(第一第二外務局共同作成:皇国及び日本国満洲国間協定の基礎概略)
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極秘 一時的且拘束力なし
皇国及び日本国満洲国間協定の基礎概略
第一項 三国間の基礎的関係
一、現在の国境線の維持
二、相互の国内問題に対する不関与
三、通商関係における公平な取引
四、紛争の防止及び平和的解決の為の三国間協定
五、国家相互の親善関係の構築と増進
六、国民間の交流を促進するための相互理解の増進
第二項 皇国政府及日本国満洲国政府の採るべき措置
一、皇国及び日本国満洲国三国間の不可侵条約の締結に向けた交渉
二、皇国及び日本国満洲国三国間の勢力圏の確定に向けた交渉
三、魔導技術及び科学技術の相互交流の為の協定締結に向けた交渉
四、最恵国待遇を基礎とする通商条約締結のための交渉の開始
五、皇国及び日本国満洲国間の国民間の交流を開始するための法令の整備
第三項 皇国政府よりの希望条項
第一款 日本国に対する希望条項
一、日本国皇太子と皇国皇族との婚姻(但し皇太子妃としての権限は希望せざるも、身位は正室扱いとすること)
二、日本国皇子と皇国皇族との婚姻
三、皇国皇族と日本国皇女との婚姻
四、皇国及び日本国の貴族華族間の婚姻の許可
第二款 満洲国に対する希望条項
一、国境線の確認に関して日本国以外の第三国の監督の下での確認
二、皇国内を通過する鉄道路線の敷設に向けた交渉の開始
第三款 日本国満洲国に共通する希望条項
第一目 臣民間に関する条項
一、皇国及び日本国満洲国臣民間の入境に関する法令の整備
二、皇国及び日本国満洲国臣民間の商行為に関する法令の整備
三、皇国及び日本国臣民間の婚姻に関する法令の整備
第二目 経済活動に関する条項
一、エストシラント港拡充に向けた交渉の開始
二、マイゼンブルク飛行場の国際空港化に向けたムー国を交えた交渉の開始
三、エストシラント及びデュロの開港に向けた通商協定締結の交渉の開始
四、エストシラント及びデュロの工業地域への日本満洲資本の参入の許可及び実施の方法についての交渉の開始
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(第三外務局内部資料:対日対満外交交渉要綱草案)
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部内限 破棄
対日対満外交交渉要綱
皇国と日本国満洲国三国間の友好親睦関係を深めるための方策
1.日本国皇帝は高齢であるため、皇太子に譲位する。即位に際して、新たに皇国皇族より皇后を迎える。現在の皇太子妃は貴族階級の出であるということなので、国債儀礼から鑑みても、皇国皇族たる皇后が上位者となる。現在の皇太子妃は第二夫人としての礼遇を受ける。
2.新皇帝即位後新たに嫡出の皇子が生まれるまでは、皇太子は空位とする。
3.その他の皇族貴族と公国貴族との縁組も奨励するべく、皇国及び日本国政府は運動を開始する。
4.満洲国執政は新皇帝即位後直ちに交代する。この際に選出母体となる参議の交代も実施する。現在の満洲国の体制はいびつなものであるため、将来的には、嫡出の第二子を満洲国皇帝に即位させることを視野に入れる。この際には、皇后には皇国皇族を推戴する。
5.日本国満洲国は科学文明国であるがために、魔法文明が主流であるこの世界の常識には疎い。これがため、皇国は日本国満洲国を善導し、魔法文明国との交流の指導を開始する。この指導に際しては、日本国満洲国の両国が新たな国と国交を開設せんとするときは、特に重要な指導を行うべく、日本国満洲国政府は、事前に皇国政府に相談すべきことに留意する。これらに関する費用は、日本国満洲国が負担する。
6.科学技術と魔法技術の相互交流を図る。これがため、必要なる法制度を日本国満洲国は整備し、その皇国は必要かつ適正な指導を行うものとする。これらに関する費用は、皇国、日本国、満洲国が適切な応分の下に負担する。
7.皇国と日本国満洲国は人材の交流を増進する。これがため、皇国、日本国、満洲国政府は必要な法令を整備し、必要な人材の供給を適切に実行する。これらに関する費用は、皇国、日本国、満洲国が適切な応分の下に負担する。
8.皇国は、皇国領域内において、日本国満洲国が求める資源の輸出に協力する。その資源の採掘、搬出、輸送等、事業を遂行するに際しての必要な費用は日本国満洲国が負担する。
9.日本国満洲国の法制度と皇国をはじめとする世界各国の法制度には相違点が多く、誤解が生じやすい。これが為、日本国満洲国政府は、皇国政府の精査の下、法制度の改正を検討する。
10.皇国は日本国満洲国との間に友好的親睦関係を構築し、科学文明の優れたところを取り入れるようにすべきである。以上の要綱は、あくまでも要綱であり、相手側の譲歩を強いるためのものであるため、実際の交渉の際には、相手方の反応を確認して臨機応変に対処すべきである。
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パーパルディア皇国皇都エストシラント 第一外務局 中央暦1640年1月5日(火)
― パーパルディア皇国外務監察官 レミリア・ブラウンシュバイク・フォン・レミール侯爵夫人
「ようやく出来上がったか。見せてみよ。」
対日満交渉における我が国の要望事項の草案が出来上がってきたので、エルトが持ってきた。
「ふむ。第一外務局と第二外務局が共同して作成したか・・・。第三外務局はどうした?一応、現時点では、日本と満洲はあそこの管轄だろう?」
「それが・・・。カイオス局長の前でいうのは、あれなのですが。」
エルトが困った顔をして、苦笑いをしている。ふむ・・・。
「よい、マリンドラッヘ局長。殿下、こちらが、第三外務局内部で作成されていた対日対満外交交渉要綱草案です。お目汚しとなり、まことにすみません。」
カイオス局長が、自分の鞄から書類を取り出し、差し出してきた。なになに・・・・。
「話にならんではないか。」
あまりの内容に怒りを通り越したというのはこのことだな。何故だろう、不思議だ。怒りがわいてこない。テーブルの上に放り投げて、カイオスを問い質した。
「カイオス、第三外務局は日満両国のことをしらんのか?あまりにもふざけすぎている。」
「それが、日本国満洲国に関する情報は、未だに機密指定とされているままとなっております。昨年、日満両国の情報はあまりにも影響が大きいということで緘口令が敷かれて以来其の侭となっておりますので・・・。」
なんと。いまだにとは。エルトの顔を見たが、エルトも一礼して、その通りと頷いた。うーむ、よくないことだ。だが。
「だが、カイオス。お主はそうはいうが、外一と外二の外務局は、きちんと日満両国の情報を集めて、ギリギリのところを攻めた要求を出してきているぞ。なぜ外三はそれをやらんのだ。」
「まことに以て面目なく・・・。」
第三外務局の職員の質は落ちると聞いていたが、これほどまでか。情報収集能力の欠如はひどいものだな。
「よい。カイオスよ、外三職員といえども言われたことはできるのだろう?当日は人員の関係でどうしても人手がいる。お主の目で見て、比較的まともなやつを何人か見繕って出仕させよ。わらわの命令に逆らうものはおるまい。」
「はっ!」
カイオスの件はこれでよいとしよう。では、本題だな。
「さて、エルト。エストシラントとデュロに日満両国の資本を誘致して、発展させようというのだろうが、彼らが乗ってくるのか?」
「そこは交渉次第と言うべきでしょう。秘密協定を結んで、日満両国人の身体保護を万全にすることはまず絶対に必要なことでしょう。日満両国人を貴族階級の者と同様に扱うべく、秘密裏に交渉をすべきです。」
「そうよな。日満両国の平民を貴族階級と同様の地位に置くなど、表にはだせまい。」
「それに、我々は、クワ・トイネやクイラのように治外法権地帯を設けることは絶対に認められません。」
「なるほど。土地を自由にさせることはできないということだ。それはわかる。だが、土地の所有権は認められぬにしても、建物の所有権は認めるべきではないか。」
「土地と建物を別々に考えるのですか?建物は土地の上に立っていますから不可分のような気がしますが?」
「うむ。しかし、日満両国にはコンテナハウスと言う移動が容易な住居があると聞く。我々の観念では、土地と建物は一体だが、彼らではそうではないかもしれぬ。日満両国への心象をよくするためにも、この件では、例外と言うか、一歩譲るというかそういうものを認めた方がよいのではないだろうか。」
「しかし、殿下、建物の所有権などは我が国では、ムー人やミリシアル人にも認めていませんよ。」
「それは、パーパルディアまで来て、半永久的に居住するようなムー人やミリシアル人がいないだけだろう。我が国と日満両国は近い。あるいは、長期にわたって我が国に住む者がいることもあるだろう。それにだ、日満両国の法律では、こういう権利を地上権と言うのだが、そういう権利があるのだ。我々が、日満両国の法律にも理解を示しているということを理解させるためにも、ここは大きく打ち出していくべきだと思うがどうか。」
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