大日本帝國召喚   作:もなもろ

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俵星さん、再登場の巻。


官報(叙任及辞令より一部抜粋) / 大日本帝國長崎県対馬市 対馬要塞司令部 2676(平成28・2016)年1月18日(月) 正午

官報

叙任及辞令の欄より一部抜粋

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◎平成二十七年三月二十七日

         陸軍中尉 浅野  渉

         同    岩下 吾郎

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         ・    ・

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         同    笹野小次郎

(各通)     同    篠田  仁

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         同    俵星 玄蕃

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         同    山南由紀夫

         同    劉  博司

「クワ・トイネ」公國ヘ出張ヲ命ズ

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◎平成二十七年八月三十一日

      陸軍中尉従七位 浅野  渉

      同       岩下 吾郎

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      同       笹野小次郎

(各通)  同       篠田  仁

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      同       俵星 玄蕃

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      同       山南由紀夫

      同       劉  博司

叙功五級

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◎平成二十七年九月一日

      陸軍中尉従七位 浅野  渉

      同       岩下 吾郎

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      同       笹野小次郎

(各通)  同       篠田  仁

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      同       俵星 玄蕃

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      同       山南由紀夫

      同       劉  博司

任陸軍大尉

特旨ヲ以テ位一級被進

 ――― ・ ―――

     近衛歩兵第三聯隊

     小隊長陸軍大尉  浅野  渉

補第五師団副官

     近衛歩兵第二聯隊

     小隊長陸軍大尉  岩下 吾郎

補歩兵第七十六聯隊中隊長

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     近衛歩兵第二聯隊

     小隊長陸軍大尉  笹野小次郎

補近衛歩兵第二聯隊大隊副官

     近衛歩兵第一聯隊

     小隊長陸軍大尉  篠田  仁

補参謀本部部員

参謀本部第一部勤務ヲ命ズ

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     近衛歩兵第二聯隊

     小隊長陸軍大尉  俵星 玄蕃

補独立挺進聯隊中隊長

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     近衛歩兵第二聯隊

     小隊長陸軍大尉  山南由紀夫

補歩兵第四十九聯隊附

山梨県立中学徽典館服務ヲ命ズ

     近衛歩兵第一聯隊

     小隊長陸軍大尉  劉  博司

補兵部省課員

兵部省軍務局勤務ヲ命ズ

 

 

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大日本帝國長崎県対馬市 対馬要塞司令部 2676(平成28・2016)年1月18日(月) 正午

 

 ― 対馬要塞司令官 陸軍少将 大森義忠

 

 帝國陸海軍全軍に対する一斉経理監査などとは・・・。まったく、山上内閣の点数稼ぎには、呆れてものが言えぬ。おかげて、今日は全く仕事ができぬ。外部との接触も通信も制限されておるから、師団司令部や警備隊との連絡も取れぬ。全く、もう少しやり方というものを考えてもらいたいものだ。

 

「とりあえず中間報告ですが、陸海軍経理部と大蔵省との平成3年協定、陸海軍会計処理基準に照らしたところによれば、大きな問題は見つかっておりません。」

「ふんっ!!さもありなんといったところだな。」

 

 当然のことだと思った。うちのような小規模の機関には大きな予算は割り当てられておらん。予算をごまかすようなことはできんわ。しかし、横川予備役陸軍憲兵少佐は、苦笑しながら話を続けた。

 

「しかし、この月末や年度末の処理はいかがなものかと思いますよ。」

「ふんっ!何をいまさら、貴様は今大きな問題はないと言ったではないか。」

「ええ、会計基準に照らしたところでは、問題となるものではありません。」

「ならば、問題はないだろう。」

 

 月末や年度末の帳簿上のつじつま合わせは、機密費を積み立てる為や予算を使い切る為に行われていることであるが、別段珍しくないことだ。もちろん、何事にも限度というものはある。あからさまな真似は宜しくないことは間違いない。

 

「確かに、小官も対馬要塞司令部の経理帳簿に大きな問題があるとは認識してはおりません。ですが、小官も予備役となって7年ほどになります。娑婆の空気になじみすぎたようですな。一般企業の経理会計処理に基づけば、このような帳簿、粉飾決算が疑われかねないところです。」

「ふん。一般企業と軍の会計を一緒にするな。」

 

 軍は法によって禁止された事項以外は、あらゆることが行えるし、また行わなくてはならぬ。だが、世の理として何かを為すときには金が要る。それがために一定額の機密費が必要だ。この機密費の用途には表に出せぬことに対してなされることがあるが、決して私腹を肥やすことではない。軍の活動、特に防諜・諜報の中にはそういった側面が確かに存在する。地方の機関だからといって、そういうことと無縁でいられるわけではない。ま、最も年度末のそれは、来年度以降の予算を大蔵省の連中に削られないようにするためだが、ゲフンゲフン。

 憲兵ともなれば、そういったことに対して無理解ではないはずだ。そういった目で横川憲兵少佐を睨めば、またしても苦笑した。ふん。

 

「おや?どちらへ。」

 

 席を立ったわしの姿を見ながら横川少佐は質問した。わしは、煙草だと答えると、灰皿はそこにありますでしょうにと更に続けて質問をしてきた。ちょっと、外の空気を吸ってくるとも伝えたが、奴は更に苦笑して、では私も御相伴をと言ってきた。全く不愉快なことだ。

 外に出て、司令部建屋の側に設置されているベンチに座り一服やる。わしは葉巻だが、横川は紙巻だった。葉巻は時間がかかるので、横川は何服も重ねていた。ふむ、やはり、監視も兼ねていたというところか。ご苦労なことだ。戻ろうとすると、何やら正門の側が騒がしい。衛兵が押し問答をしている。ふむ。

 

「ここにもマスコミ連中が来たのか?」

「いえ、陸軍の戦闘服を着ているようですが?」

 

 わしのつぶやきに横川少佐が答えた。

 

「ほう、目が良いのだな?」

「ええ、視力はいいのですよ。それより、ちょっと行ってみましょう。」

「うむ。まったく、次から次へと厄介な。今日は厄日だな。」

 

 隣の横川がまたしても苦笑した。一々大仰なやつだ。

 

 

 ーーーーー

 ― 大日本帝国陸軍予備役陸軍憲兵少佐 横川喜三郎

 

「ですから、司令官閣下に御目通りをと。」

「今尋ねてりますので、お待ちくださいと何度も申し上げているではありませんか。」

「時間が惜しいのだ。中に入れてくれ。」

「ですから、今は許可のない者を通すわけにはいかないと。」

 

 正門に近づくにつれて話が聞こえてきた。どうも大森司令官閣下に面会の希望らしい。だが、私が外務との接触を制限させたために彼らは中に入れずにいるようだ。ふむ、陸軍の戦闘服を着用しているが、誰だろうか。

 

「何事だね、騒々しい。」

 

 大森閣下が言葉を発すると、それまで喋っていた戦闘服の陸軍軍人がこちらを向いた。ふむ、どこかで見たことがあるような。襟章は陸軍大尉のものか。ふむ・・・。

 

「陸軍少将の襟章。大森閣下でありますか?」

「いかにも。私が司令官の大森だが。貴様は誰だ。官姓名を名乗れ。」

「はっ!失礼いたしました。自分は、独立挺進聯隊挺進兵第三大隊第十一中隊長を拝命しております俵星玄蕃陸軍大尉であります。後ろに控えますは我が中退の幹部であります。」

 

 思い出した。ギム100人斬りと新聞でいっとき騒がれた近衛師団所属の軍人だ。そうか、大尉に昇進して、配置替えとなったのか。

 

「ほう、貴様があのギムの英雄だったか。戦時の際はご苦労であったな。それで、司令部に何用だ。正門前で口論に及ぶとは尋常ではないが。」

 

 大森閣下は淡々とした口調だな。陸軍武官には大きく分けて2種類の人間がいる。一つは、大森少将のように軍官僚としての職を担ってきたタイプの人間だ。軍の実戦部隊での参謀勤務や隊附勤務を挟みつつ、中央官衙や軍学校などの任務を中心に勤務してきた人間だ。そしてもう一つが実戦部隊一筋の人間で、おそらくこの俵星大尉も同じような道に進むのだろうと考えられる。

 

「正門前をお騒がせ致しましたことはお詫びいたします。しかし、小官はどうしても、大森閣下に願いの儀がございました。」

「ふむ、一体なんだというのだ。わしは、貴様の上官でもなければ、職務上のかかわりはないが。」

「はい。是非とも要塞司令部の軍用通信機器をお借りしたいのです。」

 

 む?何故、要塞司令部に備え付けてある軍用無線を使う必要があるというのだ。

 

「失礼、小官は、予備役陸軍憲兵少佐の横川と申します。貴官は何故、要塞司令部の軍用無線を使いたいのですか?というよりも、どこに通信をしたいというのですか?」

 

 面倒な気配がしたので、会話に加わった。おかしい。要塞司令部の軍用無線を使って何をしようというのだ。

 

「はっ!大森閣下にお願いの儀というのは、まさしくそこにあります。閣下、何卒、対馬要塞司令官の名義を以て、兵部省に対して要塞戦備の命令下達の意見具申をお願い申し上げたく、こうして参じました。」

 

 俵星以下、独立挺進聯隊の中隊各員が頭を下げてきたので、私と大森司令官は一瞬固まった。え?要塞戦備命令?いったい何を考えているというのか。

 

「俵星中隊長。要塞戦備命令とは一体何を指しているというのか、分かっているのですか?」

「勿論でございます。まずは、小官の危惧する所を聞いていただきたい。」

 

 そうして、俵星中隊長は自己の危惧する所を説明し始めた。フェン王国で発生した大規模通信障害、これが実は帝國臣民の安全を害しようとしているという危惧、というより妄想の類としか言えないようなことを話してきた。話にならない。

 

「俵星中隊長。貴官の主張を裏付ける根拠は何かあるのですか。確かに、通信障害が過去と比べて長期に及んでいるようです。しかし、それだけでは、何の根拠にもなりません。いえ、はっきり言いましょう。今の段階では貴官の妄想の域を出ていません。」

「おっしゃる通りです。これは、私の武人としての勘のようなものでしかありえません。しかし、私の心が警鐘を鳴らし続けているのです。ですので、戦の準備だけでもすべきであると。大森閣下、我々独立挺進聯隊第十一中隊は軍隊であり、官衙である要塞司令部の指揮下には入れません。ですが、要塞戦備命令が下達され、対馬要塞司令部が平時編制から戦時編成へと変われば、要塞司令部は官衙から軍隊となり、閣下の指揮下に入れます。我々中隊200名、閣下の命令あれば、すぐさまフェンへと救援に向かいます。その際には、対馬警備隊のヘリをお貸し願いたい。」

「話にならない!閣下。このような妄想に付き合う必要はありません。」

 

 帝國陸軍にこのような狂人が潜んでいたとは恥ずべきことだ。一体、軍の思想監督はどうなっているのか。どうして、このような人間が近衛師団に配属され、そして、帝国陸軍でも平時から戦時レベルの編成を行っている戦闘集団の中隊長に充てられているというのか。

 

「まあ、待て、横川少佐。」

「閣下!!」

 

 なぜ、止めるのですか!

 

「俵星と言ったな。貴様のいうことは、根拠がない。故に、俵星大尉。貴様の願い出のあった、要塞戦備の意見具申はしかねるところだ。」

「しかし、閣下。フェンの異常は、確かなことなのです。」

「分かっておる。そして、フェンの異常に対していち早く動けるのも亦、フェンから一番近い位置にある我々だ。」

「では!」

「閣下!」

「まあ、両名待て。俵星中隊長。独立挺進聯隊所属の貴様が今ここにいるということは、あれか。特別大演習後の戦技研究の為だな。」

「その通りであります。」

「ならば、俵星、わしを動かせるだけの証拠を採ってこい。」

 

 大森司令官は一体何をしようというのか。

 

「わしの持つ対馬要塞司令官としての権限によればだ。対馬全島の防衛計画の策定は、わしの権限に属することだ。フェンは対馬から近い。フェンの動向は対馬の防衛計画の策定に影響を与える事柄だ。だから、知っておくに越したことはない。」

「では!」

「但し、貴様たちが軍人として動くことは禁じる。理由なくして軍隊が越境するのは陸軍刑法上の擅権罪に該当する。軍服を脱いで、地方人として入境せよ。幸いにして、日本人がフェンへ旅行する目的ならば、帝国の旅券を所持しているのならば、査証はいらぬはずだ。」

「で、ですが、閣下。我々、パスポートを持ってきてはおりません。」

 

 なるほど。つまり、閣下は彼らに条件を提示させることで諦めさせようとしているということか。なるほど、これは年の功というやつだな。

 

「ならば、細君に連絡して、持ってこさせるのだな。今から動けば夕方までには、対馬に来れるだろう。そこからは・・・、船か。船舶業者への口利きくらいはしてやる。」

 

 違った!

 

「閣下!いけません。御自身の指揮外の軍人を大挙して送り込むなど、要塞司令官としての権限を逸脱しています。」

「わしは彼らに命令なんぞしとらん。地方人として海外旅行するなら、便宜を図ってやると言っただけだ。」

「民間人に扮して軍の活動をさせるとおっしゃったではありませんか。」

「見解の相違というやつだ。」

「閣下!!」

 

 再度、抗議しようとすると、大森司令官は私を連れて、ちょっとばかり、俵星中隊長たちから離れた。

 

「まあ、聞け。どのみち、フェンの異常現象に対しては、何らかの確認が必要な時期ではあったのだ。あそこには、パーパルディアの軍事施設がある。その動向については、対馬の防衛計画に関して影響があるというのは方便ではない。」

「しかし、」

「声が大きい。我々軍人は、表に出せないようなことに対しても気を配らねばならぬ。その辺りは、陸軍武官ならば理解できることだろう。」

「理解はできます。」

「だが、納得はできぬというところだな。まあよい、貴官は目をつぶっておればよいのだ。」

 

 こういうところで納得できないところが、軍に予備役編入願を出した所以なのだろうな。一定期間、軍の法務部や憲兵を務めると、高等試験司法科の一次試験を免除できるからと陸軍士官学校から憲兵を志願したが、どうも、やはり軍の空気は自分には合わないと思わざるを得ない。

大森司令官は要塞戦備命令発動への根回しを

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