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魔法使用者の呼称を定める法律(中央歴1639年9月2日法律第27号)
王国内における魔法を使用する者については、王室、諸侯及び平民の各階層において様々な呼称を以て王室、諸侯、民間及び魔法使用者自身が表現したる慣行が続いてきた。今、王国はこの慣行を改め、法律を以て、魔法使用者の呼称を統一的に定める。クイラ国王アンクワール・ナースィル・アル=クイラは、諸侯会議の協賛を経たる此の法律を内閣総理大臣に其の公布及び施行を行うよう命令す。
御名御璽
中央歴1639年9月1日
内閣総理大臣 アスアド・フラート・アル=バータジー
内務大臣 ハムダーン・フワイリド・アル=ハーンジー
大蔵大臣 ハールーン・モサメッド・ベルディエルート
外務大臣 アイーラ・メッサル
陸軍大臣 サムハド・フサイン
海軍大臣 イルマリ・リウハラ
司法大臣 ヴィクトール・ベダレフ
商工大臣 シャーリー・テルハーン・アル=バダウィー
文部大臣 フレードリク・ルンドブラード
農務大臣 ミシェル・ティンベルヘン
鉄道大臣 エジンバラ・ハイヤート
法律第27号
第1条 この法律は、魔法を駆使して業務を行う者及び業務の遂行に魔法を補助的に使用する者などの魔法使用者を使用者の行使する魔法の能力等により体系化し、その称号を定めることで魔法使用者を効果的に分類し、王国発展の一助とすることを目的とす。
第2条 魔法使用者は一定の技能を有する者を師の区分とし、それ以外の者を士の区分とす。但し、第5條第1項第8号及び第9号に該当する者は除く。
第3条 魔法使用者の士で官又は諸侯領に仕えざる者は、官又は諸侯領の一般的管理に服す。
2 管理は、官又は諸侯領に仕えざる魔法使用者の住所地を担当するギルドを通して行うを常例とす。
3 ギルドには、官又は諸侯領に登録したる師の区分の魔法使用者が1名以上所属することを要す。
4 ギルドは、官又は諸侯領の一般的統一的命令に服す。
第4条 魔法使用者は、官又は諸侯領若しくはギルドに其の氏名、生年月日、住所及び業務上使用する魔法並びに発動可能な魔法の種類を申告しなければならない。
2 申告は年一回生年月日の前後一月以内に之を行うことを要す。
3 申告期間中、外国に在る者は、その国の在外公館に対して申告を為すものとす。
第5条 魔法使用者は本条各号に定める区分に属す。
1 大魔法師
2 魔導師
3 魔法師
4 魔術師
5 魔導士
6 魔法士
7 魔術士
8 魔法学生
9 魔法生徒
第6条 大魔法士は老巧卓抜なる者にしてクイラ国王の裁可を得てその称号を保持す。
2 大魔法師は、クイラ王国魔法部隊の統督を行う。
3 大魔導師は終身の身分とす。但し辞任することを妨げない。
第7条 魔導師は左の各号のいずれかに該当する者とす。
1 魔導士として官又は諸侯領の業務に10年以上従事し、魔導士及び魔法士の区分に属する部下を統督する者
2 官又は諸侯領が設立したる魔法を修める学校の教員として、10年以上その業務に従事し、積年の功績を認められた者
3 ギルドに所属し、魔法を駆使する又は使用することのある業務を行う者にして、積年の功績を認められたる者
4 個人として魔法使用者の育成を行い、官又は諸侯領より弟子を訓育するにたる十分な資質があると認められたる者
2 本条第1項第1号の規定に関わらず、魔導士が同じ区分に属する部下を統督する能力があると認めらるるときは、上司の推薦及び上級者数名の銓衡によりて魔導師とすることを得。
3 本条第1項第3号の場合に於ては、当該ギルドは官又は諸侯領から当該魔法使用者の技量についての認定を受ける必要がある。
第8条 魔法師は左の各号のいずれかに該当する者とす。
1 魔法士として官又は諸侯領の業務に永年従事し、積年の功績を認められたる者
2 官又は諸侯領が設立したる魔法を修める学校に於いて、魔法に関する講義の助手を行う者
2 本条第1項第1号の場合に於ては上司の推薦及び上級者数名の銓衡を行う。
第9条 魔術師は左の各号のいずれかに該当する者とす。
1 魔術士として官又は諸侯領の業務に20年以上従事し、積年の功績を認められたる者
2 魔術士として官又は諸侯領の業務に従事し、功績卓抜なることを認められたる者
3 官又は諸侯領が設立したる魔法を修める学校に於いて、魔術具に関する講義を業務として行う者
4 ギルドに所属し、魔術具の制作、改良を永年行い、積年の功績を認められたる者
5 官又は諸侯領より、魔術具の制作、改良又は研究に付き優等なる技量を保持すると認められたる者
2 本条第1項第2号の場合に於ては上司の推薦及び上級者数名の銓衡を行う。
3 本条第1項第4号の場合に於ては、当該ギルドは官又は諸侯領から当該魔法使用者の技量についての認定を受ける必要がある。
第10条 魔導士は左の各号のいずれかに該当する者とす。
1 魔法士として官又は諸侯領の業務に5年以上従事し、魔法士の区分に属する部下を統督する者
2 官又は諸侯領が設立したる魔法を修める学校を卒業したる者にして、魔法を修める学校の教員として官又は諸侯領より業務を行うよう命ぜられた者
3 ギルドに所属し、魔法を駆使する又は使用することのある業務を行う者にして、積年の功績を認められたる者
4 個人として魔法使用者の育成を行い、ギルドより弟子を訓育するにたる資質を認められたる者
2 本条第1項第1号の規定に関わらず、魔法士が同じ区分に属する部下を統督する能力があると認めらるるときは、上司の推薦及び上級者数名の銓衡によりて魔導士とすることを得。
第11条 魔法士は左の各号のいずれかに該当する者とす。
1 官又は諸侯領より魔法を駆使する又は使用することのある業務を行うよう命ぜられた者
2 官又は諸侯領が設立したる魔法を修める学校を修了し、尚魔法研究の為在学を継続したる者
3 ギルドに所属し、魔法を駆使する又は使用することのある業務を行う者
4 魔法使用者個人により、其の指導が一定の課程を修了したと認められ、主として魔法を駆使する又は使用することのある業務を行うだけの技量を認められたる者
第12条 魔術士は左の各号のいずれかに該当する者とす。
1 官又は諸侯領より魔術具の制作、改良又は研究の職に任ぜられたる者
2 官又は諸侯領が設立したる魔法を修める学校を修了し、尚魔術具研究の為在学を継続したる者
3 ギルドに所属し魔術具の制作、改良を行う者
4 魔法使用者個人により、其の指導が一定の課程を修了したと認められ、主として魔術具の制作、改良を行うだけの技量を認められたる者
第13条 魔法学生は、官又は諸侯領が設立したる魔法を修める学校に在学中の者とす。
第14条 魔法生徒は、官又は諸侯領の管理に属せざる教育機関又は魔法使用者個人による指導を現に受くる者とす。
2 第10条第1項第4号に定める者が前項に定める指導者たるときは、その弟子の終業時の技量についてはギルドの認定を受けなければならない。
3 第11条第1項第4号又は第12条第1項第4号に定める者が第1項に定める指導者たるときは、その弟子の終業時の技量についてはギルドによる試験を受けなければならない。
第15条 前条までに定めるものの外王立陸軍に於ては魔法を直接の攻撃防御手段として軍務に従事する者を対象として階級を設定する。
2 前項に定める階級を以下の如く定める。
陸軍魔法中将
陸軍魔法少将
陸軍魔法大佐
陸軍魔法中佐
陸軍魔法少佐
陸軍魔法体位
陸軍魔法中尉
陸軍魔法少尉
陸軍魔法准尉
陸軍魔法曹長
陸軍魔法軍曹
陸軍魔法伍長
(後略)
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クイラ王国首都バルラート バルラート宮殿 中央暦1639年9月8日(火)午後1時
― 王立陸軍第一師団魔法第一連隊長 陸軍魔法大佐 ウスマン・ガンボード
王宮より呼び出しを受けた。さて、いったい何を聞かされるというのであろうか。
今年新たに編制された、王立陸軍第一師団は、王宮魔導部隊、バルラート騎士団、アル=クイラ騎馬集団などを改組して作られた部隊だ。日満両国の陸軍の編制を参考としている。師団長は現在空席だ。というのも、満洲国陸軍軍官学校という陸軍士官を養成する学校で短期集中講座を受けているからである。私も短期集中講座は受講しているが、国内を空にするわけにもいかないので、この講座は分割して行われている。
師団には、槍や弓、剣で武装した軽歩兵連隊が2個連隊、王宮魔導部隊を再編して作られた攻撃魔法を扱う魔法連隊が一個、日満両国から贈られた銃火器や自動車などで武装した歩兵連隊が1個、これまた日満両国から贈られた工作設備を有する工兵連隊が1個、軍馬や自動車を使用して兵器や糧食を輸送する輜重兵連隊が1個の各部隊を擁する。かなりの員数がいる為、王都周辺に分散して駐屯地は設置された。
師団司令部は王宮近くに置かれており、通信設備により、各部隊には命令が行くようにはなっている。その師団司令部から私に命令が入ったのは、本日の朝だ。午後1時に王宮に出頭するようにとのことだ。連隊の駐屯地から王宮までは、日本の自動車で15分と言ったところだ。少し早めの30分前に連隊本部を出発することにして、連隊副官に自動車の運転を頼み、私は王宮に向かった。
王宮の一室に入ると、アル=バータジー首相閣下、メッサル外相閣下、王室魔法顧問にして大魔導師のサーリム・ハルビー陸軍大将閣下、王国大学の魔法学部長であるカリム・アンマール魔導師、陸軍第二師団魔法第二連隊長のバハル・バイダス陸軍魔法大佐の5名がいた。私が最後か。はて、予定よりも早く来たのだが。
「遅くなりまして申し訳ありません。」
「いや、まだ定刻ではない。それにあと一人来る。」
ハルビー大将がそのようにいうので、席に座って待つ。隣のバイダスが挨拶をしてきた。
「久しぶりだな。」
「ああ、軍制改革の式典の時以来か。」
バイダスも私も旧制度下の王宮魔導部隊では10人隊長を任されていた。なかなか優秀な男なのだが、独り身のままだ。もったいないと思うが、まあこればかりは本人の意思が重要だろう。次の言葉を話そうとしたところドアが開いた。はて、あれは海軍の制服のようだが。私と同じように謝りながら座ると、首相閣下が外相閣下に目くばせをした。外相は頷くと話始めた。
「全員揃ったようなので、話を始めたいと思う。今回諸君に集まってもらったのは、日本国から依頼が届いたからなのだ。といっても、依頼主は日本国政府ではない。依頼してきた者は日本国の官立長崎大学学長。より正確に言えば、同大学医学部法医学教室になる。」
はて、大学。教育機関の者が我々に何の用だというだろうか。
「依頼の内容についてだが、先日日本国の国民がフェン王国で亡くなったというのは知っているだろうか。・・・ふむ。知らぬか。まあそれもそうだな。かいつまんで言うと、日本国の国民がフェン王国で焼死体で見つかったというのことだ。原因は失火による家屋の延焼に巻き込まれての事故死ということらしい。鎮火はフェン王国の消火隊では難しく、周辺にいたパーパルディア皇国人の魔法を使えるものが水魔法を使用して降らせた大量の水によって可能だったそうだ。当然ではあるが、その遺体にもその水魔法を被ったということだ。そしてここからが依頼の内容だが、この水魔法を被った遺体というものがどういうものなのか、ただの水を被った遺体とどのような違いがあるのか魔法の視点で考察をしてもらいたいというのが内容だ。」
ふむ・・・。なるほど。それで魔法が使えるものが集められたということか。はて、だが、どういう選抜基準だったのだろうか。
「諸君たちが選ばれたのは、まず一つに水魔法が使えるということだ。水魔法を受けた死体の検分ということになる。これは当然と言えよう。それから、死体といっても、かなり惨たらしい状態の死体ということだ。軍人以外の者では、担当するのは厳しいだろうという結論になった。」
なるほど・・・。死体を見るのは、我々もいい気はしないが、文官連中よりかはましだろう。我々はかつて野盗を倒したこともある。死体を見慣れているとは言い難いが、多少はましだろう。
「それから、これが決め手なのだが、諸君たち3名はパーパルディア皇国への留学の経験がある。一口にパーパルディア人と言っても魔法の能力はピンからキリまでいるだろう。だが、山火事を鎮火させるだけの水魔法を発動したものだ。それなりに魔法使いとしての能力は高いだろう。我が国は、これまでクワ・トイネ公国から2、3年に1人の枠でパーパルディア皇国への留学を受け入れてもらっていた。我が国はムー国とは国交があったが、ミリシアルはおろかパーパルディア皇国とも直接のやり取りは行っていなかった。それゆえにパーパルディアへの留学経験のある諸君らは軍において魔法の能力では優秀な者ということになると我々は判断した。」
まあ確かにそれには自負がある。私もバイダスも魔法連隊の連隊長を任されているのだ。攻撃魔法には自信がある。「よろしいでしょうか。」という声とともに、海軍の軍服を着た男が手を挙げた。外相が首を縦にふり、発言を許した。
「ありがとうございます。確か、我が国でも有名な治癒魔術師であったユルキ・ポポヤラ師を始めとして何人か日本国に登用された魔法使いがいたと思うのですが、彼らでは今回の依頼は駄目だったのでしょうか。ポポヤラ師であれば、仕事上死体の検分もされたことがあると思いますし、何より水魔法は攻撃魔法以外の生活魔法としての使用することもあります。ポポヤラ師であれば見分は充分に可能だと思うのですが。」
「ああ、それはだな。初め長崎大学は、東京帝國大学医学部に魔法医学の担任教授となった魔法使いを派遣してもらえないか相談したそうだが、この学部自体が9月1日に新設されたばかりなようでな。現状では他に回す余裕はないと断られたそうだ。」
「なるほど。そういうことで、我々が派遣されることになったと。」
「左様。長崎大学からは、この件は日本政府からの依頼ではないため報酬もあまり多くは出せないが、出張費用と滞在中の生活費はこちらで負担させてもらうとの申し出だ。個人の資格で行くわけではないので、大学からの報酬は王国大蔵省宛でいただくことになっている。だが、滞在中の生活費用については個人の資格で受領してもらって構わない。」
ふむ。なるほど。まあ、死体の検分ということであまり良い仕事ではないが、それなりに羽休めができるということかな。
「よければ、私を推薦してはいただけないでしょうか。」
海軍の軍服を着た男が発言した。
「陸軍のお二方は初めてお目にかかるかもしれません。海軍参謀本部に勤めております、シャクール・バウワーブ海軍中佐と申します。実はわたくし、海軍に奉職してはおりますが、水魔法と土魔法しか使えないのです。我が海軍は日本国と満洲国の支援もあり、近代艦艇の採用を進めてはおりますが、何分にも高価なものですので、すべて置き換わることはおそらくないのではないかと思います。そのため、帆船部隊が我が海軍の主戦力となりつつあるのですが、この帆船部隊で重宝されるのは、水魔法と風魔法の使い手であるため、私のような者は艦隊勤務に向かないのです。せっかくの日本出張です。ついでに私のような土魔法しか使えないものでも、何かできないか探してみたいと思うのです。」
なるほど。羽休めぐらいにしか思っていなかった私よりも適任でありそうだな。そう思っていると「素晴らしい」という声が聞こえてきた。
「素晴らしい向上心ではないか。首相、私も自己の見聞を広げるために日本出張を希望しますぞ。」
王室魔法顧問にして大魔導師のサーリム・ハルビー陸軍大将がアル=バータジー首相に顔を向けて話しだした。
「無茶を言わんでください。大魔導師たる貴方が今我が国を離れられては困ります。我が国は急速な近代化を果たしている最中なのです。当然地方の諸侯との間に軋轢がないわけではありません。火・水・土・風の四大攻撃魔法を全て使え、魔力も豊富な貴方が王都でどっしり構えておられるから、地方諸侯も反旗を翻そうとはしないのですぞ。」
「何を言うか。わしの代わりは、ほれ、そこの魔法連隊長2人でも務まるぞ。」
「御戯れを。ガンボード陸軍魔法大佐は水と土、バイダス陸軍魔法大佐は水と火の使い手ですぞ。魔力量もハルビー閣下のそれとは比較にはなりますまい。」
「そうはいうが、この国の未来はどうなるのだ。卿のいう通りならば、我が国は未来永劫反乱におびえ続けねばならぬではないか。」
「そのようなことはございません。地方の諸侯にも近代化のうま味というものが浸透するのには、今少し時が必要なだけなのです。いずれは、地方の諸侯も含めて近代化の恩恵を受けることができれば、閣下のおっしゃるような未来は訪れません。ですが、そのためには、今少し力が必要なのです。」
首相と大魔導師が言い争うのをじっとこらえて待っていた。お偉いさんの言い争いに口を挟みたくはない。
「まあまあ、首相も大魔導師も押さえてください。魔法のことならば、どうでしょうか。私が派遣要員となりましょう。大魔導師にも日本で見聞してきたことはお伝えします。私は、攻撃魔法は発動できませんが、生活魔法レベルのものでしたら火・水・土・風すべての属性を使用できます。部下には攻撃魔法レベルの水魔法を使用できるものもおりますし、その者を連れていれば検分は可能でしょう。」
「アンマール師!其方も、新しくできた王立大学の魔法学部長の職に在るものではないか。悪戯に国を離れてよいものか。」
お偉いさんの争いが更に激化した。皆、本来の任務である死体の検分よりも副産物たる日本出張を重要視している。やれやれ、どうなることやら。
さあ、今後の展開はどうなるか。恒例のアンケートです。
海軍中佐シャクール・バウワーブ
陸軍魔法大佐ウスマン・ガンボード
陸軍魔法大佐バハル・バイダス
大魔導師サーリム・ハルビー
魔導師カリム・アンマール
当然ではありますが、それぞれに一長一短があります。ヒントは本文中に示しているのもあれば、過去記事との類推でこの展開あるんじゃねというのもあります。
日本国に派遣される人物は?
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海軍中佐シャクール・バウワーブ
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陸軍魔法大佐ウスマン・ガンボード
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陸軍魔法大佐バハル・バイダス
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大魔導師サーリム・ハルビー
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魔導師カリム・アンマール
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