大日本帝國召喚   作:もなもろ

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暴れまわった貴族たちの言い分はこんな感じです。うーん、一理ある?いや、ないか?


第三外務局監察軍南洋艦隊司令部作成:貴族供述記録控え / パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第一外務局 中央暦1639年11月17日(火)

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第三外務局監察軍南洋艦隊司令部作成:貴族供述記録控え

 

尋問官:ランドルマン 第三外務局監察軍南洋艦隊魔信参謀

被問者:ホールドワン パーパルディア皇国伯爵

中央歴1639年11月16日 18:00から19:00

アルタラス王国 監察軍陸戦隊駐屯地

 

ラ;

 では閣下、海上において、監察軍南洋艦隊が事前にお知らせしていた作戦計画に沿った行動をとるとお約束されていたにもかかわらず、あの局面でそれに違う行動をされました。この件についてお聞きします。

 

ホ;

 作戦計画に違う行動をとった?君、違うよそれは。あれは違う。

 

ラ;

 しかし、事前の作戦計画では

 

ホ;

 まあ聞き給え。確かに15日の夜に艦隊司令部から小舟でやってきた監察軍の参謀から受けた作戦計画の説明については、わしも理解しておる。だがの、実際にはその手順の通りにはいかなかったはずだ。

 

ラ;

 いえ、司令官は事前の計画を中止するとは

 

ホ;

 何を言うとる。予定では昼の12時に将旗が入れ替わることになっておったじゃろうに。ポクトアール提督の将旗が降ろされたのは、10時半ごろではないか、これは即ち、艦隊司令部では不測の事態が起こり、従前の作戦計画が破棄されたということじゃろう。

 

ラ;

 いえ、戦いはその場その場の状況によって、臨機応変に動かねばなりません。予定が前倒しになる事、もしくは遅れることはよくあることです。

 

ホ;

 小僧、わしに戦の講釈を垂れるつもりか!

 

ラ;

 いえ、そのような

 

ホ;

 光輝あるパーパルディア皇国監察軍南洋艦隊に属する海軍士官たるもの、言葉は慎重に選べ。計画が簡単に崩れてよいものではないわ。まして、相手は文明圏外のアルタラス相手ぞ。アルタラスの如き弱国を相手にして臨機応変に変えるような作戦計画を立てるなど雑な仕事をしておると同じ事を言うておるに等しいわ。そもそも、アルタラスなんぞに作戦など不要。ただ、強力な軍隊をぶつけるだけで済むことじゃ。小賢しい作戦など不要というものよ。

 

ラ;

 しかし、今回の

 

ホ;

 まあ聞け。そもそもだ。我等があの時、英雄的突撃を敢行せんとしたのは、艦隊司令部に不測の事態が生じたたからに相違ないと思ったからじゃ。事前の予定を変更する必要があるほど、司令部は混乱していると思うた。なるほど、アルタラスなぞ弱国よ。じゃがの、司令部がマヒしていては、頭がマヒしていてはじゃ、如何に光輝ある栄光のパーパルディア皇国海軍と雖もこれを打ち破るのは難しい。眼前にはアルタラスの海軍部隊がいた。この混乱に付け込まれてはまずいとわしらは思うたのじゃ、故にここは我等が味方を鼓舞する必要があると、我等パーパルディア貴族が先頭に立って味方の混乱を正すより他にないと、そう、我等は信念を以て、アルタラスを打ち破らんとしたのじゃ、それを何じゃ其方は。我等パーパルディア貴族の、皇帝陛下の御為に、敵を打ち破らんとするその英雄的行動を、自分たちの指示に従わなかったなどと、お門違いにもほどがあるぞ。

 

 ―――――

 

 ―――――

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第一外務局

 ― パーパルディア皇国第一外務局長 エルト・フォン・マリンドラッヘ

 

 カイオスが第一外務局に到着したという報告が受付からあった。応接室に通すように連絡し、私も応接室に向かう。ハンスに後を任せて応接室に向かっていると、小走りで階段を上がってくる足音が聞こえた。お茶の用意をさせて、私は応接室の前で待った。

 

「ご苦労様。話は中で。」

 

 カイオスが近づいてきたところを私は室内に招き入れた。既に派兵した貴族のアルタラスでの狼藉は、第一外務局にも届いている。だからといいて、機密性の高い情報を廊下で話すわけにもいかない。

 室内に入り、ソファーにどさっと座ったカイオスは背もたれに背中を預けて仰け反った。右手で目を覆い、疲れ切ったという動作をした。

 

「疲れているところを悪いけど、相手の態度が硬化しているの。話を聞かせてもらえるかしら?」

「ああ。」

 

 カイオスは体を起こすと鞄から書類の束を取り出した。カイオスの対面に座った私は紙束を受け取ると読み始めた。

 

「監察軍の艦隊司令部の参謀が手分けして出征貴族に尋問、いや聞き取りを実施した。なかなか頭が痛い内容だ。」

 

 海戦の部分と占領地を無尽蔵に拡大させた部分は飛ばした。我が第一外務局にとって重要なところは別だ。

 

「なるほど。ルバイル空港周辺施設へ攻撃を加えた理由は、アルタラス側がその施設に入ろうとしたので、これを妨害するためと言い訳をしているのね。呆れたこと。」

 

 ホールドワン伯爵は、元はメルト大公国の臣下の家柄。リッテンハイム侯爵家の口車に乗って主家であるメルト大公を裏切り、我が軍の侵攻を手助けし、大公家を亡ぼす一助となった。大公領内で加増を受け、伯爵位を許されたが、所詮は田舎者なのよね。

 ミリシアルやムーという列強国の存在や国旗・国章等は知っていても、ルバイル国際空港とその周辺施設という存在は知らなかった。だから、ムー国の国旗が掲げてあるにも関わらず、その施設を砲撃したのは、アルタラス側が勝手にムーの国旗を使用して、我等をひるませて攻撃させないように小細工をしたのだと主張している。事もあろうにムー国の威に借りて、我々の行動を妨害しようなどと言うアルタラスの小賢しい罠など粉砕しなければならないとつばを飛ばしながら、声高に主張したというのだから、どうしようもない連中だ。

 

「言っておくけど、カイオス。これでミリシアルとムーが「誤射」について納得するとは思えないわ。火に油を注ぎかねないわよ。」

「彼らの態度は硬化しているという訳か・・・。」

「彼らだけじゃないわよ・・・。」

 

 我が軍がルバイル国際空港周辺施設を攻撃したという一報が入り、それを外務局監察官のレミール殿下に御報告申し上げたところ、殿下は呑んでいた紅茶のティーカップを壁に投げつけ、ティーカップの皿を叩き割り、殊の外激高なされた。縛り首でも生ぬるい、首を叩き落とし、身体を細切れにしてワイバーンの餌にでもしてしまえと叫んだ。そうとうなお怒りであった。

 その後、殿下は迅速に動いた。ムー大使館とミリシアル大使館を尋ね、皇軍の関連施設への誤射に関して陳謝し、原因究明と再発防止について約束した。ムーの国のムーゲ大使は、来訪当初私が訪ねてきたものと思い、部下に応対を任せて、自身は会うつもりはなかったようだ。大使が面会しないということで、最大限の不快感を示そうとしたらしい。だが、流石に駐在国の皇族、それも「未来の皇后陛下」の御成りとあっては面会しないという選択肢は取れなかったようだ。我々が去った後に、今後のスケジュールについて確認するために残したハンスに対して、今日は面会の予定はなかったのだがねと、嫌味を言われたとのことらしい。

 

「そうか、レミール殿下はお怒りか。」

「ええ、私としても、この件で殿下を刺激したくはないわね。」

「だが、」

「ええ、こちらの不手際の事実をそのままというわけには」

 

 ムーの国旗が掲揚された施設であると認識しているにも関わらず、故意に攻撃を加えた。この事実は、我が国を窮地に追い込みかねない。だが、それだけではない。

 

「ムーはメンツをつぶされたと相当なお怒りよ。」

「さもあろう。列強では格下のパーパルディア貴族がムーの国旗を視認しているにもかかわらず、攻撃を加えてきた。ムーの国威を無視したということだ。」

「それだけじゃないのよ。」

「何?どういうことだ。」

「攻撃の被害者に日満両国人がいるのよ。」

 

 ムーは日本と満洲にパーパルディアのアルタラス侵攻の際にはルバイル国際空港周辺施設に避難すれば、彼らの国民の安全は確保できると太鼓判を押した。そして、日本と満洲は、ムーの言葉を信じて、アルタラス現地の国民に対して、ルバイルへの退避勧告を発した。だが、その結果、攻撃を受けて建物のがれきの下敷きとなった被害者が生じた。

 

「日満両国の被害者だけど一時は相当危険な状態であったということらしいわ。ミリシアルの話では、ミリシアルの魔法医師がいたから、彼らを何とか蘇生できたということらしいけど、そうでなかったら複数名、命が助からなかったそうよ。」

「そうだな。こちらにも記載があるが、監察軍南洋艦隊の従軍魔法医の腕では救命は不可能だったとも証言がある。ミリシアルには謝礼を、日満両国には見舞金を出す必要があるだろう。何とかして、つなぎをつけねばな。だが、」

「ええ、何とかして、ムーを宥める必要があるわね。」

 

 何か手はないかとカイオスの顔を見ると、カイオスは鞄から別の紙束を取り出した。それを差し出してきたので、受け取って読む。

 

陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約

・・・

第一条 締約国ハ其ノ陸軍軍隊ニ対シ本条約ニ附属スル陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則ニ適合スル訓令ヲ発スヘシ

・・・

条約附属書

陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則

・・・

第二十五条 防守セサル都市、村落、住宅又ハ建物ハ如何ナル手段ニ依ルモ之ヲ攻撃又ハ砲撃スルコトヲ得ス

・・・

 

「これは?」

「日満両国の元いた世界の條約だ。条約の締結地の名前をとってハーグ陸戦規則とも言うらしい。」

「・・・それで?」

「・・・そうか、第一外務局は戦争については不慣れであったな。」

「勿体つけている時間はないのよ。早く説明して。」

 

 ハーグ陸戦規定によれば、軍隊が防衛していない都市や建物を攻撃してはならないと定めている。ルバイル空港周辺施設は、ムー・ミリシアルとアルタラスとの間に戦時にはアルタラス軍隊の入境を禁止する規定があったことから、陸戦規定がいうところの防守せざる施設であった。パーパルディア軍は、そもそもこの施設周辺へ向かうことはなかったが、アルタラス軍はそちらの方面へと向かっていった。そして、そこへアルタラス軍は入境しようとしていた。陸戦規則が明示して定める防守せざる建物へ近づき、攻撃の対象から外すような危険を生じさせたのは、アルタラス軍であってパーパルディア軍ではない。というのが、カイオスの説明であった。

 

「・・・ふう。パーパルディアとアルタラスは戦争中ではなかったはずよ。これは戦時の規定のはず。無理やりにもほどがあるわ。」

「だが、この陸戦規則の防守せざる都市などを攻撃してはならないという規定の前提は私が説明した通りだ。軍隊同士の交戦の被害から守るために、あえて軍を離しておく。それはルバイル国際空港周辺施設に関するムー・ミリシアルとアルタラスの結んだ条約にも明らかだ。我が国としては、アルタラスに責任を押し付けるしか手がないのだ。」

「ふう・・・。ホールドワン伯爵たちは表向きは免責ということね・・・。」

 

 なんという面倒なこと・・・。

 

「殿下に恨まれそうだわ。」

 

 殿下への説明に同席してもらおうと思った。だが、カイオスは言い放った。

 

「私は第一外務局から左遷されて第三外務局局長になったが、今はそれも悪くないことだと思っている。」

 

 全く以て腹立たしいわね。

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