大日本帝國召喚   作:もなもろ

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朝田さんがようやくパーパルディアへとやってきました。


パーパルディア皇国皇都エストシラント エストシラント港 中央暦1640年1月17日(日)

パーパルディア皇国皇都エストシラント エストシラント港 中央暦1640年1月17日(日)

 

 第三文明圏及びその周辺地域において随一の規模を誇る港がパーパルディア皇国首都エストシラントにあるエストシラント港である。エストシラント港には第一から第八までの桟橋があり、第一から第二が列強国船専用、第三から第五が外国船と内国船の共用、第六から第八が内国船の専用の桟橋となっている。

 第一と第二を列強国専用としているのは船舶の大きさの都合に依るものである。ミリシアルやムーの船舶は巨大であるため、第三文明圏とその周辺地域はおろか普通の文明国の船舶であっても停泊に十分な設備がなければ、船舶の受入れができない。そうとはいっても、パーパルディアもまた列強国に名を連ねている国であり、「同じ」列強国の船を受け入れることができるだけの力があると示すのは国際社会において当然のことであった。

 ルディアスが未だパースネウス王国王太子の時代であったころから、エストシラントの拡張は進められた。パースネウス王国に戦争を吹っかけてきた数カ国をルディアスは王国騎士団を率いて自ら討伐した。その後、王太子の求めに応じて、当時の父王は、その数カ国の領土から各々一部を併せてエストシラント公爵領を創設し、王太子に襲爵の勅許状を与えた。そのエストシラント公爵領は海に面しており、当時は小さな港があるだけであった。ルディアスは王国領内の貴族に資金援助を受けて、港湾の拡張工事を進めた。先の数カ国を併合した後に発生した戦災孤児や敗戦によって奴隷身分に落ちたものなどを動員して、後の第一桟橋を完成させる。どう見ても当時のパールネウス王国には不相応な大きさであったが、王太子は船を何隻も停泊することができるのだとして押し切った。

 パールネウス王国が急拡大し、ルディアスが国王に、そして更に数カ国を征服して、皇帝に即位したころには、パーパルディアは列強と呼ばれる強国に成長した。このころから港湾整備を進めても列強国に相応しい港湾施設を持つに至ることは時間的に間に合わなかっただろう。皇国貴族は皇帝の先見の明の深さに一層の敬意を表した。

 エストシラント港第一桟橋は主にミリシアルやムーといった列強諸国の大型船舶が停泊できる構造を持っている。この港湾の機能の関係で使用できる桟橋が割り振られているに過ぎないが、事実は時折それ以外の価値を生じさせるものである。即ち、第一桟橋に停泊できる船を持つ国が強国であるという価値を生じさせた。

 当初、レミールは日満両国の船を日本国と満洲国の特使を乗せた船を第一桟橋に停泊させようとした。日満両国の艦船の規模を考えれば、他の桟橋では収容できないだろうという判断であった。また、レミールは自国がこれまでそうしていたように、そして日本国とクワ・トイネ公国の初めての接触があった時のように、日満両国は軍艦を派遣すると考えていた。パーパルディア皇国がこれまで「軍艦」の接舷を許したことは少ない。あるのは、文明圏外国家が保有するような「軍船」である。先進11ヵ国会議へ参加するために艦隊を護衛として帯同したようにこの世界では海外へ異動する大使の為に軍船を同行させる。従って、文明外国家もパーパルディアへ大使を送る際は軍船を同行させている。ただし、ミリシアルはパールネウス王国時代は軍艦で大使の護衛をしてきたが、パーパルディア皇国となってからは、大使は飛行機で入国することが通例となっており、ミリシアルの軍艦が入港したことはない。ムーの軍艦が数度大使の交換の際に入港した程度である。。

 レミールは、軍艦の接舷をさせるとしたら、規模も設備も整っている第一桟橋以外にないとして反対する第三外務局の大多数(パーパルディアでは日満両国の正式な担当は第三外務局のままであった)を押し切り、港湾管理局に日満両国準備をさせることとした。しかし、日満両国外交当局は、新世界での外交上のやり取りの結果、パーパルディア皇国を挑発するような真似はよろしくないと判断し、政府レベルで協議した結果、軍艦での特使派遣は見合わせることにした。

 第三外務局は、日満両国が軍艦を派遣しないということを聞きつけ、レミールに対して再考を促してきた。レミールもまた、日満両国が軍艦を派遣しないということを聞いて驚いた。すぐさま第一外務局に対して調査を命じてみれば、日満両国がパーパルディア皇国の政治情勢を慮って軍艦を派遣しないということを聞いて、頭を抱えた。レミールは、日満両国が派遣した軍艦を見せることでパーパルディア皇国貴族を震撼させ、日満両国侮りがたしと言う印象を彼らに植え付けることを目的としていた。そして、さらに日満両国の軍艦を第一桟橋に停泊させることで日満両国を列強国に準じる存在であるということもなし崩し的に認めさせようとしたのであった。その構想が破綻し、レミールは数日間沈み込んだ。

 レミールと第三外務局の話し合いは第一外務局も加わって継続され、日満両国が派遣する船舶の大きさから、第二桟橋に停泊させることで落ち着いた。

 そして今、その第二桟橋に日満両国が派遣した、大日本帝國海軍高雄鎮守府所属の一等海防艦「次高」が、パーパルディアのタグボートの手によって入港しようとしていた。

 

 

 ―――――

 

「愈々、やってきましたな。」

 

 朝田に声をかけるのは、満洲国のパーパルディア特派大使の陳芳郎である。元駐英大使、元駐仏大使と言った列強国の大使を歴任し、元老院議員を二期務めた後、参議に任命された。外交官の中では大物である。

 

「ええ、しかし、これからが大変ですよ。」

「ああ、気難しい人間が多い国と聞いてますからね。」

 

 タグボートによって海防艦が第二桟橋に接舷された。いよいよ上陸である。

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