艦隊平時編制(昭和四十六年軍令海第二十三號)
艦隊平時編制別表ノ通改定シ昭和四十六年四月一日ヨリ之ヲ施行セシメラル
昭和四十六年三月二十日
兵部大臣 退役陸軍少将 大和田卓
軍令部総長 海軍大将 佐川忠文
(別表)
艦隊平時編制
聯合艦隊
第一艦隊
:行動区域 本邦、南洋群島連邦及特ニ令セラレタル海面
:指揮官(司令長官一、司令官七)
第一戦隊 戦艦一隻、駆逐隊一隊
第六戦隊 一等巡洋艦二隻
第十一戦隊 巡洋艦二隻
第一航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第六航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第一水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊二隊
第一潜水戦隊 潜水母艦一隻、潜水隊三隊
第二艦隊
:行動区域 本邦、東亜露領沿海、南洋群島連邦及特ニ令セラレタル海面
:指揮官(司令長官一、司令官八)
第二戦隊 戦艦一隻、駆逐隊一隊
第七戦隊 一等巡洋艦二隻
第十二戦隊 巡洋艦二隻
第二航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第二水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊二隊
第六水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊二隊
第二潜水戦隊 潜水母艦一隻、潜水隊三隊
第六潜水戦隊 潜水母艦又は巡洋艦一隻、潜水隊三隊
第三艦隊
:行動区域 本邦、東亜露領沿海及特ニ令セラレタル海面
:指揮官(司令長官一、司令官七)
第三戦隊 戦艦一隻、駆逐隊一隊
第八戦隊 一等巡洋艦二隻
第十三戦隊 巡洋艦二隻
第三航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第三水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊三隊
第三潜水戦隊 潜水母艦一隻、潜水隊三隊
第七潜水戦隊 潜水母艦又は巡洋艦一隻、潜水隊三隊
第四艦隊
:行動区域 本邦、満洲帝國、中華民国領沿海及特ニ令セラレタル海面
:指揮官(司令長官一、司令官七)
第四戦隊 戦艦一隻、駆逐隊一隊
第九戦隊 一等巡洋艦二隻
第四航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第七航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第四水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊二隊
第七水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊二隊
第四潜水戦隊 潜水母艦一隻、潜水隊三隊
第五艦隊
:行動区域 本邦、南亜沿海、中華民国領沿海及特ニ令セラレタル海面
:指揮官(司令長官一、司令官八)
第五戦隊 戦艦一隻、駆逐隊一隊
第十戦隊 一等巡洋艦二隻
第五航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第八航空戦隊 航空母艦一隻、駆逐隊一隊
第五水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊三隊
第八水雷戦隊 巡洋艦一隻、駆逐隊三隊
第五潜水戦隊 潜水母艦一隻、潜水隊三隊
第八潜水戦隊 潜水母艦又は巡洋艦一隻、潜水隊三隊
一 状況ニ依リ戦隊ノ一部ヲ置カズ又必要ニ応ジ艦隊ニ本表以外ノ戦隊ヲ置ク
二 必要ニ応ジ艦隊、戦隊ニ本表以外別ニ駆逐隊、潜水隊、水雷隊、掃海隊等ヲ編入ス
三 必要ニ応ジ艦隊ニ本表以外別ニ艦船又ハ部隊ヲ附置ス
四 必要ニ応ジ戦隊ノ番号、艦種、隻数又ハ隊数ヲ変更ス
五 艦隊司令長官直率ノ戦隊ニハ時宜ニ依リ戦隊司令官ヲ置カズ
六 第一、第二予備艦ヲ艦隊ニ編入シタルトキハ之ヲ在役艦ト看做ス
―――――
予備艦船規則(明治三十三年内令第百二十七號)
予備艦艇規則左ノ通定メラル
(※大正五年内令百二十號にて題名を予備艦船規則と改む。)
予備艦船規則
第一條 豫備艦船ハ艦船ノ種別ニ應シ豫備艦、豫備驅逐艦、豫備潜水艦等ト稱ス
第二條 豫備艦ハ特別ノ必要アル場合ノ外本籍鎭守府ノ所屬トシ其ノ軍港又は要港ニ置クヲ例トス
第三條 豫備艦ハ艦ノ状態及使用目的ニ應シ之ヲ左ノ五種ニ區別ス
一 第一豫備艦 船體、機關、艤裝及兵裝概ネ完備シ必要ニ際シ直ニ就役セシムヘキモノヲ以テ之ニ充ツルヲ例トス
二 第二豫備艦 船體、機關、艤裝又ハ兵裝ノ小修理、小改造若ハ檢査ヲ必要トスルモノ又ハ船體等完備スルモ急速就役ノ必要少キモノヲ以テ之ニ充ツルヲ例トス
三 第三豫備艦 船體、機關、艤裝又ハ兵裝ノ大修理、大改造、總檢査等ヲ必要トスルモノヲ以テ之ニ充ツルヲ例トス
四 第四豫備艦 船體等ノ現状如何ニ關セス當分就役ノ目途ナキモノヲ以テ之ニ充ツルヲ例トス
五 特別豫備艦 船體等ノ現状如何ニ關セス外國ニ於テ取得シタル日ヨリ本邦指定ノ地ニ囘航シ後令ヲ受クルニ至ル間ノモノヲ謂フ
第四條 第一豫備艦ニ在テハ在役艦ト略ホ同一ニ物件ヲ充實シ火工品(炸薬、弾丸、特種彈ヲ除ク)其ノ他危險物及自然ニ變質又ハ損傷シ易キモノハ鎮守府司令長官ノ許可ヲ得テ適宜陸揚シ便宜ノ倉庫ニ收ムヘシ
第五條 第二豫備艦ニ在テハ火工品(炸薬、弾丸、特種彈ヲ除ク)其ノ他危險物及自然ニ變質又ハ損傷シ易キ物件ハ之ヲ陸揚スルヲ例トシ其ノ他ノ物件ハ修理改造檢査ノ程度若ハ場合ノ緩急ニ應シ鎭守府司令長官ノ許可ヲ得テ陸揚シ便宜ノ倉庫ニ收ムヘシ
第六條 第三豫備艦ニ在リテハ火工品其ノ他危險物及自然ニ變質又ハ損傷シ易キ物件ハ之ヲ還納シ其ノ他ノ物件ハ修理改造檢査ノ程度、乘員ノ數等ニ應シ艦ノ保安教育訓練等ニ必要ナルモノ又ハ保管上殘置ヲ便利ト認ムルモノヲ除クノ外物件ニ應シ便宜ノ倉庫ニ之ヲ收藏シ又ハ各供給廳ニ還納スヘシ
第六條ノ二 第四豫備艦ニ在リテハ火工品其ノ他危險物及自然ニ變質又ハ損傷シ易キ物件ハ之ヲ還納シ其ノ他ノ物件ハ艦ノ保安保存ニ必要ナルモノ又ハ保管上殘置ヲ便利ト認ムルモノヲ除クノ外物件ニ應シテ便宜ノ倉庫ニ之ヲ收藏シ又ハ各供給廳ニ還納スヘシ
第六條ノ三 第三豫備艦第四豫備艦前二條ノ處理ヲ爲シタルトキハ陸上ニ收藏シタル物件ト艦内ニ殘置シタル物件トヲ明瞭ニ區別シ其ノ品目表ヲ調製シ當該艦及保管廳ニ各一冊ヲ備フヘシ
第七條 豫備艦ヨリ陸揚スル物件(供給聽ニ還納スル物件ヲ除ク)ニハ其ノ大小ヲ問ハス悉ク艦名ヲ附スヘシ又倉庫ニ收藏スル物件ニシテ便宜ノ爲箱中ニ合納スルモノニハ其ノ箱上ニ品名員數及艦名ヲ記スヘシ
第八條 兵部大臣ハ特別豫備艦ニ搭載スヘキ物件ヲ臨時指定スルコトヲ得
第九條 第一豫備艦ノ巡航日數ハ大演習及小演習ニ從事スル日數ヲ除キ航海及碇泊ヲ合シ毎一箇月ニ十五日ノ割トシ三十日ヲ超過セサル限リ連續出動スルコトヲ得但シ必要アルトキハ兵部大臣之ヲ變更スルコトヲ得
第十條 第一豫備艦ハ在役艦ニ準シ規定ノ艦砲射撃、魚雷發射教練諸演習ヲ施行スヘシ但シ已ムヲ得サル事情アルトキニ限リ鎭守府司令長官ノ許可ヲ受ケ其ノ一部ヲ行ハサルコトヲ得
第十一條 第二、第三及特別豫備艦ハ艦ノ現状ノ許ス限リ相當ノ教育訓練ヲ行フヘシ
第二、第三豫備艦ハ必要ニ應シ兵部大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ出動セシムルコトヲ得
第十二條 第一、第二、第三豫備艦及第四豫備艦ノ指定ハ兵部大臣之ヲ行フ
第十三條 豫備驅逐艦、豫備潜水艦、豫備掃海艇及豫備特務艦ニ關シテハ豫備艦ニ關スル前諸條ノ規定ヲ準用ス
―――――
―――――
大日本帝国東京都千代田区 軍令部庁舎 軍令部総長室
― 軍令部第一部長 海軍少将 汪淳子
「それで、渡良瀬君。ムーの軍人は何と言っていたと?」
「はい、通達の際に同席した前田艦長の話では困惑した表情だったとか。潜水艦とはどういう艦種なのかという質問があったそうです。やはり、ムー海軍には、潜水艦と言う艦種は存在しないようです。」
「ふむ。駐クイラ大使の話は本当ということだな。」
上司である柳沢総長が、コーヒーを飲みながら相槌を打つ。
東京霞が関にある軍令部は帝國海軍の中枢だ。そのトップである軍令部総長の部屋に作戦を担当する第一部長である私と軍備を担当する堺利恒第二部長、情報を担当する渡良瀬亘雄第三部長が集合して、会議を行っている。
「潜水艦に対する備えがないということであれば、本邦とムーを繋ぐ航路の安全はやはり気がかりです。そうではありませんか、汪部長。」
「まあ、そうですね。どこの潜水艦だかはまだ調査中ですが、敵か味方かもわからない潜水艦がいるというのは商船にとっては脅威となり得ますね。」
堺部長の指摘に私は同意した。ムー派遣艦隊からの第一報によれば、未確認の潜水艦は我が軍にとっては脅威とはなりえない。静粛性能はお粗末の一言に尽き、6,70年前の潜水艦と同程度の性能ということだ。
ムー派遣艦隊の編成は第一部と第二部で共同して立案し、第二部が主となって満洲国側と調整をした。派遣艦隊の編成は水上艦を以て編成したが、第一部は内密に満洲国海軍本部の第一部と連絡を取り、潜水艦を派遣した。書類上は第二予備艦となっている艦を3隻、我が軍から2隻、満洲海軍から1隻を訓練目的で派遣した。いずれも長期航海の可能な原子力艦だ。当初の予定では、この一隻を「正体不明の潜水艦」とする予定であったが、おあつらえ向きに本物の正体不明の潜水艦が現れたことは我々にとって好都合だった。
「ムー大陸に関しての情報が不足していますね。そういう観点からしてもムーに駐屯部隊を置くというのは情報部としてもやはり必要かとも思いますね。総長の説得如何になると思いますが・・・。」
「まあ私の説得では、山上首相は首を縦に振らないと思うけどね。」
我が海軍は、政府とは冷却関係にある。海軍の積極的な姿勢は、内閣の方針とは相いれないところが多い。勿論海軍内部でも実は大小の争いがある。柳沢総長を筆頭とする米国留学派遣組が海軍では幅を利かせているが、伝統的に海軍は欧州留学派遣組が主であり、いまでもそれは変わりない。
それを緩やかな紐帯に留めているのが、柳沢総長の軍備拡大策だ。軍備拡大と言っても、軍艦の建造数を増やすということではない。将校の配属ポストを増やすということを目的としている。
「ムーに駐屯軍を置くことができれば、それだけでも在役艦を増やすことができます。クワ・トイネやクイラでは本邦と距離が近すぎる為、それができません。本邦から急速に展開すればよいだけですし、あるいは陸空軍の派遣でもことたります。しかし、ムー国となれば、これは陸空軍だけでは対処しきれません。必ず海軍の支援が必要です。」
「そうですね。予備艦の現役復帰が必要です。」
帝國海軍の平時編制は、艦船の隻数だけ見れば、戦艦5隻、航空母艦8隻と巡洋艦駆逐艦を合わせて150隻と世界三大海軍たる大日本帝国海軍を維持していると言える。だが、在役艦と言う現役の艦の数は少ない。戦艦は第五艦隊の常陸のみが現役であり、紀伊と駿河は第一予備艦、尾張が第二予備艦、大和が第三予備艦となっている。予備艦は兵員を縮小したり、あるいは艦長以下幹部を他の艦と兼務させるなどして、定員を圧縮している。
柳沢総長の目指す軍備拡張は、この予備艦を現役に復帰させたり、下の階級の予備艦を上の階級の予備艦に変更するなどして、将校ポストを増やすことを主眼としている。
「使節団に参加している三菱の人間からの話では、ムー国は市場として魅力的と言う話が来ている。となれば、国交樹立貿易の充実は望むところ、商船の行き来は確実にあるものといえるだろう。だが、航路が不安というのではな。」
「ええ、通商路の安全確保は海軍の主任務です。作戦部としても航路の安全確保のための作戦立案はお任せいただきたい。」
「そのためには、充実した軍備が必要ですな。軍備担当としても、財界とも連携を取り、大蔵省との折衝の準備を進めたいと思います。」
「ムー国内での潜水艦の脅威に対する情報普及に関しては情報部で対応したいと思います。既にムー財界と経団連の人間は接触して懇談を重ねているそうです。航路に不安があるので貿易が振るわないというのであれば、ムーの財界もムー政府をつつく必要があるでしょう。」
「うむ。だが、ことは慎重にな。山上さんをあまり刺激したくはないからな。」
「はい。」
これでいい。これで、柳沢総長の基盤は安定する。次期大本営副総監ポストもみえてくる。