大日本帝國召喚   作:もなもろ

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外務省官制(明31勅258) / 2675(平成27・2015)年2月4日午後4時 外務省欧州局英国課

外務省官制

(明治31年勅令第258号・最終改正平成十八年勅令二十七号)

 

朕外務省官制ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

勅令第二百五十八號

  外務省官制

第一條 外務大臣ハ外國ニ関スル政務ノ施行、外国ニ於ケル帝国権益ノ保護及外国在留帝国臣民ニ関スル事務ヲ管理シ外交官及領事官ヲ指揮監督ス

第二條 大臣官房ニ於テハ通則ニ揭クルモノノ外帝國ニ駐在スル各國外交官領事官、外國人敍勳、條約書保管及文書翻譯ニ關スル事務ヲ掌ル

第三條 外務省ニ外務審議官一人ヲ置キ勅任トス

 外務審議官ハ外務省ノ所掌事務ニ係ル重要政策ニ関スル総轄整理ヲ行フ

第三條ノ二 外務省ニ儀典長一人ヲ置キ勅任トス

 儀典長ハ儀典其ノ他ノ外交上ノ儀礼ニ係ル重要事項ニ関スル事務ヲ総括整理ス

第四條 外務省ニ左ノ九局ヲ置ク

  総合外交政策局

  大東亞局

  欧州局

  北米局

  中南米局

  中東阿弗利加局

  條約局

  国際情報局

  領事局

第五條 総合外交政策局ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル

  一 総合的外交政策又ハ基本的外交政策ノ企画立案及総括ニ關スル事項

  二 左ノ事項ニ係ル外交政策及外交交渉ニ關スル事項

   イ 国際機関等ニ関スル事項

   ロ 人権、人道、薬物及国際的組織犯罪

   ハ 軍備管理及軍縮

   ニ 国際平和ノ推進

  三 国際機関等ニ於ケル邦人職員ノ任用及勤務ニ關スル事項

  四 国際連盟ニ関スル資料ノ収集及保管ニ關スル事項

  五 国際連盟等国際機関及団体ノ指導及助成ニ關スル事項

  六 対外経済関係ニ係ル外交政策及外交交渉ニ關スル事項

  七 経済協力ニ係ル外交政策及外交交渉ニ關スル事項

  八 外務省ノ所掌ニ係ル政府開発援助ニ關スル事項

  九 国際緊急援助活動ニ關スル事項

第五條ノ二 大東亞局ニ於テハ大東亜諸國ニ関スル外交事務ヲ掌ル

第六條 歐州局ニ於テハ歐州諸國ニ関スル外交事務ヲ掌ル

第七條 北米局ニ於テハ北米諸國ニ關スル外交事務ヲ掌ル

第七條ノ二 中南米局ニ於テハ中南米諸國ニ關スル外交事務ヲ掌ル

第七條ノ三 中東阿弗利加局ニ於テハ中東阿弗利加諸國ニ關スル外交事務ヲ掌ル

第八條 條約局ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル

  一 国際法ニ係ル外交政策ニ關スル事項

  二 條約等國際合意ノ締結ニ關スル事項

  三 條約等國際合意ノ解釈及実施ニ關スル事項

  四 渉外法律事項ニ關スル事項

  五 國際司法裁判所、常設仲裁裁判所、國際連盟國際法委員会及國際連盟法律諮問委員会ニ關スル事項

第九條 國際情報局ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル

  一 國際情勢ニ関スル情報ノ収集及分析ニ關スル事項

  二 外國及國際機関等ニ係ル調査ニ關スル事項

  三 外務省ノ収集シタル情報ノ総合的管理ニ關スル事項

第十條 領事局ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル

  一 外國在留帝國臣民及帝國在留外国人ニ係ル外交政策及外交交渉ニ關スル事項

  二 外國渡航帝國臣民ノ身分保護安全ニ關スル事項

  三 在外選挙ノ実施ニ關スル事項

  四 旅券発給並ニ海外渡航及海外移住ニ關スル事項

  五 査証ニ關スル事項

  六 帝國在留外国人ノ待遇ニ係ル行政機関ノ事務連絡ニ關スル事項

第十條ノ二 総合外交政策局ニ国際協力部ヲ置ク

 国際協力部ニ於テハ第五條第六號乃至第九號ノ事務ヲ掌ル

第十條ノ二ノ一 中東阿弗利加局ニ阿弗利加部ヲ置ク

 阿弗利加部ニ於テハ阿弗利加諸國ニ關スル外交事務ヲ掌ル

第十條ノ二ノ二 外務大臣秘書官ハ專任二人トス

第十條ノ二ノ三 大臣官房ニ総括審議官一人、公文書監理官一人、監察査察官一人、外務報道官一人、電網防禦官一人、審議官十三人及参事官十一人ヲ置キ奏任官ヲ以テ之ニ充ツ

 総括審議官ハ上官ノ命ヲ承ケ大蔵省ノ所掌事務ニ関スル特ニ重要ナル事項ニ付企画及立案並ニ調整ニ関スル事務ヲ総括整理ス

 公文書監理官ハ上官ノ命ヲ承ケ外務省ノ所掌事務ニ付公文書類ノ管理公開及個人情報保護ニ係ル重要事項ニ関スル事務ヲ総括整理ス

 監察査察官ハ上官ノ命ヲ承ケ外務省ノ所掌事務ニ付監察ニ関スル重要事項及外交官及領事官官制ノ規定ニ依ル査察使ノ行フ査察ニ関スル重要事項ニ係ル企画及立案ニ参画シ関係事務ヲ総括整理ス

 外務報道官ハ上官ノ命ヲ承ケ外務省ノ所掌事務ニ関スル国内広報及海外広報其ノ他啓発ノ為ノ措置並ニ文化ノ分野ニ於クル国際交流ニ係ル重要事項ニ関スル事務ヲ総括整理ス

 電網防禦官ハ上官ノ命ヲ承ケ外務省ノ所掌事務ニ関スル電網防禦ノ確保並ニ情報体系ノ整備及管理ノ運営ノ改善ニ関スル重要事項ニ係ル企画及立案ニ関スル事務ヲ総括整理ス

 審議官ハ上官ノ命ヲ承ケ外務省ノ所掌事務ニ関スル特ニ重要ナル事項ニ付企画及立案ニ参画シ関係事務ヲ総括整理ス

 参事官ハ上官ノ命ヲ承ケ外務省ノ所掌事務ニ付特ニ重要ナル経済情勢ニ関シテ専門的調査及研究ニ関スル事項ヲ総括整理シ又ハ所掌事務ニ関スル重要事項ニ付企画及立案ニ参画ス

第十条ノ三 外務書記官ハ專任三十五人ヲ以テ定員トス

第十一條 外務省ニ外務事務官專任六十八人及外務理事官專任五十三人ヲ置ク奏任トス上官ノ命ヲ承ケ事務ヲ掌ル

第十二條 外務省ニ翻譯官十人ヲ置ク奏任トス上官ノ命ヲ承ケ文書翻譯ヲ掌ル

第十三條 外務省ニ電信官專任五人ヲ置ク奏任トス上官ノ命ヲ承ケ電信符號ニ關スル事項ヲ掌ル

第十四條 外務省ニ技師專任十七人ヲ置ク奏任トス上官ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル

第十五條 外務屬ノ定員ハ專任二百四十三人トス

第十六條 外務省ニ翻譯官補二十五人ヲ置ク判任トス上官ノ指揮ヲ承ケ文書翻譯及通譯ニ從事ス

第十六條ノ二 外務省ニ電信官補專任十人ヲ置ク判任トス上官ノ指揮ヲ承ケ電信符號ニ關スル事務ニ從事ス

第十七條 外務省ニ技手專任三十四人ヲ置ク判任トス上官ノ指揮ヲ承ケ電信、建築其ノ他技術ニ從事ス

附則

本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

 

 

 ―――――

2675(平成27・2015)年2月4日午後4時

 

 大日本帝國外務省は大臣官房の他9局を構えているが、新世界転移により実際に業務を継続しているのは、総合外交政策局、大東亜局、條約局、国際情報局、領事局の5局のみであった。その中でも大東亜局は、転移前と比較して逆に忙しくなった部局である。満洲帝國が共に転移してきたことから、以前と変わらずに大東亜局満洲国課は業務を継続した。そして、クワ・トイネ公国の位置が地球での大東亜局の担当領域でもあったことから、大東亜局で継続して対応することとなったため、ロデニウス大陸の国家に対しては南亜課にて対応することとなった。それ以外の局も新世界転移の国家群と新たな条約締結をどのように締結するのかを調査していたり、外交官経由で収集した情報の分析を行うなど、前世界とは違えど、同じように新たな業務に励んでいた。

 それ以外の、欧州局、北米局、中南米局、中東アフリカ局については、対応する国家が消滅したため、業務が縮小した。無論、日本に取り残された駐在外交官や領事官、日本駐在企業の従業員及びその家族や学術芸術目的の短期滞在者や単なる旅行者など新世界に転移した日本には、数多くの「外国人」がいた。長期に日本に滞在し、生活の基盤もある者に対しては、帝國政府は、在留資格を無期限に延長する措置、すなわち就労ビザの無期限延長という措置で対処することができたが、日本に生活基盤の無い旅行者などに対する支援は、東京の各大公使館や日本各地に存在する総領事館、領事館などが行ってきたが、生活支援は十分に進んでいるとはいいがたい状態であった。このため、各局局員は、その所属する課の対応する国の大使館や公使館に赴き、業務の支援を行っていた。

 外務省欧州局英国課長補佐の職にあった外務省一等書記官朝田泰司は、千代田区一番町の英国大使館からの外回りを終え本省に戻ってきていた。デスクにつくや否や、コーヒーを飲む間もなく、英国課長酒井正清から声をかけられた。

 

「朝田君、ちょっと。」

 

 喫煙室の方向へ指をさされ、朝田は従う。酒井正清は、江戸時代の大名家である酒井雅楽頭家の出身であり、伯爵位の推定家督相続人である。現伯爵たる酒井忠正は貴族院伯爵議員として三葵会の会派に所属している。英国で買ったピーターソンのパイプに火をつけながら、酒井は朝田に話かける。

 

「うちの親父のことなんだがね、酒井の親族会の話し合いと上様のお勧めもあって、失踪宣告を受けることにしたんだ。」

 

 酒井忠正伯爵は、貴族院三葵会に所属する伯爵議員である傍ら、姫路貿易(株)の常務取締役の肩書も持っていた。英国大使館への駐在時代にイギリスの車、ロールス・ロイスにほれ込み、日本でもはやらせるべく、帰朝後酒井家が筆頭株主となっていた姫路貿易に取り扱いを開始させたほどだ。酒井伯爵は、商談のため新世界転移の一週間前にロンドンへ渡っていたのだった。

 

「まあ、なんだ。新世界転移後、携帯もつながらなくなってしまって、帰ってこれるわけでもないのに、なかなか諦めがつかなくてな。ズルズルといってしまったが、酒井の親族会も俺に伯爵位を相続しろという形になったし、徳川公爵も前を向けとのお言葉をわざわざ掛けに来られたしな。そういうことで、宗秩寮に襲爵の届出をこれから提出しに行ってくるわけだ。とりあえず、留守を頼みたい。」

 

「それは、なんというか、これから大変ですね。」

 

「ああ、いろいろと手続きもあるし、親授式もあるしなあ。爵服もあつらえないといかん。やることが多くてかなわんよ。」

 

「うちは、代々の平民でよかったと思います。」

 

 心から朝田はそう思った。世間の中には、華族は特権階級だ。一君万民の国体を誇る我が国においてかような存在がいるとはけしからんという者もいるが、華族には華族の面倒がある。平民には平民の気楽さがある。一面だけしか見ていない意見だと思っていた。

 

「ただなあ、朝田君。親父が伯爵議員だったから、一応次の任期までは私が議員を引き継ぐことになったわけだよ。だから、外務省は退官ということになるのでね、あとを君に引継ぎたい。」

 

「私がですか?英国課は代々華族の推定相続人に当たる方が課長になっていたと思うのですが?」

 

「うん。まあ、これまでは、英国駐在の書記官が帰朝して当たってきたわけなんだよ。かくいう私も英国大使館から帰ってきて、課長をやっていたわけなんだよね。他局では、こういう形の人事はあんまりないんだけど、欧州局は、担当がほら君主国だらけでしょ。イギリス、ドイツ国、フランス王国、オーストリア=ハンガリー帝国、イタリア王国、オランダ王国、ベルギー王国、スペイン王国、スカンジナビア王国、ロシア帝国などなど、共和制っていったら、スイスくらいなわけで、そういう関係で華族が人事の要職についてきたわけなんだ。本来なら、イギリス大使館から帰ってきて、跡を継ぐことになったんだけど、そういうことはできなくなった。英国課員には、確かに九條公爵家の推定家督相続人がいるんだけど、まだ海外勤務もしていないから、課長職を継がせるわけにはいかない。跡目は君しかいないんだよ。」

 

 朝田の顔が硬くなる。今まで、欧州局の各課長に華族出身者以外が就任したケースがないわけではない。もちろん、英国課においても同様だ。しかし、これまで、英国課長の職は、三葵会もしくはそれに近い存在が就任していた時期が非常に多い。英国課長と仏国課長は、代々徳川家、あるいは旧譜代大名華族といった華族の牙城といっても過言ではない状況にある。彼ら以外の課長はいわば中継ぎの状態であった。

 

「それはまた、いろいろな方面からの目が厳しそうなのですが・・・」

 

「うん、すまないと思っている。だけど、九條の跡取りのほうは同僚だし、同じく高等試験組だから、あいつのほうはやっかみとかはないと思っているんだけど、後ろがね。本省内部の事情をよく知らない、華族連中、特に公家系がうるさいかもしれない。大名華族は、三葵会からというか上様から話をつけてもらうから心配しないでほしい。本当にすまないと思っている。朝田君には、本当なら次は北米局か国際情報局の課長に推薦しようと思っていたんだけど、事情が許さなくなってしまった。」

 

「いえ、時局厳しい折柄です。先輩の後を受け継いで、なんとか、次につなげたいと思います。」

 

「頼もしい言葉ありがとう。九條は係長にしておく。少しでも君への風当たりが和らぐようにね。」

 

「ご配慮ありがたく思います。」

 

「うん。さて、あと二つ話があってね。まずは今後のうちの課の方針なんだけど、池田欧州局長から内々になんだけど、うちで、パーパルディア皇国扱うこととなった。」

 

 酒井の声が小さくなる。誰もいない喫煙室内でだ。自然と、朝田も声を小さくする。

 

「パーパルディア皇国というと・・・」

 

「うん。部外秘で聞いていると思うけど、相当気難しい国らしい。同じく気位の高い大英帝国を扱っている我々に話が回ってきたのもそういう関係なんだろうね。気位が高いだけなら、米国課でもいいと思うんだけど、あそこは共和制だからね。貴族相手はやはりうちなんだろうね。」

 

「情報の精査はどのように進めればよろしいでしょうか。」

 

「国際情報局の分析第一課員の篠原君ってのを回してくれることとなった。ただし、外交官の身分ではない。外交科試験ではなく、行政科試験で、外務省に入省してきた以上、すこし変わり者ではあると思うのだが、京都帝大文学部卒で心理分析を得意としているらしい。この世界の列強国については、どうあつかってよいのか手探りの状況だ。頼みにしてよいと思う。」

 

「なるほど、後で顔合わせをしておきます。では、もう一つは。」

 

 酒井は顔を崩して、朝田の肩をたたきながら言った。

 

「君の同期からのヘルプだ。南亜課長の田中君。ああ、そういえば、彼も課長補佐から昇進して、クワ・トイネにいったんだったね。彼から大東亜局長に話が行って、こっちに回ってきた。クワ・トイネの視察団長が、軍艦の視察をしたいらしい。近衛師団の閲兵をするからってスケジュールには入れていなかったらしいんだけど、海軍の礼砲を聞いてからというもの、海軍の戦艦を視察したいそうだ。使節団長は、武官からの出向らしいけど、やっぱり戦艦は男のロマンってやつなんだろうね。まあ、そういうことで、力になってやってほしい。台湾でのスケジュールには空きがないらしいから、東京に来た後でだろうね。兵部省に掛け合って、なんとか横須賀鎮守府あたりで戦艦に乗せてやれるように、交渉してやってくれたまえ。」

 

 今日の仕事はこれで終わりと思っていた朝田の顔が硬くなる。

 

「なぜ、その話が私に。」

 

「そりゃあ、同期だからだろうね。大東亜局長の細江さんが、田中君と君のことを覚えていたらしい。まあ、珍しい形で課長補佐から昇進したんだから、田中君の同期ぐらい調べたんだろうね。そしたら、うちに君がいるということを突き止めた。同期は大切にするものだからね。それじゃ、私は宮内省に行くから、あとの留守は頼みます。」

 

 タバコの燃えカスを灰皿に落し、酒井課長は、喫煙室を後にする。ポケットからセブンスターの箱を出し、口に咥えながら、十銭ライターで火をつける。携帯電話を手に取り、同期の田中を呼び出す。

 

「俺だ。話は酒井課長から聞いた。まずは、詳しい話を聞きたい。」

 

 こうして、朝田泰司の本日の残業は確定した。




みんな大好き朝田さんを早くも登場させました。本作の設定においては、貴族の扱いも心得ている(ただし、地球基準)平民という形です。

現代の酒井雅楽頭現る。江戸幕府では大老職も務めたことのある家柄です。脈々と受け継がれた政治家の血が本作では、どう扱われるか。せっかく作ったキャラなので、今後も登場予定です。
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