大日本帝國召喚   作:もなもろ

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ムー国初登場。原作小説を読み返してみると、日本とムー国との距離は21000キロとのこと。ちょっと10月6日の初接触に向けた記事を出すには遅かったので、回想シーンを挟みました。


ムー国首都オタハイト 中央暦1639年9月18日(金) / オタハイト・タイムズ編集会議決定文書

ムー国首都オタハイト 外務省総合外交政策局列強担当課

 ― 外務省総合外交政策局列強担当課長 オーディグス・リュック

 

 書類の決裁を行っていると、課員が私の側に近づいてきた。

 

「課長、駐クイラ大使から定時報告です。日満連合艦隊は、マグドラ群島の沖合を通過。航海は極めて順調なりとのことです。」

「そうか。報告ご苦労。」

 

 課員が下がり、私は一息をいれることとした。先月の今頃、外務省の会議室で行われた会議を思い出す。

 

 ―――――

「続いて、総合外交政策局列強担当課からの提案を審議いたします。リュック課長、趣旨説明をお願いします。」

「はい、今回総合外交局から提案する議題は、最近フィルアデス以東局局内で審議されております、日本国及び満洲国に対する対応についてです。この2か国については、省内でも皆様聞いたことがあると思います。日本国及び満洲国につきましては、フィルアデス大陸近辺で我が国と国交を結んでおります、アルタラス王国及びクイラ王国の我が国の駐箚大使からの、少なくとも列強以上の国力を有しているとの報告が入っております。駐アルタラス大使からは少なくとも我が国と同等かそれ以上の国力という報告、駐クイラ大使からはミリシアル相当の国力と言う、ちょっと信じがたい報告も入っておるようでございます。」

 

 此処まで話したところで、すっと手が挙がった。ふむ、トーマス・ブラッケ外務次官か。

 

「リュック課長の趣旨説明の最中であるが、今のところもう少し詳しく、担当の局長から聞きたい。私も漏れ聞くところについては知っているが、なにせ『正式な』報告はフィルアデス以東局長から上がってきてはいないものでな。」

 

 ブラッケ外務次官は、フィルアデス以東局長のハブロス・ディアゴフとロデニウス島嶼課長のオースミ・シュッレックの座っているほうを見ながら、頬杖をついて話しかけた。すると、二人は同時に席を立ち、外務次官のほうに向きなおり頭を下げた。

 

「申し訳ありません。何分情報の内容が内容ですので、軽々に報告するには及べず・・・」

「いやいや、責めているわけではない。これまで話にも聞いたことのない国がやれ我が国以上だ、やれミリシアルに匹敵するだの聞かれされても、笑い話としか思えないよ。だけどね、噂話程度じゃなくて正式な報告書が挙がっているという話じゃないか。それだけじゃない、駐アルタラス大使からチャーチワーデン外務大臣に直接報告書が挙がったこともあった。課内もしくは局内できちんと彼らの話を聞いていれば、こういう越権行為はなかったと思うんだけど、どうかな。」

「返す返す言葉もありません。」

 

 二人がもう一度頭を下げた。なるほど。省内ではパーパルディア課以外のフィルアデス以東局や南方地域局はどちらかというと本流部署ではない。あからさまに左遷とまではいわないが、実力の低い者や省内派閥争いに敗れた者が派遣される部署だったな。

 

「まあ、それはいい。それで、詳しく話を聞かせてくれるかな。彼らの報告書を踏まえた上でだ。」

「はい。駐アルタラス大使からは、我が国で広まりつつある自動車に講和会議に出席した全権委員が乗っていたという事実や全権委員が飛行機を使用してアルタラスに入国したという事実を以て少なくとも我が国と同等とみており、彼らの使用していた飛行機がミリシアルの保有する天の浮舟に使用されているエンジンに酷似していると言うところから、少なくとも我が国以上の技術力があるのではないかという推測に至っている次第のようです。」

「加えまして、駐クイラ大使からは、日本人や満洲人が使用している機材は我が国の技術力では作ることができない。例えば、日満人の保有する自動車は、我が国の自動車とは比べ物にならないくらい頑丈で、乗車時の揺れも少ない。最高速度も少なくとも車載メーターは時速180キロは出る仕様となっている。航空機の性能もミリシアルが公表している民間航空機の性能と日満両国が公表している航空機の性能とを比較すれば、いずれの数値に於ても日満両国が凌駕している。このような報告が届いております。」

 

 ディアゴフ局長の報告に次いでシュッレック課長が報告を行うと会議室の職員は皆一様に何とも言えないような顔をした。

 

「ありえないよな。」

「そうそう。本省の気を引こうと話を持っているのではないか。」

「幻惑の魔法でもくらったのではないか。」

「長期の左遷で精神が病んだ、そんな可能性もあるのでは?」

 

 いかんな。こういう空気になるからフィルアデス以東局も正式な報告ができなかったというのに。む、外務次官が手を挙げた。

 

「諸君。この報告にいろいろと思うところはあろうがだ。少なくとも二か国に赴任している大使が同様の報告を挙げてきているのだ。自動車なり、飛行機なり、大使のみならず複数人の人間も見ているのだ。少なくとも話半分は真実と考えて対応すべきではないのか。」

 

 ほう。外務次官はなかなか柔軟な思考を持っているのだな。流石は上の席に座る者。それなりの見識はあるとみるべきか。

 

「しかし次官。それでは、いまの今までこのような国が存在していたことをどの国も知らなかったということの説明ができないのではありませんか。まさか我が国の建国神話に伝わるような話、これも噂話で挙がっていますが、それをお信じなさいますか。建国神話はあくまでも神話です。我が国の正式な記録に残されているといいましても、おとぎ話の域を出ないというのが史学会の定説ですよ。」

「まあ、そのあたりはだ。私としても報告を全て信用できるという話まではしとらんよ。ただ、現地で我が国の大使やそれ以外の職員も見たとこういっとるんだ。それも複数の報告が挙がっている。彼らが100%嘘を言っているとミリシエント局長が断言する根拠はあるかね。」

「まあ、それは、流石に私も100%嘘だというだけの根拠があるとは言いませんが。何分にもこの報告、突拍子過ぎます。」

 

 さもありなん。結局はそこに尽きる。人は自分の目で見ない限り、常識に違うものは信じないものだ。私はすっと手を挙げて発言を求めた。

 

「会議列席者の皆様の懸念するところについては私から提案があります。これこそが私が会議に提出したい議題なのですが、日本国及び満洲国の特使をこちらに派遣してもらいましょう。駐クイラ大使などの報告書によれば、彼らの国の航空機の航続距離は余裕で我が国に到達できる能力があります。その航空機を実際に見ることができれば、皆様の疑念も氷解することでしょう。」

「あっ、そのことなのですが。」

 

 私の発言を遮ってシュッレック課長が発言を求めた。

 

「実は駐クイラ大使から新たな報告がございました。駐クイラの日本公使館の駐在海軍武官からの提案として、日本国の外交特使を軍艦を用いて、そちらに派遣したいという申し出があったそうです。フィルアデス大陸からムー大陸に至る船舶航路の調査も兼ねて測量艦の派遣とそれに随伴する護衛の艦艇に外交特使を乗せたうえで訪問させてもらいたいと申しております。」

 

 むう。私の発言を遮ってそのような提案を。そのような提案が持ち込まれていたのならば、早く報告しないか。

 

「だ、そうだが、リュック課長、向こうは航空機ではなく海軍の艦艇となるようだが、君の提案に支障はないかね。」

「問題はありません。というより、特使を派遣させること、これが重要なのです。」

 

 皆どういうことだという顔をしている。ふむ。やはり説明が必要か。

 

「日本国及び満洲国の技術力や国力はこの際置いておきましょう。重要なことは彼らが単独で我が国迄足を運ぶ能力があるという証明なのです。ご承知のように、フィルアデス大陸の国で我が国に自力でやってこれる国はパーパルディア皇国のみです。それ以外の国は、皆パーパルディア皇国の力を借りてやってきています。つまり、彼らが自力で我が国迄やってこれるというならば、それは少なくとも列強国であるパーパルディア皇国と同様の能力を持っているということの証左になるのです。」

 

 皆が、あっという顔をした。ここまで説明すればあとは分かるだろう。

 

「あとは、パーパルディア皇国が用いている手段と比較すればよいのです。航空機でやってくるというのであれば、現在パーパルディア皇国に旅客機を開発したという話は聞きませんので、少なくともパーパルディア皇国以上の技術力を有していることになります。軍艦でやってくるというのであれば、その軍艦を見せてもらえばよいだけです。報告によれば、日満両国は魔法文明国ではなく科学文明国ということですので、我が国の技師が見ることができれば、我が国との技術力の差についても理解できるでしょう。」

「ちょっと待ちたまえ。」

 

 外務次官が話に割り込んできた。はて、どうしたというのだろうか。

 

「技術力の確認ということであれば、こちらから日本国や満洲国に人を送る方が早くないかね。船で来るということになれば、飛行機よりもだいぶ遅いだろう。旅客機のラ・カオスに乗せて向かわせれば、もっと早く確認ができる。真偽不明の情報にいちいち振り回されている状況はよろしくない。早急に結論を出すために科学者や技師を派遣すべきだろうと思うが。」

 

 なるほど。外務次官としては、このような噂話で省内が振り回されている状況を嫌がっているということか。だが、今回の話の要点はそこではない。

 

「なるほど。次官の御懸念はごもっともかと思います。しかし、今回の日本国と満洲国は、未だ世界各国に認知されていない国です。そのような国に対して我々が向かうというのは、列強国としての対面上よろしくありません。幸いにして向こうから我が国に来ると言ってきております。我等の国力がどの程度か、その真偽は定かではありませんが、少なくとも今現在は格の無い国なのです。列強たるムー国に足を運ばせる。外交の世界ではどうしても格の違いというのが大きなウェイトを占めます。そのあたりのことを御賢察願えますれば幸いです。」

 

 幹部職員がうなる。

 

「うーむ。なるほどな。どうでもよいこととは言っておられんな確かに。わかった。リュック課長のいうとおり、向こうから来てもらうとしよう。シュッレック課長、駐クイラ大使に連絡して日本国外交特使の我が国への訪問を許可する、いやこの際だ、歓迎すると伝えてくれ。」

「了解しました。」

 

 ふむ。外務次官は相当気を使っていると見えるな。

 

 ―――――

 そろそろ、軍の技術士官のほうにも話を通しておくべきだな。名前は何と言ったかな。ああ、マイラスだ。マイラスだったな。彼に日本国の外交特使の乗ってきた軍艦などから日本国の文明度合いについて確認してもらうように段取りをしておかないとな。

 

 

―――――

オタハイト・タイムズ編集会議紙面内容決定文書

 編集局長 アンソニー・ブラッケ

 

毎月第四金曜日の世界の外交特集(9月)

 第三文明圏外のアルタラス王国に於て行われた講和会議について特集を組むことで編集会議は決定した。

 ロデニウス大陸における戦争は、下馬評を覆してクワ・トイネ及びクイラが勝利。

 勝利の立役者は同じく第三文明圏外国家の日本国及び満洲国。

 この二国についても同じく特集。但し、日本国と満洲国の技術水準については、裏が取れていないので扱わない。

 講和会議の議事録からポイントを絞って解説。

 穏当に過ぎる講和条約であることを強調。

 講和条約調印式典の様子についても記事にする。

 アルタラスの強気の外交についても記載。王女の演説原稿が手に入っているということは、アルタラスの外交姿勢に変化有り。(普通に考えたらこのような内容の演説原稿は手に入らないということを解説する必要がある。)

 目玉の写真はやはり王女の写真だろう。(特派員から送られてきたのはきわめて鮮明な写真だ。カラー印刷を使いたいが、印刷工場と調整が必要だ。)

 第三文明圏外で外交上の変化が起こっている。今面白い、今アツイのはこの地域だ。←これをキャッチコピーにする。

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