大日本帝國召喚   作:もなもろ

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クイラ王国首都バルラート バルラート宮殿政府庁舎区域 外務省庁舎大臣室 中央暦1639年11月19日(水)

クイラ王国首都バルラート バルラート宮殿 宰相府庁舎大臣室

 ― クイラ王国外務大臣 アイーラ・メッサル

 

「なに?もう一度言ってくれ。」

 

 クイラ王国首相のアスアド・フラート・アル=バータジー閣下が、目を丸くして言った。わかる。私も秘書官から聞いた時は同じ言葉を吐いた。驚きを落ち着ける為にももう一度話を聞くことでその時間を作りたかったからで、閣下も同じだろう。

 

「はい。1時間半ほど前に、ロウリア王国首都ジン・ハークの賠償委員会事務局にロウリア王国外務卿であるヨースコネクト・マオス氏が訪れ、ロウリア王国摂政ウィンチェスター・テルエ・フォン・ダールドルフ大公の日本及び満洲訪問について受け入れ要請がありました。目的は、ロウリアと日満両国との関係構築、今後のロウリア王即位に向けての弾みをつける為ということです。事務局には、我がクイラだけではなく、クワ・トイネ、日本、満洲の事務員がおりましたが、彼らもまた、我がクイラと同様に委員を通して本国に連絡をしたとのことであります。」

 

 日本製のオフィスチェアの背にどっぷりともたれかかって、首相は息を吐いた。

 

「早いな。アルタラスのあの惨状が起きてからまだ2日だぞ。ロウリアは日満両国に接近したがっているとみるべきか。」

 

 確かに早い。いや、早すぎるというべきだろう。おそらく、もともとロウリアの政府上層部で話は出ていたはずだ。アルタラスの件が引き金になって、あるいはそれを好機にと話を薦めたのであろう。私がそう話すと、首相も背を起こしながら、だろうなと頷いた。

 

「しかし、それをどうして日本と満洲だけではなく、我が国やクイラにも伝えたのか。いや、賠償委員会事務局で話したということは、おそらくそこには、ムーやアルタラス人もいたはずだ。次期国王の他国への訪問となれば、これは大ごとだ。どちらかと言えば、当日までは秘するべき事由のはずだが。」

「おそらくは、我が国にも援護射撃を頼みたかったということではないでしょうか。」

「つまり、ダールドルフ大公の訪日訪満を日満両国が嫌がるはずだとロウリア側は考えていたということか。」

「ええ、つい先日まで戦争していた間柄です。我々の常識からすれば、嫌がられてもおかしくない。多少なりとも護衛の為に武装した者が周囲に必要ですからな。」

 

 首相はもう一度背もたれにもたれかかり、そうなるかとつぶやいた。そのままの格好で首相が私に尋ねた。

 

「それで、外相としての意見を聞きたいが、彼らにロウリアに手を貸すべきか、それとも日満両国の側に立って彼らの意見を聞くまで判断を保留すべきか、どう考える。」

「そうですな。私は、日満両国ならばロウリアの提案を断ることはないだろうと考えますので、どう仲介に動くかを考えた方がいいかと考えますね。」

 

 首相が再び驚いた顔をした。

 

「ほう。当のロウリアが断られるかもしれないと心配しているのにか。」

「ええ、ロウリアがロデニウスにおける我々の良き隣人として生まれ変わる努力をしているのです。ロデニウスの安定は日満両国にとっても重要事項です。ロデニウスの一角に、日満両国を良く知る、それも訪日満経験を持つ国王が即位するというのです。どちらかと言えば、歓迎すべきことだと彼らなら判断するでしょう。」

 

 首相は、考えながら、一つ二つ頷いた。

 

「なるほど。確かに彼らならば、我々の常識を飛び越えて判断することはあるだろうな。そういえば、我が国の閣僚で彼らと数多く接しているのは君だったな。」

 

 首相は山上総理や李総理、德川外相や森山外相、宇野公使や平公使と複数回の面談をしている。私は総理クラスとは首相よりも面談をこなしていないが、外相クラスや公使クラス、次官クラスなどとは総理よりも数多く面談をしている。クイラ国内の中でも数多くの日満人と会談している方だと思う。

 

「よかろう。どういう形で行くべきか。まずは駐日公使や駐満公使を外交当局へ派遣して、どういう方向性で行くのがよいかを下準備させるべきだな。」

「ええ、私もそういう方向で・・・失礼。」

 

 話をしているところに、電話が鳴った。首相が笑いながら手を振り早く出ろと言ってきたので、一礼して、部屋の隅に向かい電話を取る。

 

「私だ。今首相への説明中で、なに・・・・・・・そうか、・・・・・・、いや、わかった。首相にも説明をしておく。・・・・ああ、そちらは、動いてくれ。」

 

 ふう。事実は吟遊詩人の物語よりも怪奇だな。何があったと、首相が聞いてきた。

 

「総理。先ほどの話ですが、追加報告です。日本側から要望文書が電子文書で届きました。」

「要望?我が国にか?」

「はい、先ほどの話ですが、日本国はロウリア側の要請を受け容れ、ダ―ルドルフ大公を日本国へ招致することを決定しました。受け入れ日程は、今月27日から来月の7日まで。」

「なっ!ちょっとまて、早すぎる。まだ、話が届いてから2時間もたっていないはずだ。」

 

 首相が語気を荒げた。そうだろう。いくら何でも早すぎる。

 

「ええ、おそらく、ロウリア側は既に話を通していたものと思われます。しかも、この日程ですが、おそらく、日本側は陸軍の大演習にダ―ルドルフ大公を招くつもりです。」

「なるほど。釘をさす意味も込めているのか。しかし、大胆だな。軍事演習に昨日までの敵国を招くか。それで、我が国に対する要望とは?」

「はい。日本側は、我がクイラにダ―ルドルフ大公の側で案内役を果たしてほしいとのことを要望してきております。具体的には、マルワーン殿下にダ―ルドルフ大公の側についていてほしいということを要望しております。」

 

 首相が目を閉じて息を吐いた。考え込んでいるようだ。無理もあるまい。昨日までの敵国の王族の側についてくれと言っているのだから。マルワーン殿下個人はどうかはわからんが、殿下の側近としてはあまり歓迎できる話ではあるまい。

 

「私個人としては、受け入れたいと思います。」

 

 首相の片目が開いた。そして、閉じたあとに頷いた。話を続けろということだろう。

 

「日本側の意向については分かります。ここで、クイラとロウリアがしっかりと結びつきを強めることで、ロデニウス大陸の安定を強固にしようということでしょう。実際問題として、ロウリアを抜きにして、ロデニウスの安定を図るというのは難しい問題があります。それに、ロウリアの南部諸侯の動向が不安定なので、着工に移されてはいませんが、我が国西部とロウリア東部の峻厳な地形にトンネルを掘る計画もあり、戦後は結びつきが強まることとなっておりました。どうもロウリア南部地域にも鉱山があるらしく、このトンネルを使うことができるようになれば、ベルディート辺境伯領のジワーグラッサ港にまで運ぶことができます。そうなれば、ムーとの貿易もますます捗ります。そういう経済的な側面からも、ロウリアとの関係を修復することは有益であると思います。」

 

 私の説明に対して、首相は目を開けて、再度息を吐いた。

 

「なるほどな。今後を見据えてと言うところか。」

「ええ、それに大公殿下の相役ですから、クワ・トイネのほうではつり合いが取れる者がいないでしょう。クワ・トイネ公爵家が政治の表舞台に出てこない様子は変わらないようです。日本の外交儀礼上では、一国を代表する君主の一族であれば、皇族でも王族でも公族でも名称は問わず、同列の扱いだということなのですが、臣下の家の一族であるということであれば、どうも相役としては良くないようです。その点でいえば、王弟殿下は王族の一員なので、日本側としても指名したということです。日本側から頼られたと思えばよろしいかと。」

 

 首相が一つ首を縦にふり、そしてもう一度振ると私に向かって話しかけた。

 

「よかろう。外相の意見を取ろう。殿下には一度帰国してもらわねばならんな。」

「ええ、予定では、明日から牧場の視察に向かわれる予定でしたな。それに、29日のジャパンカップを観戦される予定で、日本の陸軍の大演習には、軍部から人を出す予定でしたが、殿下に出てもらわねばなりません。ですが、日本の空軍の特別機を用立ててもらえることになっています。殿下の宿舎の帝国ホテルには既に公使館員が連絡に向かっています。」

「なんと、では、今日中に帰国されるということだな。」

「はい。早いうちにロウリアに飛んでもらい、大公殿下と顔合わせをしてもらう必要があります。首相、国王陛下の御裁可を戴かねばなりません。至急参内の手続きを。」

「うむ。其方もついていてくれ。」

「わかりました。私は、それまで電話で指示を行っておりますので別室にいます。」

「うむ。」

 

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