2月4日
寝具から離れたくないと思ったのは初めてではなかろうか。弾力性のある布団と暖かい毛布。部屋の空気は暖かいままである。年中を通して暖かい、クワ・トイネでも冬の朝は確かに寒いと感じる日はあるが、夜通し暖炉の火を焚いて、部屋を暖めておくなど、燃料代が馬鹿にならない。日本国の我々に対する手厚いもてなし、それも一外務局員に対する厚遇には驚くばかりだ。
朝食後は昨日供与された機械の使用方法の詳しい説明を受け、機械操作に慣れるための練習を行った。この機械を使いこなすことができれば、視察の実が上がることは間違いない。
昼食後も時間の許す限り操作練習を行い、そろそろ到着するというので、荷物をまとめ甲板に向かう。甲板から見えた日本国の港湾は、クワ・トイネのそれと比べると恐ろしいほどに発展していた。同僚のオランゲは、パーパルディア皇国大使館に出向していた経歴がある。彼に聞いてみたが、パーパルディア皇国の港がまるで玩具に見えるという。日本国の港湾が大人ならば、パーパルディア皇国の港は赤ん坊だともつぶやいた。では、我が国の港はなんだというのだろうか。
港の端にとてつもなく大きな船が見えた。田中氏に聞くと、あれは軍艦だという。航空母艦という艦種の軍艦で、航空機を搭載して、航空機を飛ばして攻撃防御行動を行うのだという。パーパルディア皇国でいうところの竜母に該当するのだろうか。砲艦はないのだろうかと問うてみたが、大砲を搭載した軍艦ならば、いくつか種類がありますと答えてくれ、戦艦、航空母艦、一等巡洋艦、二等巡洋艦、潜水母艦が該当しますと詳しく話してくれた。どういう違いがあるのかを聞いてみた。戦艦は、重武装を以て敵を攻撃し、重装甲を以て敵から味方を守り、戦場にて最高指揮官を乗せて全体の総指揮を執る艦であるとのこと、一等巡洋艦は戦艦よりも軽装甲であるが、その分高速で、戦場にあっては対艦攻撃も行うが、防空能力に優れた艦であるということ、二等巡洋艦は、一等巡洋艦をさらに軽装甲として、高速を維持し、主として対空対潜防御能力に優れ、駆逐艦を統御する役割を持つことを教えてくれた。駆逐艦とは何かと聞いてみると、軽装甲ではあるが、対艦対空対潜能力に優れ、高速の艦であると答えてくれた。先ほど挙げた名前に入ってないので、軍艦でないのかと聞いてみると、苦笑し、国内法的には軍艦ではないが、前世界では対外的には軍艦として扱われますことを失念していましたと答えた。さらにどういうことかと問うと、我が国では軍艦というのは、艦首に菊花紋章をつけている艦のみをさすと答えてくれた。昨日の日本についての説明中に出てきた君主の紋章であることを思い出し、そういうものかと理解した。潜水母艦についても聞いてみた。潜水艦の艦隊旗艦を務める艦で、潜水艦に対する総指揮、潜水艦への補給・救援や乗組員の休養などに充てられる艦とのことであった。潜水艦というのは海の中を潜る艦らしいが、沈むのとどう違うのだろうか。海の中を潜って進むとはどれほどの技術がいるのだろうか。
ふと、耳をつんざく大きな音が聞こえた。音の方向を見てみると、先ほどの航空母艦の隣にそれと同規模の艦を見つけた。艦の形が違う。田中氏の方向を見ると礼砲です。皆様がたを歓待するために行う儀礼的行為となっております、とのこと。なるほど、礼砲という概念自体は我が国にも存在するが、まずはあの軍艦だ。あの軍艦はと尋ねると、戦艦です。第五艦隊旗艦戦艦を務める戦艦常陸です、との回答だ。
あの大きな音、どのくらいの大きさなのだろうか、ハンキ将軍の顔を見てみると、首筋から汗が流れていた。大砲の大きさについて尋ねてみると、46センチ砲ですとのことだ。ハンキ将軍の目が開かれていた。どれほどの性能なのかはハンキ将軍に尋ねてみるよりほかにない。
高雄には日本海軍の要港部が置かれていましたので、本作では、鎮守府に格上げされることとなりました。中東からの油送、シーレーン防衛の最前線拠点となっていた設定です。