大日本帝國召喚   作:もなもろ

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さあ、ついにやってきましたパーパルディア編の山場。拙作においてはこの交渉の席にムーゲ大使が同席しておりますので、彼の視点で始まります。レミールが交渉の主体であるという点はややあれ?という点がありますが、現時点ではレミールが交渉主体という形になっています。それに交渉の場に魔導通信機が出てくるというのも原作通りですね。


パーパルディア皇国皇都エストシラント パラディス城第一外務局迎賓館 中央暦1640年1月18日(月)

パーパルディア皇国皇都エストシラント パラディス城第一外務局迎賓館 中央暦1640年1月18日(月)

― パーパルディア皇国駐箚ムー王国大使 ジェフリー・マグナム・ムーゲ

 

 我がムー国は、パーパルディア皇国からの要請もあり、日本国と満洲国が相手となる見舞金交付式典に参列することとなった。大使館に届いた招待状には、交付式典となっているが、パーパルディア側は下賜式典と呼んでいる。大使館職員が今回の式典について、パーパルディア第一外務局で打ち合わせしたときに、見慣れぬ職員が「下賜式典」という言葉を発しているところを聞いたようだ。職員は、打ち合わせ相手である外1の職員、パーパルディア皇国第一外務局第一文明課コルト・シエル・フォン・ニソール課長に「下賜式典」というのはどういうことかと聞いてみた。ニソール課長が、今回の式典を「交付式典」と言っていたので、不思議に思って聞いてみたようだ。すると、ニソール課長は、あの連中は外1の職員ではないので気にしないでほしいということだった。

 その話を聞いた時は、実に笑止なことだと思った。パーパルディア皇国の外交部局の連中の中には日満両国が強大な存在であることに未だ納得できていない者がいるということか。そのときはそう思ったが、次第に哀れなことだとも思った。彼らはいつの日か、取り返しのつかない過ちを犯してしまうのではないかという気持ちになったからだ。ムー大陸では、突如文明圏外の国家からの襲撃を受けてレイフォルが滅んだ。レイフォルが滅んだことについては未だに詳細が判明していないこともあるようだが、突然高度な文明を持つ国が現れ、その国の逆鱗に触れたのが原因とされている。日満両国も同じく突如現れた高度な文明を持つ国々だ。なにか共通項があるようにみえてならない。

 

 ーーーーー

 本日の式典だが、これまでのパーパルディアが行ってきた式典とは趣が違う。第一外務局の迎賓館は、我々もよく使用する場所であり、この建物は我々のような列強国をもてなす施設であることから、パーパルディア側が日満両国をどのように見ているのかは想像がつく。しかし、式典が行われる広間の状況が奇妙だ。おそらく、レミール殿下が座られることになるだろう上座に当る場所が何やら薄い布のようなもので囲われている。椅子が置かれているだろう空間が、部屋の側面に並ぶ我々からだけでなく、正面の位置にある日満両国の外交官からも見えなくなっている。

 果たして、これはどういう趣向なのか。これまでのパーパルディア皇国の外交式典では見たことのない状況だ。これをどう考えたらよいのだろうか。私はパーパルディア皇国側からも日満両国の側からも外交における仲介の依頼を受けている。

 先のアルタラス事変以来日満両国のみならず、我がムーもパーパルディア皇国を警戒している。パーパルディア皇国は、先のアルタラス事変において自国現地軍が採ったルバイル国際空港施設への攻撃行動をアルタラス国軍が同施設内へと逃げ込んだせいであるとして、自国の責任を回避した。何という図々しいことだとおもったが、日満両国がパーパルディア皇国側の主張に一理あるとして責任追及の矛先を鈍らせた。列強第四位の国が第一位と第二位の国が管理する施設を攻撃したのだ。それだけでも、パーパルディア皇国は敵対的な行動をとった責任を取らせるべきであるというミリシアルと我が国の主張に対して、日満両国は国力の上位下位というだけでは責任追及の法理としては弱いと断じた。駐アルタラスのミリシアル大使はむっとした顔をしたが、ミリシアル大使もまた日満両国の国力の強大さを感じており、むっとしただけに終わった。

 仕方なく我々も、パーパルディア皇国側が被害を受けた施設の復旧に尽力したことを以て免責とした。ただし、日満両国はパーパルディア皇国の責任追及こそはしなかったが、警戒対象の国であるということは我々に明かしており、こうして、対パーパルディア皇国との外交の席に同席してほしいということを求めてきていた。日満両国とパーパルディア皇国との国力は段違いであるのだから、初めに押さえつけておけばよいとは思う。いささか、ややこしいことを考える国家だと思ったものだ。

 とはいえ、仕事は仕事だ。日満両国の外交団が座る席に目を向けると、日満両国の使節団長はそれぞれ、興味深い様子で上座を眺めていた。そして、それぞれ団長の後ろに控えている使節団員だが、日本の使節団は団長と同じく興味深い顔をしていたが、満洲の使節団員には困惑している顔をしている団員がいることが見受けられた。ふむ、少々情報収集が必要か。

 

「オーレンキック君。」

「はい。」

「日満の使節団員に接触して、今回の式典についての所感を求めてきてくれ。何やら、満洲側の外交官は困惑してるようだ。」

 

 秘書官に指示を出し、日満側の状況を調べてもらうこととした。さて、何が出てくるかな。

 

 ーーーーー

 秘書官が日満両国の外交使節団から聞き出してきた情報によればだ、このパーパルディア皇国が用意した舞台というのは、日本国の歴史において遡る事150年ほど前、日本国の皇帝が謁見するときに使われた舞台と似ているそうだ。そして、満洲国の中でも日系と呼ばれている外交官は何となく知っているそうだが、露系や欧系、華系といわれている外交官はピンと来ていないということで、困惑していたらしい。日本国はほぼ単一民族の国家であるが、満洲国は多民族国家であることから職員の間で意識の差が出たようだ。

 ふむ・・・よくわからん。何故パーパルディアはそのような日本国の歴史的な舞台を用意したのだ。

「パーパルディア側は、今回の式典でこのような舞台装置を使うことを前もって何か言っていたか?」

 ニソール課長と打ち合わせをしたフレデリック・モーラント大使館参事官に聞いてみたところ、彼は意味深なことを言った。

「打ち合わせの席上においてですが、ニソール課長は、今回の式典は、日満両国と我等ムー・ミリシアルに対して迷惑をかけたことは確かなので、その償いとしての「お見舞金」を渡すということは確定しており、ムーとミリシアルには既に「補償金」が支払われています。これに対して日満両国とは国交がないのでこの交付を大々的に式典として行うことで、後日の国交樹立につなげたいということを申してありました。これに関しては既に報告しております。しかし、これは不確定な情報なのですが、日満両国の正式な外交上のカウンターパートは第一外務局ではなくて、第三外務局なのだという噂があるのです。」

「何?なぜ、そういうことを早く言わないのだ。」

 私が怒気をはらんだ声で参事官に問いただすと、参事官は何分噂段階の話であり、そもそも式典に関する対応はニソール第一外務局第一文明圏課長が行っていたので、そもそも俎上に上げるべき話でもなかったので、突っ込んで聞くことはできなかったと返してきた。うむ・・・。それはそれでまた当然といえる。しかし、それにしても厄介なことを聞いたものだ。

 

 ーーーーー

 式典の始まりは、金属を叩く音(後で知ったことだが、「銅鑼」という打楽器の音のようだ)で始まった。私がこの国に赴任してからもう5年は経つがこのような音は、いままで聞いたことがなかった。日満両国の使節団に視線を移した。彼らの表情に不審な色はない。これは・・・、確かに今までのパーパルディアとは違う。

 金属音が止むと、ベールで顔を隠した女性が入室し、薄い布で覆われた区画内に入っていった。彼女がレミール殿下なのであろうが、はて、パーパルディアにベールを着用する習慣などあっただろうか。これもまた、不可解なことだ。区画の側に建つ男性は、はて、見慣れぬ顔だな。それに、マリンドラッヘ局長も、オイゲンベルグ局次長も、直接の担当者であるニソール課長もこの場におらぬが。

 

「遠方よりの来訪を誠にうれしく思う、とレミール殿下は仰せである。」

 

 なんと!!区画の側に立つ男性が声を発した。レミール殿下の言葉を代理で伝達しようというのか。このような会話方式は、文明圏外国家では未だに行われていると聞いていたが、パーパルディアでは、とうに廃れた慣習であったはずだ。またしても驚かされた。パーパルディアは一体何をしようというのか。

 日満両国に目を向けると、日本の朝田特使は見事な跪礼をしていた。若いが流石は日本の外交官と言ったところか。満洲の陳特使は70歳を超え、杖を突かねばならぬというから跪礼はできぬと言われていたから、直立して右手を胸に充てての立礼をしていた。両国の使節団は全て立礼をしているが、頭を下げる角度が揃っていて実に美しい所作だ。

 

「お初にお目にかかります。皇帝陛下よりパーパルディア派遣の任を承けました満洲帝國参議の陳芳郎と申します。」

「同じく、お初にお目にかかります。大日本帝國天皇陛下よりパーパルディア特派の任を承けました大日本帝国外務省欧州局英国課長の朝田泰司と申します。」

「両国特使の来訪を歓迎し、諸君らに皇国滞在の許可を正式に与える。軍関連施設などの立ち入り禁止区域以外の立ち寄りなど、往来を基本的に自由とする旨の交通切手を発行する、と殿下は仰せである。」

「滞在と往来自由の自由をお認め頂き、両国を代表して御礼を申し上げます。」

「これまで我が国と貴国等の国との間には親交がなく、意思の疎通がままならなかった。今回の式典を機に我々の間に和親と共有された良識を基礎とした関係を結んでいきたいと考えている、と殿下は仰せである。」

「願ってもないことであると、両国及び両国民を代表して感謝の意を申し述べます。」

 

 ふむ。おかしい・・・。ここまでの内容は凡そ予想された範囲だが、跪礼や立礼を止めるようにレミール殿下は伝えなければならないのだが。後ろの私の随行員も不審に思っているが、目線を向けて静かにするように促した。日満の随行員も不審な表情をしているが、陳特使も朝田特使も無表情だ。何を考えているのやら。

 

「共有された良識を基礎とするにあたって我々から伝達すべきことがある。こちらの魔導通信機の映像を参照されたい。」

 

 何?これは一体どうしたことか。このような式次第にはなっていなかったはずだ。後ろのオーレンキック秘書官やモーラント参事官目を向けたが、彼らも首を振った。一体全体何が起こっているのだ。

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