満洲国から見たら、天皇訪満は、あくまで還幸です。
秋の臨時国会、本日開会式挙行
例年よりも遅い10月下旬と言うこの時期に第117回臨時議会が召集された。衆議院解散後と特別議会の召集を除けば、この時期の召集は異例だ。
25日、皇帝皇后両陛下は、新京特別市寛城区杏花に位置する満洲帝國皇帝の宮殿である大同殿に還幸啓遊ばされた。新京郊外に位置する龍嘉空軍基地では、在京の100万人の臣民が両陛下の還幸啓を一目見ようと皇帝専用機の到着を朝から待ちわびた。正午より両陛下は龍嘉鎮空軍基地から皇宮に向けて移動を開始された。沿道の100万人の歓呼の声に送られた、両陛下は午後0時30分に本年1月以来の還幸啓を為された。宮殿では、張彗雲執政から国璽と御璽の奉還を受けた後、執政及び李陽詢国務総理大臣から国政に関する報告を受けられた。
翌26日、皇帝陛下は、午後0時1分御出門、第117回臨時帝國議会開会式に御臨場のため、帝國議会議事堂へ行幸、同1時29分還幸となられた。その際、元老院議場に於て、陛下は親しく勅語を渙発。内外情勢不安定の為、緊要なる追加予算案と法律案を国務総理大臣に命じて帝國議会に提出させるため、帝國議会議員一同に対して和衷して審議を行い協贊の任に尽力するよう望まれた。元衆両院議員一同、恐懼して勅語を拝し、議員を代表して大高重信元老院仮議長が奉答文を朗読した。
皇帝陛下は、今後元老院衆議院の主だった議員と謁見し、夕方には帝國議会有力議員、政府・軍高官、司法関係者、財界関係者、各国大公使を招いた晩餐会を開く予定となっている。翌日からは、政府閣僚、最高法院院長や各省長官とも謁見して、司法状況や地方政治についての御進講を数日に渡って受けられる。最後に執政へ国璽と御璽の御信託が行われた後、皇后陛下と共に日本国へ行幸啓される。皇帝皇后両陛下の行幸啓の予定は29日となっている。
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第117回臨時議会開会式の勅語
興信二十七年十月二十六日
朕茲に帝國議會開會の式を行ひ元老院及衆議院の各員に告ぐ
朕は國務総理大臣に命じて緊要なる追加予算案及法律案を帝國議會に提出せしむ卿等克く朕が意を体し和衷審議以て協贊の任を竭さむことを望む
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波乱続きの116議会を振り返る
117議会の焦点は、対ムー国予算の計上
第116回通常議会は例年通り1月上旬の1月12日に召集され、当初150日の会期で始まったが、国会召集直後の本年1月15日の異世界転移という超常現象への対処の為、16日午前中の与野党幹事長会談にて、15日間の休会が成立した。再開された国会会期中の4月12日には、ロデニウス大陸の西半分を統治するロウリア王国が友邦クワ・トイネ公国及びクイラ王国に対して侵攻戦争を開始したのを受けて、友邦救援のための軍の派遣するための補正予算の審議が始まった。当初の会期末である6月11日までにロウリア王国との戦争終結には至らなかったため、対ロウリアの講和条約の国会審議を見越して、60日の会期延長が行われたが、この期間満了までの間に講和条約の審議までたどり着かなかったため、更に30日の会期延長となった。派遣軍の撤退を視野に含めた予算の調整といった事後手続きも含めて、結局第116回通常議会は9月9日までの通算240日と大幅な会期となった。
通常議会において、来年度予算が元衆両院で議決された後は、通常であれば、補正予算の審議に入る。本予算は前年の8月には作成方針が固まり、前年の年末に閣議決定を経て完成する。そして、当年の3月末までに帝國議会の審議を経て成立する。一度策定された国家の意思を変更することは難しい。
こういった経緯で、新たに補正予算、追加予算が組まれるのだが、本年度は、本予算の他に2つの追加の予算が組まれた。一つは先にも述べたロデニウス戦争に関連する追加予算である。予備費の組込、いくつかの財源からの捻出及び国債の発行も以て作成された追加予算案と臨時軍事費特別会計法の審議も含めた国会審議は、開戦不可避の状況に押されて4月6日に衆議院予算委員会で始まり、国務院側の迅速なる議事進行の要求もあって1週間程度での予算委員会強行採決に踏み切ることになったが、それでも元老院の審議開始どころか、衆議院本会議での採決にもに間に合わず、12日の開戦を迎えることとなった。追加予算が政府は予備費から戦費を捻出したが、軍関係の予備費だけでは到底追い付かず、関係省庁の予備費の費目流用を行ったうえで、なんとか2個師団の外征費用を捻出した。
もう一つは、転移に伴う国民生活の急激な変化を援助するための補正予算である。中東の油田地帯との連絡が立たれたため、原油の輸入を図ることができなくなったがために、原油価格の高騰は不可避であった。原油価格の高騰は国民生活に直結する。国務院実業部、交通部、建設部の3部は次官の連名の通達で、龍江省大慶市に位置する大慶油田及び錦州省盤錦市に位置する遼河油田で操業する石油精製企業に対して、石油の増産を指示する行政指導を行った。石油の埋蔵量から生産調整を指示していた国務院と需要と供給のバランスから原油価格の高値維持を意識していた石油精製企業との間に暗黙の了解があったことは事実であるが、この時ばかりは国務院は国民生活の安定のために、増産を指示することになった。しかし、民間企業にとって準備期間も不十分な状況で増産を行うことは難しい。何しろ増産のための人的・物的・資金的な体制が整っていなければ、容易に対応できるものではない。予備費から捻出するだけでは、国家として十分な支援体制が敷かれたとはいえない。
そこで、補正予算が組まれることなったのであるが、この予算案の成立の裏には、我が国以外にも石油の需要の高い、日本国政府との間に「密約」が存在したことが噂されている。即ち、元来中東からの石油輸入に大幅に依存していた日本が、我が国からの石油輸入を行うために大幅な増産を依頼してきたということと、我が国から石油を買い付けると大幅な輸入超過となり、日本側の貿易赤字が拡大するために、その他の輸入品、食料品などの輸入量を制限しようと画策したという密約である。日本向けの食糧品輸出業者や農業関係者からの訴えで、一時期日本の食料品輸入量に減少が掛かったことは確かであるが、政府間で密約があったという話については満日両政府はいずれも否定している。
今117議会の目玉は、対ムー国関連予算の計上である。外交部消息筋の話によれば、当初神聖ミリシアル帝国の南部にある文明圏外地域に空港建設して、ムー国行きの航空機の経由地とする予定であったが、ムー国側からミリシアル国内の国際空港に我が国の旅客機の乗り入れることについてミリシアル側からの前向きな返答が得られたことから、ムー国行きの航空機の経由地をミリシアル国内の空港とするよう調整が進んでいることが明らかにされた。しかし、空港の地盤の強度の問題から、すぐに乗り入れと言う話には至らず、空港の改修工事が必要となる。更に、我が国は、ミリシアルとの間に国交が結ばれていないことから直接交渉を行うことができないためムー国の政府機関を通じた交渉となる。
航空機乗り入れの改修工事に関わる費用は政府の負担の下対応することとなり、日本国との間での共同の負担となる。また、飛行条件などを定めた暫定航空協定がムー国を仲介したうえで、ミリシアル側とも結ばれることとなり、その調整の為、交通部と日本運輸省の次官級が近くムー国入りをすることとなっている。
魔導分野の研究関連予算も増額される見通しだ。国務院は早くから国立の建国大学、新京大学、哈爾賓学院などに魔導医学、魔導工学の学部や学科を設置したが、今回の予算措置で大同学院に魔法史という魔法についての歴史を調査研究する講座を開設する準備が進められている。実学分野以外の講座は我が国では初となる。
更に国防関連でも追加の予算計上が行われた。元来我が陸軍の師団平時編制では、各省及び新京特別市に一個の歩兵師団の21個師団と対中華民国に対応する西部から南部に2個師団、対ロシア帝国の北部から東部に2個師団の合計25個の歩兵師団が配備されるとともに、新京に1、政部南部に2、北部東部に2個の合計5個の機甲師団が編制されていた。これらの師団の内3分の2の17個歩兵師団の平時の定員充足率は5割未満に抑えられており、機甲師団に至っては3個師団が5割未満である。完全な定員充足をしているのは、熱河省の第三師団と、錦州省の第六師団、興安西省の第十七師団と、同じく錦州省の第三機甲師団の4個師団にとどまる。軍の予算は毎年一定額が計上されているが、これは全師団を完全充足するには至らず、帝国全体の国防方針からみて、完全充足状態の師団を偏在させている。
今回幕僚総監部は、陸軍の平時の師団編制を見直し、首都新京の近衛師団と機甲師団を除いた上で、各師団の充足率を最低5割とするよう国務院に働きかけた。対外関係が不安定な状況を考慮し、即応性をいくばくか高めたいというところが陸軍の主張である。
同じく海軍や空軍でも予備艦船や部隊の定員充足率の向上が図られる見通しだ。
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日本帝國議会の召集はあるのか?
皇帝陛下の新京還幸は、即ち日本国に於ては天皇陛下の行幸を意味する。天皇不在となれば、天皇大権の一つたる国会召集はできない。だが、この時点においても日本政府から国会召集についての情報が何も聞こえてこないというのは、日本国に於て臨時国会の召集がされないということを意味するのではないか。通常国会の開催までまだ2か月近くある。我が国におけるムー国関連予算のように追加予算や必要な法令があることは日本国に於ても同様ではないだろうか。
日本国に於ても例年秋の臨時国会は我が国と同様に9月中に招集されてきた。今年の日本帝国議会の通常議会の閉院は9月17日と我が国よりも遅かったが、審議されてきた予算・法令は我が国と内容的にそう変わらない。予備費の充当で間に合わせるつもりなのだろうか。日本国会の先行きについても注視していきたい。