大日本帝國召喚   作:もなもろ

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遅くなりましたが、日常シリーズ第一弾です。「日本国召喚」要素少ないですが、これから増やしていきます。

福岡在住の人、福岡に住んでいたことがある人が拙作を読まれていらっしゃいましたら、ニヤリとしてください。




或る家族の日常 (1)

 福岡真一は妹涼子への誕生日プレゼントを何にするか悩んでいた。妹の涼子の誕生日は、今月8日の日曜日、期日まであと2日しかない。同級の友人や部活の先輩後輩にも聞いてみたところ、1円ショップがいいのでは?とのことだ。

 1円ショップとは、店内の商品はすべて1円で買うことができるという店である。高額商品の廉価品がある一方で、単価が1円より安いものは箱売りとなっており、バラ売りはされていない。我々学生は単品の場合は雑貨屋で買うか、皆でお金を出し合って1円ショップでまとめ買いをするかという二択で買い物をすることが多い。

 そういう理由で、4年間通っている中学修猷館の近くにある西新岩田屋の中にある1円ショップに真一はいた。しかし、中に入ったはいいが、何を買えばよいのか悩む。筆記具を渡したところで、それは誕生日プレゼントとしてふさわしいのだろうか。店内には、所狭しと品物が並べられ、目移りばかりしてきめられない。

 

「真一。こげんところでなにやっとーと。」

 

 後ろから声を変えられ、振り返ると姉、福岡彩香がいた。

 

「姉さんこそ、1円ショップで何を?」

 

「あたしは、卒業前の部活懇親会の買い出したいね。卒業生から在校生への贈り物として、期末試験前にノートと鉛筆を送るってのが福岡高女の伝統なんよ。そんで、あんたはここで何しようと?」

 

「俺は、涼子の誕生日プレゼントを買いに・・・」

 

「はぁ?あと2日ばい。今頃になって準備するとかあんた何考えとーとね。しかも1円ショップで選ぶとか、あんたはなんば考えとーと。こがん店は大量に物を買い込むためにあるっちゃろーもん。」

 

「はあ、いやほんとすいません。」

 

「はあ、仕方んなか男やねえ。頭はよかとばってん、こげんときにはなんもならん。ちょっと待っとき。」

 

 彩香は自分のバックから携帯電話を取り出し、電話をかける。しかし、電話は異世界転移以来回線がつながりにくくなっている。これも電力節約の一環として、政府より通信会社に統制令が発布された結果である。

 

「ちっ、いっちょん繋がらん。こげんところでん、うちらの生活は苦しかっちゃんね。」

 

「そうは言っても、発電用の石炭も輸入ができなくなったし、石炭火力発電の供給能力も低下しているからね。現状では我慢するしかないよ。」

 

「そげんことは、わかっとーったい。友達と電話がよーできんとか女子高生にとっては、つらい苦しみなんばい。」

 

「はあ、そんなもんですか。」

 

 女子ではない真一にはその辺の感覚はわからない。再開されることとなった議会でも野党は、統制令全般が違憲だとまくし立てていると朝のニュースでやっていた。だが、今は非常時だ。手続の瑕疵を咎めているような段階ではないはずだ。

 

「とにかく、今から天神まで行くばい。あたしは、足の無かけん、あんたのチャリに2ケツさせてね。」

 

「ちょ、ここ俺の中学の側だよ。先生にばれたらヤバいって。」

 

「肝の小さか男やねえ。よっしゃ、唐人町まではあたしが走っちゃるけん、そっから2ケツたい。あとは、大濠公園の近くにある派出所の前だけ降りればよかろうもん。」

 

「もう、ばれたら責任取ってくれよ。姉に脅されましたっていうからな。」

 

「よし、ついてこい弟よ。」

 

 言うが早いか、するが早いか。彩香は踵を返して歩き出す。

 

「おっと、先にノートと鉛筆を買わんと。」

 

「天神で買えばいいじゃん。」

 

「1円ショップで買わんと高かろうもん。何のためにあたしがここに来たと思いよーとね。ちょっと待っとって。」

 

「荷物が増える・・・」

 

 さすがは全国の強豪を相手にしてきた強者だと真一は思った。彼は気を利かして、自転車に乗らずに、押して歩いていたが、時間が勿体ないとの姉の一言により、姉が自分がペダルを漕ぐ自転車に並走する形となった。決して急いで漕いでいるいるわけではないが、自転車である以上それなりのスピードは出ている。そして、姉の着衣は、体操服に運動靴ではなく、学生服に革靴だ。走りづらいことこの上ないのにも関わらず、平然とついてきている。競泳で鍛えた運動能力は陸上でも潰しがきくというのだろうか。地下鉄唐人町駅の側まで来て、信号で停車した。

 走っている途中で声が聞こえた。曰く、なんねあの男は、女ば走らせてから自分は自転車に乗っとう、と。流石にいたたまれなくなった。真一は自分から声をかけた。

 

「姉さん。もう唐人町だからのっていいよ。」

 

 対して息も切らせていない姉は言った。

 

「うむ。苦しゅうない。」

 

 お前は本当に女子か。真一はそう思った。信号が青になり、ペダルを漕ぎだそうとする。

 

「姉さん。」

 

「その先言ったらくらすけんね。」

 

 お約束である。

 

 ペダルを漕ぎながら、真一は朝のニュースで流れた話題を姉に振る。

 

「ところで、姉さんは、朝のニュースで流れた。満洲の衆議院議員の陳謝の話どう思った。」

 

「もう、酷かね。結局、謝って頭を下げて終わりとか。懲罰動議を出すって話やったんに、それもうやむやにしてしまってからくさ。男も女も同じ国民なんに、女やけんどうこうって発言はいかんわ。議場の言論は神聖であるべきよ。そこにそういう発言をするってんは、議会軽視、そして、議会の設置を規律している憲法への冒涜よ。憲政擁護の観点からも、議会に対する冒涜を戒める意味から、少なくとも譴責処分は欲しかったわね。」

 

「姉さんの言っていることは分かるんだけど、処分までいくのは厳しすぎないかな。議会におけるヤジなんてのは、うちの国会でも普通に起こっているし、うちも満洲も国民の政治意識っていう観点からはどちらも成熟していると思う。議場における発言に対して簡単に処分をかけたら自由な発言はできなくなってしまうんじゃないかな。」

 

「簡単にって、あんたは言うけど、あれは、言ってはならないヤジだったわよ。満洲の憲法では、男女平等がうたわれているし、うちの憲法でも大正増補で、「日本臣民は帝國の発展に協力する義務」が設置され、昭和増補では、男女等しく政治に参加して、帝國の発展に努めるべしという旨の規定が置かれているわ。憲法の規定に背いた言論が国会で行われた、これは重視すべき問題よ。」

 

 姉は政治経済の話になると、途端に方言が薄れていく。どういう頭の構造をしているのだろうかと真一はいつも思う。そして、標準語を話せば美人なのにとも。

 

 大日本帝国憲法は明治の発布以来、2回の増補を行った。政治経済社会のありようがどのように変化しようとも、変更してはならないという確信が日本の社会に生まれたと判断された事項につき、憲法の増補として、「憲法改正」が行われた。しかし、明治憲法の文言は一切変化していない。不磨の大典と呼ばれる所以である。

 その2回の改正で、憲法は、日本国民の義務としての参政権を規定した。通常、参政権は権利に属するが、大日本帝國憲法は、日本国民は自国の発展に寄与するために、男女平等に政治に参加すべき義務として規律した。このことは修身の教科書にも記載されることとなり、政治経済の話を家庭で行うことが推奨されるようになった。姉弟で政治の議論をすることは不思議ではなく、このような現象は特に高等教育を受けている者によくみられる。

 

 天神に到着し、姉弟は新天町の商店街に向かった。食堂や喫茶店に臨時休業の張り紙がかかっていた。

 

「喫茶店に閉まっとーとこが多かね。これも食料や電力の統制の影響なんやろうね。」

 

「そうだね。商店街から賑やかさが消えてしまったというのは、怖いことかもしれないね。今後の景気の落ち込みが予想されるよ。」

 

「そーなんよね。本科のときの友人も就職先に苦労するって前聞いたし、おっとここだ。」

 

「ここは?復古堂。文房具屋?」

 

「そうなんよ。用があるのはここの2階たい。」

 

 二人が復古堂の2階に上がると、そこは書道用品や絵画用品がそろっていた。

 

「ここは?」

 

「涼子の誕プレなんやろ。だったら、筆とか墨が一番たい。」

 

「いや、まあそれはそうなんだろうけど。これ結構な値段しますよ。」

 

「いいもん使って書いた方が上達もするやろうもん。兄として妹の書力向上に一役買ってやらんね。」

 

「いや、俺の小遣いが。」

 

「男やろうもん。肝の小さかこといわんと、兄としてのかっこいいとこば見せちゃらんね。」

 

「さっきと言っていること違くない?」

 

「それはそれ。これはこれたいね。あー、それ、真一君のちょっとイイとこ見てみたいっと。」

 

「あーもう、ちくしょう。やったろーじゃん。」

 

 

※天神にある復古堂の筆のようなちゃんとした筆は100均とかで売っているものより書き味は間違いなく良いです。墨ののりとか、かすれのぐあいとか。もちろん、それなりにお値段はします。もう、お分かりとは思いますが、筆者は書道経験者です。

 

「さあ、急いで、お父さんに帰らんと怒られるよ。」

 

「2ケツしても怒られると思うよ。」

 

「緊急事態やないね。仕方なかと。」

 

「はあ・・・姉さん。」

 

「あんた、そげんくらされたいとね。」

 

 2月の夕方は日が落ちるのが早いのは、異世界に来ても同様であった。




西新岩田屋はずいぶん昔に潰れましたが、筆者が岩田屋ファンなので、残してます。
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