大日本帝國召喚   作:もなもろ

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クイラ王国では地方議会が発足しました。現実世界では、地方自治は「民主主義の学校」と呼ばれています。拙作作内でいえば、「民本主義の学校」になりますね。


バッスラー特別行政区区議会構成法 / クイラ王国首都バルラート 諸侯会議 中央暦1639年10月13日(月)

バッスラー特別行政区区議会構成法(中央歴1639年10月15日法律第54号)

 

 クイラ王国と大日本帝国及満洲帝國とが国交を開設して半年が経過した。この間我が国は、両国の文明的な数々の政策、文化、社会制度を進取し、王国は著しい発展を遂げてきたことは臣民一同も理解するところである。我が国が更なる文明化を進めるに当り、文明圏諸国で取り入れられている議会政治制度を開設する。しかしながら、このような政治手法は我が国初の試みであることから、制度の運用方法を試行錯誤する必要がある。よって、バッスラー特別行政区に議会を設けて、議会政治の運用を王国全土に広める為の考究を行うものである。クイラ国王アンクワール・ナースィル・アル=クイラは、内閣総理大臣に諸侯会議の協賛を経たる此の法律の公布及施行を行うよう命令す。

 

 御名御璽

 

  中央歴1639年10月14日

 

    内閣総理大臣 アスアド・フラート・アル=バータジー

    内務大臣   ハムダーン・フワイリド・アル=ハーンジー

 

法律第54号

 

バッスラー特別行政区区議会構成法

 

第1條 バッスラー特別行政区に住民の代表たる議会を設置す。

 

第2條 区議会は其の被選挙権ある者に就き選挙人之を選挙す。

 

2 区議会議員の定数は15人とし左の区分に依り選挙す。

  第1号区分 11人

  第2号区分 4人

 

第3絛 第1号区分たる議員を選挙する選挙人は左の資格を有する者とす。

  1 クイラ王国臣民にして独立の生計を営む年齢25歳以上の男子

  2 2年以上バッスラー特別行政区に相当する区域の住民たる者

  3 直接国税年額100デリア以上を納むる者

 

2 バッスラー特別行政区は前項2年の制限を特免することを得。

 

第4絛 第2号区分たる議員を選挙する選挙人は左の資格を有する者とす。

  1 大日本帝国国籍若しくは同特別国籍又は満洲帝国国籍若しくは同特別国籍を有する20歳以上の者

  2 3月以上バッスラー特別行政区の住民たる者

  3 バッスラー特別区民税を250デリア以上納むる者

 

2 バッスラー特別行政区は前項3月の制限を特免することを得。

 

第5絛 前2条に掲ぐる資格を有する者は被選挙権を有す。

 

2 前項に掲ぐる資格を有すると雖も左に掲ぐる者は其の資格を停止す。

  1 バッスラー特別行政区役所及之に類する公的施設職員たる者

  2 長崎控訴院マイハーク分院検事又は大連高等検察庁マイハーク分院検察官

  3 大日本帝国陸海軍又は満洲帝国陸海空軍の軍籍にある者

  4 神官神職僧侶其の他諸宗教師

 

第6条 区議会議員は名誉職とす。但し日当、旅費其の他の議員活動費を受くることを妨げず。

 

2 議員の任期は四年とし総選挙の第一日より之を起算す。

 

第7絛 選挙に関する施行細則に附ては別に之を定む。

 

第8絛 区議会はバッスラー特別行政区に関する事件及法令に依り其の権限に属する事件を議決す。

 

第9絛 区議会の議決すべき事件の概目左の如し。

  1 区條例及区規則を設け又は改廃する事

  2 区費を以て支弁すべき事業に関する事

  3 歳入歳出予算を定むる事

  4 決算報告を認定する事

  5 特別区の事業に関する使用料、手数料、加入金、区税又は夫役現品の賦課徴収に関する事

  6 区有の不動産の管理処分及取得に関する事

  7 基本財産及積立金穀等の設置管理及処分に関する事

  8 財産及営造物の管理方法を定むる事

  9 区に係る訴願訴訟及和解に関する事

 

第10絛 区議会はバッスラー特別行政区共同統治委員会議長之を召集す。議員定数三分の一以上の請求あるときはバッスラー特別行政区共同統治委員会議長は之を招集すべし。

 

2 バッスラー特別行政区共同統治委員会議長は必要ある場合に於ては会期を定めて区議会を招集することを得。

 

3 招集及会議の事件は開会の日より少くとも三日前に之を告示すべし。但し急施を要する場合は比の限に在らず。

 

4 区議会はバッスラー特別行政区共同統治委員会議長之を開閉す。

 

第11條 区議会は議員中より議長及副議長各一名を選挙すべし。

 

2 議長及副議長の任期は議員の任期に依る。

 

第12條 区議会は議員定数の半数以上出席するに非ざれば会議を開くことを得ず。

 

第13條 区議会の議決は過牛数を以て決す。可否同数なるときは議長の決する所に依る。

 

第14條 区議会の会議は公開す。但し左の場合は比の限に在らず。

  1 バッスラー特別行政区共同統治委員会議長より傍聴禁止の要求を受けたるとき

  2 議長又は議員3人以上の発議に依り傍聴禁止を可決したるとき

 

第15條 議長は会議を総理し、会議の順序を定め、其の日の会議を開閉し、議場の秩序を保持す。

 

2 議長前項の職権を行使すること能わざるときは副議長之を行使す。

 

第16絛 区議会に書記を置き、議長に隷属して庶務を処理せしむ。

 

2 書記は議長之を任免す。

 

第17條 議長は書記をして会議録を調製し会議の顛末及出席議員の氏名を記録せしむべし。

 

 会議録は議長及議員2人以上之に署名することを要す。其の議員は区議会に於て之を定むへし。

 

 議長は会議録を添へ会議の結果をバッスラー特別行政区共同統治委員会議長に報告すべし。

 

第18條 区議会は会議規則及傍聴人取締規則を設くべし。

 

2 会議規則には本法及会議規則に違反したる議員に対し、区議会の議決に依り3日以内出席を停止し又は10デリア以下の過怠金を科する規定を設くることを得。

 

第19條 本法の改正は区議会の議決を徴して諸侯会議之を行ふ。

 

第20條 本法の施行は中央歴1639年11月1日とし、同日区議会議員の総選挙を実施す。

 

 

―――――

クイラ王国首都バルラート タタラ宮殿東の間 諸侯会議議場

 ― 内務大臣   ハムダーン・フワイリド・アル=ハーンジー伯爵

 

 クイラの明日を約束すると言っていいだろう法案の審議が最終討論を迎えた。その議題はバッスラー特別行政区の議会設置法案。

 諸侯会議は、王室の離宮の一つであるタタラ宮殿東の間を利用して開かれている。西の間と対を為す大広間であり、西の間が晩餐会を開くためのものであるのに対して、東の間は午餐会を開く部屋である。晩餐会は王族が国内外から多くの貴族や平民の富裕層を招いて行われるため、広い部屋となっている。午餐会は国内主要貴族や国外の大使に対して国王が開くものとなっている。そのため、東の間のほうが幾分狭い印象を受けるが、東の間には玉座が置かれており、上質な絵画が飾られるなど格式は高い部屋である。

 諸侯会議の構成員は、国内の独立の爵位を持つ男爵以上の貴族である。但し、ロウリアに対する国境守護を担っているベルディート辺境伯、その南部に位置し、ムー国に対する石油の販売を担っていた港町ジワーグラッサを有し、跡目を息子に譲り、前辺境伯が文部大臣を務めているルンドブラード辺境伯などの一部の貴族には代理人を派遣することを認めている。人数構成は王家に連なる公爵6人、侯爵4人、辺境伯(代理含む)4人、伯爵11人、子爵21人、男爵35人。

 

 バッスラー特別行政区は、元は王室の御料地とバルキニー子爵領の港町であった部分が合併して設置された行政区である。この設置は勅令によってなされた。即ち、国王陛下の命令である。面積としては、王室の御料地部分が大きいが住民は港町部分に多く居住していた。バルキニー子爵領に居住していた住民はバルキニー子爵領民たる地位を保持したまま特別行政区民たる地位を得ている。地方の貴族領民たりながら国王陛下の直轄民であるという聊か複雑な統治体型を有する。

 

「然るに、この法案の議員定数は15人のうちの3分の1の5人を日本人や満洲人の議席に割り当てている。3分の1ですぞ。3分の1。日満人はあくまで外国人です。国王陛下の臣足らざるにもかかわらず、我が国の政治に口を出す。こんなことは、我々と古い付き合いのあるムー国人にすら許しておりませぬ。ムー国人に議席を割り当てていないのにも関わらず、日満人に割り当てるというのは、ムー国人の心証を悪くするのではありませぬか。次官、答弁を。」

 

 ふむ。マルギニー伯爵か。この男の所領はムー国と取引があったな。ベルディート辺境伯の隣にある彼の領からは石油が産出していたな。だが、今回の鉄道敷設のルートからは外れていた。バッスラーから王都バルラートを経て港町ジワーグラッサを結ぶ鉄道だ。基本的に沿岸地帯を通り、数か所の貨物駅を設けるが、マルギニー伯爵領で採掘された石油はムー国製のトラックを使ってジワーグラッサに運ばれる。ふむ、日満両国とは聊か縁が薄いな。

 

「えーお答えいたします。3分の1と言う数は過半数を得るには至らないということをまずはご指摘いたします。そもそも、今回の区議会設置法の立法目的でございますが、日満両国の進んだ政治思想を我が国に取り入れることで日満両国の国民に対して、我々はあなた方と同じ価値観を享有しているというメッセージを送ることにあります。既にバッスラー特別区区域内では日満両国の民間企業の手により、港に3つの埠頭が完成し、三井財閥傘下の富士重工業の手による大型船建造のドックも建造中であります。この建造の為日満両国国内より数多くの民間人が訪れており、彼らがこの地で落とすお金が特別区や国庫に税収として還元されております。この流れを更に加速し、もっと多くの日満人にクイラを訪れていただいて、文化や技術を伝えていただくということがこの法案の眼目なのであります。言い方は悪いですが、この議員の割り当てはエサなのであります。」

 

 内務次官、ジグラート・メッシー・アスワンハイ男爵。わしが諸侯会議統裁官という会議議長の役割を果たしているため、内務省の代表として答弁を行うことが出来なんだために元内務局生産部長であった男を内務次官に召し出した。黙々と仕事をこなすドワーフ族出身の男であり、もともとは口数が少なかったが、こうして諸侯会議に参加することによって弁舌のスキルを少しづつ身に着けつつある。まあ、少しずつなのではあるが。

 

「エサとは何だ、エサとは!!」

「国王陛下の直轄地を餌として差し出すというのか!!」

「不敬であるぞ!!」

 

 むう。やはりか。言葉選びがまだ拙い。

 

「静粛に!!議員諸君、静粛に!!」

 

 ガベルを叩いて、議場を静かにさせる。日本の貴族院を視察に訪れた際に議長がこれを叩いて開議を宣言したり、議場の静粛を求めるときに使用していた。なかなか格好がよいので、諸侯会議でもこれを使用している。視察に同行したアスワンハイ男爵にこの木槌を真似て作ってもらった。この役得があるから、統裁官の職を辞することはしたくないのだ。

 

「失礼しました。言葉選びが間違っておりました。訂正いたします。」

 

 諸侯会議議事規則には、国王及び王族に対する不敬の発言を議員他発言者が行ったとしても、その場で取り消せば不敬罪で処罰することはできないと定めている。これもまた日満両国の議会の議事規則を参考にさせてもらった。本来の日満流の議事規則であれば、会議内での発言に対する処罰それ自体を認めないとしたいところではあるが、我が国においてはまだその時期ではないというのが内閣の考え方だ。

 

「もう一つ、この法案の目的がございます。議会政治はミリシアル帝国やムー国を始めとして文明国では取り入れられているところではございますが、我が国においてはその試みが始まったばかりなのでございます。日満両国はその点最も進んだ先進国なのであります。これは、我が国に駐箚しておりますムー国の大使閣下も認めております。また、先のアルタラス王女の発言で議会政治の精神を見せつけよという声が日本国の衆議院で高まりました。その意味では議会政治のお手本を見せていただく。そういう意味で一定数の枠をを日満両国人に割り当てて、我が国の政治に参画していただく必要があると内務省は考えておる次第なのでございます。」

 

 ヤジを受けて、冷や汗でもかいたのか、内務次官はハンカチで額を拭きながら答弁した。まだまだ、弁舌がこなれていない。

 

 その後、法案は日満両国人の割り当て定数の変更、日満両国人の居住資格を1月から3月へ延長、日満両国人にも納税資格を追加、議員手当に旅費と活動費以外に日当も追加するなどの変更を経て、諸侯会議での採択を得た。

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