香の入手ルートについて、逮捕された外国人従業員の一人にアルタラス国籍の者がおり、その者が持ち込んだことがその者の供述で明らかとなっている。その者は、この香はアルタラスの地方において、祈念祭や収穫祭などの祭りの時期に村の広場で焚かれて、祭礼に使用しているものであって、決して中毒性のあるような不法な薬物ではないと主張している。確かに我が国においても旧幕時代などの前近代の時期に於ては祭礼でそのような宴が開かれていたことは知られている。だが、今は平成の御代であり、そのような祭礼行事は少なくとも表では見られないものであり、我が国の善良な風俗に反していることは刑法上明らかである。

 この件について警視庁は重く受け止めており、河本敏弘警視総監は、斯くの如き風紀紊乱は今世に多いと聞いている。この件については国が動くよりも早めに対策を打つ必要があり、警視庁令を以て当該薬物を麻薬及向精神薬取締法における規制対象薬物と指定し、取締りを開始していく方向で調整していると発表した。

 この件に関連して、警視総監と同じ地位にある各道府県知事は、今後臨時の懇談会を開催して、警視庁令と同様の道府県令を制定すべきか協議を開始しようと考えていると道府県知事連絡会会長の佐竹秋田県知事は答えている。

 一方で法が規制する薬物かどうかはまず、勅令たる麻薬及向精神薬取締法施行令や麻薬及向精神薬取締法施行規則である厚生省令によってまずは規定すべきではないかという声がある。確かに、法の優劣の順位からいえば、法律>勅令>省令>=警視庁令・道府県令といった優劣があり、警視庁令による規制は越権、法の有効性に疑念があると声には一理ある。この点について、河本総監は、決定事項ではないし、法の専門家も交えて協議を進めていきたいと述べるにとどまった。

 

 

―――――

ラングレー駐日アルタラス公使、アルタラス人の逮捕に対して懸念を表明か

 

 マクラス・ラングレー駐日アルタラス王国特命全権公使は、先日の警視庁による一斉摘発によってアルタラス人が拘束されたことに懸念を表明した。「日本人の性的犯罪に関する法概念そのものについては私は何らの論評を行う資格は持たないと思っている。だが、アルタラス国内に於ては何ら違法性のない薬草を日本の捜査当局が違法の疑いが強いと認識していることについては不満を抱いている。アルタラスの農村における文化風習に対して隔意があるように見えてならない。我が国人が日本の法概念上性的犯罪に該当するということについて、その法に触れるというのであればやむを得ないが、薬草の問題に関しては、憂慮している。」と述べ、近く日本外務省・日本厚生省に疑念を伝えるとして、警視庁には、当該アルタラス人の早期の開放を求めると述べた。

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