大日本帝國召喚   作:もなもろ

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大礼服とかいいですよね。ロマンを感じます。


国務院・幕僚総監部連名発信文書 / フェン王国首都アマノキ郊外パーパルディア大使館 中央歴1639年9月24日(木)

興信27國務緊急第236號

興信27年9月24日

 

フェン王国駐箚特命全権公使

第七師団長

戦隊司令官

 

 

国務院外交部大臣   森山直次

幕僚総監元帥陸軍上将 馬泉山

統帥本部総長陸軍上将 周有礼

 

フェン王国軍祭出席者及び派遣部隊員の服装に関する件

 

標記の件、国務院及び幕僚総監部に於て緊急会合を開き、下記の如く決したので、緊急ではあるが遺漏なく実施すべく命令する。

 

 

 興信27年9月25日開催のフェン王国主催の軍事演習の開会式典に、フェン王国ショーンレミールに駐屯するパーパルディア皇国軍司令官マクシミリアン・ヨーゼフ・ポクトアール閣下が観戦武官として出席されることが急遽決定した。

 国務院及び幕僚総監部は、パーパルディア皇国がこの世界に於て列強国であるとされていることに鑑み、最大限の敬意を払うべく、軍祭参加者の服制を指示する。

 

公使館関係者

 特命全権公使以下高等官

  文官大礼服

 判任官

  文官礼服

 服制無き者

  国際儀礼上非礼の無い服装

  勲章褒章ある者は着用すべきこと

陸軍武官

 第七師団長以下司令部要員

  陸軍武官服制に基づく礼装

  但し下士官兵は通常服可(式典中は勲章褒章ある者は着用すべきこと)

 派遣部隊長以下部隊員

  陸軍武官服制に基づく戦闘服

  但し部隊長以下士官は式典中は可能な限り正装を着用すべく務められたい

海軍武官

 戦隊司令官以下司令部要員

  海軍武官服制に基づく礼装

  但し下士官兵は通常服にて可(式典中は勲章褒章ある者は着用すべきこと)

 派遣軍艦艦長

  海軍武官服制に基づく礼装

  但し式典終了後は通常服

 派遣軍艦艦橋要員及び各部門長

  海軍武官服制に基づく礼装

 派遣軍艦乗員

  海軍武官服制に基づく戦闘服

  勲章褒章は着用する必要なし

 

 上記、緊急の指示であるが、礼装の準備無き者は至急家族等に連絡すること。政府及び軍の公用便にてフェン王国に向けて緊急輸送実施すべく、家族等は国務院及び幕僚総監部に連絡すべきこと。

 

以上

 

 

―――――

―――――

フェン王国首都アマノキ郊外パーパルディア大使館 フェン政府指導課

 ― パーパルディア皇国大使館書記官 ベルント・ツー・ハイムゼート

 

「なんだこれは!!」

 

 魔信官が持ってきた本国第三外務局カイオス局長からの通達文書には、ありえないことが書かれてあった。

 

「魔信官!!これは何の冗談だ!!」

「ヒッ!」

 

 皇国騎士身分の魔信官を睨みつけ、文書の内容を問い質す。

 

「この命令は偽物だ。」

「そ、そうはおっしゃいましても、魔信は第三外務局公用暗号で送信されてきたものでありますし、私はただ、それを暗号解読表のとおりに解読した迄でありまして・・・」

「そんなことを聞いているのではない!!内容に疑義があると問うているのだ!!」

「私如き下僚が外務局長からの通達に対して内容をどうこう言うなど・・・」

 

 なんという愚か者だ。このような内容を認めるというのか。栄えあるパーパルディア人としての自覚がないのか。度し難いこの男を睨みつけていると、同輩の書記官が入ってきた。

 

「ハイムゼート、カイオス局長からの通達は読んだか!?」

「ああ、今しがた聞いた。全く許しがたい暴挙ではないか。」

「ポクトアール提督が土人共の軍事演習に観戦武官として参加されるなどと・・・。カイオス局長は皇国の名誉を何と心得ているのか。」

 

 同僚たちもまた憤慨している。そう、そうだ。この想いこそが、皇国人、皇国貴族としてあるべき想いなのだ。

 カイオス局長の通達には、ポクトアール提督が明日25日にフェン王国で行われる軍祭と呼ばれる軍事演習の開会式に観戦武官として出席すること、ポクトアール提督は監察軍所属であるが、今回は武官としての身分で出席するということ、外務局はこの件に関しては関わらないこと、大使館もまた外交官の身分であり、軍祭という軍事演習には出席しないこと、以上のことは昨23日の帝前会議で皇帝陛下の御裁可を得たことが記されていた。つまるところ、この件については、我々に一切口を出すなということだ。

 

「誠に以て許しがたい話ではないか。そもそも、外交の素人たる武官のみで他国の武官や外交官の前に出すなど、カイオス局長は自身が外交官であるにも関わらず、我々現場の外交官を軽んじておるのではないか。」

「いや待て、カイオス局長は、と言うより、カイオス子爵と言うべきではないか。子爵は皇帝陛下の覚えは目出たいが、我等のように有力門閥貴族の寄子となっているわけではない。つまり、子爵は我等門閥貴族の力を削ごうとして、我等を外交の現場から除け者扱いしようとしているのではあるまいか?」

 

 うーむ。そうだ。まさしくそうであるに違いない。

 

「許せぬ!!貴族間の影響力争いは国内の問題だ。それを、外交上の問題に絡めようとするなど、カイオス局長は公私混同の行いをしているのではないか。断固として、跳ねのけねばならぬ!!」

 

 私がそう宣言すると、同輩たちも、そうだ、お主の言う通りだと賛同してくれた。うむ。外交の正常化こそは、我等が動かねばならぬ問題だ。

 そうと決まれば何をなすべきか。うむ。ただ、反対を唱えるだけではだめだな。有力者からの口添えが必要だ。・・・・。そうだ。

 

「第三外務局の監察官殿にカイオス局長の外務局の壟断を糺してもらうべく上申しよう。」

「おお、ハイムゼートの案や良し。そうと決まれば、副使閣下から上申書を挙げてもらおうではないか。」

 

 我々は同志諸君と連れ立って、指導課の部屋から出てゆき、副使執務室へと向かっていった。

 

 ―――――

「失礼します!!」

 

 我々はどかどかと足音を鳴らしながら、副使閣下の執務室に入っていく。副使閣下は書類を眺めていたが、我々が入ってくるや書類を手元に置き、我々に向き直る。

 

「閣下に、皇国の尊厳を保持し、皇威の拡大を至上とする、我ら外交官の使命を聞いていただきたく参上いたしました。」

「何事か、というのも無粋な話だな。諸君らの気持ち、私はよーくわかっとる。」

「では、閣下。早速、第三外務局監察官閣下を通して、カイオス局長の弾劾をお願いしたいと思います。カイオス局長が外務局長の身に在りながら皇国の権威を損なう行動をとっております。これを是正できるのは、閣下において他におりません。」

 

 私がそういうと副使閣下はまあこれを読めと言い、書類を差し出してきた。私がそれを受け取り、同僚たちも読めるように広げると、またしても驚愕の事実が書かれてあった。

 その書類の発信者は第三外務局監察官、それもブラウンシュバイク派とリッテンハイム派に属する貴族の連名で書かれていた。我がフェン大使館職員全員に宛てた指導文書であり、カイオス局長の通達を遵守するようにと言う内容であった。

 私はあまりの内容に悲鳴のような声を挙げた。

 

「閣下!!」

「カイオス局長は周到であったな。先回りして、監察官から我々への指導を行ってきた。これでは、私も動くことはできんよ。」

 

 副使閣下は真剣な表情で我々に話しかけてきた。

 

「諸君も悔しかろうがその思いは私も同じなのだ。カイオス局長は皇帝陛下への覚えめでたい人物だ。まさしく外交政策を壟断する、君側の奸の最たる者だよ。だが、我々の想いは皇帝陛下に届く位置にはない。」

「閣下はそれでよいと言われるのですか。」

「よくはない。よくはないがだ、今回は涙を呑んで事態の推移を見守るしかない。」

 

 意気消沈。頼みの副使閣下が抗戦を諦めている。それに、いかな我々でも、派閥の幹部たる貴族が就任している監察官の命令を無視するわけにはいかぬ。

 

「悔しいです。監察官までもカイオス局長の軍門に下っていたとは。これでは、我等伝統あるパーパルディア貴族の存立にも関わります。」

「うむ。私とて、ブラウンシュバイク公へ恭順している貴族だ。諸君らの想いはよくわかっている。ここは堪忍だ。そして、我等の手で皇威を拡大し、本国の連中も無視できぬ大功を挙げて、発言権を強化していかねばならぬ。よいか諸君。我慢だ。男は時に我慢をしなければならぬ時がある。今がその時だ。高く飛ぶためには、一度しゃがまねばならぬ時がある。今がその時だ。」

 

 副使閣下が我等を見渡し、同意を求めてくる。悔しい。悔しいが、ここは引くべき時なのだろう。

 

「わかりました。副使閣下のお言葉の通り、我等は一度足場を固めましょう。」

「そうか。分かってくれたか。うむ。それでよい。今は我慢の時だ。」

「はい、これにて失礼いたします。」

 

 副使執務室から出て、廊下を歩いていく。ここは一度引く。だが、君側の奸たるカイオス局長はいつか失脚させてやる。私は其の誓いを胸に刻んで、指導課へ戻るため廊下を歩いていくのだった。

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