軍事参議院会議議事録 第5回 平成27年1月30日 午前11時
議事録作成 内閣官房総務課 書記官 矢澤蝶子
出席者
内閣総理大臣 山上誠一
内務大臣 岡孝則
外務大臣 侯爵徳川義輝
大蔵大臣 李俊太郎
兵部大臣 大田原信頼
通商産業大臣 田山宏茂
運輸大臣 泉惣太郎
内閣書記官長 荒池正十郎
国務大臣兼警保院総裁 大出幸司
国務大臣兼情報局総裁 殿山真二郎
大本営総監 元帥陸軍大将 真柴孝則
大本営副総監 元帥海軍大将 澤義信
参謀総長 陸軍大将 李修文
軍令部総長 海軍大将 柳沢隆俊
作戦総長 陸軍大将 大河内之綱
元帥海軍大将 崇仁親王
元帥陸軍大将 仲仁親王
元帥陸軍大将 師仁親王
元帥海軍大将 柳瀬泰三
敬称略。官職表記は内閣議事録作成規程に準拠。皇族表記も同規程より宮号にて記載。
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定刻、山上議長開議の宣告。司会進行を荒池翰長へ命令。荒池翰長現状把握せる新世界の状況につき徳川外相に報告を依頼。
徳川外相、別添番号1「外務省報告書」にて解説。閣議決定済のクワ・トイネ公国側に我が国への使節団の派遣を依頼する件についても現地外交官へ指示したことを報告した。
派遣した大森泰三一等書記官からの報告によれば、現地人の我が国に対する反応はおおむね良好とのこと。
(質疑応答)
李蔵相「外相。国交樹立ともなれば、大使公使の交換が行われるのが常例であったが、この世界においてもそうなのか。」
徳川外相「確認は取れておりません。しかし、我々はこの世界の常識に無知です。なるべく外交当局の相互派遣にてこの世界の常識を把握するとともに、我がほうの常識を知ってもらいたい。積極的な交流を重ねていき、常識のすり合わせを行わなければ思わぬところで躓く可能性があると思います。起こる前に防ぐことが肝要かと。」
李蔵相「交流の手段はどうなさるおつもりか。帝都と現地との間の通信の手段は?」
徳川外相「逓信省と調整中ですが、海底ケーブルの敷設は今後の課題として必須のものかと。現状においては、無線による対応しかありません。クワ・トイネ公国から最も距離的に近く、強力な電波送受信が可能な台北の台湾軍司令部から、一等海防艦新高を経て、現地と交信をしております。ですが、海防艦では送受信の能力が低く、難渋しております。そこで統帥部、海軍の方にお願いしたいが、電波送受信を強力にできる艦艇をクワ・トイネ公国に派遣してもらえないだろうか?」
柳沢総長「強力な電波送受信を可能とするということであれば、戦艦・空母の大型艦艇となりますが、相手方を威圧しないだろうか?という疑問がある。」
真柴総監「加えてだ、統帥部としては、資源の入手も困難となっている現状では、大型艦を派遣することで消耗する燃料も気にかかる。こちらから戦争を仕掛けなくとも向こうから仕掛けてくることもありうる。」
泉運相「補足しますと、新世界転移後中東・米国などの産油国からの原油の輸入が完全にストップしました。加えて、日本近海を航行していた船舶以外はこちらに転移してきておりませんので、完全に備蓄を取り崩している状況です。民間船舶会社に対しては、船舶航行を取りやめるように行政指導をしている次第です。」
大河内総長「運輸大臣。航空燃料のことも考慮に入れてもらいたい。この世界には「ワイバーン」なる巨大な空飛ぶトカゲが攻撃兵器として配備されておるらしい。空を飛ぶ兵器である以上空軍の戦闘機にて対処すべきだ。民間機の発着便数を減じて、戦闘機の燃料を大幅に確保してもらいたい。そうでなければ、空からの脅威に対処することが困難だ。」
荒池翰長「泉大臣。大河内総長。その件はのちにお願いします。今は徳川外相の提案の審議を先にお願いします。」
葛城宮元帥「侯爵。この件は相手国の了承が先ではないか?相手国の同意もないのに軍艦を派遣しては砲艦外交の誹りを免れまい。そのようなこと御上も望まれぬし、帝國の権威を失墜しかねん。まずは、そこじゃないかと思うが。」
徳川外相「殿下。軍艦は陸地に近づきすぎず、沖合に停泊している状態ではいかがでしょう。姿を見せぬようにすれば、威圧にもならぬかと存じます。」
葛城宮元帥「ふむ・・・。柳沢君どうだ?」
柳沢総長「砲艦外交にならぬということであれば、御意にも適いましょう。しかし、外相。大型艦を動かすということは、随伴艦も必要です。燃料事情を鑑みるとこの件軍令部としては、同意しかねるところがある。大本営全体としても軍事的緊張を誘発しかねない行動には乗り気ではない。なにをそのように急いでおられるのかお聞かせ願いたい。」
徳川外相「昨晩駐満大使から届いた情報によると、満州国の国境地帯では、紛争が頻発しているとのことです。いずれも相手側の装備は我々の知る時代区分でいうところの中世の時期程度の武装でおよそ脅威になるものではないとのことでした。なれど、この世界には先ほど大河内総長のいわれたような「ワイバーン」なるトカゲを使役した部隊もあると聞きます。未知なるものは之だけではないかと思います。この世界の常識を知り、相手国と円満な関係を築かなければ、その未知なる存在にやられてしまうやもしれません。情報の収集。これは喫緊の課題であると外務省は強く感じております。」
一時静寂。
三笠宮元帥「山上総理。この辺で総理のご意見をお聞かせ願いたい。」
山上首相「元帥宮殿下のご下命により、私の思うところを諸氏に申し上げる。徳川さん、ここは、徳川さん本人が、クワ・トイネ公国へ出張してもらえぬだろうか。クワ・トイネ公国上層部とよく話し合いこの世界の常識をまず仕入れてきてもらいたい。加えて、今後のことも踏まえ、政府専用機などが公国に着陸できるように着陸許可を。欲を言えば飛行場の設立許可を得てもらいたい。また、港湾部の一部に強力な無線基地を設立できるような許可も。」
岡内相「総理。それでは、我が国の技術力の一部を相手国に知られることになりますが。」
山上首相「もともとある程度はやむを得ないと思っていた。派遣される使節団にはいろいろと見せることになっているのだからね。しかしだ、これまでに判明した事実、加えて満州国側から聞かされた事実をもとにすれば、我が国とこの世界の国々とは圧倒的な、それこそ天と地ほどの差がある。公国側に我々の機械を設置したとしても、この世界の技術力をブレイクスルーするような危険性はないと判断する。それでもだ、これまで収集した事実を覆す情報が寄せられたとき、そこで我々の選択を誤らせないためにも、外務大臣の危惧は潰しておくほうが良いと思う。我々がこの世界の常識を知らないことで、相手方を怒らせることのないようにすべきだと思う。そのためなら、大型艦の派遣よりも早いヘリで外相には飛んでもらいたい。」
澤副総監「首相。その件、私も同行させていただきたい。軍事的な部分についての情報収集を私のほうでおこないたい。」
真柴総監「今わしが国外に動くわけにはいかぬからな。澤さん。よろしくお頼み申し上げる。」
徳川外相「それでは総理。満州国側との調整をお願いしたい。満州国の外交部は、友好的な勢力との接触を求めて、クワ・トイネ公国への特使派遣の調整を行っております。この際、私が公国に仲介をして特使受け入れ受諾を依頼するつもりです。満州国側も友好的な勢力と接触を図っているやもしれません。この仲介は外務次官では格が落ちます。実務は外務省でお引き受けしますので、頭だけでもお願いしたい。」
山上首相「受けたまわった。徳川さんと澤副総監は至急出発するように手はずを整えてほしい。さて、参議官の皆様、徳川外相の提案については、このような決定でよろしいでしょうか。」
反対者無し
荒池翰長「暫時休憩とします。次の議題は関東軍の出動つきまして、参謀本部よりの作戦案を討議したく思います。」
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