大日本帝國召喚   作:もなもろ

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潜水艦の艦内での描写。拙作潜水艦の艦長は基本的には大中佐が補職されます。戦艦、航空母艦、巡洋艦は大佐、駆逐艦、潜水艦は中佐となります。駆逐艦や潜水艦をそれぞれ数隻集めた駆逐隊司令兼駆逐艦長、潜水隊司令兼潜水艦長は大佐です。ですが、弾道ミサイルを搭載した潜水艦は、核兵器を発射するという点を考慮して、潜水戦隊司令官を兼務させた艦長を置いています。戦隊司令官は少将となっております。とはいえ、この戦隊ですが、満洲国の場合、弾道ミサイル潜水艦は3隻しか保有していない設定なので、常時稼働しているのは1隻か2隻。単艦で戦隊司令官となることもあります。


フィルアデス大陸・アルタラス島間アルタラス水道 中央暦1639年11月16日(月)午前10時

この話に出てくる人物

ルミエス・ラ・ファイエット(アルタラス王国第一王女)

 父:アルタラス国王ターラ・ド・ラ・ファイエット

 母:アルタラス国王妃アメリア・ルドラ侯爵夫人(故人、現マール国王妹)

 中央歴1622年12月20日、アルタラス王国王都ル・ブリアス アテノール城にて生。アルタラス公式年齢18歳、満16歳(年齢は数え年と記載しない限り満年齢にて表記。)。

 アルタラス国王の第一王女として出生。兄と弟がいたが、共に満一歳を迎える前に夭折。長じるにつれて聡明さを見せ始め、王室の養育係からも高い評価を得る。1637年秋ごろから外務局に通い始める。1638年春、マール王国大使の交代に際して新旧大使の饗応役を担う。このころより、正式に駐在大使の接待官として外務局に係わることになる。

 日満両国との国交樹立後は、満洲国公使のローズモンド・マニャールと特に親交を深め()、満洲企業のアルタラス進出を後押ししようとする立場に立っている。王族が直接輸入する商品の関税は非課税であることを利用し、盛んに国内貴族に対して低価格で売りさばき、満洲製品の優秀さをアピールしていた。マニャール公使からは、アルタラス国内における満洲企業の法的保護のための法制度導入を陳情されており、このような国内貴族に対する活動を通して、その下地をつくろうとしていた。しかし、科学技術国である満洲国の製品は、魔法技術国であるアルタラス国内における産業構造に真っ向から対立する製品であり、国内の大多数の貴族は国内産業保護を理由に貿易関係法制の成立に反対していた。

 斯様な状況の中で、アルタラス国内で開かれていたロデニウス大陸における戦争の講和会議の座長(講和会議議長は、アルタラス外務卿であるユグモンテ卿である)を務め、平和条約の調印式典では閉会宣言を行った。だが、この宣言がルミエスを政治的窮地に陥らせた。地域大国であるパーパルディア皇国の地域支配に異を唱えるような内容ともとらえかねない内容にアルタラス外務局は恐慌し、王宮に対して王女の外務局接待官の更迭を上奏した。王宮は王女の接待官更迭は認めなかったが、当分の間出仕に及ばずとの沙汰を降した。王宮内の離れにて謹慎していた王女に対して、パーパルディア皇国は同国貴族への降嫁を促すパーパルディア皇国皇帝の親書をアルタラス王国に手交するに及んだ。この王女の降嫁とアルタラス国内の鉱山の譲渡を含んだ親書により、アルタラスとパーパルディアの関係は悪化し、自身の身が祖国の状況の悪化を招いたという自責の念に駆られた王女の精神は衰弱して衰弱死したと公表された。

 

リルセイド・ド・ザーム(ザーム子爵家子女、第一王女附筆頭侍従武官)

 中央歴1621年11月3日、アルタラス王国東部ザーム子爵領にて生。アルタラス公式年齢19歳、満18歳。

 ルミエスの母、ルドラ侯爵夫人の所領であるルドラ侯爵領はザーム子爵領に隣接していた。このことからザーム子爵夫人が乳母として取り立てられ、リルセイドも乳姉妹として伺候した。長じて、女性であるルミエスの護衛になることが期待され、侍従武官として付き従う。但し、ルミエスには男性の侍従武官も当然おり、護衛任務は基本的に男性の武官が担当し、リルセイドの役目は女官としての伺候が中心である。

 護衛の手法は基本的に剣術によるものであったが、マニャール公使の手引きにより、満洲国の警察や特殊部隊員から格闘術及び射撃の訓練を受け、帯剣は欠かさないがメインの武器は拳銃となった。

 

ローズモンド・マニャール(高等官二等。前アルタラス王国駐箚満洲帝國特命全権公使、現国務院外交部大東洋司附待命特命全権公使)

 昭徳14(2640、1980)年6月18日、満洲帝國新京特別市生、35歳。フランス系満洲人三世。祖父がル・フィガロの新京支局に在勤中に現地女性と結婚し、満洲国籍を取得した。私立杏里学院中等部高等部、建国大学法学部。法学士。

 大学卒業後は国務院外交部に奉職。フランス大使館二等書記官、日本大使館一等書記官、外交部欧州司仏蘭西科主任などを歴任。転移災害による在外公館職員の全滅を受けて、特命全権公使特別任用令による銓衡を経て、特命全権公使に任ぜられ、アルタラス王国駐箚を命ぜられる。

 アルタラス第一王女ルミエスの信頼を得、公使主導の満洲製品のアルタラス輸出促進を計画していた。財界にも協力を仰ぎ、ボールペンやコピー用紙、卓上ライト、そして化粧品と言った安価な製品をルミエス経由でアルタラス国内の貴族にバラマキ、女性を中心に支持を集めていった。

 ロデニウス戦争終盤に講和条約草案の作成にあたり暗躍。秘密裏にロウリア側と接触交渉を重ね、講和条項大綱を策定。実際に締結された講和条約はこの時の大綱の内容をほぼ踏襲している。

 しかし、ルミエス王女の失脚により、彼女の活躍に影が見え始める。満洲企業のアルタラス進出の計画も棚上げの状態となり、財界からの支援物資の提供も停止されることとなった。決定的となったのが、パーパルディア皇国によるアルタラスへの通告に対する外交交渉中にルミエス王女に対して不敬を働いたということが日本外務省から満洲外交部へリークされ、国務院外交部は彼女の駐アルタラス公使更迭を決定した。アルタラス王国側は、彼女へのペルソナ・ノン・グラータを通告しなかったため、外交官としての身分は保持したまま外交部大東洋司附の待命公使となる。

 

ニキータ・エドゥアルドヴィチ・プローニン(満洲帝國海軍少将、潜水艦「海狼」艦長)

 昭徳2(2628、1968)年5月26日、満洲帝國濱江省哈爾浜市生、47歳。ロシア系満洲人4世(満洲国籍は父の代から)。曽祖父が欧州大戦時のロシア革命から逃れて満洲に居住。革命が鎮圧された後もロシアには戻らなかった。祖父はロシア国籍のまま生涯を通したが、満洲国建国後の国籍取得希望調査時に祖父は子供たちに対して満洲国籍を取得させた。

 濱江省立香坊中学校、海軍軍官学校を経て、海軍少尉に任官。海軍砲雷学校高等科へ入校し、砲雷術の知識を修める。海軍上尉昇進後に海軍潜水学校高等科(潜水艦乗組軍官に対して必要な知識技術を教授)へ入校。以後、基本的に洋上勤務(水上艦艇、潜水艦)にて潜水科、砲雷科を中心に軍歴を歩む。海軍潜水学校甲種課程(潜水艦長として必要な知識技術を教授)を履修し、海軍中校昇進後に巡航弾搭載原子力潜水艦「海狸(ビーバーの意)」艦長に補職。海軍少将昇進後に、第2潜水戦隊司令官兼弾道弾搭載原子力潜水艦「海狼」艦長へ補職。

 

 ―――――

フィルアデス大陸・アルタラス島間アルタラス水道海中 潜水艦「海狼」艦内

 ― 満洲帝國海軍少将ニキータ・エドゥアルドヴィチ・プローニン

 

「潜水艦か・・・」

 

 発令所に私のそれと同じようなささやき声が聞こえる。無理もない。これまでこの世界に潜水艦の存在はないと言われてきた。海軍の上層部からもそのような話は聞いたことはなかった。

 

「司令官閣下。やはりあれは潜水艦・・・なのでしょうか?」

 

 潜水艦の発令所は本来であれば秘匿すべき所、――特にこの弾道ミサイル搭載原子力潜水艦「海龍」型は、同盟国日本の海軍艦政本部と共同開発の末に建造された軍機の塊と言っていいだろう――であるが、今回は政治亡命希望者を乗せている。流石にこの発令所へのお渡りはご遠慮願ったが、この亡命者との仲介役は我が国の外交官である。我々武官も文官も任官時に国家への忠誠を誓っている。軍機を外でぺらぺらと吹聴することは考えられないし、ゲストとの橋渡しもあるため、彼女には発令所と亡命者の控室である軍官室の一室の往復を許可している。

 

「さて、ソナーの取集情報を解析したこの画像を見る限り、潜水艦であるとしか言いようがありませんな。」

「なるほど。しかし、不思議です。この世界の国々は潜水艦というものを知らないはずなのです。科学文明国であるムー国も潜水艦の概念すら知らなかったし、列強一位といわれているミリシアルにも潜水する軍艦と言うものは存在していないということを私は聞いております。」

「しかし、現実はまさに我々の目の前に存在していますからなあ。」

 

 パーパルディア皇国のアルタラス派遣軍。その海軍の艦艇が我々の前方にあり、ソナーは海中に没している物体の存在を突きとめた。

 

「もう少し、近づけないものでしょうか。」

「これでもアルタラスの領海ギリギリのラインまで近寄っています。これ以上近づくのは本国からの命令に背くことになります。」

 

 漸進するパーパルディア皇国艦隊よりやや早い速度で海中を行く潜水艦。なるほど、艦体の構造は確かに潜水艦だ。艦尾にはスクリューらしきものが存在しており、回転している。それが推進力を生み出して、おそらくは5ノットも出ていないようだが、着実に前に進んでいる。決して潮に流されているとかではない。おそらくは艦橋と思われるものが、以前は水面に出ていたが、今ではほぼ海面に没している。

 

「外交部のほうでは、パーパルディア皇国との交流と言うのはどういう状況にあったのでしょうか。」

「それが不思議なことではありますが、国境を接しているにもかかわらず全くの没交渉の状況が続いておりました。つい先日になってようやく、パーパルディア皇国の辺境伯領、まあ地方自治体とでもいうべきでしょうが、そこと国交樹立を見据えた、現状の国境の維持の暫定協定が結ばれた程度なのです。」

「ああ、それはつい先日のニュースで見ましたね。なるほど、その程度なのですな。パーパルディア皇国は、この世界の各国と、我が国と国交を結んでいる国と外交関係がありますか?」

「ええ、それはあると聞いていますが。」

「では、そこから潜水艦の情報を取得したのでしょうね。」

 

 潜水艦の情報が洩れるとすれば、我が国か日本国しかない、とマニャール公使は言った。だが、その表現は相応しくない。潜水艦に関する書籍など町の本屋をのぞけばごまんとあるからだ。海の中を進む船の話など誰にでも入手可能な情報であり、それは我が国に駐在する新世界の各国の人間にとっても同じだ。文字が読めるかどうかはさておいてではあるが。

 

「それよりも気がかりなのが、この潜水艦の開発速度です。」

「と言いますと?」

「まだほかの国は潜水艦の実用化どころか、潜水艦の概念すらろくにつかんでいないのです。我が国とクワ・トイネやクイラが国交を樹立したのが3月です。今が11月で、9か月が経過しておりますが、彼らがいつ潜水艦の情報を入手したのかまでは分かりませんが、クワ・トイネやクイラとの国交樹立直後ということはないでしょう。1,2か月は経ってからと考えられますが、今日が実戦配備初とすると、半年程度で、新概念の軍艦への理解を確立し、設計から起工、竣工と乗組員への訓練を終えたということになります。驚くべきスピードです。」

「なるほど・・・。となると、やはりあの潜水艦の船体などは魔法技術によってつくられたものと考えるべきでしょうか。」

「まあ、おそらくは、というよりもそれ以外に考えられませんな。パーパルディア皇国についての情報は私もよく知りませんが、あの帆船軍艦、戦列艦といいますが、あのような兵器を使用していることを考えると、清朝中期、あるいはスペインの無敵艦隊が世界を支配していた時代程度の工業力というべきでしょう。それからすると、ちぐはぐな印象は否めませんが、パーパルディア皇国というのは底知れぬ力を秘めていると言わざるを得ませんね。」

「その見解、外交部にも報告してかまいませんでしょうか。」

 

 公使が尋ねてきたが勿論言うまでもないことだ。

 

「ええ、勿論かまいません。私も今回の戦闘詳報にはその旨を記載して軍中央に提出する予定ですしね。」

 

 公使が考えるそぶりを見せていたところに、従兵が公使を呼びに来た。亡命者が公使を呼んでいるということだ。発令所を離れる旨の断りを聞き、私は彼女を送り出した。

 

 ―――――

 ― リルセイド・ド・ザーム

 

 ドアがノックされ、マニャール殿が入室してきた。

 

「お呼びと伺いましたが。」

「御足労をおかけいたしましてすみません。」

 

 挨拶をかわし、席を薦めた。私とルミエス殿下はこの軍艦の貴賓室を与えられた。だが、艦内を自由に移動することはできない。食事はこの部屋にまで運ばれることになっているが、トイレはない。用を足す際には、艦内を移動するが、その際にはマニャール公使かこの船の女性武人を側に置くことを約束させられた。

 

「パーパルディア皇国が我が国に攻めてきているとお聞きしましたが・・・。」

「その件につきましては、現在情報収集を進めております。」

「戦況の程はどのようなものでしょう。」

「海上でのにらみ合いが続いていると聞いております。」

「そうですか・・・。」

 

 ルミエス殿下が幾分ほっとしたような顔をされた。

 パーパルディア皇国が我が国に攻めてくる前の話だ。国王陛下は、王女殿下の下にお渡りになり、ルミエス殿下に対して、王女を死亡したこととし、他国へ身をひそめるよう勧めてきた。外務卿を始めとする王宮中枢の反対を押し切ってのことだった。殿下はもちろん嫌がった。国が危機に瀕している最中、自分だけが安全な場所に身を移すようなことはできないと。国王陛下は言葉を尽くし、愛する故王妃殿下との子には生きていてほしいのだと、情を以て語り掛けられた。この時私もルミエス殿下も理解した。陛下はパーパルディア皇国の侵攻の際に前線に赴かれ、自らの身をもって兵士を鼓舞し、撃退か若しくは死かを選ぶつもりなのだろうと。これは今生の別れを告げに来たのだろうと。

 覚悟が決まられた方の最後の願いということで、殿下も受け入れ、身支度を整え、王宮をひそかに離れられた。陛下の勅令が出され、それを以て日本公使と満洲公使に亡命についての申請を行った。だが、どちらも断りを入れてきた。外国の王族の亡命は実に高度な政治的な問題であり、現状では受け入れられないと。

 なんということだ。日満両国はロデニウス戦争で講和会議の仲介国として我が国を選んだはず。それなりの敬意を以て遇してくれるはずだと思い込んでいた。だが、けんもほろろな対応であった日本公使と違い、満洲公使は、マニャール前公使に相談してみてはと言うアドバイスをしてくれた。彼女はアルタラス駐箚の任を解かれはしたが、まだ公使を免官されたわけではなく、政府高官の一員であることには変わりないとのことであった。満洲本国へ帰還する準備を行っていたマニャール公使を訪れ、ことの次第を離すと、彼女は少し時間をくれと言い、この潜水艦への乗組の話を纏めてきた。

 夜、闇に紛れて、ル・ブリアス市内を出て、海岸に赴くと、海の向こうからボートが走ってきた。月明りを助けに目を凝らすと、海上に大きな船が浮かんでいた。亡命はルミエス殿下と私が付き添いとして行う。船の収容人数を考えると、多くは連れていくことができないとのことだ。ルミエス殿下の侍女の内で希望者数人を正規のビザで満洲国内へ向かわせることが決まり、彼女らは別行動となった。最後の別れ、あるいは一時の離別を終わらせて、ボートに乗り込んだ我々はこの大きな船に乗り込んだのだった。

 

「少なくとも殿下の身の安全はこの艦に乗っている限り、絶対に安全です。」

 

 朗らかな笑顔を務めて殿下を安心させようとしてくれる公使に私は涙を禁じ得ない。彼女はルミエス殿下の身を案じた行動をとってしまったせいで、本国から叱責を受けて、その職を追われた。

 

「マニャール殿、これからも殿下のことをよろしくお頼みします。」

「ええ、おまか」

 

【発令所より各室へ。発令所より各室へ。パーパルディア皇国艦隊に動きあり。本艦は情報収集活動を継続す。非番員へ呼集準備発令。軍官士官兵はそれぞれの居住区にて待機せよ。非番員へ呼集準備発令。軍官士官兵はそれぞれの居住区にて待機せよ。以上。】

 

 パーパルディア皇国艦隊が動いた。いよいよ本土侵攻が始まるのか。これまでは小手調べということだったのだろうか。よくわからないことだらけだ。

 

「マニャール公使、これからどうなるのでしょうか。」

「今はまだ何もわかっておりません。私は司令官閣下から今後のことを伺ってきますので、どうぞゆっくりされてください。」

 

 マニャール公使がそう言って席をたった。今は彼女だけが頼りだ。よろしくお願いしますと頭を下げて彼女を見送った。その間私がルミエス殿下をお支えしなければ・・・。

 ―――――

 

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