大日本帝國召喚   作:もなもろ

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今、日本の歴代内閣の過去記事に国務大臣の名前などの情報を遡って記載しています。拙作日本の山上首相が第何代にあたるのか、徳川外相も第何代に当るのか、今拙作中では開かれているのですが通常国会が第何回にあたるのかなど、どうも細かい点が気になりだしました。なんとか、追いつきたいものです。


満洲帝國新京特別市 国務総理大臣執務室 2676(興信28・2016)年1月18日(月)午前10時

満洲帝國新京特別市 国務総理大臣執務室 2676(興信28・2016)年1月18日(月)午前10時

 

 満洲帝國新京特別市の国務院庁舎には、満洲国の行政を司る国務院の本体機関が入っている。すなわち、国務総理大臣と国務院官房と総務庁の3機関である。

 国務院官房とは、国務総理大臣を直接補佐及び支援する機関として、閣議事項の整理、国務院の庶務、行政各部の施策の総合調整、国務院の重要政策に関する情報の収集分析などを行っている機関である。国務院官房の長は国務院官房長官であり、国務大臣を以て充てられる。国務総理大臣と国務院各部大臣からなる国務院全体の官房組織である。

 一方の総務庁は国務総理大臣が自らの職務権限に基づく事務を処理するために設けた機関である。元々は、満洲国建国において中心的役割を果たした日本の関東軍が満洲国の政治の実権を握る為に作られた組織である。日本本土から送りこまれた高級官僚が総務庁の長である総務長官を務め、その仕事を日本人官吏が進めた。裏方に徹してはいたが、満洲国における政治の実行は彼らの手により企画され、国務院各部によって実行に移されていった。この関係に変化がみられるのは、第3代の国務総理大臣である李康正(りこうせい)が、総務長官に総務庁生え抜きの官僚である王志徳(おうしとく・第8代総務長官)を任命したころからである。総務長官はあくまで官僚の就任するポストであるが、その就任には国務総理大臣の意向が強く働き、国務総理大臣と進退を共にするのが常例となっている。

 国務院庁舎は地上4階、地下2階の造りとなっている。1階には応接室、貴賓室、記者会見場やホールなどが存在する。2階と3階の半分は総務庁が使用し、3階の半分と4階の一部を国務院官房が使用する。そして4階の残りには、国務院各部大臣の集合場所として使用される国務各大臣応接室、国務院会議が行われる閣議室、首脳会談などに使用される特別応接室、国務総理大臣執務室、国務総理大臣応接室、国務院官房長官室、官房副長官室、総務長官室などが置かれている。

 

 ―――――

『さあ、間もなく、ジン・ハークの満日両国軍基地から満日鍬杭の四か国の外相が姿を現します。』

 

 総理執務室のテレビからテレビ新京のジン・ハーク特派員の声が流れていた。その様子を眺めるのは李陽詢国務総理大臣と腹心の部下、テレンス・ストーニー国務院官房長官と塩野博国務院総務長官であった。

 

「10時出門ということでしたから、もう間もなくですな。」

「ええ。しかし、3キロほどの道を行くのに30分かけるというのですから、だいぶゆっくりですね。」

 

 ジン・ハークに近い位置にある満日両国軍基地とロウリア新国王の戴冠式が行われる聖ロメニエル大聖堂との距離は約3キロメートル離れている。占領を受けるジン・ハーク市民の感情を考慮して、市街地から離れた場所に軍の基地は構えてあるが、ジン・ハークとカルーネスを結ぶ街道の側に基地は建設されている。この街道を行き来する商人や冒険者にとっては、満日両国の威容をまざまざと見せつけられる格好となっている。

 

「3キロなど、車で一瞬という距離ではあるが、さては馬車でも持ちこんだのかのう。」

「あり得ますね。徳川外相はそういう演出がお好みですからね。」

「あっ、始まりますよ。」

 

『先導車が見えました。側車附のバイクが二台並走して、駐屯地正門を出庫していきました。向かって右側に日本陸軍の、左側に我が陸軍の警備の兵がゆっくりと、はい、本当にゆっくりとバイクを走らせながら、2台、4台と出てきました。』

 

「やはり、あれは憲兵ではありませんね。」

 

 塩野総務長官が日本兵の袖に憲兵の腕章がついていないことを見つけて感想を述べた。通常、政府高官の護衛に着くのは警察か憲兵である。特に、憲兵は占領地での交通整理を任務としている兵種でもあることから、このような場面では出てくるはずだ。これが、占領直後や治安が悪化している場合であれば、武装した歩兵が出てくるのは分かるが、ジン・ハークではそのような報告は上がっていない。

 駐屯地の正門の外では満日両国の軍楽隊が軽快な行進曲を響かせていた。彼らの演奏に合わせて、側車附バイクが合計10台出ていった後、満日両国の機動戦闘車がそれぞれ2台、合計4台縦列で出動していった。これまた、ゆっくりとした時速10キロ以下というべき速度で進んでいく。

 

「いざというときの盾ということでしょうかね。あれは。」

「まさしくじゃの。一応はこの間まで戦争をしていた間柄じゃからな、我々は。そういうことでは、森山君も気の毒じゃったかの。」

「確かに。森山先生の慰労会は開かねばなりませんね。」

「まさしくじゃの。」

 

『我が陸軍の機動戦闘車が出門していきましたが・・・、あっ!見えました。あれは、日本の徳川外相とクワ・トイネのリンスイ外務卿です。お二人は、乗馬しています。乗馬して、聖ロメニエル大聖堂に向かうというのでしょうか。悠然と手綱を握って、徳川外相とリンスイ外務卿が談笑しています。日本の文官大礼服に身を包んだ徳川外相と、クワ・トイネの民族衣装に身を包んだリンスイ卿が今、我々報道陣の横をゆっくりとした速度で進んでいきます。』

 

「・・・・。」

「まずいですね。森山先生は、馬には乗ったこと無いと思いますが。」

「それは確かですか。」

 

 黙り込んだ李首相に対して、ストーニー官房長官が焦った声を出す。塩野総務長官は森山外相の乗馬歴など知らないが、ストーニーと森山は同じ協和会の代議士仲間である。官房長官と言う職責上、閣僚の身の上は大体把握しており、森山に乗馬の趣味があるとはストーニーは関知していなかった。

 

「森山君が馬車で向かうというのであれば、格好はつくじゃろうな。」

「そうですね。この様子だと、おそらくクイラのメッサル外相が同乗するのでしょうから、德川閣下と同じように談笑しながら向かえば、」

 

『あ、我が国の森山外相が見えました。オープンカーです。森山外相とクイラのメッサル外相がオープンカーに乗って出門していきます。驚きました。クイラのメッサル外相が背広を纏っています。森山外相と同じく背広を着用しています。え、あ、失礼しました。あれは、モーニングコートのようです。』

 

「・・・・・。」

 

 執務室に沈黙が生じた。日本では式典における作法と言うのは厳格であるが、それは満洲国においても同様である。無粋な行動と言うのは好ましくは扱われない。特に李首相のように70を超える老人ともなれば、その思いは強くなる。

 

「日本の徳川外相が乗馬で向かうというのに、車とは・・・。森山君も無粋な真似をするのう・・・。」

「德川閣下は侯爵でもあり、昔の殿様の家系でもありますから・・・。ストーニー先生も、ロシア系の3世ですから、その辺はお分かりですよね。」

「え、ええ、それに德川閣下は外交官で欧州派遣大使の経験もおありですから。あちらでは、王侯貴族の趣味みたいなものですから。」

「わしは、恥をかかされたような気分じゃよ。」

 

 塩野総務長官とストーニー官房長官とが森山外相を弁護するかのように李首相に話しかけていたところ、テレビから流れる画面が切り替わった。

 

『番組の途中ですが、臨時ニュースが入ってきました。ここからは新京の第二スタジオからお送りします。たった今入ってきた情報によりますと、日本国内の陸海軍の多くの駐屯地施設に日本憲兵による臨時の経理監査が入ったということです。東京のライノルド特派員と中継がつながっています。ライノルドさん。』

『はい、私は今、東京宮城北ノ丸にあります、近衛師団司令部前に来ております。こちらには、午前9時過ぎに東京憲兵隊と東京警視庁の応援捜査員からなる監査員が正門前から入っていったとのことです。正門前では近衛師団長の梅沢斗司夫陸軍中将が床几に座って司令部庁舎を睨んでいる様子がうかがえます。』

『ライノルドさん。近衛師団長が司令部の外に出ているというのですか?』

『はい、9時頃、この周辺をジョギングで通りかかった人が、師団長と歩哨の兵との間で交わされた話を聞いたそうで、その話によりますと、「禁闕守護の任を負う我々を盗人扱いするとは何事か。調べるなら勝手にやれ。副官を置いておくので俺は立ち会わん。」とのことで司令部の庁舎から出てきて、ずっと座っているということでした。』

『なるほど・・・。ということは、今師団司令部内では、憲兵と警察の合同捜査が行われているということですか?』

『えー、その、なんらかの犯罪の嫌疑があり、捜査が行われているという情報は兵部省広報から発表されているわけではありません。また、この近衛師団だけではなく、第一師団や横須賀鎮守府、第一航空師団にも監査員が入っているということですので、大規模な犯罪が行われたというわけではないと・・・』

 

「総理。この件で、日本軍は幾分混乱すると思いますが、我軍は警戒レベルを上げて置くべきではないでしょうか。」

 

 塩野総務長官が李首相に進言したところ、李首相はそれを退けた。

 

「その必要はないでしょう。君たちも、この件はもともと知っていたでしょう。まあ、多少は混乱すると言っても大きな問題にはなりません。予想された動きですから、日本のことは日本にお任せしますよ。それに警戒レベルを上げるとなると、お金もかかるでしょうから、劉財相が良い顔をしません。」

 

 塩野は頭に引っかかるものがあったが、総理の言は確かでもあったため、再度進言はしなかった。

 

『日本政府及び日本兵部省からはまだ何の発表もありません。引き続き、この問題を詳しく見ていきたいと思います。』

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