大日本帝國召喚   作:もなもろ

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大日本帝國を扱う以上は、神事を忘れるわけにはいきません。


東西新聞朝刊 2675(平成27・2015)年11月24日(火)

新米発売開始

 過去最高潮の売れ行きを期待

 

 今年も本日から全国のスーパー・百貨店等で新米の発売が開始される。

 今年は新世界転移と言う過去に類を見ない未曽有の出来事を迎えたことで、1月終わりごろから国民の間で米や小麦粉といった食料品を買い占める動きがでた。政府は行政指導を通じて、スーパー等に食料品の供給を絞るように促したが、食料品を求める列はなかなか止まなかった。この異常な需要は、山上内閣が食料臨時統制令を公布した頃から徐々に落ち着きを取り戻したが、政府は備蓄米の供出などを通じて供給をコントロールせざるを得なかった。

 しかし、新世界の天候は、元の世界の天候と特段の変化はなく、秋の実りも例年を超える収穫量となった。全国の農業団体の総合取纏め・中央農業指導機関である帝國農会は全国の地区農会から市区町村農会、都道府県農会を経由して、帝国全土の農業生産物の作付状況(作況)の報告を受け、この総括・取纏めを行っている。また、帝國農会は、毎月15日に農務省に対して各農作物の作況報告を行っている。

 農務省が10月末に公表した「平成27年10月15日時点の作況調査(水陸稲、麦類、大豆、蕎麦、甘藷、飼料作物、工芸農作物)」によれば、各農作物の収穫量は昨年の収穫量から増加している。これは、2月終わりに政府が農作物増産の指示を出し、農業就労者への補助金の支給を決定したことにより、農業法人就労者や小作人が増加したことで、作付面積が増えたことが大きな理由として挙げられる。農作物の増産率は、平均すると前年度の1割増しという結果が生じており、図らずも食料自給率の向上が得られた。

 全国の農業関係者、小売業者からは、平成5年の米騒動を超える新米の売れ行きを予想している声が聞こえており、関係者の期待感は大きい。

 

【人語天声】

 日本人の食生活は近年変化している。長らく米食を中心として生活してきたが、麦を材料としたパンや麺類と言った料理が食卓に並ぶ日も多くなっており、又外食産業もまた近年パスタ店などが開業数を増やしている。それでもコメの消費量は各品目の中でも一位を保っている。米は、今も尚、日本人の食生活の中心であり、欠かせない食品であると言える。

 収穫された年に出回る米を新米と言う。この新米が流通するのは、毎年11月23日を過ぎてからである。食品業界の暗黙のルールとも言うべき、この習慣は、米穀の流通にのみ適用され、他の農作物には適用されていない。

 宮中祭祀の一つに新嘗祭がある。皇室祭祀令で大祭に指定されているこの儀式は、 天皇陛下がその年に収穫された新穀などを天神地祇に供えて感謝の奉告を行い、これらの供え物を神からの賜りものとして自らも食する儀式である。即ち、神道を国家統治の基礎に置く我が国において、作物の実りへの感謝よりも先に新米を食するのは、神への感謝を蔑ろにしているものとされ、御法度というべきなのである。そして我が国において、神への感謝を示す第一人者は、 天皇陛下である。 天皇陛下が神への感謝を神事として執り行った後に、国民一同新米を食すというのが、伝統となっているのである。

 この伝統と言うのが、実に強固に息づいているのを感じさせるところには、この習慣は別段、法制化されていないというところにある。神道行政を管轄する内務省神社局も、宮中祭祀を担う宮内省も新嘗祭より前に、新米を流通させるということを禁じる法令を制定しているわけではない。農林行政を扱う農務省においても同じである。民間において流通を自粛しているにすぎないのである。

 平成5年の記録的冷夏に伴う大不作の際に海外からコメの緊急輸入が行われたが、この際にも新嘗祭よりも前に新米が店頭に出回ることはなかった。緊急輸入を行ったのにも関わらず、店頭に米が並ばないのを政府による不合理な規制と決めつけた米国農務省が日本政府に対して規制緩和の申し入れを行ったが、農務省や通商産業省がそのような流通規制はないと揉める事件があり、この件は駐日米国大使の調停により終息したが、それでも新米や海外米の流通が行われなかったのである。

 コメは日本にとっての聖域であると言ってもよいだろう。

 

 ―――――

平成28年度予算大蔵原案最終調整

 軍部の反発は必至。復活折衝交渉大荒れになるとの読み。

 

 本紙記者の取材によって、来年度予算大蔵原案が確定前の最終調整に入ったことがわかった。大蔵省主計局消息筋の話によれば、主計局長と大蔵次官の間で数度の折衝が行われ、大蔵大臣への稟議書提出時期についての話し合いが行われたとのことだ。

 8月から始まった各省から大蔵省への概算要求提出では、新世界転移に伴う新規事業の予算要求が目立った。なかでも特筆すべきは、山上内閣が新世界転移直後から言及していた食料増産計画に係わる各種経費だ。新たに農業に従事する者への支援金・農業法人従業員への雇用促進金・農業小作人に対する控除増加といった人的な農業人口増加を目的とした予算手当、農業用肥料・農業用機械の購入等の経費に対する控除額増加といった予算手当、漁船用軽油購入費の所得控除額増加、農業学校・水産学校等の実業学校に対する就学支援、漁船が出漁する際に警備隊の艦艇を護衛に就けるための活動費用などを農務省は新規計上した。農務省が新たに計上した予算は、ほぼ認められたと聞いている。だがこの内、漁船が出漁する際の護衛費用については、省庁間での激しい予算獲得競争があったようだ。

 新世界の海には魔物と呼ばれる怪異が生息していることが現在では判明している。その大きさは数メートルから10数メートルの大きさにもなり、小さな漁船では簡単に転覆してしまう大きさである。転移当初はこれを知らずに出漁した漁船が被害を受け、死傷者が発生した。これの対策として、各漁港単位で海軍警備区に対して護衛の海防艦艇を派遣するように依頼した。現在では航空機による哨戒活動も併せて実施することで怪異への対策は強化されており、同時に怪異が生息していない海域の把握も進んでいるが、船団への護衛は行われている。

 この船団護衛は海軍の海防艦艇で行われていることから、兵部省の海軍部予算として計上されるべきと言う軍令部の意見と漁業支援・国民の食の確保と言う観点から農務省の予算として計上されるべきという意見とが対立していた。海防艦艇乗組員の出動手当や燃料費といった必要経費の額は変わらないが、海軍が大蔵省に対して伝票を切るのか、海軍が農務省に対して伝票を切るのかということは、実は大きな違いがある。それは、業務主体が何処かと言うことに直結する。

 海軍が業務主体ということになれば、出動に関しての手当ても海軍の基準で計算されることになる。護衛の計画も海軍が単独で決定することになる。一方で、農務省が業務主体ということになれば、出動に関しての手当ては農務省の基準で決定されるということになる。護衛の計画も大枠を農務省が計画して、現場が状況に応じて決定する。海軍と農務省で手当の額などに露骨な差額は出ないであろうが、大蔵省の高官筋の意向としては、農務省の所管とする様子だ。

 

 海軍は新世界における海軍警備行動の強化を掲げて、在役艦の定員拡大を目指した予算増額を要求した。我が国を含めて旧世界の各国の海軍艦艇は、本来定められた定員を減じた形で在役艦を動かしてきた。艦隊に配属している艦艇でも定員2割減などの予備艦の扱いを受けた状態であった艦も珍しくない。大蔵省はこの定員増予算を査定した代わりに、海防艦艇の新規建造予算を認めた。固定の人件費の増額は認めないが、新規の発注は国内総生産の増加につながるというのが大蔵省の見込みだろうが、海軍側としては面白くない結果であり、復活折衝の閣議は大荒れになるというのが識者の見通しだ。

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