大日本帝國召喚   作:もなもろ

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フェンでは邦人が捕縛されていますが、日満両国にはその報は伝わらず、ついには軍の主要施設が業務停止状態に。こうでもしなけりゃ、初動の遅れが出ないと思いました。


大日本帝國長崎県対馬市 対馬要塞司令部 2676(平成28・2016)年1月18日(月) 午前9時

大日本帝國長崎県対馬市 対馬要塞司令部 2676(平成28・2016)年1月18日(月) 午前9時

 

 ― 対馬要塞司令部正門前

 

 黒塗りのセダンが2台、同じく黒塗りのバンが1台、対馬要塞司令部の正門に到着した。正門前で警備に就く衛兵が先頭車に近づいていくと、運転手側後方の窓が開いた。運転手席後方に座っていた男は陸軍の軍服を着用しており、襟の階級章は陸軍少佐のものであり、その階級章の後方には憲兵であることを示す六光旭日の憲兵特別徽章をつけていた。

 

「ご苦労様です。本日は当司令部へ何用でしょうか。」

 

 憲兵将校の登場に緊張した表情で衛兵は目的を尋ねると、その憲兵少佐は憲兵手帳を取り出しながら言った。

 

「ご苦労様です。私は横川予備役陸軍憲兵少佐です。本日は監査の目的で参りました。こちらが兵部大臣の命令書です。司令官室の場所は存じておりますので、案内は結構です。我々3台の車はこのまま玄関に進みます。ああ、連絡は不要です。立入検査開始までの間に何らかの準備をされては困りますので。では失礼します。」

 

 憲兵少佐は衛兵の誰何に答えると、車を発進させた。あっ、ちょっと、と衛兵は車が進むをの止めようとしたが、3台の車は正門を通過し、要塞司令部庁舎玄関の車寄に停止した。要塞司令部と言っても対馬市役所の隣にある小さな建物でしかない。正門と玄関との距離は目と鼻の先だった。

 

「ええ・・・。一体なんだっていうんだよ。」

 

 対馬警備隊から派遣されてきている衛兵は突然の出来事に呆気にとられたが、憲兵手帳のバーコード照合で身元の確認は採れているので、まあいいかと職務に戻ったのだった。

 

 ―――――

― クイラ陸軍第二師団魔法第二連隊長バハル・バイダス陸軍魔法大佐

 

 要塞司令部内の事務室でパソコン操作の教習を受けていたら、廊下から多くの人数が歩いてくる音が聞こえてきた。こちらの方に向かってきているな。それにしてもいったいどうしたことだというのだろうか。この要塞司令部の職員は、要塞司令官を筆頭に司令部参謀1人、司令部部員2人、副官1人、主計尉官1人、准士官下士官6人、主計下士官2人、兵6人の20人ほどの人数だ。この事務室にほぼ全ての人間がいるのにこれだけの足音はおかしいことだ。

 

「篠田軍曹。誰かが数名近づいてくるが、今日は何かあるのか?」

 

 教習担当の軍曹に聞いてみたが、心当たりはないようだ。しかし、敵ではない。敵ならばこのように足音に無頓着なことはないだろう。

 

「臨時業務監査です。全員仕事の手を止めて下さい。」

 

 事務室の扉が開かれると、日本陸軍の軍服を着た男が入ってきた。階級章は陸軍少佐のようだが、はて、見慣れぬマークがついてるな。なんだ?右手で何か手帳のようなものを開いて掲げて、左手には何か書類を掲げたぞ。ん?手を止めろ?あれ、これいつだったかの刑事ドラマでみたことあるようなセリフだが。

 

「なんだ。なんだ。」

「監査?なんだよ、聞いてないぞ。」

 

 司令部事務室内のあちらこちらで声が挙がった。

 

「これは、一体どういうことですか。私共は何の通知も受けていませんよ。」

「臨時の鑑査です。前もって連絡することはありません。司令官閣下以下全員をこちらにお呼びしてください。」

 

 要塞司令部庶務掛の佐々木大尉の苦情にもどこ吹く風で陸軍少佐殿は司令官閣下を呼び出すように佐々木大尉に言いつけた。おいおい、大森閣下を呼び出すって、あれ、少佐だろ。そんなことできるのかね?

 

 ―――――

― クワ・トイネ軍務局所属アルフォンソ・ヤゴウ魔導師

 

「長崎弁護士会所属、横川喜三郎予備役陸軍憲兵少佐です。本監査にあたり、予備役召集となり、この監査の指揮を取ります。」

「北部九州税理士会所属、税理士の浜野弘美と申します。」

「長崎県警捜査二課、田中麻里警部補です。」

「久留米憲兵隊長崎憲兵分隊第三班長の陳史郎。階級は、陸軍憲兵曹長であります。第三班の班員6名は廊下に整列させております。」

 

 軍人が2人、警察官が1人、民間人が1人。この司令部事務室で自己紹介をした。事務用の椅子に座る大森閣下の顔は不満げだ。

 

「随分と急なことではないか。それに税理士と長崎県警のそれも捜査二課の刑事がくるとは、一体全体どういうことだね。」

 

 大森閣下は、横川少佐から渡された紙を視ながらつぶやく。紙には、兵部大臣、すなわち、日本軍の軍を管理する、我が国でいうところの軍務卿からの指示が書かれてあるという。

 

「本監査は、緊急の臨時監査となっており、全国一斉に同時刻に行われております。全施設の監査が終わるまでは、業務用電算端末などには触れないようにお願いします。」

 

 ふむ・・。ということはパソコン教習はしばらく中止ということか。いやまて、全施設といったか?

 

「この命令書には、陸軍次官だけではなく、海軍次官や空軍次官の名前も書かれてあるが、帝國軍全軍の経理監査を一斉に行っているというのかね。」

「そうですね。だからこそ、私のように憲兵の予備役召集がおこなわれてまで実行されているのでしょう。憲兵の平時編制では数が足りませんから。」

 

 大森閣下が、ふうとため息をついた。

 

「うちのような小規模の司令部なんぞに監査を送り込んでくるとは・・・。これは、税金の無駄遣いじゃないかね。」

「申し訳ありませんが、私も予備役将校として召集されてきております。職務をおざなりにするわけにはいきません。」

「わかっとる。」

 

 大森閣下は憮然とした様子で、首を左右に振って、人を探した。

 

「聞いた通りだ西野。経理書類の点検作業準備を始めなさい。」

 

 要塞司令部経理掛の西野陸軍主計中尉は、憲兵らに一礼しながら問いかけていた。

 

「紙媒体の申請書類や外部との契約書類などを倉庫から運びだしますが、何年分必要ですか。」

「そうですね。では、3年分お願いしますか。」

「わかりました。それでは、運び出しますので、憲兵兵の方に確認をお願いしたいのですが。」

 

 いろいろと話が進んでおり、我々はどうしようかと思っていたところ、大森閣下からせっかくだから、経理監査についても実習の一つとして見学するようにとのお話を頂いた。そして、横川少佐を呼び出して、私たちはクワ・トイネとクイラからの実習生ではあるが、大佐待遇なので上官に対する敬意を以て接するようにとの話をした。横川少佐は見学は構いませんが、外と通信することはできないので、そのつもりでとのことを申し渡された。昼飯を兄と食べる予定だったが、今日は司令部に缶詰めとなりそうだな。

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