大日本帝國召喚   作:もなもろ

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国債償還に向けた取り組みの一つが発動。
ロデニウス戦争において海軍のカルーネス軍港攻略が実行されたため、戦費が予定よりも膨らみました。その穴埋めはこういうところで及んできました。


奉天新聞朝刊 2675(興信27・2015)年10月23日(金)

満日鍬杭財相会談、

 鍬杭両国への民間投資拡大を促す法令改正を目指すことで合意か

 政府投資の規模、段階的縮小へ

 

 10月20日から日本国鹿児島県鹿児島市にある島津侯爵家の別邸「仙巌園」にて開かれている我が国と日本国、クワ・トイネ公国、クイラ王国の四か国の財相級会談において、一つの合意が形成されつつあることが現地で取材中の記者により判明した。

 会議をリードしたのは、日本国の李俊太郎大蔵大臣だ。「緊縮財政の鬼」、「財政均衡主義の権化」、「ミスター・バランスシート」の異名をとる御年73の老蔵相は、先のロデニウス戦争において日本国債を以て負担した戦費の償還を数年で終わらせると先月の記者会見で語っている。このための行財政整理を伴う来年度予算と関係法令の成立に向けた手続きを日本国大蔵省に於て進めており、来月頭には臨時議会が召集され、行財政整理に関する国民向けの説明が行われる様子だ。

 李蔵相は、国債償還の為本年度の臨時予算で計上したクワ・トイネとクイラの開発振興費を段階的に削減することをクワ・トイネとクイラの両国に通知したとみられており、鍬杭両国から反発は必至だ。日本政府は、両国への開発投資を促すために日本政府としての臨時予算を支出し、財閥の進出を助けてきた。日本の政府開発援助資金を以て大企業は、鍬杭両国へインフラを輸出し、既にクイラ王国国内には通常軌道の鉄道敷設が開始されている。日本政府の今後の方針として、これらの開発費用の政府支出比率を四半期単位で逓減させていく方針を示したとみられている。

 

 一方の我が国の鍬杭両国に対する政府支出による援助は、元から低い額を支出しており、大きな変更はみられていない。本年2月の衆議院本会議で行われた劉財政部大臣の財政演説において、異世界におけるインフラの輸出は、クワ・トイネを日本がクイラを我が国が中心となって行っていくことを述べていた。しかしながら、我が国の西部国境の多くを接しているパーパルディア皇国との関係構築が遅々として進まないことから、インフラ輸出のための海外進出に対して慎重な意見が財界・政府内部で出た。パーパルディア皇国との関係悪化から動員が行われた場合に十分な対応が可能かどうか検討した結果、インフラ輸出の大部分を日本企業に委任する方針に転換することとなった。

 我が国も、ロデニウス戦争において、二個師団と数隻の軍艦が派遣されたためにその戦費の回収については日本側と立場を同じくする。しかし、陸軍戦力の派遣規模については我が国が大きかったものの海軍戦力に付いては微々たる派遣規模であり、その派遣費用の一部も日本側が融通した。本来出師予定になかった航空母艦黒竜江が緊急出師となったのもこれが理由だ。このため、劉財相も政府支出比率の段階的削減については、日本側と態度を同じくしたが、その逓減間隔は年度を単位とし、逓減率も日本側が年度10%以内の逓減率を目安としたのに対して我が国は4パーセント以内に抑えることを鍬杭両国に対して通知したとみられている。

 

 この方針転換に戸惑いを隠せなかったことが想像に難くない鍬杭両国だが、なかでもクワ・トイネ公国のマケーテ・オクレンカ大蔵卿の反発は大きなものであったと推察される。クワ・トイネ公国は、国内の地方貴族間での調整不調の為鉄道敷設の着工ができていない。クワ・トイネの国会にあたる公王庁では連日会議が開かれている様子ではあるが、会議は紛糾しており、議論終結のめどはたっていない様子である。日本政府の開発援助比率が低下すれば、その分だけクワ・トイネ公国政府の負担が増大することとなる。

 これに対して日本の李蔵相は対鍬杭民間投資の拡大を目指した法令案の作成を指示しており、翌年の通常会には法案提出の意向を示した。この動きに対して我が国は西部国境の不安定を理由として民間投資の拡大には慎重な姿勢を継続するものとみられている。ロデニウスに出征した第六師団と第三機甲師団の多くが復員しつつあるといっても西方国境地帯の不安定が足かせになっている現状は財界関係者の悩みの種ともなっており引続きの国務院政府の努力を期待したいところではある。

 

 財布のひもを締めようと思っている者に対して財布のひもを緩めろと言っても効果が有るはずがない。日本側の提案に対して鍬杭両国も反対・支援継続の意向を伝えたとは言われているが、効果は薄かったようだ。正式な会談後の共同コミュニケは発表されていないが、日本側の対鍬杭援助削減の意向は強く、段階的な縮小の結論は動きそうもないというのが取材陣の感触だ。

 

 

支援団体関係者「当惑」

 

 国務院財政部による対鍬杭支援削減の意向が示されたことで、対鍬杭支援を統括している組織には今後の活動継続に関する懸念の声が上がっている。鹿児島会談の推移を知った対途上国支援団体「財団法人泰平会」のある理事はこのように語っている。「民間企業の支援を期待すると言っても、その民間企業が鍬杭両国へ進出して、事業を行うための資金はどこからでてくるのだろうか。まさか鍬杭両国から「全額」回収せよというのだろうか。これまで民間企業が鍬杭両国政府から受け取った事業資金の内訳には、我々が両国へ支援した資金が含まれている。いわば国務院政府の裏書があるから民間企業は安心して受注できたのだ。この裏書が無くなる以上は鍬杭両国の本質的な「信用」でしか取引できなくなる。国務院は、鍬杭両国は帝國政府が条約を締結して、正式に国家と認めた独立国であり、いずれは自助自立を果たすべきものとして、そのための相応の支援を行うと言ってはいるが、いささか事態を楽観的に構えてはいないだろうか。」と述べ、我が国が独立の際に受けた日本からの援助に比べると頗る弱い支援体制に当惑している表情が見受けられた。

 

 

新証、一時3圓5角安の取引

 東証も最大下落幅11円安を記録

 市場関係者にも広がる不安

 

 鹿児島会談の様子が聞こえてきた、昨日の新京証券取引所の取引は、鍬杭両国に進出している企業の株の売りが目立ち、一時前日比3圓5角安の取引を記録した。新世界転移後の取引としては3番目に高い下落幅だ。

 国務院財政部証券司は、金融市場における株価の一時的な上昇下落は日々ある事であり、特にコメントをするまでもないと、事態の推移を見守る姿勢を継続している。一方で満日通貨スワップの発動に関して財政部国際司は、(「満日為替相場等価維持に関する声明」には)自動発動条項が含まれており、必要時には必ず発動されるものであるとして、為替介入の可能性を示唆するコメントを発している。

 市場の混乱は日本国のほうが大きい。日本の東京証券取引所の株価は前日比11円安と異世界転移前の2番目に高い下落幅を記録した。

 

 

奉天映画、日本国東宝との間で制作委員会協定を締結

 

 奉天映画と日本国の映画会社東宝は、昨22日、新制作映画の政策委員会協定を締結した。監督に日本映画界の至宝と謳われる白沢勝英氏を据え、助監督に興信20年にカンヌ国際映画祭グランプリ、奉天国際映画賞蘭花賞を受賞した「赤壁」でメガホンを取った汪清惇を迎えて制作される新たな映画は、日本の時代劇ものであると発表されている。汪氏が助監督に招聘された経緯が「赤壁」における騎馬隊の迫力に対して高い評価が与えられたことを鑑みれば、新映画は騎馬隊の突撃シーンが見ものとなることは間違いない。東宝は再来年の映画公開を見込み、エキストラの募集広告は来月頭にも発表される見通しとのことだ。

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