大日本帝國召喚   作:もなもろ

35 / 362
クイラは中東の某国が元ネタということですので、中東から連想した部分を基礎として、独自設定を行いました。でも、筆者は中東のことはよく知りません。だから、中東「風」の名前ということでご承知ください。


クイラ王国アル=スラーン=クイラ家家宰の記者会見

 クイラ王国の大日本帝國派遣使節団が視察を終えて、満洲帝國に向かう前日、大日本帝國首都東京において記者会見が開かれた。

 中世の世界観では、王族は下々の者と直接対話することはない。日本政府はこの事実に配慮し、記者会見を行うに際しては、外務省記者クラブに所属する記者のみを会見場に参加させ、質問を許可するという体制を取った。そして、外務省報道官は、記者に対して、取材の際の発言や態度には非礼が無いようにとも説明した。非礼の基準としては、刑法第七十六條の一般皇族に対する不敬罪に相当するものをその基準とした。

 取材の形式も、記者が話しかける相手は直接王族に対してではなく、王族の側近とした。かような取り決めが行われた後、2月23日午後3時より訪問中の東宮御所に於て行われた。これは、その際の映像である。

 

 

 当初、私は記者会見なるものの存在がわからずに、その内容を聞き、日本側に対して拒否した。王族が、直接平民と会話を交わすなどと考えただけでも頭が痛くなる。しかも、今回その記者会見に臨まれるのは、クイラ国王アンクワール・ナースィル・アル=クイラ陛下の弟君であらせられる、マルワーン・ナースィル・アル=スラーン=クイラ殿下だ。何代も前の血の薄くなった王族などではなく、前国王のナースィル・ナビーフル・アル=クイラ陛下直系の王族だ。

 マルワーン殿下が日本訪問を決意し、王宮に直談判をしに行ったあとも、国内は反対意見の嵐であった。国王陛下の許しを得た後であったのだが、結局出発は遅れてしまい当初予定していた、クワ・トイネ公国側との連携はうまくいかないかに思えたが、ビデオを活用することで、視察の効率を上げることができた。クワ・トイネ側は主に日本の産業に対する視察を行い、我々は日本の文化を視察することでお互いがお互いの知りえたことを披露しあい、日本国の様子をつぶさに視察できたと思っている。

 記者会見に当たっては、質問を事前にある程度渡されている。その場の流れで追加もあるかもしれないが、おおよその流れは頭に入っている。いよいよ、記者会見だ。しかし、このフラッシュというものにはどうも目が慣れない。

 

「ただいまより、畏れ多くもクイラ王弟、マルワーン・ナースィル・アル=スラーン=クイラ殿下のご臨席を賜りましての記者会見を始めさせていただきます。司会は、東宮大夫である石渡聡太郎が努めます。では、まずは、記者倶楽部幹事会社から質問をどうぞ。あ、あと、媒体名と氏名を名乗ってからお願いします。」

 

「東西新聞の社会部の岩下です。本日は、御尊顔を拝し奉り恐悦至極に存じます。まずは、率直に申し上げまして、日本国をどのように見られましたか。」

 

 予告された質問ということだな。殿下の顔を見て、打ち合わせ通りというところを確認した後で答えるために、マイクのスイッチを入れる。

 

「日本国の新聞記者に対しては、クイラ王弟、マルワーン・ナースィル・アル=スラーン=クイラ殿下の御意思の下、アル=スラーン=クイラ家の家宰を務めるスハイル・ターミル・アル=バタクジーが答える。以後も斯くのごとくあるため、諸君には了知あれ。王弟殿下は、斯様に申しておられる。日本国は、我が国とは、風俗習慣が違うが、人の心の底に流れている神に対して敬虔であろうとする血、熱き血、優しい血は、我が国と等しく同じであると。我々は、よき隣人として接することができるであろうと。クイラと日本の王室と帝室は永久の親睦を深め、両臣民は不易の平和の下で繁栄を享受できるであろうことを確信している。さらに、日本国の繁栄は、実に素晴らしいものがある。外は寒いのにも関らず、室内は斯様にも暖かい。しかも、それは我が国のような王宮に限っての話ではない。町のいたるところがこのような状況であふれている。この国の臣民は極めて幸せな生活を謳歌している。我が国も貴国のような繁栄を得られるよう自助努力を進めるとともに、日本の支援をお願いしたいと。」

 

 日本国の繁栄は正直言って恐ろしい限りだ。古の魔法帝国とは、実はこの国を指すのではないかと思ったほどだ。イシワタが次の人間を指名した。

 

「帝都新聞の経済部の本居です。本日は、王弟殿下に質問する機会を賜りまして恐懼に堪えません。我が国との間での国交樹立に向けた取り組みの中で、殿下が日本国に期待をする役割についてお考えをお聞きしたいと思います。」

 

「王弟殿下は、斯様に申しておられる。我が国では、山岳地帯に黒くて臭い水のようなものが昔から存在していた。この水は飲めないし、この周辺では作物も育たないので、扱いに困っていた。今回、日本政府からこれらを買い上げたいとの申し出があった。この申し出は、我が国にとっても非常にうれしいものであり、我々からすれば、持っていってもらえるだけで、ありがたいものであるが、これに適正な価格をつけてもらえるとの話であった。さらに、これ、日本側から石油というものだと教えてもらったが、これを運ぶための施設を建設してもらえるとのことであり、日本国で見たような清潔で頑丈な建物ができるということは誠にありがたいものである。立ててもらった建物を参考にして、我が国でもかような頑丈な建物を作れるように研究を重ねていきたいとのことです。」

 

 そう、王弟殿下は夢を見たのだ。王都バルラートを日本のように発展させたいと、今すぐには無理だろうが、日本のような摩天楼をいつか我が国にと。そのためには・・・。

 

「大日新聞の社会部の生田です。本日は、王弟殿下のお顔を拝見できる栄誉を与えていただきありがとうございます。我が国を視察した結果、今すぐにでも取り入れたい制度などありましたら、お答えください。」

 

「王弟殿下は、斯様に申しておられる。使節団は、日本の学校をいくつか視察した。なかでも、小学校という学校、全国民に等しく教育を受けさせる学校というのは、我が国でも導入したいと考えておられる。ただし、これは今すぐに実現できる問題ではないことも分かっておられる。まずは、王都の中からでもこれを実現していきたいと。日本国繁栄の基礎にあるものは、この全国民が等しく初等教育を受け、高い教養を持っていることに他ならないと。日本国のような繁栄を我が国が手に入れるには、この初等教育の整備を始めなければならないとのことです。」

 

 日本側の記者団から驚きの声が聞こえる。表情を見るに、殿下の読みは外れていなさそうだ。日本国の繁栄の底力となって言るのは、高度な教育を受けた国民なのだろう。

 

「旭日新聞の文化部李です。本日は、御尊顔を拝し奉り恐悦至極に存じます。日本滞在中の出来事で一番の印象に残ったことは何ですか。」

 

 一番の印象か、やはりあれのことであろう。振り返って殿下の顔を見ると殿下が手を差し出してきた。マイクを渡せとおっしゃるのか?いや、それは・・・

 

「クイラ王王弟、マルワーン・ナースィル・アル=スラーン=クイラである。この日本に於て私が最も心躍らせた出来事については余の口より語りたい。それが、余の心を最も表す手段であるからだ。余はこの国で様々な文化を経験をした。ゴルフというスポーツの存在はその一つだ。小さな球を打ち飛ばして、最小の回数で終わらせることの難しさと楽しみは是非とも我が国でも取り入れたい。クイラの王族貴族のたしなみとして取り入れたい限りだ。また、皇太子殿下に解説を頂き、社会人野球というものも観戦させてもらった。投手の投げた球を打者が打ち、打者は走り、守備もまた走る。体を動かすことは体を鍛えることにつながる。これもまた我が国の軍に伝えたい。体を楽しく動かせて鍛えることにつながるのであれば、軍の訓練としても有益である。

しかし、最も余の心を動かしたのは昨日観戦させてもらった競馬である。そう、昨日の今頃の時間であったと思うが、余は東京の府中競馬場で行われた馬の競争を観戦した。誠に熱い展開であった。レース初めから先頭を走っていたアドマイヤロイヤル。これをずっとマークしていたコパノリッキーが、最後の直線に入るやじわりじわりと速度を上げ、残り300で先頭に立つ。じわりじわりと他馬を突き放し、このまま先頭にたつかと思ったが、後ろからもインカンテーション、ベストウォーリア、そしてワイドバッハと強烈な追い上げを見せる。逃げるコパノリッキー、それを追う他馬。あと一息で他馬に並ぶかとも思うたが、コパノリッキー押し切った。いやはや、誠に熱い展開であった。手に汗握る展開とはまさにこのことよ。

 リと申したな。直答を差し許す。そなたは、競馬を見たことはあるか。」

 

 リという記者が周囲を見て、困惑している。さもありなん。助けてやらねばなるまい。

 

「王弟殿下は、斯様に申しておられる。直答を差し許すと。リ記者。殿下の問いにお答えください。」

 

 リ記者はイシワタ東宮大夫を見、東宮大夫がうなずくのを見て、マイクを握った。

 

「お許しにより、回答いたします。殿下、私は競馬を楽しむ趣味は持ってはおりませんが、殿下の心を動かした競馬につきましては、今後注視してみたく思う次第であります。」

 

「なんと勿体ないことよ。おぬし、人生を損しておるぞ。誰か、他に競馬に詳しい者はおらぬか。確か、スポーツ紙の記者もこの場にはおったの。直答を差し許すぞ。」

 

 無茶苦茶だ。王族に話を振られたからと言ってそう表に出る者など・・・あれ、手が上がっただと・・・。

 

「スポーツ富嶽の甘木でございます。殿下に日本の競馬を楽しんでいただき、誠に恐懼しております。仕事柄、競馬を扱っており、私も休日は競馬場に足を運んでおります。殿下、殿下のお国でも競馬をやろうとお考えですか。」

 

 直答しただけでなく、逆に殿下に質問だと、この国の平民はどうなっているのだ。

 

「うむ。昨日競馬場で案内役であった、アリマ伯爵と高円宮殿下には、是非とも競走馬をこちらにも譲ってほしいと頼んである。それだけではない。ほかのスポーツもだ。皇太子殿下からご案内いただいた野球やゴルフも我が国ではやらせたい。ゆくゆくは国際試合も行いたいものだ。」

 

「殿下。競馬には、ジャパンカップという国際招待試合がございます。いつの日かクイラで生産された馬が日本の芝を駆け抜ける姿を私願ってやみません。」

 

「おう、ジャパンカップか。余もそれを望んでおる。クイラと日本との間の友好関係をスポーツを以て醸成していきたいものよ。余は、日本ダービーを観戦するためにまた訪日する予定だ。アマギよ。その時は余に伺候せよ。いろいろと話を聞かせてほしい。」

 

 は?殿下!!何を、まだそのような希望をこちらは聞いておりませんぞ。

 

「殿下。そのようなお話まだ我々は聞いておりませんぞ。」

 

「おう、そうじゃったか。しかしの日本ダービーは、四歳最強の競走馬を決める戦いというではないか。これを見ずしてなんとするのだ。」

 

「い、いやしかし。王弟殿下がそのように国外に頻繁に赴かれましては・・・」

 

「殿下。そのあたりのお話はまた後日。この度設置されます公使館と外務省との間で協議をされていただきたく思います。」

 

 イシワタ東宮大夫から助舟が出された。ありがたい。日本国は魅力的な様々なものであふれている。殿下は自分の目で様々なものを吸収したいのであろう。クイラの発展は、殿下の目と耳と陛下の頭にかかっているのだろう。




筆者が、中東と聞いて連想するものは、宗教、石油、競馬でした。当然宗教は使えません。石油は原作でも扱っているので、競馬を扱おうかと思いました。情報番組のラインナップようやく拾えました。
拙作の馬齢表記は日本式の数え年です。国際表記には改めませんでした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。